天文はかせ幕下

バーティノフマスクづくり

学校のある研究室が、「レーザー加工機」というものを導入したらしい、

http://www.smartdiys.com/smart-laser-co2/(←こんな物です)

そこで天文部員達(の一部)で押し掛けました。

「ちょう、ちょっと貸してみ・・・ほら・・。いいじゃん!別に」

と言って、無理矢理バーティノフマスクを二つ、作ってもらいました。

作り方

まずは、マスクの生成サイト(astrojargon - Bahtinov Focusing Mask Generator)で必要な値を入力し、.svg形式のデータを取得します。それをlinkscapeというフリーソフトで編集してサイズを確認。上のサイトから得られるデータは、黒で塗りつぶした像なので、これを線の描画に変えておきます。その.svgファイルをレーザー加工機につなげたパソコンに読ませると、すぐに加工が始まります。

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加工の様子です。

ほんの20分くらいで、出来上がってしまいました。びっくり。

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左上の黒いのが、2年ほど前に発泡ウレタンで作ったマスクです。だいぶんぼろぼろになっています。白いのが今回レーザー加工機で作ったもの。精度がすばらしいです。ついでに、300mmレンズ用のマスクもつくりました。こんど、スプレーで黒くぬってみます。

 

フラット補正について

これまでフラットフレームの処理を我々はサボってきておりました。これは周辺減光とよばれる写真の周辺が暗く映ってしまうレンズの性質に対する補正のことです。いつもの顧問の写真も、先日のコミュショー阿部の写真も、画像の四隅が暗くなってますよね。この補正は重要です。とくに淡い星雲が写野全体にひろがっているような対象を撮影する場合はそうです。

そこで、先日神割岬で撮影したオリオン座周辺の写真のフラット補正をDeep Sky Stackerでやってみました。

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うーん、なぜかわかりませんがうまくいきました。以前の写真と対比してみるとフラット補正の大事さがよくわかります。

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左がフラット補正後、右がフラットなしです。

いぜんから「Deep Sky Stackerでフラットの処理をするとひっかき傷のようなノイズが出る」という問題に昔から悩んでいました(以前の記事2015-05-12Deep Sky Stacker での画像処理に苦悩 | ホシミスト3013の天体撮影記 - 楽天ブログなど)。しかし、上の写真ではノイズはあまり目立ちません。結局はフラット補正のせいではなく、たんに画像処理の問題だったのではないかなと思っています。

 

早朝の水星と木星

10月11日午前4時30分、夜も明けきらない野田山の一角に物好きな数人の部員たちが集まりました。筆者もその一角にぶるぶると震えながら立っていました。

 

彼らの目的は朝活動でした。早朝のランニングよろしく、朝の澄み切った空気の中で活動する事で気分転換を図り、一日を健やかに過ごそうという計画です。

とは言うものの、朝活動と呼ぶにはいささか早めの時間帯。それもそのはず、彼らは天体観測をしにやってきたのです。

 

新聞社の取材もかねた今回の観測、真東の方角に上がる水星と木星がその目的です。

開けた真東の空を求めて、普段の観測場所である機械棟の屋上を離れ、駐車場へと向かいます。

双眼鏡とカメラを据え、赤らんだ東の空を見つめる一行。雲も少なく、空気も乾燥し、夏の暑さはどこへやらという強烈な寒さの中、目を凝らし続けます。そんなに長い時間ではありませんでしたが

やがて空に小さな光の点が浮かびます。

 

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画像中央部、電線の間に水星と木星が映っているのが分かるでしょうか。

(おそらく)上が水星で下が木星です。

この明るい空の中にもしっかりと輝く姿は、さすがは同じ太陽系の天体といった気概を感じます。眠い目をこすり観測にいった甲斐のある美しい光景です。

 

太陽がやがて静かに昇り、街に朝が訪れると、一行は昼間の活動に備えて駐車場を後にしていきました。

 

 

朝のひっそりとした観測の様子を拙い文章ながらお伝えしました。

 

記者さんに変なことを言っちゃいないか気が気でならない4年生 田中(校正 中村)

 

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上の写真のクローズアップ

 

 

初の直焦点

はじめまして

どどど、、、どうも初めまして。コミュ障陰キャラの阿部です。1ヶ月前に入部した専攻科一年です。

なんで専攻科生が今更入部?しかもこんな時期に?と思う方もいるかと思いますが、
これにはマリアナ海溝よりも深い理由があったのです。。。(長いので割愛)

