天文はかせ幕下

5月:蔵王山での観測遠征記 その1

学生やOBたちとの約束もあって、5月3日は遠征観測に出かけました。まずは学校を出発して南西方向へ。遠刈田温泉に向かいます。

f:id:snct-astro:20190503180100j:plain

目的地へのルートの目印になる、大きな鳥居。期待できる空が広がっています。

今回の撮影地である蔵王山の賽の河原駐車場は、宮城-山形を結ぶエコーラインと呼ばれる有名な山越え道路沿いにあります。天文人口密度の低い(と思われる)宮城県でも比較的に混み合う撮影スポットです。山越えの風を避けられるベストポジションを確保するために早めに出発しました。

f:id:snct-astro:20190504212812j:plain

まだ明るい時間に一番乗りで到着。写り込んでいるのは、元部長のハタナカ(プラネタリウムの責任者)。高地の美しい夕景を見て、人生の何か大事なことに気づいたかのような後ろ姿ですね。実際は、顧問に

「適当にその辺に立て」

と言われてボンヤリ立っているだけです。

同じく参加予定だった新部長のヒヨリはあいにく都合つかず欠席でした。もう一人、特別ゲストは本校のOBで、有名カメラレンズメーカーに就職したA氏です。

そして。。。ででん!

f:id:snct-astro:20190504023156j:plain

A氏所有の通称「ボケマスター」Sigmaの105mm F1.4 Artを今夜だけお借りしましたよ。夜半過ぎにはこれで天の川周辺をノータッチ撮影します。初めて手に取りましたが、「よくこんなもの製品化したな!」と呆れてしまうくらいデカイレンズです。でもこのレンズ、ほんとすごい性能でした。

前半戦

夜半までは春の星座。そこでMT−200でソンブレロ銀河M104を狙いました。強風のためかガイドは暴れ気味で、たったの13枚スタックでした。

Sombrero Galaxy M104

Sombrero Galaxy M104

Date: 3th May 2019, 21:00~
Location: Miyagi, Zao
Camera: Canon 60Da
Optics: Takahashi MT-200 1200mm F6, MPCC Koma corrector
Exposure: 360sec. x 13(ISO1600)+ 120sec. x 3 (ISO 1600)
Guide: Takahashi NJP with MGEN

円盤のなかの模様をだすのが目標でしたが、まったく無理でしたね。まあ、こんなもんかといった写りです。MGENのガイドで、RA方向の修正条件パラメターを甘くしすぎPモーションを修正してくれなくなるという凡ミスを今回は味わった。

f:id:snct-astro:20190504215641j:plain

MGENのパラメターをひたすら弄っておるワタクシ。A氏による撮影です。・・・星空見ろよ。

そして後半戦へ。

日付が変わる頃には、わずかに暗くなった仙台市の向こう側から天の川が登って来ます。A氏撮影のタイムラプスです:

このあと、M101や天の川周辺を明け方まで撮影しました。つづく!

 

 

 

 

 

 

 

浮雲

昨夜は、はやま湖に出かけて青い馬星雲と呼ばれる淡い対象を狙いました。8分を15枚も撮ったのに、恨めしや。低空の薄い浮雲に気づかずに撮影を続けていて、自宅で確認したらほぼ全滅でしたね。良い経験になりました。今後、ああいった低空の視界不良には気をつけよう。

恨めしい浮雲と申せば、昨今はやりのクラウドファンディングというのがあります。日本語に訳すなら浮雲的資金調達とでもいうのでしょうか。

私の意見では日本人には「寄付・喜捨」という精神はあまりなくて、基本的には100円ショップとかドンキホーテとか安いものが大好き。イベントなんかでも、タダだと本当にたくさんの方が集まります。基本的には銭は出さない。その精神は蔓延していて、昨今のデフレの根本原因はこれかと。なので、クラウドファンディングなんて、日本では流行らないと思っていました。

