天文はかせ幕下

プレアデス星団、2度目の撮影

顧問です。

10日土曜の夜、天気も悪くなさそうだし、2週連続で撮影に行っちゃおうかななんて、皿洗いや庭掃除など、例のヘコヘコ運動をしていたら長男が熱を出してしまって、自宅に待機しておりました。

深夜になって子供たちも寝静まったあと、同日はやま湖に撮影にいっているカノープス氏とFaceBookでやりとり。
「調子はどうですか」
「いいですよ、幽霊出そうですけど」
なんてメッセージをかわしながら、ワタクシは先週の画像の処理をしていました。

昨年、本校の天文部を卒業した後、東北大学に進学して「ブイブイ言わせている(死語)」アベが、3日の夜にEOS6Dで撮影していたプレアデス星団です。東北地方の冬季限定「雪っこ」を飲んでしたたかに酔いながらブイブイに炙り出してみました。

M45

日時:2018年11月3日
撮影場所:宮城県神割崎
カメラ:Canon EOS6D(非改造)
レンズ:mamiya Apo-Sekor 250mm F4.5
露光データ:420sec  14flames(ISO1600) + 390sec x 14flames(ISO1600)  + 30sec x 5flames(ISO400)


アベの指摘によれば、合計3時間10分の露光は本天文部の最長記録ではないかと。たしかにその通りかもしれません。しかも子午線をまたぐ最良の時間帯だったので、素材は相当に良いものでした。この写真が、現段階でのわが天文部の最高傑作といってよいのかもしれません。

ひと月ほどまえに、顧問は同じマミヤのレンズをつかってAPS-Cセンサーで2枚モザイク撮影により、M45を撮影しておりました:

M45

この写真よりも、6Dの一枚もののほうが画角が広いというのは、やっぱりフルサイズおそるべしという感じです。 

オリオン座とバーナードループ

小学生のころから何度も望遠鏡で眺めていたオリオン座の周辺。その東側に大規模な円弧状の星雲が広がっていることは,最近知りました。バーナードループと呼ばれているそうです。憧れだったこの領域を,初めて撮影しました。

神割崎にて。夜半過ぎに撮影していたオリオン座周辺のパノラマ合成です。

Orion and Barnard's Loop

日付: 2018/11/3
カメラ: Canon EOS 60Da
レンズ: Zeiss, Apo-sonner 135mm, F2.0->F2.8
縦2枚,パノラマ合成
露光データ: 左側は180sec(ISO1600)x12枚,M42を含む右側は180sec(ISO1600)x13枚と60sec(ISO400)x6枚と20sec(ISO400)x6枚をPSでHDR合成。
Mount: kenko sky memo R
蛇足:リンク先のFlickrに飛ぶと,さらにシャープな写真がみられます。

2つのフレームのヒストグラムのピーク値をRGBそれぞれ慎重に合わせたので,接合のエラーは無いと思います。構図もそこそこ決まりましたし。ただ,画像処理でかなり苦悩しました。左側のバーナードループ,中央の馬頭星雲と燃える木,3つ星,右下のオリオン大星雲とそれぞれ特徴的であるため,ある部分に注目して処理をしていると他の部分が崩れたりします。例えば,3つ星周辺の青をもっとはっきりさせたいなと思いつつ,PSでマスクを駆使しながらマウスをクリック,

「Before..,After. Before.......After!」

などと「よっちゃん*1」になった気分で悦に入っていると,下の方でオリオン大星雲が崩壊していることに気づかなかったりします。

下の写真は苦悩の過程です:

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「案1」はある日の深夜までの作業で仕上げたものです。右上や左下部分に緑の偽色があって非常に汚く,M42付近の青もしつこいです。翌朝になって,M42付近の青の彩度を修正したのが「案2」です。その日の夕刻になって,「案3」では右上部分のカビが生えたような緑の偽色に気づいて,それを修正。「案4」で全体的にマゼンダによっていた赤い星雲を修正し最終盤としました。

勾玉星雲の周辺

11月初旬、文化の日の週末と、月が細くなる時期が重なりました。東北地方は安定した秋の晴天に恵まれて観測日和です。この時期は、湖や河川の周辺で霧が発生しやすい頃でもあります。まだ温度が下がりきっていない水面と、寒気の流入で急に冷えた空気の温度差が原因だろうとは、最近よくご一緒するカノープスさんの推察ですが、全くその通りだと思います。