 

やる気完全0%からの

夏合宿から早1ヶ月が経とうとしていましたが、毎晩夜空を見上げても分厚く覆う雲。毎日のように雨。全くもって晴れる日がありません。

顧問先生より観測のお誘いがあったその日も県内は曇りの予報。流石にやる気は起きず半袖短パン、サンダルで、カメラのボディだけを持って学校へ。

「はぁ、生きているうちに晴れる日はもう一生来ないのだ」

「やまない雨はないんじゃなかったのか」 

なんてアホなことを考えていると、研究室に顧問来訪。

 「北の方は晴れそうだから行かないかい?」

実は数時間前に七ヶ宿に行くのを諦めたはずなのに、このモチベーションの高さ。伊達に顧問をやっていない。

それでもバイトがあることを言うと

「アルバイトでそんなこと気にしなくてもよい。そのための安い時給だ。」

なるほど。僕はこの人に一生ついていこう(決心)。

かくして、最もそれらしい理由をつけてバイトをサボり、研究も途中で投げ出し、神割崎へと観測に出かけた。

 

案の定曇りと思ったら

現地について空を見上げると案の定曇り。しかし雲の切れ間にヘルクレス座が顔を出しています。

なんとかM13を導入し、興奮を覚えつつ念願の直焦点初挑戦です。

以下画像処理は"DeepSkyStacker(DSS)"を使用しています。

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9/29/2016 8:41PM  M13 宮城県雄勝

CanonEOS70D タカハシ ε-200+NJP赤道儀

露出時間:60sec x 10枚=6min, ISO3200 

中央付近トリミング

 

お~~~すごい。凄すぎる。今までは”ポラリエ”に70Dと70-300mmのキットレンズを使っていたのでこれは感激。右端にもなにか銀河系の様な円盤状の天体が映っています。

調べてみると”NGC6207”という渦巻銀河だそうです。初めて知った。

中心を白トビしない程度に明るくし、星も一つ一つ見えるようにしたかったのですがどうも上手くいきません。

周辺減光がひどく見栄えが悪いのとM13と折角なのでNGC6207を強調するためにトリミングしました。

 

続いてM27。夜11時を回るころ急に雲が切れて、次第に透き通った夜空が満天に見え始めました。

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9/29/2016 10:21PM  M27 宮城県雄勝

CanonEOS70D タカハシ ε-200+NJP赤道儀

露出時間:60sec x 20枚=20min, ISO3200 

中央付近トリミング

M27は亜鈴状星雲 と呼ばれる星雲だそうです。

鉄アレイに見えることから”亜鈴状”と呼ばれるそうです。写真からはそのようには見えませんね…笑

 

次はM31はアンドロメダ銀河です。

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9/29/2016 10:21PM  M31 宮城県雄勝

CanonEOS70D タカハシ ε-200+NJP赤道儀

露出時間:60sec x 20枚=20min, ISO3200 

 

撮影しているε-200は焦点距離800mmで、aps-c換算で1200mmになります。(合ってるかな?)ですのでε200では少しキュウクツな気がします。まるでワタナベくんのようです。でも迫力はありますね。

画像処理の際にDSSでRGBのヒストグラムを重ね合わせずに、少しだけRを左に、少しだけBを右にずらすといい感じの見栄えになることが分かりました。

 

少しふざけてプレアデス星団もとってみました。あのモヤモヤは映るだろうか

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9/29/2016 12:13PM  M45_プレアデス星団 宮城県雄勝

CanonEOS70D タカハシ ε-200+NJP赤道儀

露出時間:60sec x 6枚=6min, ISO3200 

思ったよりも写っていました。薄青の羽が美しいです。次回はじっくり撮影してみたいです。

 

自力で導入できなかったM33

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9/29/2016 12:13PM  M33 宮城県雄勝

CanonEOS70D タカハシ ε-200+NJP赤道儀

露出時間:180sec x 18枚=54min, ISO3200 

およその位置は把握しているつもりでしたが全く導入できない。天頂付近にあり筒を抱きながら10分ほど格闘するも断念。首が痛くなります。顧問に助けを求めたところ慣れた手つきであっという間に導入してしまいました。すごい
ここがトラブルが発生。撮影のために暫く放置していたところいつの間にかカメラのバッテリーが切れる事態に…

 

