天文はかせ幕下

気流とシーイングの関係

先日のエントリーで、windytyをみて「すごく気流が良さそうだ」と予想していました。その日の夜は、まるでフィリピンあたりの空のように上空10000mくらいまで風が穏やか予想だったのですが、いざ木星の撮影をしてみると、まったくシーイングが良いなんてことはありませんでした。

 

よく考えてみれば、シーイングが上空の風速だけで決まるなんてことはないはずで、ほかにも地表と温度差が効いてくるはずです。そういえば当日は、寒気が北のほうにあって少し不安定だったような・・・

今夜は期待できそうです?

5月の不安定な天気がひと段落したのか、好天が続いています。学校に居残って、木星の撮影をします。

21日の今夜、宮城県の上空は、稀に見る良シーイングになりそうです。windityを見て見ましょう:

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21日、上空1500m

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21日、上空3000m

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21日、上空6000m

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21日、上空10000m

シンチレーションに最も聞くのは、3000m付近の気流だと言われています。典型的な状態では、そこの気流はだいたい黄色か赤表示。今夜のように青表示なのは、私は見たことがありません。10000mだとほとんど紫ですが、そこもなんと緑表示!

 

肝心の天気は・・・

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orz...しかし、雲の切れ目を狙って、撮影しますよ。

 

 

火星接近への準備など

週末の本日、新入部員たち近くのスキー場の駐車場へ連れて行って観測会をしたいなと思っていたのですが、悪天候のために中止になりました。次の週末はもう月が大きいし、次の新月期はそろそろ梅雨入りですし、なかなか難しいですね。

火星大接近の観測準備

さて、7月には火星の大接近もあるので、ちょっとづつ準備を進めています。今年度の部費を無計画にも全てつぎ込み、ZWOのモノクロCMOSカメラを買いました*1

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これを学校の屋上にあるMeadeのシュミカセに取り付けて、撮影をしようというわけです。そのために部の道具箱に入っている様々な品を引っ張り出しました。

まずはコレ:

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シュミカセに付属の45°天頂プリズムです。アダプタは2インチのスリーブになっていて、ちょうどZWOのカメラをはめ込むことができます。これまではずっと90°のプリズムを使って来たのでこの45°は、何十年ものあいだ道具箱にしまわれていました。ちょっと汚れていましたが、簡単に分解清掃ができました。

次はこれ:

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フィルターケースです。入っていたkenko製のR1フィルター(49mm)を利用します。モノクロ撮影ですので、赤フィルターでコントラストが上がるのではと期待しています。これもかなり年代物です。当時の天文部は「物理部天文班」だったのですね。ほかには何班があったのでしょうか?  さておき、この49mmのフィルターは、フレームを入れた外径がほぼ2インチなんですよ!ですから・・・

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こんな風にセロハンテープでくっつけて・・・、そのまま2インチスリーブに到着してしまえます*2

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フィルターはセンサーに近い方が、ゴーストを防げると読んだことがありますし、なによりも余計な買い物をしなくてすみました。部費もすでに使い尽くしていますし。

 

 

*1:そのうち太陽のHa撮影とかもやりたいなと思っていて、それでモノクロにしました

*2:正確には、フィルターの外形は2インチよりも0.3mmほどおおきいです。Meadeの2インチスリーブが少し大きめに作られていて、ぴったりハマってくれました

平日に蔵王で撮影

前置き

顧問です。

冒頭から唐突ですが、私が福岡から仙台へ引っ越してきたのは18年前の2000年。東北のことを何も知らず、蔵王のことを「くらおう」、河北新報を「かわきたしんぽう」と読んで、新しい仙台での友人に正されたものでした。

ある夜、逃げ出すように蔵王に星を見に行ったことがありました。安月給の博士研究員になったものの、いろいろ上手くいかず将来が不安だったのでしょう。車の免許を持っていなかった私は、友人のまるまや君(仮名)にレンタカーを運転してもらって、山頂近くの賽の磧(さいのかわら)駐車場まで出かけたのでした。蔵王の星空は予想していたよりも綺麗ではなかったなというのが、当時の感想でした。

蔵王山は、宮城県山形県の県境にあって、標高1300mほどの「賽の磧」へは、名取から車で90分くらいです。宮城県で星を撮影する人たちは、なんだかんだで蔵王に集まるみたいです。東方向は仙台市の明かりでいまいちですが、南には目立った町もなく暗い空が広がっています。

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賽の磧から、東方向を望む(ISO400 F5.6 10s露光)

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賽の磧から南方向を望む(うえの写真と同条件、同処理)

およそ12年ぶりに、賽の磧へ出かけてきました。夜半過ぎに駐車場に着くと、素晴らしく濃い天の川が横たわっていて、まるやま君と出かけたときは、空の状態が悪かったのだろうなと気づきました。

干潟星雲付近を撮影

平日だったので、SKYMemoRでお手軽な撮影です。標高の高さと南の暗さに期待して、南中高度が低いので普段はあまり撮影しない干潟星雲の周辺を撮影しました。

lagoon_HDR_ps2

2018/5/15  干潟星雲(M8)、三裂星雲(M20)
カメラ:Canon 60Da 
レンズ:Apo-Sonner 135mm F2->F2.8
露光:ISO1600 90sec x 22 + 45sec x 6 + 20sec x 6
マウント:SkyMemoRノータッチガイド
画像処理:DSSでフラット・スタック処理。HDR EflexProでHDR合成。PhotoShopでレタッチ。

