天文はかせ幕下

California星雲の再々処理

今から一年余り前、部員スズリョウが手動式のレリーズを使って根性で撮影していたCalifornia星雲の写真。下の記事では、それを顧問が画像処理して「なかなかよく写っているではないか」と悦に入っております:

ところがいま見返してみるといまいちです。

それで、3連休に再々処理して見ました。

nebular california

2017年10月25日  NGC1499 カリフォルニア星雲
新改造EOSKISSX5 ISO3200 
Apo Sonner 135mm F2(->F2.8), on スカイメモR ノータッチガイド
露光:80sec x 31 DSSでフラット・ダーク処理、

 

一年前は、Gimpトーンカーブをいじくることしかしていませんでした。それを前処理のRAW現像も含めて、Photoshopで処理し直したわけです。明るい星の青もさることながら、星雲の構造の出方もこんなに変わるのかと驚きます。 

2018秋合宿 その2

初日の様子は、こちらをご高覧ください。

昼間はひまつぶし

さて、秋雨前線は東北地方から南下していき、すっかり秋の空気に入れ替わりました。透明度の高い、綺麗な青空が広がっています。

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昼間は、ゆったりと暇つぶしです。昨年度にスズリョウとアベが卒業してからというもの、まともに写真撮影をしている部員はいなくなってしまったので、昨夜の画像処理談義もできないのは寂しいことです。

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付属の施設でテニスをしたり。

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その様子をぼんやりと眺めて見たり。と、ゆったりした時間を過ごしています。

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プラネタリウム班の6名は納期に追われていて、合宿の間も星空そっちのけで作業をしていました。ドームを覆う遮光シートが完成したと騒いでおりました(シートの中にプラネタ班6名が入っています)

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ほかの部員たちは、ちかくの「空気神社」に参拝し、参道に生えていたタマゴタケをたくさん採取、今夜も炙って食します。コバヤシが考案した塩胡椒バター風味が絶妙に美味しく、あっという間に食べてしまいました。そこらへんに生えているキノコを食べる行為は、人生のちょっとした冒険です。乗り越えてしまえば、なんてことないのです*1

第二夜

夕方から雲が増え始めて、薄明後はすっかりベタ曇り。駐車場で5時間近く空待ちをしました。その間、空気神社の前で記念撮影。小さな写真で紹介します。

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夜半も近づき、GPV予報23:30の更新後もずっと曇り予報。諦めて機材を片付けにかかると、「撤収を始めると晴れるの法則」です。それからおよそ3時間の晴れ間に恵まれたのです。しかし、しばらくして

「もう、ある程度我々も寝ますし・・・」

と言い残して部員たちともう一人の引率教員は、コテージへ帰っていきました。変人の顧問一人が駐車場に残って、撮影を続けたのです。

アンドロメダモザイク、過去最高の出来でした

夏合宿では、ほぼ毎年M31を撮影しています。今回は過去最高のできになったと思います。やったぜ。

M31

日時:2018年9月11日 25:00~27:00
場所:山形県asahi自然観駐車場
鏡筒:タカハシε200
カメラ:Canon EOS 60Da

赤道儀:タカハシNJP
露光:ISO1600, 300sec x 5flames の4枚モザイク
処理:Photoshopでレタッチ、Nik Collectionでディテール強調とノイズ処理

蛇足&コメント:

焦点距離800mmのε200とAPS-Cの60Daで4枚モザイクを行って、処理して見ました。時間の制約から、各フレームはたったの5枚のAverageスタックであるのにも関わらず、非常によく写ってモザイク合成の威力に驚いています。星もすごく小さく写ります。これならD810Aにも負けてないのじゃないかな。

画像処理はいつもより硬調に、NikCollectionやハイパスで暗黒帯を強めに出して見ました。

おまけ:アンドロメダ撮影、これまでの変遷

過去画像を振り返って見ます:

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2014年夏合宿(花山少年自然の家)撮影

 

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2015年撮影(くりこま山荘)


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2017年 部員アベによる初めての直焦点(神割崎)

 

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2017年撮影(はやま湖)

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2017年 スズリョウによる撮影(はやま湖)

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2018年撮影(自然観)

いやー、上達するもんですねえ。 

*****

そうして、また石抱きしてかへりました。また来年!

