天文はかせ幕下

2017年1月20日 HIP67553と月の接食

数年前、月によるアルデバラン食を観測して以来、すっかり掩蔽観測から遠ざかっていました。しかしいろいろと準備はしてきていました。我々はこれから今夜、HIP67533の接食*1を観測しにいってきます。

今回、接食が観測できるのは宮城県相馬市と新潟県村山市を結んだ線分上の付近。隠される星は7.3等級です。

相馬充さんのホームページのデータ「接食予報」を参考しにて、観測地点を次のように決定しました。めざすは3D3R*2です。

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観測地点は、地図直線上のそこらの道ばたなどです。接食観測で難しいのは、そういったところで0.1秒精度の正確な時刻をいかにして得て、それを観測データ(映像など)に反映させるかです。今回、実は新機材による秘策があります。上手く観測ができたら、天文ガイドに紹介記事を投稿しようかなと思ってます。晴れてクレー

報告

晴れました。 今回はε200と以前ヤフオクで落としたまんま眠っていたvixenの屈折望遠鏡(F14)をつかって上の地図の2箇所で動画撮影をしました。結果的にvixen班の方は像が暗すぎて何にも映りませんでした。しかし、ε200はさすがF4だけあってしっかり目的の星を映し出してくれました。掩蔽は2回観測できました。いわゆる2D2Rですね。

撮影場所:北緯37°49’20” 東経140°58’1” 標高2m
掩蔽1: 3h14m48.3s->14m56.0s
掩蔽2: 3h15m46.5s->15m48.8s


2017年1月20日(3:14ころ)HIP67553の接食

2017年1月20日 3:14~3:16 
canonEOSKissX7i ISO6400 24fps シャッタースピード1/24秒
タカハシε200 on NJP赤道儀 ノータッチガイド

反省点:

  • 掩蔽観測でも赤道儀は必須。ちゃんと追尾すれば、掩蔽される星が止まって、月だけが動くわかりやすい映像が得られるので。
  • 7等くらいの星を動画で撮影する場合、ISOを目一杯あげてもある程度明るい鏡筒かレンズが必要。
  • 動画の仕組みを理解しておくこと。カメラによっては60fps/30fpsとスピードを選べるが、当然前者の方が暗くなる。理解していなかった・・・ 

*1:接食:地球から見て、恒星が月の縁のすれすれをかすめる現象のことを言います。接食では、月の山々によって、恒星が現れたり消えたりを数回くり返す様子を見る事が出来ます。その正確な時刻を観測地点のデータが得られれば、月の正確な地形がわかります。

*2:星が3回消えて、3回現れること

M106

あけましておめでとうございます。

余暇や健康、天候などに恵まれず、なかなか観測ができなくて更新も久しぶりになってしまいました。最近は行きたい鬱憤が溜まって、恥ずかしながら観測に行く夢を見たりしておりました。夢の中では、現地に着いたらすでに夜が明けていたりとか、カメラを忘れていたりとかして結局何もできないものです。

ところで、年末にアベ氏を連れてはやま湖に行ってきました。行きがけにパソコンを忘れて二往復したりしましたが、夢とは違って無事撮影ができましたのでアップいたします。

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2016年12月31日 3:18~4:16 M106
canonEOS60Da センサー温度8℃
タカハシMT-200 on NJP赤道儀 ノータッチガイド コレクターなしF6
ISO3200 240sec x 15、
DeepSkyStackerで加算後、GIMPで彩度とトーンカーブ、カラーバランス調整。

今年の目標は、オードガイドを取り入れることです。しかしその前にNJPのノータッチで何分まで露光を伸ばせるか色々と挑戦中で、今回の240secは最長記録となりました。M106は、数年前に超新星を撮影して以来の撮影となりました。

