天文はかせ幕下

月末の皆既月食(お知らせ)

今月末に、皆既月食があります。天文部では、学校の屋上を利用して観測会を行いますので、部員の皆さんはよろしくご協力をお願いしまふ。

また顧問のながひろは1月25日、名取市内のFM局「エフエムなとり」内の番組「なとらじWIDE」にゲスト出演し、天文部の活動や今回の月食現象などについて、したり顔してお話ししてきます。なんと生放送だそうです。緊張しちゃう。

カモメ星雲など

寒波到来の新月期の週末、GPV気象予報が「金曜の夜は晴れるよ」と言っていました。休日前ですし、低学年の部員たちもつれて観測にでもいこうかな、と顧問は考えておりました。そこでめぼしい部員たちにメールを打ったところ、

「今夜はバイトがあるので・・」
「明日は朝はやくから用事があるので・・」

などというような返事しか返って来ません。なんと、暇なスズリョウまでもが金曜の夜に用事が入っているらしく、アベも「風邪をひいた」とか直接関係ないことを述べて誘いに乗って来ません。顧問は、またもや自分の暇さが身にしみて来ました。

「全員しにやがれ腐れ野郎どもが」

とメールを一斉送信しようとおもいましたが、それもなんだか角が立つのでやめにして、一人で機材をハイエースに積み込みました

1月の観測

毎度ワンパターンの枕ですんません。今回は歯医者に行っていて、後から合流したナカムラと二人で出かけて来ました。かれは魚眼で「冬のダイヤモンド」あたりを撮影していましたので、近いうちに報告がなされると思います。顧問は、シリウスの近くに見えるカモメ星雲を撮影しました

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2018/1/12  カモメ星雲(IC2177)
カメラ:Canon EOS60Da
レンズ:Nikkor 300mm f2.8 ED(->F4)
露光:ISO1600 360sec x 28
架台:NJP赤道儀 PHD2でオートガイド
画像処理:DSSでフラット・ダーク・スタック処理。PhotoShopで強調&ノイズ処理

天気が安定していてシーイングも比較的よく、−4度くらいまで冷え込んだにもかかわらず空気が極度に乾燥していて結露なし。オートガイドも完璧。ノートラブルでストレスなく撮影ができました。撮影の合間にゆったりコーヒーを飲んだりカップラーメンを食べたりしましたよ。みんなくればよかったのにねー。

技術的なメモ

今回の撮影では、赤道儀に分厚いアルミプレートを固定して、その上に二つのカメラを乗せて撮影していたのですが、片方のカメラのガイドは100%完璧で、もう片方のカメラは流れるという不思議なことがおこりました。流れた方のカメラは、VELBONの見た目はかなり強固な自由雲台に載せており、もう片方はアリガタ&アリミゾを介してレンズを直接プレートに固定しています。なのでガイドエラーの原因は自由雲台のたわみしかありえなさそうです。改めて天体撮影のシビアさを痛感しました。

それとですね、うえのカモメ星雲はなんとか仕上がりましたが、使用したNikonF2.8 300mmはだいぶん古い設計のレンズで、その青ハロの強さに限界を感じています。F5.6までさらに絞るか。BORGのEDレンズがほしい。

 

 

2018年の目標など

このブログの左カラム「月別もくじ」を見てみますと、各年の記事の数を見ることができます。2017年の更新回数は55で、これまでの最高記録でした。目標としていたオートガイドも導入して、ブログタイトルも「入門」から「序二段」へ昇格する飛躍の年になりました。「三段目」への昇進基準は冷却CCDカメラの導入です。いつになることやら。

2018年は、1月27日に起こるアルデバランの接蝕の観測を皮切りに元気に活動してまいりたい所存です*1

バラ星雲の周辺の画像処理

年末の休暇。自宅でゆっくりとphotoShopに取り組む時間もすこしあって、先月の20日に撮影していた画像を処理しました。70mmのマクロレンズで撮影したバラ星雲からコーン星雲の周辺です。

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2017/12/20  バラ星雲付近
カメラ:Canon EOS60Da
レンズ:SigmaMacro, 70mm EX DG(->F4)
露光:ISO3200 180sec x 15
SkyMemoRノータッチガイド
画像処理:DSSでフラット・ダーク・スタック処理。PhotoShopで強調&ノイズ処理

今回は70mmの「カミソリマクロ」が良い仕事をしてくれました。このレンズとスカイメモとの組み合わせで、もっと色々な対象を撮影できそうです。

あと、この領域は非っっっjo常に星が多い所です。これまで何回も撮影して来ましたが、単純にトーンカーブを持ち上げる画像処理を行うと、星がでしゃばってガチャガチャになってしまい、まともな写真になりません。そこで、ネット上で「ぴんたん」と名乗っている方の手法を参考にして、以下のように処理しました。