3日のよる、そんな理由ではやま湖を避けて、神割崎まで遠征しました。

9時頃に到着。いつもの駐車場は観測の方々で満員状態でした。隅っこの方に陣取って撮影開始。OBアベに新赤道儀での撮影を任せて、顧問のワタクシは、SkyMemoRでぎょしゃ座の撮影をしました。

Central region of the Auriga

日付:2018年11月3日 22:30~24:30くらい
対象:ぎょしゃ座、勾玉星雲とNGC1893の周辺
露光:180sec x 10flamesの4枚モザイク(ISO1600)
カメラ:Canon EOS 60Da
レンズ:Zeiss Apo sonner 135mm F2(F2.8)
処理:RStackerでフラット処理、PSでRaw現像後、DSSでスタック、PSでレタッチ
蛇足:リンク先のFlickrに飛んでいただいた方が、画像がシャープです・・・

 

現地でPocket Sky Atlasをみればなんとかなるだろうという甘い見立てで、最近は構図を何度も失敗しています。この写真も、もうちょっと左方向に構図を寄せたかったです。時すでに遅し。

モザイク撮影で、画像を矛盾なく繋げることは存外に難しく、ApoSonnerのような高性能レンズを使っていても、異なる画像の背景ノイズや星の周辺像の不一致が起こったりします。それなのに、ここ最近は「〇〇の一つ覚え」でモザイク撮影ばっかり連発していました。この画像の場合各10flameの4枚モザイクです。同じ時間をかけて、中心部を40枚撮影した方が良い結果になったかもしれません。

初作品

2年生部員サトウもポラリエと改造KIssX5で撮影をしておりました。彼女の初作品ですね。

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日付:2018年11月3日
対象:オリオン座の周辺
露光:??
カメラ:Canon EOS KissX5 クリアーフィルター改造
レンズ:EF-S 10-22mm F3.5-4.5

 

 

秋の新機材まつり

潤沢なる年

年間5万円ほどの部費で細々と運営されている本校の天文部。2018年度はしかし、例年に無く予算が潤沢でした。

まずプラネタリウム班では、彼らのプロジェクトが「西松建設」という近隣企業からの助成金事業に採択されて、目下、数十万円をかけて本格的な投影機とドームを製作しています。それだけではありません。秋になると後援会から、天文部に25万円の特別予算が投下されたのです! これほどのまとまった予算は、このブログをはじめる前から数えて8年間ほどの間、かつて無かったことでした。

その予算で購入したニューアイテムと、あと顧問が血迷って自費購入したニューレンズなど総額35万円相当の品々を、これから小出しに公開していきますよ。

まずは新赤道儀

KenkoSkyExplorerII

NJPでは重過ぎる、SKYMemoRでは心細い。

なんとしてもほしかったのは、気軽に遠征にもっていける中型の赤道儀でした。kyoeiOsakaに問い合わせてみました:

「20万円弱の赤道儀を探しているのですけど、たとえば○○赤道儀なんかどうなんでしょうか?」
「あー、あれはダメですね、グニャグニャですわ」
「ぐ、ぐにゃぐにゃ?」

ずいぶんと物事をはっきり言う店員に驚くとともに好感を持ちました。運よくアウトレット品のKenkoSEIIの在庫があって格安とのこと。こういうときに懐疑・調査・相談・熟慮・相見積・考察・会議などが一切できないのがわれわれの悪いところ。即日注文して3日後には届いたのでした。

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機材の仮組みの様子です。アルミプレートを横に据えて、アリミゾ固定でカメラレンズとオートガイダーカメラを取り付けます。バランスウエイトは5kgを1ヶでたりました。

この赤道儀は定価で25万円、最近の実売価格が18万円くらいですかね。購入価格はなんと12万円ほどでした。届いた物品は、赤緯軸に遊びがあったり、ウエイトのクランプつまみが破損していたりしましたけど、そんなのは即効で調整・修理できることです。たぶん。