泣く泣くkiss7xを借りて撮影オリオン座大星雲を撮影。

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9/29/2016 12:13PM  M42_オリオン座大星雲 宮城県雄勝

CanonEOSkiss x7 タカハシ ε-200+NJP赤道儀

露出時間:60sec x 7枚=7min, ISO3200 

完全に自己満ですが、中々よく撮れていると思います。露出を変えなかったので中心部分が白トビしてしまいました。

 

 

撮影したのはこれで以上です。写真が多くかなり長くなってしまいました。

今回は初めての直焦点ということでテンションが上がりいろいろな天体を撮影しました。次回からは贅沢を言わずに一日一天体にしてじっくり撮っていきたいです。

 

誘ってくださった顧問先生、そしてお疲れの中運転してくださった顧問先生ありがとうございました。これで心置きなく1ヶ月半のインターンに行くことができます 笑

 

 

久しぶりの星空でした。

事の起こり

ほとんど成果が得られなかった天文部の夏合宿から1ヶ月弱。宮城県は、まったく晴れません。あれから星どころか月すら見ていません。そうして9月下旬の新月をむかえてしまいました。今日も朝から雨が降り、雲が垂れています。10月に入れば授業がはじまり、みんな忙しくなってしまうでしょう。

「最近なんも活動してないよなぁ、困ったことである。」

私は悩んでおりました。しかし、おなじみGPV天気予報をみると、

「明日の夜,沿岸部の北の方は雲が切れそう感あり」

と予報していました。最後のチャンスかもしれません。さっそく部員達にメールを打ちました。

「明日の夜、観測どう?」
「・・・。」

だれからも反応がありません。そこで1ヶ月前に入部したやる気マンマンの新入部員「阿部」を誘ってみました。

「あしたっすか?バイトあるんすけど」
「安い時給で使われてるんだろう?ドタキャンしたらよい。」
「はあ、それもそうっすね。うひひひ」
「うけけけ」

ということで、ふたりだけで観測に行く事になりました。

この雲はインドまで続いている

阿部も最近の天気に嫌気がさしているようで、今日ばかりはあまりやる気が有りません

「この雲、インドまで続いてるらしいですよ。今夜にひろがっている雲は、一ヶ月前にインドの空を覆っていたんですよ。」

なんて、出鱈目を言っています。どうせ晴れないと思っていたようで、サンダルに作業着姿で現れました。サンダルの男にNJP赤道儀を扱わせるのは危ないので、ほかの人手が欲しい所です。ちょうどコモンの研究室の学生「横山」が暇そうにしていたので、声をかけました。

「星ですか?行きたいです!」

となりで話を聞いていた、別の学生「鈴木」と「工藤」が

「あ、俺も行きたいです・・・」
「ぼくもいいですか」
「いいよいいよ、一緒にいこうではないか。諸君」

と、急ににぎやかになりました。なぜ彼らはついてきたのか?私の想像でちょっと説明すると、上記の「横山」「鈴木」「工藤」は卒業まであと半年をのこすあまり。来年度の進路も決まって「いままで俺はこの学校で4年半、何をしてきたのか・・・」と卒業研究も進捗が悪く、いろいろと考えるようになってしまい、星空でも見上げたいクサクサした気分だったのでしょう。

GPV予報がよい方にハズレた。

やたら前置が長くなってしまいましたが、GPV予報によると、三陸の方へいけば、夜中に2時間くらいは晴れそうです、といっていました。そこで、雄勝町の神割崎キャンプ場の駐車場を観測地に選びました。名取からはくるまで2時間弱ですGoogle マップ

夜の11時を過ぎると、雲が急に晴れて満天の星空に恵まれました。今回は「阿部」がε200でM31、M33、M27などを撮影しました(近日アップ予定)。明け方頃、オリオン座が上がってきたので、コモンはその周辺を撮影しました。

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2016年9月29日1:20 オリオン座周辺 宮城県雄勝
canonEOS40D 赤外改造 Zeiss Apo sonner 135mm F2.0->2.5 on SkyMemoR
ISO1600 90sec x 24枚,DF x 8枚, Flat flame処理なし
astronomik CLS CCDフィルター使用

ちょっと構図がアレですが、なかなか撮れたような気がする。今回の撮影場所は、リアス式海岸の一角で、東の海側が良い景色でした。

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東の海から上ってきたシリウスの明かりが、たまたま静かであった入り江に指して、光の道をつくっていました。月光がこのように反射するのは良く有る光景ですが、恒星でこのような反射をみたのは、初めてでした。