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*1:タマゴタケは判別しやすく、ベニテングタケと間違えさえしなければ安全なキノコです。

2018秋合宿 その1

9月の新月期。日本列島には秋雨前線がへばり付いていました。こんな天気で合宿なぞやる意味があるのか?学校でプラネタリウム作りをしていた方が良いではないかと、一部の部員は思っていたとかいないとか。今年は過去最大の14名+教員2名*1で、2夜連続の泊まり込み観測会です。

場所は山形県朝日町「ASAHI自然観*2」を選びました。

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光害マップでは「緑」と「青」の境界上に位置していて、東側は朝日町の明かりが迫っています。いっぽう西側は朝日連峰が横たわり全くの無光害。晴れなきゃ意味がないのですけど。

9月10日

出発〜

12時半集合。ハイエースに荷物を積みこみ、出発します。

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これは毎年恒例。輸送中にε200の光軸が狂わないように膝の上に乗せて目的地まで2時間、我慢してもらいます。江戸時代の拷問、石抱き。「なんでこんな目に」って顔してますね。奥のヒヨリくんはなぜか嬉しそうです。

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東北自動車道にのって、一路山形へ。土砂降りです。絶望的ですね。

第一夜

「ASAHI自然観」ではコテージの利用が便利で、学生にとっても財布に優しいです。「バーベキュープラン」を選べば、食材やテーブルなど貸し出してくれます。14名の高校生が食べきれないくらいのお肉を出してくれました。

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霧の煙るなか、テーブルなど並べて準備。今夜の観測は諦めて、肉を食って楽しみましょうというわけです。

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肉だけではヘルシーではありません。コテージの脇に生えていた、この赤いキノコを炙って食します

(部長)「え?本当に食べるんですか?」

(顧問)「うん、『派手なキノコは毒キノコ』だというのは、迷信ですから。」

(部長)「だからって、論理的にはこれが毒キノコでないことにはなりませんよね」

(顧問)「は?」

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そうして陽は暮れていきました。赤いキノコは顧問とヒヨリくんが半分づつ美味しくいただきました。しばらくして二人は「うわー!満天の星空だ!!」と叫び、霧の駐車場へ駆け出していって踊り出したとか*3。冗談はさておき、この後本当に晴れたのです。驚くべきことです。

唐突に星空

このあと、尋常の時間にお風呂に入って就寝する予定だったのですが、なんと晴れました!GPV的にもSCW的にもほとんど可能性ゼロだったのに、自然というのは分からないものです。

milkyAsahi

2018年9月10日 秋の天の川
Camera: Canon EOS 6D(ノーマル)
Lens: Sigma 15mmF2.8(->2.8)
Exposure: ISO3200 180sec x 4flames

見事な天の川が。この日の「ASAHI自然観」の空の暗さは一級品でした。蔵王や神割崎よりも暗いように感じました。とくに肉眼でみる天頂付近のアンドロメダが非常にはっきり大きく見えて、むかし、顧問が屋久島南端の海浜温泉でみた星空に匹敵したかもしれません*4

no title

これは東方向のそら。真ん中の赤い輝星はベテルギウスです。薄明前にだんだんと雲が広がってきて、観測終了。おねんねしました。

 

 

 

*1:いつもはナガヒロが一人でこなしている引率、今年はMiyazakiさんにお手伝いをお願いし快く引き受けていただきました

*2:この場所は、霊山でお会いした山形大天文部の学生さんに教わりました。晴れれば最高の星空なんだそうです

*3:このキノコはタマゴタケ。優秀な食用菌です。

*4:ひょっとすると、近くの山形市や朝日町の光害が雲で遮られていた可能性あり

新しい250mmレンズ

昨年の冬頃から、nikonの古いサンニッパレンズをつかって撮影を繰り返してきました。

ぎょしゃ座、IC405 -

カモメ星雲など -

Nikkor 300mm F2.8 ED と M16わし星雲 -

8月、網状星雲 -

焦点距離300mmとAPS-Cの組み合わせは使いやすくて、まだまだ撮影したい対象がたくさんあります。同時に、この古いレンズの強い色収差に悩み続けていました。L42フィルターを入れて見たりF5.6まで絞ってみたりと、今まで試みた数々の対策は目に見える改善には結びつきませんでした。