さっそく試運転、現地でトラブルシュート

時は11月3日(土) 。OB部員のアベ、最近カメラを覚えたいサトウが参加して、神割崎にいってきました。アベにSEIIのマニュアルを読ませつつ、250mmレンズ+EOS6Dのシステムで8分のガイドを目指します。

トラブルとしては

  • ウエイトのクランプが割れているー>じつは現地で気づいた。この日はアベの握力でなんとか仮止めできた。後日修理予定
  • 極望がまっかっかで星が見えない?->北極星だけが見えればよいという思想で設計されているようです。たしかに北極星だけがみえて、ほかの微光星は暗視野照明にかき消されて見えない。アベよると「初心者には優しい設計」との感想。
  • まったくガイドしないんですけど?->SEIIでは、初期設定を終えた後、スターアラインメントを終了してはじめて赤経モーターが動き出す仕様。これは同行のYamasakiさんにおそわりました。いままで自動導入赤道儀をつかった事が無い我々には驚きだった。自動導入をつかう余裕は無く、いいかげんなone Star Alignmentを済ませて、ガイドを開始した。

PHD2との連携にはなんのトラブルも無く、NJPではなぜか10分ちかくかかるキャリブレーションも、3分以下で完了。その後のオートガイドは、5~6秒角前後の精度でした。250mmの8分露光の歩どまりも、ほぼ100%。アウトレット品にもかかわらずいまのところ当たりの赤道儀かもしれません。

撮影成果

本日、ちょうどOBアベから撮影成果が送られて来ました。

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撮影データがはっきりしないのですが、EOS6Dで、480s露光と390s露光を合計39枚ほどスタックした結果だと思います。コンポジット後にGIMPをつかってちょっとトーンカーブをいじっただけで結構描き出せています。 フラットが合っていないようなので、そこをちょっと調整して、再アップしますね。

ともかく、480s露光でも星像が点に写ってくれて、SEIIの導入はひとまず成功でした。めでたし。

星投影の様子

初日の高専まつりは,上々の出来だったと思います。一方,初めて本格的に暗いドームに星を投影して見て,いくつか新しい課題も出て来たようです。投影の様子をご覧に入れます。

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カシオペヤ座から北極星にかけての北天付近です。星の配置,ちょっとおかしなところもあるかもしれません。

完全自作プラネタリウムと高専まつり

ドームには補強が施され,復旧が間に合った様子です。

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これならなんとか。

公開まであと21時間。今は部長が,投影機を調整しています。星を投影するための32個パワーLEDが,一定確率でお亡くなりになるようです。1個150円の安物でしたから。まあでも,なんとかなりそうなので告知のチラシを貼っておきますね。

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「完全自作」プラネタリウムと高専まつり

10月26日,27日には「高専まつり」と呼ばれるイベントが我々の所属する仙台高専で行われます。天文部では,1・2年生が中心となって制作した完全自作のプラネタリウムを出展する予定です。

このプラネタリウムの何がすごいかと申しますと,何度もしつこいながらそれが「完全自作」であることです。どんな感じか,制作途中の様子をご覧に入れましょう。

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顧問の教員室から見た廊下の様子です。テーブルの上に乗っているサッカーボール型の多面体が,プラネタリウムですね。部員たちはここで毎日プラネタリウムを制作しています。

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多面体の中身です。このそれぞれのユニットにパワーLEDが取り付けられていて,その光をレンズで平行光にしたあと,「恒星原板」を通してスクリーンへ投影する仕組みです。

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これが「恒星原板」。本校のクマガイ先生が管理されていたレーザー加工機で6等星くらいまでの小さな穴を穿っています。この星の座標の計算が大変でしたね。

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こちらがコントロールボックス。

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arduinoと呼ばれるマイコンで,いろんなものを制御しているようですが,顧問には詳細がよくわかりません。

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こちらは青空・夕焼け投影機。部員ノゾキドが制作しました。凝ってますよね。

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配線がとぐろを巻きつつ,あとは公開日を待つばかりです。お近くにお住いの方,ご興味がありましたら覗きに来てくださいね!!・・・・と言いたいところですが。。。。

 

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ああ!肝心の投影ドームが,倒壊してしまった!(23日夜に名取市で発生した震度3の地震のせい??)果たして補修は間に合うのか? 待て,続報を!