ひとりで、はやま湖

酔狂という言葉がありますが、酔狂に生きるのは楽しいものです。

ここ数日、一気に冷え込んできました。平日だろうと構わず、晴れるとなれば望遠鏡を車に積んで夜中に黙々と出かけていく。氷点下の山奥の闇の中で、1人で独り言を言いながら写真を撮影し続けるなんてのは、酔狂としか言いようが有りません。

またはやま湖に言ってきました。前回だめだったNGC981とM81を撮影しました。

f:id:snct-astro:20161128184814j:plain(さらに以前の写真)

f:id:snct-astro:20161130131005j:plain(以前の写真)

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2016年11月24日 25:13~26:00 M81(再度、差し替えました)
canonEOS60Da センサー温度10℃
タカハシMT-200 on NJP赤道儀 ノータッチガイド コレクターなしF6
ISO1600 210sec x 10 =35min、光害カットフィルタ不使用
CCDStack2でダークフラット減算、平均でコンポジット、GIMPで彩度とトーンカーブ調整。

 

f:id:snct-astro:20161128184819j:plain(以前の写真)

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2016年11月24日 23:00~24:25 NGC981(差し替えました)

canonEOS60Da canonEOS60Da センサー温度11℃
タカハシMT-200 on NJP赤道儀 ノータッチガイド コレクターなしF6
ISO1600 210sec x 16 =56min、光害カットフィルタ不使用
CCDStack2でダークフラット減算、平均でコンポジット、GIMPで彩度とトーンカーブ調整。

これまで、MT-200にコレクターレンズをつけて使用してきましたが、そのときの焦点距離は1200mmだと思い込んでいました。じつはコレクターをつけるとF8で1600mm、APS-C換算で2400mmなのだそうです。ノータッチガイドの撮影なので、2400mmはすこし長すぎると思い、コレクターレンズを外して撮影しました。これでF6です。像もすこしシャープになったような気がします。

NJP赤道儀の極軸は、poleMasterでかなり追い込んでいますが、撮影した写真を見ると、赤経方向に星が流れているようです。風の影響なのか鏡筒のたわみなのか、歯車の傷なのか。原因を調べている所です。

天文年鑑

11月18日は、「天文年鑑」の発売日です。来年の天文年鑑を手して「年の瀬だなあ」と感ずるのが正しい天文部員というものです。

天文年鑑 2017年版

天文年鑑 2017年版

 

 

NJP赤道儀を回転させる改造

下の写真は、NJP赤道儀を載せているピラー脚の頭の部分です。この上に専用のアタッチメントを取り付けて、赤道儀本体をボルトでガッチリ固定しています。この「ガッチリ固定」に実は問題があります。

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というのも遠征先では、方位磁石を使って北の方向に向けて赤道儀を設置します。望遠鏡やウエイトを取り付けた後で極軸合わせをしますが、このとき極軸望遠鏡に北極星が入っていないことがよくあります。そうすると、60kgは超えるであろう装置全体を「えいや」と持ち上げて方向を微調整しなければなりません。これは非常に筋トレであり、また危険でもあります。赤道儀が回転すればいいのに・・・と前々からおもっておりました。

天文部員が集まった今日、顧問は上記のことを懸命に部員達に説明し理解してもらった上で、赤道儀を回転させる改造を行いました。

作業としては、上の写真のピラー脚を工場の大型旋盤に設置、溝を掘って横ネジでアタッチメントを固定する方式に変えるだけの簡単なものです。

こんな風に、溝をつけました。

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こんな風に、くるくると赤道儀が回転するようになりました。横ネジを閉めればこれまで通り、ガッチリと固定されます。これで、次回の遠征は大分楽になります。

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一人ではやま湖

いくつかテストしたいことがあって、金曜日に1人で「はやま湖」に行ってきました。

テストというのは、まず自家用車(プリウス)にNJP赤道儀とピラー脚、MT−200を積めるかどうか? またそれを独力で展開し、撤収するとなるとどのくらい疲れるかを試すことです。