そろそろ天文部の夏(秋)合宿です。

「これは、300mm近辺の望遠鏡を新規導入するしかありませんな、FS60CBとかVixenの新発売の...」

「ほーん、そうなんですか。そんな予算どこにあるんですか。」

と、天文部の部員達は潤沢な資金でのプラネタリウム作りに夢中で、相手にしてくれません*1。自宅に帰って、夕食の最中に妻にも同じセリフを吐いて見ましたが、反応は同じでした。顧問の孤独は深まっていました。

 

そんなある日、自宅で「天文リフレクションズ」を見ていたら、「マミヤ」という67判カメラのメーカーが出していたレンズが良いという記事*2。ふーん、そうなんだ・・・って続いてfacebookを閲覧。そこに早速、マミヤのレンズを手に入れてテストされた方がいて、その星の小ささと周辺像の良さに驚きました。その瞬間、なにかこう目の前が真っ暗になって、自己の存在が現実と虚無の狭間と言いいますか、なにかこう量子力学的な重ね合わせ状態とみたいな?そんなファンキーな、それでいて超いけてるソウルが限りなく上昇していって「いいね!」を連発。重力の感覚が消失して前後の記憶も失われたのです・・・

Mamiya Apo-sekor 250mm F4.5

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顧問の机の上には、今、Mamiya Apo-sekor 250mm F4.5レンズが鎮座しています。FS-60CBのレデューサーよりもはるかに安かったです。今後は、これで撮影していきます。 

Xenotarレンズで天体写真

以前、「ぷくぷくのブログ」にて

という記事を読みました。曰く、Xenotar型と呼ばれる構成を持つレンズが、安価な割に星の撮影には良いとのことです。もっとも力を発揮するのが100mm前後。

例えばNikkor 85mm  F2はXenotar型です。これは、ヤフオクに安定的に出品されていて、いつでも1万円ちょっとで手に入れることができます。本当にお安いではないですか。それで、手に入れました:

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前玉にちょっとした傷がついていて、1万4千円くらいで落札しました。このレンズの性能は、

85mmテスト - ぷくぷくのブログ

にフルサイズカメラでの詳細なテストがあります。

デネブ周辺をモザイク

上に紹介したレンズの特に驚くべきことは、周辺減光が小さいことです。一段絞ってF2.8とするだけで、ほとんどフラットになります。それで、お気軽にモザイク合成をして遊びました。

NGC7000, around


8月17日23:00~25:00くらい、蔵王賽の磧にて撮影 NCG7000の周辺
Camera: Canon EOSKiss5(フィルターレス改造)
Lens: Nikkor 85mm F2(->F2.8)
Mount: SkyMemoR(ノータッチ)
Exposure: ISO1600, 180sec x 10flames x 4枚モザイク

何にも考えてないような構図ではありますが、なかなかいけてるような。モザイク合成はPhotoshopのPhoto Mergeをつかって、周辺光量の補正をしなくても、継ぎ目なく綺麗につながりました。撮影当日は強い風が吹いていて星は楕円状なのに、4枚に合成してしまうとほとんどわかりませんね。

モザイク合成は、ガイドがいい加減でも最強の画像処理である縮小効果で、綺麗な結果が得られます。この85mmレンズのモザイク合成で、しばらく遊べそうです。

 

註:上の85mmF2の写真ですが、実は無限遠が出ていません。星にピントが合う前に、ピントリングが「カチリ」と止まってしまいます。そのせいで、星の周辺には赤にじみがでており、Photoshopで補正しても影響が残っています。Canonのカメラにアダプターを介して取り付けているせいかもしれません。(前玉の前に保護フィルターをつければ、ピントがでるかな?次回テスト予定)

再処理

強調するときに、トーンカーブの利用を封印して、レベル補正だけにしたら、星が小さくなった。再掲:

NGC7000, around (another post processing)


夏場の撮影ではちゃんとダーク減算をしよう、という反省

先日、やくらいガーデンへ出かけて行って撮影した網状星雲の画像処理にて、バックグラウンドの強い色ノイズと輝度ノイズに悩まされました。気温が高かったのと、露光時間が480秒と我々としては長時間の部類にあったためだと思います。ISO感度はいつもどおり1600でした。