  1. 光星をのがざないように星マスクを作製
  2. 星マスクを使って星に処理がかからないようにして、ごく弱めにレベル補正でコントラスト強調。星の周りに輝度が落ち込んだリングができないように弱めに。

  3. 星マスクを使って星を選択した状態で「領域範囲->選択範囲を変更->拡張」を選んで1pxほど選択範囲を拡張してから、「フィルター->その他->明るさの最小値」で星を消す。赤い星雲周辺の星の痕跡をスポット修復ツールでぽちぽちと丹念に消す。明るい星は「明るさの最小値」で消しきれないので、これもスポット修復ツールで丹念に消す。

  4. 出来上がった星消し画像を元に、星雲だけを選択するマスクを作っておく。
  5. 星消し画像と元画像を不透明度を調整して重ねる。こうすると星が暗く写った画像を作る(「ぴんたん」による*2)。
  6. 星が暗くなった画像にたいして、トーンカーブなどを用いてコントラストを強調
  7. あとは星雲を選択するマスクをつかって、赤を強調したり、全体の色カブリを補正したりして、最後にcameraRawフィルターをつかって処理して完成。

とにかく画像処理では、星を小さくすることに全力投球です。「星が小さいのがそんなに嬉しいんですか?」という1年生部員ハタナカの声が聞こえて来そうですが、本当にそのとおりかもしれません。少なくとも顧問は、Photoshopに向かっていると「これは一体なんの作業なのか?」と疑問が頭をもたげてきます。 

高画質版もあげておきます: 

bara _dss_ps

 

*1:が、よく考えたらその日顧問は出張でした。一年生たちに「観測にいきますよ」とアナウンスしていただけに謝らなければなりません。そのかわり、別日の遠征を計画しましょう。

*2:なんか呼び捨てですが、ネット上のハンドルネームに~~さんをつける呼び方にどうしても違和感があり、こう書いてます。

ぎょしゃ座、IC405

まえおき

20日の撮影では、これまでうまく働いていたオートガイドが突然不調に陥りました。顧問はその原因が気になり、夜も寝られない日々が続いていました。

先日の23日、イブイブの夜。子供が寝た後

「おじさんはちょっと出かけてくるからね」

と言い残して家を出ました。学校の屋上でオートガイドのチェックをしようと思ったのです。ガイドがうまくいけば、東京地方の方達がやっている低ISO長時間露光も試してみようという魂胆です。

それで夜の学校にやってきた顧問ですが、愕然としました。夜はエレベータが止まっているのを忘れていたのです。総重量で80kg近くの機材を屋上まで運び上げなければならないというのに、階段を使わなければなりません。屋上までの高度差は約10m。自分の体重も含めれば位置エネルギーにしてmgh=140kg*9.8m/s^2*10m、およそ14000ジュールの仕事をなすことになります。それだったら、そのまま水平移動してはやま湖までいったほうが楽なのでは?と愚考しました。

ひとりではやま湖

23日の夜。ほんらいであればいつも暇なスズリョウを誘うところでしたが、彼は県北へ帰省していました。アベは誘えば来たかもしれませんが、蕎麦屋でバイトをしているかもしれず、「ちょっと忙しいんで」なんて断られると、自分の暇さが身に沁みてムカつくので、今回は見送りました。

当日のはやま湖は快晴で、天頂付近のぎょしゃ座の散光星雲IC405の撮影を始めました。ISO1600の8分露光で赤経方向に星が流れます。ほんのわずかで気にならない程度ですが、これまでのオートガイドの精度から比べると、だいぶん劣る様子です。いろいろ調整していたら、そらが曇ってしまいました。しかしなんとか作品に仕上げました。

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2017/12/23  ぎょしゃ座中心部、IC405勾玉星雲付近
カメラ:Canon EOS60Da
レンズ:Nikkor 300mm F2.8(->F4)
露光:ISO1600 480sec x 7
MJP赤道儀、PHD2ガイディング

画像処理:
DSSでフラット・ダーク・スタック処理。PhotoShopで強調&ノイズ処理

480秒とこれまでで最長の露光を行いましたが、いかんせん星が大きくて、処理に苦労しました。星雲の中の星の周りが変になってしまっています。いっぽう中心付近の明るい星の色がよく出たのは良かったかもしれません。背景を暗くしすぎたように思います。