プリウスへの機材の積み込みで問題になるのはピラー脚で、もし積めないようならNJP用の三脚を新たに調達する必要がありました。試してみたところ、横に寝かせれば分解しなくても大丈夫でした。それで、「積み込みは可能」であるとわかりました。しかし、翌日は激しく筋肉痛になり、体力の消耗はかなりきついものでした。

18時に名取を出発、途中で食事をとって、はやま湖に到着したのが8時半。機材を展開するのに30分かかって、21時から撮影を開始しました。対象はNGC981。

しばらくして、同じ目的ではやま湖を訪ねてきた方がありました。Yさんは、なんとこのブログをみてはやま湖にきてくれたそうです。GP赤道儀にオートガイドをつけて、borgの望遠鏡とEOS6DでM45を撮影していました。いろいろと教わりました。

この日はしばらくして曇り空。私も3枚ほどライトフレームを撮影した時点で、あえなく撤収となりました。ざんねん。

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2016年11月4日 22:00ころ NGC981
canonEOS60Da タカハシMT-200 on NJP赤道儀 ノータッチガイド 中心部トリミング
ISO3200 210sec x 3、光害カットフィルタ不使用
CCDStack2でダーク補正&コンポジット、フラット補正後なし、EOS Digital Photo Professionalでノイズ除去

おもったより暗い銀河でした。ほんとうはNGC7331を撮影するつもりだったのですが、対象を勘違いしてました。

 

 

 

 

新しい画像処理の方法

マニアックな話題になりますが、天体写真の画像処理の方法を模索しています。今まではもっぱらDeepSkyStacker(以下DSS)を使っていました。無償なので。これはかなり優秀なソフトウェアなのですが、もうすこし別の方法も探ってみようと。

ネットでいろいろな方のブログを見ていると、よく使われているのはステライメージ7、Pixinsight、CCDStack2、photoshopなどで。それらすべて組み合わせてかなり複雑な処理フローを確立しているひともいるようです。これらは有償ソフトなので、そろえるとなると大分お金がかかります。

しかし、すこしはお金を使う事も必要です。熟慮の結果「CCDStack2」を購入しました。それで前回のM33を再処理しました。

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ちなみに、以前DSSで処理したのが下の写真です:

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上の画像では、DSSを使った方が処理で無理をしすぎていて、CCDStack2をつかったから良くなったという事もないのですが、両者は大分印象が違った感じになっています。

ここまでくるのに少し苦労したので、処理のフローを記録しておきます

処理フロー
  1. CCDStack2:マスターダークとマスターフラットを作製
  2. CCDStack2:ベイヤー画像からダーク・フラット減算
  3. CCDStack2:ベイヤー画像をLRGB分解*1
  4. CCDStack2:星を15個ほど手動で指定して、アライメント。*2
  5. CCDStack2:LRGBそれぞれをコンポジット
  6. CCDStack2:LRGB合成。R:G:B=1:1:1にすることを忘れずに。バックグラウンドがグレーになるように色を調整。
  7. CCDStack2:32bitのfitファイルで出力。Tiff 16bit Scaledで保存。
  8. マカリ:上のfitファイルを読み込み、GIMPで処理できるように8ビットのtiffに出力
  9. GIMPTiff 16bit Scaledを読み込み。8bitに落ちてカラー情報が失われるけど我慢。
  10. 彩度を上げる。レベル調整、トーンカーブ調整。
  11. GIMPtiffで出力
  12. canon digital photo professionalで読み込んで、ノイズ処理。カラーノイズと輝度ノイズを除去してJPGに出力。おわり

まだまだ改善の余地がたくさんありそうですが、CCDStack2以外は、無償ソフトを使っているのがポイントです。いまのところ、DSSを使う処理の方が圧倒的に楽です。

*1:逆でもいいかも知れない、つまりLRGB分解したあとダーク・フラット減算しても結果はかわるか?

*2:アライメントはLRGB分解のあとで行なう。先にやってしまうとおそらくベイヤー配列がくずれて(?)いろがつぶれる