一方、最近の撮影では、ダーク減算をサボっています。あちらこちらで「ホットピクセルはraw現像でだいたい消せる」とか、過激な意見だと「ダーク減算でかえってノイズは増える」なんて書いている人もブログ上にいらっしゃいます(引用はしませんが)。

じつは我々自身も、以前 

ダーク、フラット、フラットダーク、オフセット・・・ - 天文はかせ序二段(仮)

にて検証していて、フラット補正のみを施して強調した画像と、フラット補正とダーク減算を施して強調した画像を比較して、背景のノイズにそれほど差が出なかったと書いておりました。

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上の2枚は、その時の画像です。確かに背景のノイズにはそれほど差がありません。しかしこれはオリオン大星雲・・・つまり冬の画像です。撮影時のセンサー温度は10℃〜12℃でした。それに対して、先日の網状星雲ではセンサー温度は35℃にも達していました。

そこで先日の網状星雲の画像に対して、後からダーク画像を用意して、Deep Sky Stackerで減算をし、ちゃんと比較してみました。下の2枚は、RStackerでフラット・ダーク処理した後、raw現像(ノイズ処理は行わない)をして、DeepSkyStackerで加算平均したそのままの結果です。

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ダーク減算は、ちゃんとやらなければダメですね。とくに夏場は気をつけましょう。

 

8月、網状星雲

学校は夏休みに入って、ひっそりとしております。そんな週末、県北部のやくらいガーデンの駐車場へ撮影に行ってきました。

最近、撮影の定番となっている蔵王はペルセ群の観望目的の方々で混み合う可能性があったのと、直前のSCWで雲がかかる予報がでていたため避けた次第。当日、現地に行っていたYさんの情報だと、実際には蔵王も26時くらいまで晴れていたそう。ただかなりの混雑だったようです。いっぽう、やくらいガーデンは比較的閑散としていて、周辺は予想外の暗さでした。加美町などの市街地からそれほど離れていないことを考えると驚くほどで、街灯もなく駐車場脇に設置された自販機は照明が極力抑えられています。北が暗いので春先の銀河撮影に使えるかもしれません。ただ、冬は晴れないかな。

さておき、当日はOBのアベや、彼の友人でスカイメモと6Dで撮影しているシバタくんも合流して、賑やかでした。シバタくんは学生の時に天文部に入っていて欲しかったですね。

網状星雲

対象は、白鳥座付近の超新星残骸、網状星雲です。

 

Veil Nebula

8月10日22:30−24:30 網状星雲
Camera: Canon EOS60Da
Lens: Nikkor ED 300mm F2.8->F5.6 with L42シャープカットフィルター
Mount: Takahashi NJP with PHD2 guide
exposure: ISO1600, 480sec x 17

蛇足
  • 【300mmF2.8をF5.6で撮影】軸上色収差の強いNikkor300mmF2.8を普段よりもさらに一段しぼって、F5.6で撮影しました。それによる星像の改善は、暗くなる像のデメリットを上回るものではありませんでしたね。今後は青ハロ処理に尽力しながらF4で使い続け、機運が高まったらタカハシのFS-60CBとレデューサを買ってやろうかと企んでおりますよ。
  • PhotoShopでのraw現像の注意点】PhotoShopでrawを読み込んだ時、デフォルトでカラーノイズ処理の値が25くらいになっています。これによって、ほとんどのホットピクセルなどが取り除かれる一方、網状星雲の淡い赤や青もノイズを一緒に消し去られていました。今後、注意が必要。
  • 【夏場はダーク引きした方がよいかも】撮影時のセンサー温度は34℃くらいに達していて、さすがにノイズが目立ちました。さいきんサボっていたダーク減算、夏場はちゃんとやった方がいいかも。
  • 【NGC6992付近の分子雲】NGC6992は上の写真で言うところの、右側に写っている輝星と重なって見える星雲。その写真右側には淡い分子雲が広がっているようです。画像処理の段階で、これを赤い熱かぶりと勘違いして、消してしまっていました。これも今後、注意が必要。