追記:再処理

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オートガイドの不調

顧問でございます。

ここ数年の間、このブログはもっぱら私が更新しておりました。ようやく学生たちもそれぞれの撮影技術を得て、記事を更新してくれるようになりました。しかしその主力メンバーのナカムラ・タナカ、阿部にスズリョウは、次の3月で卒業し、それぞれ旅立っていきます。でもまあ、それは仕方のないことであります。

オートガイドの不調

さておき、20日の撮影では、オートガイドが途中から機能しなくなりました。備忘録として、当夜の具体的な症状を時系列にまとめておきます:

  • 天頂付近のM45を撮影開始。300mmの焦点距離で7分露光をしても点に写っていた
  • カメラレンズが西へ傾くにつれて、星が赤緯方向に流れ始める。
  • PHD2のキャリブレーションをやり直すと、”Star does not move enough”とエラーがでて数回失敗(確かnorth stepでそれが起こったような不確かな記憶)。
  • いろいろいじくってからキャリブレーションをやり直すと、とつぜん成功する。
  • しかし、星は赤緯方向にドリフト。

23日、顧問はひとりではやま湖に趣き、オートガイドの点検も兼ねて300mmの8分露光で撮影をしました。すると今度は、赤経方向のわずかな流れがおこりました。様々な状況を勘案して、推測した原因を列記します。

  1. NJP赤道儀には、赤緯赤経モータからのトルクを一時的に逃して微動ハンドルを有効にするためのクラッチがある。そのクラッチを緩めたり締めたりを繰り返すことで、ギアを回転軸に固定しているイモネジが緩むことがある。20日の撮影では赤緯のイモネジが、23日の撮影では赤経のイモネジが緩んでいたのかもしれない。あるいはクラッチそのものが緩んでいた可能性もあり。いずれの場合においても、モーターからの回転がウォームギアに伝わらなくなる。
  2. オートガイダーのケーブルを、ほかのUSBケーブルやモーターのケーブルと一緒くたにして束ねていたため、ケーブルの重量がオートガイダーにのし掛かっていたかもしれない。バカである。
  3. ニコンの300mmレンズのとりつけバランスが悪かったかもしれない。

一番濃厚な原因は、上の1.です。当日、グングンと低下した気温も、クラッチの緩みを誘発した可能性があります。次回の撮影では、以上のすべて改善・チェックして臨みます。気をつけましょう。

 

レイアウトを変えちゃった

どうも。バイトで「聖なる夜くらいゆっくり休みたいですよ。」と言ったら、何故か気持ち悪がられたアベです。

今日はクリスマスイブです。関係ないですね。

 

この天文部のブログはトップページの表示形式にいささか問題アリと以前から思っておりました。

それはトップページであるにも関わらず、投稿した記事が最初から最後まで表示されていることです。

トップページがだらだらと長いのは見ていて気持ちいいものではありません。

また、記事を遡るのも面倒になるでしょう。

 

ということで、トップページの記事が一覧表示されるように無断で改造しました。

これで少し見やすくなったと思います。

ダメだったら言ってください。直します。

 

元に戻っていたら、察してください。

メリークリスマス。

 

雲から逃げて

どうもアベです。すずりょう、顧問も報告していた通り、12月20日に観測に行ってきました。

私は先日狙ったプレアデス星団に狙いを定め撮影しましたので報告します。

 

前日譚

――――― 今夜行きませんか。

顧問から、突然のお誘いです。いつもそうです。快晴の空を狙わなければならないので仕方ないでしょう。常に自然との闘いなのだ!

しかし今日は天気が悪い。

――――― 今日はダメそうですね。やめましょうか。

顧問も諦めたようで何回かのやり取りの後に中止のメールが届きます。

――――― いやあ、残念ですね。

なんて返信を送ろうとした刹那、間髪入れずに再びメールが届きます。

 

――――― でも最近予報外れることあるし、ダメ元で行って見ますか。

 

げ、これは悪い予感がする。顧問はこういった運は誰よりも悪い。そして私は雲男です。

はやま湖についてみると、晴れています。

しかし、撮影の準備にもたついているうちにあっという間に曇り空に……

ということで、この日は全くの坊主に終わってしまいます。

まったく、高速道路に乗る前に

「ラーメン食べて帰るだけになったら悲惨だな、アハハハハハ」

なんて言って、伏線を張ったのがいけなかったのでしょうか。

それとも私が雲男故でしょうか。これは天文部破門も秒読みです。

日を改めて。

失敗に終わった4日後、再び晴れのチャンスが到来します。

ところがはやま湖には雲のかかる可能性が大です。

 南下すればチャンスはありそう、顧問の事前のリサーチにより観測地が福島県常磐富岡IC付近に決定されます。

道中、いつものサービスエリアに寄り夕食を取ります。

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サービスエリアでSCW(局地予報)を確認する顧問。
さながらスターバックスにいるようです。

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SCWを見て絶望する顧問。みたか雲男の力を!