独り言。

おきまりの構図なのです。あまりの星の多さに処理がべらぼうに難かしく、まだまだ改善の余地があります。干潟星雲の白とびを恐れてHDRをやってみたのですが、90sくらいの露光では、気にする必要はなかったみたいです。狙いに反して、HDRは最近の悩みであった星の色が出ない問題を改善してくれました。星の輝度分布が扁平にならないので、photoshopで色を引き出すことができたみたいです。とはいえ、まだまだ青が弱いように思えます。また、何でもかんでもHDRを施すことは無理があるので、飽和復元合成をできるようになりたいですね(星の位置合わせがネックになっています)。

天の川のこの付近は、高度が低いせいで星が全体的に赤っぽく、強調すると全体が真っ赤っかになってしまうことに悩みました。輝度マスクをつかってトーンカーブのRを下に凹ませる処置が、星の赤かぶりに有効でした。そのあと、チャンネル減算マスクで青を強調したら、三列星雲だけでなく、星の青も引き出せました。そこそこよくできたと思います。

今回、一人の撮影でしたが、元部員阿部を誘えばよかったなと思っています。今度誘います。

ごほんの紹介

顧問です。

連休は満月でしたし、全般的に天気が不安定でしたね。今週末から来週にかけて、2回くらいは観測をしたいと思っています。蔵王も開通したので、標高の高いところから、射手座周辺を撮影してみたいと思っています。

今日は、本の紹介をいたします。

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パロマー山の200インチ望遠鏡の開発史です。望遠鏡を造るための資金集めの苦労とか、鏡磨きの職人が発狂する話とか、いろいろと面白いです。英語の直訳調の文章ですこし読みにくいところがあるものの、その辺はすぐに慣れると思います。

アマゾンのリンクもつけておきますね:

 

パロマーの巨人望遠鏡〈上〉 (岩波文庫)

パロマーの巨人望遠鏡〈上〉 (岩波文庫)

 
パロマーの巨人望遠鏡〈下〉 (岩波文庫 青 942-2)

パロマーの巨人望遠鏡〈下〉 (岩波文庫 青 942-2)

 

 

M106、1年3ヶ月ぶり2回目

4月に入って、新入部員も数人ほど天文部へ入部してきそうです。今月もそろそろ月が大きい時期に入ってきて、観測は難しくなりました。5月の上旬には、白石蔵王スキー場あたりに、部員たちを連れて観望会でもと思っております。

そんな週末、2年生部員のハタナカを連れて、はやま湖へ出かけてきました。顧問の自家用車に機材を積み込んで、19時30分ころ出発。9時まえに到着した頃はまだ月明かりの影響が強かったものの、機材をセッティングしてアライメントなどを終えることには、すっかり月も沈んでしまいました。天頂付近にあったM106銀河を撮影しました。

M106hyb_ps

2018/4/20  M106
カメラ:Canon 60Da 
鏡筒:MT-200 1200mm F6
露光:ISO1600 360sec x 17
マウント:NJP赤道儀 PHD2で自動ガイド
画像処理:DSSでフラット・スタック処理。PhotoShopでレタッチ

6分の露光でヒストグラムのピークは1/4弱ですこし露光不足でした。前回オートガイドで失敗していたので、これ以上露光をのばす勇気がなく、結果的に露光不足でした。480秒くらいまで伸ばしたいですね。

その他独り言:

・相変わらず星の色があまり出ません。対策としてFlatAIdeProの飽和復元合成を試してみたいのですが、長時間露光画像と短時間露光画像の位置合わせが、手元の環境でできません。DSSでやる方法はないものだろうか?

・朝夜の気温差が大きいこの時期、温度変化の影響で撮影中にピントがずれます。バーティマスクの回折パターンが中心線がズレる方向と、ドローチューブの移動方向の関係を覚えておけば、ピントの再調整がしやすいことに気づきました。次回から実践します。

北極星に近い対象を撮影するときは、赤緯のガイドを切っても良い?

画像再処理 

上の画像ですが、全体的に星が暗すぎるようなので、もう少し強調して再処理しました。いくらかマシになったか?

M106_selected_dss

スカイメモRのカメラ取り付け部の改良

まず下の写真のパーツは、ケンコーのスカイメモRのカメラ固定部分です。

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お使いの方は共感してくれるかもしれませんが、以前からカメラを取り外す時に非常に使いづらいなと思っていました。というのも、ローレット加工がしてある部分(ギザギザのところ)の径と幅が小さいせいで、カメラから取り外す時に掴みにくくてネジが回らないのですよね。

それで、本日、時間があっったので改良版を作って見ました:

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単純に持ち手の部分を大きくしただけです。でもこれでつかいやすくなるはず。取り付けた画像も載せておきます。

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どうせだったら、持ち手の幅をもっと太くしてネジとカメラが干渉しないようにすればよかった・・