そしてここから本題なんですが、私共天文部の学生有志が、プラネタリウム作製のためにクラウドファンディングを行なっています。顧問としては(上記のような拗ねた日本人感も手伝って)「無理だろ」と実は冷ややかに見ておったのですが、意外に集まるものなのですね。「私が間違っておりました」という感じです。

募集期間はあと26日だそうです(5月3日現在)もしご興味あれば

をのぞいて見てください。

下の写真は、学生たちがめざす「天文台」のロゴ、と自作のプラネタリウムの様子です

f:id:snct-astro:20190503122602j:plain

 

mamiya apo-sekor 250mmのツインシステム

しばらく前から準備していたAPO-sekor 250mmのツインシステムを組み上げるました。これによって,撮影枚数を2倍にし画像のノイズを1/√2,およそ30%小さくすることができると。それだけのために,勤務時間後にしばしば工場で制作をしておりました。

f:id:snct-astro:20190426183606j:plain

もう一台の250mm APOは,数ヶ月前にレンズに曇りのある個体をヤフオクで1万円ちょっとで入手していたものです*1

カメラは,EOS60Daと,赤外改造済みのkiss X5を使います。この二つは画素が全く同一なので,DeepSkyStackerで同時にコンポジット可能なはず。

ガイドカメラは親子亀方式で,片方の鏡筒バンドに固定しました。あと,フードとレンズヒータとタイマーレリーズも追加購入しないといけませんね。

このシステムで,この春には天の川中心部付近,夏になったら白鳥座付近,秋には牡牛座近辺,そして冬になったらぎょしゃ座の中と1年は楽しむ予定です!うまくいけば。

 

*1:先日のアンタレス付近の写真は,曇った方のレンズと6Dを組み合わせて撮影したものでしたが,なんの影響も感じられませんでした。

アンタレス付近

 ここ数年~10年のあいだのことであるが、天体写真界隈でもSNSの普及が著しく、個人の撮影した天体写真がフェイスブックTwitter、ブログ(天リフ)などを通して、多くの人の目に触れるようになった。その規模は「天文ガイド」や「星ナビ」の読者を(おそらくすでに)凌駕しているのではなかろうか。  

 その結果として、天体写真への観覧者の「目」が非常に肥えてきて近年は急激なインフレ状態にあるように見える。昨日素晴らしいと賞賛された天体写真は、今日はすでに凡であり、今日の秀作も明日には見向きもされなくなってしまうといった勢いである。 

 「アンタレス付近」は、そんな「インフレ」の象徴のような対象だなあと思う。  

 むかし昔、顧問は部員の阿部とフェイスブックの「天彩Astrography」なるコミュニティに入会した。そこでは多くのマニアが、素人にとっては異様と見える写真をたくさんアップロードしていた。というのは、ふつう天体写真は晴天の下で撮影するものであるのだが、彼らの写真には巻層雲や層雲ばかり写り込んでいて、その向こうに星がポツポツ見えている。雲は茶やオレンジ、青などあり得ない色をしており、日の丸構図の銀河や球状星団の写真しか知らない我々にとっては、なんとも珍妙に見えたのである。まもなく、それら雲のように見えていたものは「分子雲」と呼ばれる星間物質であると知った。自分が彼らと同じ方向にカメラを向けたとしても、あんなものが写るとは到底信じることはできなかった。

 あれから数年余。昨今の「インフレ」のおかげで,我々の技量も数年前の「天彩Astrography」の方々に幾分近づいて来たように思っている。現在の彼らは,さらに上の方へ行ってしまっているのだが,インフレもいつかは治るだろう。そうして満を持して,我々も赤・青・黄・の巻層雲のような星の写真をアップいたします(前置きおわり)

Rho Ophiuchi cloud complex

Date: 13th Apl. 2019, 0:00~
Location: Miyagi, minamisanriku
Camera: Canon EOS 6D
Optics: Mamiya apo sekor 250mm F4.5
Exposure: 240sec. x 38(ISO1600)
Guide: Kenko SkyMemo R