サービスエリアでSCWを見ると予報が悪化しています。顧問はこれを見てうなだれています。しかし諦める訳にはいきません。ここで引き返しては顧問が浮かばれません。

我々は引き返して温泉に入れないか、横で呑気に健康ランドを探します。諦めモード半分です。

 

まだ望みは完全に断たれたわけではありません。曇に逃れるために更に南下を続けます。まずは第一候補、常磐富岡IC付近の空き地を目指します。

が、空き地は悲しくもメガソーラーになっております。

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ということで急遽更に山に入り込み第二候補へと向かいます。

そしてようやく。

 色々とありましたが、第二候補は最高の立地にありました。

そして前回失敗に終わったプレアデス星団を再び狙います。

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プレアデス星団, Canon EOS70D
F4.0, ISO800, Light : 420 sec ×9枚=63 min
Dark : 9枚
Flat : 11枚
DarkFlat : 11枚
DSSにてコンポジット処理>GIMPにてレベル補正, カラーバランス補正, コントラスト・輝度補正

 GIMPにしては、画像処理が結構うまく行ったのではないのでしょうか。DPPでのノイズ軽減処理は行っておりません。ていうか、あまりノイズが気になりませんね。

 

ざっくりとした画像処理方法

今回、Pleiades星団の画像処理をしたのですが、最近GIMPでの画像処理方法がある程度定まってきたように思えます。画像処理方法としては以下に記しておこうと思う次第です。

まず、DSSにてコンポジット処理を行います。この辺については顧問がDSSのコンポジット処理法について軽く触れている記事があったかと思います。

出力されたTif画像はGIMP2.9にて処理します。

軽くレベル補正を行った後にトーンカーブを用いて全力で画像を引き上げます。こうすることで、通常の処理では姿を現さない分子雲の影が浮かび上がります。

これら分子雲を画像が崩壊しないように注意しながら強調するのがゴール地点でしょう。鍛錬が足りないのでしょう、全てを美しく強調することはできませんでした。

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画像処理においてはまず初めにレベル補正にて星雲、分子雲をある程度強調します。或る程度です。やり過ぎると星像が大きくなりすぎて精神衛生上よろしくありません。

星像の大きさは高輝度側のスライダーを弄ることで大きく変化します。ですので高輝度側はあまり下げない方がいいようです。他の2つはさほど影響ないので思う存分調整します。

その後はカラーバランスを調整し、色相、彩度、輝度、明るさ、コントラストを調整し、最も強調がうまく行くような処理経路を探します。

彩度>輝度>コントラスト の時もあれば、

彩度>コントラスト>輝度 の時もあり、その辺の処理経路は撮影毎にまちまちな気がします。もっとも、正確に処理の過程を記録していないので曖昧ですが。

この辺の処理が終わったら再びレベル補正を行います。このとき調整画面の中段にある出力のところを調整するといいようです。

その後、トーンカーブで更に調整を加えます。画像をクリックすると、その箇所に対応した輝度(x軸)が表示されます。これを参考に強調します。

今回は、周辺減光による影響を少しでも抑制するために、周辺減光部のスペクトルを探し敢えて強調するような処理をしました。その結果、さほど違和感なく中心部とその周囲の分子雲を強調出来たような気がします。

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また、カラーバランスの調整についてですが、基本的にはシャドウ中間調を弄るといいようです。ハイライトは星像の部分が大半であり、調整しても大きな変化は見られないと思います。

例としては、シャドウの“シアン”、“マゼンタ”、“イエロー”をそれぞれ+10程度

中間調はそれぞれ-10にするといい感じになったような気がします。

ただ、この値はあくまで参考です。しかし、値を変更する際は基本的には“シアン”、“マゼンタ”、“イエロー”それぞれを同じ量だけ変更しないとカラーバランスがおかしくなります。基本的には同じ量だけ変更してから、カラーバランスの微調整の為に少し値をずらしてみるといいでしょう。

 

とまあ、私が現在GIMPを用いて画像処理をする際のセオリーがこんな感じとなっております。以上、参考までに。

もし、こうした方がいいよというのがあれば教えてください。

最後に

今回の撮影をもって、今年の撮影は終わりです。いわゆる撮り納めです。

今年も沢山観測に行けて幸せであります。

合宿や観測で、毎度毎度眠い中、車を出してくださった顧問。ありがとうございます。

来年もよろしくお願いします!!!

お願いします!(大事なので2回言います。)