 

そんなで、明け方まで観測しました。機材を撤収して、名取に着いた時はすっかり夜が明け、東の低い空に月齢0.7の月が上っていました。あんなに細い月を見たのも初めてのでした(疲れ果てていて、写真はとりませんでした。)。「横山」「鈴木」「工藤」を天文部にさそってみたところ、

「いや、それはちょっと・・」

という返答でした。ガク。

2016夏の合宿報告

現在の天文部が、ちょっとした休眠期間の後に活動を復活し、このブログを書き始めたのは4年前。当時、1年生であった新入部員のざわなかは4年生になり(i.e. 留年していない)いまでは部長を務めています。ことしも、「第四回:夏合宿」を行いました。

ちょっと振り返ってみますと:

  • 2013年 第一回(@蔵王ハートランド牧場、二泊):二日とも晴れ
  • 2014年 第二回(@花山青少年自然の家、二泊):二日とも晴れ
  • 2015年 第三回(@栗駒山、一泊):数時間の晴れ間

とこれまでかなりの晴天率を誇ってきました。今年は、宮城・福島・山形の県境ちかく、七ヶ宿スキー場きららの森を観測場所に選びました。結果的には、ずーっと曇り空で全く成果が得られませんでしたが、とりあえず報告いたします。

9月5日(月)

九州あたりに動きの遅い台風がわだかまっっているらしく、9月というのに、夏の盛りのような湿った南風が吹く日でした。空は晴れているものの、雲が多い。GPV予報は絶望的な感じ。それでも忘れ物がないか入念にちぇっくして、機材をハイエースに詰め込みました。

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二泊三日、8人分の荷物と合わせるとトランクはギュウギュウで望遠鏡MT200を安定的に置けるスペースがない。仕方がないので、中村&田中の膝の上に置いてもらうことにしました:

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この筒は14.5KGあり、まるで江戸時代の拷問「石抱」です。しかし二人はMなのか、満面の笑顔。この体勢のまま1時間半頑張ってもらいます。おかげで光軸がずれる心配もありません。一路、七ヶ宿へ・・

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一般的には「晴れ」といえる天気。天体観測としては嫌な感じの巻雲が広がっています。前方の山の方向が今回の観測地。

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今回、8名で宿泊するコテージ。立派でしかも旅館などに比べれば格安です。ただしもちろん自炊。曇っているので焼肉パーチィです。夕刻には、軽く雷雨がありました。雷の写真をゲットしました。

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そしてバーベキュウ。


タイムラプスのテスト

そんな感じで、初日の夜は更けていくのでした・・・。つづく!

9月6日

二日目、昼間は近くの蕎麦屋で蕎麦を食べたり、買い出しをしたりして過ごしました。怪しい雲行きの中、駐車場に望遠鏡をセットします

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偏光フィルタを使うと、青空が印象的に写りますね。

昼間はよく晴れていたのですが、日没後は曇って話になりませんでした。しかしこの夜、我が天文部が朝日新聞から取材を受けたのです。9月16日づけ宮城県内版の朝刊にその記事が掲載されていますので、謹んで紹介いたします:

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すこしは星の写真も撮ったので、それは後ほど紹介いたします。

 

 



 

 

 

 

仙台市天文台にて観測をしました。

仙台市天文台には口径が1.3mの「ひとみ望遠鏡」があります。ふつうは観望会などで、覗かせてもらえるだけの望遠鏡ですが、ちゃんとした観測提案書を提出して採択されると、使わせてもらえます。

今回、東北学院大の先生方と協力して「撮像観測による惑星状星雲の系統的探索」なるタイトルの提案書を提出し、採択されました。目的としては、M57,M27,M97NGC7293...といった夏の時期に観測できる惑星状星雲を片っ端からひとみ望遠鏡で撮影し、中心の白色矮星のスペクトルを測定して分類するといった内容です。

10日と11日の二日間望遠鏡を使わせていただきました。

30mm*60mmのとても大きいCCDチップが液体窒素で−80度ちかくまで冷やされて、1.3mの望遠鏡に据え付けられています。こんかいはそれを使って撮影しました。アマチュアからすれば信じられないような環境です。今回の観測は「きれいな写真を撮る」ことが目的ではないので、得られた像がどうなのかわかりませんが、近いうちにここで紹介します。

観測の様子はこちらです。

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