ちょっと構図しっぱいしたかなー。

屋上ドームと新部長

f:id:snct-astro:20190417173041j:plain

ドームで観測中の新部長(スマホで撮影)

本校の天文部は,歴史は長く色々な機材があります。その中で,最近あまり活用できていないのが屋上にある天体ドームとそこに据え付けられているMeadeの30cmシュミカセ 経緯台です。4月になりましたので,久しぶりにドームを掃除し,新部長・旧部長も交えてお月様など観望しました。

この望遠鏡,光害のある名取市で星雲・銀河を撮影するにはF10という暗さが壁になり,かといって惑星を撮影しても筒内気流のせいかどうもぴしっとせず,まだMT−200の拡大撮影のほうが良い結果になったりします。

そんなで出番がめっきりなくなってしまいました。今夏は,惑星状星雲でも撮影してみましょうかね。

 

M51 子持ち銀河

12日の金曜日に,撮影しておりましたM51(子持ち銀河)です。

M51 Whirlpool Galaxy

Date: 13th Apl. 2019, 0:30~
Location: Miyagi,
Camera: Canon 60Da
Optics: Takahashi MT-200 1200mm F6, MPCC Koma corrector
Exposure: 360sec. x 18 (ISO3200)
Guide: Takahashi NJP with MGEN

当日はシンチレーションもよかったにもかかわらず,しばらくガイドが安定しなくて,半べそをかいておりました。結局はM-GENのthresh.(閾値)をデフォルト値の10から少し上げてガイド星プロファイルの50%くらいの位置に閾値を持ってきたら急にガイドが安定しました。そのあと赤フィルタも試してみたらさらにガイドが安定し,薄明ギリギリまで18枚,1時間48分露出できました。

EOS60Daをつかったデジカメ撮影では,この辺が限界なのかなーと感じております。

といいますのも,仮にもっと長く露光できたとしたら,周辺の淡い部分はより浮かび上がってくるのでしょうが,中心部の解像度は変わりませんよね。新月期の週末に遠征する現在の撮影スタイルだと,昨日の晩以上のシンチレーションにめぐり合うのもなかなか望めないですし。

過去の作例を振り返る

M51を撮影するのは通算で5回目でした。過去から振り返ってみます。これは技術が発展途上だからこその楽しみです。

 

(1作目)学校の屋上にあるMeadeのシュミカセと経緯台で撮影した写真。当時は日付もなにも記録していなくて露光時間も謎です。ノーマルのEOSKissX5での撮影だと思います。

f:id:snct-astro:20190416184449p:plain

(2作目)なんでこんなモノクロだったのでしょうか?ここから撮影データありです。フラット補正していませんし,当時は「周辺減光」という概念自体理解してませんでした。
2015年3月27日2:50 撮影地:学校の屋上
Canon EOSKissX5 ISO1600 直焦点撮影 210秒x8枚 

MT200 on NJP赤道儀 ノータッチガイド。
f:id:snct-astro:20190416184805p:plain

 

(3作目)これもひどく色彩に乏しいのですが,不思議と解像度は高いです。当夜はシンチレーションが良かったのでしょう。周辺減光を認識し,画像をトリミングしています。
2016/2/11 撮影地:宮城県名取市
カメラ:Canon EOS Kiss X5,鏡筒:タカハシMT200 on NJP赤道儀
露出時間:180sec x 12枚,ISO:1600

f:id:snct-astro:20190416184957p:plain

 

(4作目)ここで初めて光害をはなれて遠征先で撮影しています。だいぶん雰囲気が変わります。やっと「北を上」にしています。
2017年2月24日 12:30

canonEOS60Da センサー温度9℃
タカハシMT-200 with MPCC Mk3 koma corrector, on NJP赤道儀 ノータッチガイド 
ISO3200 240sec x 16、
CCDStack2で加算平均、GIMPトーンカーブ、カラーバランス調整、Digital photo Professionalでノイズ処理。FlatAidePro.

f:id:snct-astro:20170227182234j:plain