天文はかせ幕下

ぎょしゃ座、IC405とIC410周辺

11月の新月期の撮影は、本命の対象が何かしら失敗つづきで、サブのほったらかしがある程度形になるという結果が続いてます。最後に画像処理を終えたのが、ぎょしゃ座の周辺を135mmと6Dで撮影したこの対象です

Reprocessing: Auriga and the Flaming Star Nebula

date: Nov. 1th, 2019
location: Kamiwari-saki, Miyagi, Japan
optics: Zeiss apo sonner 135mm F2(F2.8)
camera: EOS6D
mount: Kenko skymemoR without auto guide
Exposure:ISO3200, 180sec x 40flames

Starnet++で気軽に星消し画像を作れるようになったおかげで、最近は星の色をうまく引き出すことができるようになって来ました。勾玉星雲の場合、なんといっても大事なのが、中心部の五つ星。そのなかでも白・青・赤と並ぶ輝星の存在感だと思います。

今年はもうちょっとアップにして、もう一度撮って見ましょうかと考えてます。

ASI294MC-pro:ポカミス顛末報告とか、正しい処理フローのまとめなど。

前口上

今年の夏から天文部に導入したASI294MC-pro。これまで主に使っていたcanonデジからの移行に手こずり続けております。

とくにフラット補正が成功せずにいました。これについては、2か月ほどまえにホワイトバランスとの関係を疑っていて、その打開策も含めて

にまとめていました。

この度上記の記事は顧問のポカミスが原因の間違いであることがわかりましたので、訂正して顛末報告いたします。マジ、すみませんでした

顛末書

先日撮影したM31を例に、事情をなるべく簡潔に説明します。ASI294MCで撮影したライトフレームに対して、ダーク・フラット処理を施したあとベイヤー変換でカラー化すると、周辺に緑が浮いてくるという結果に悩んでおりました。

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わかりやすいようにPSで彩度を+60ほどあげています。ぱっと見、フラット補正に失敗しているように見えます。これについて、顧問は何度もフラット補正のやり方を見直したり、twitterで喚いて助言いただいたりしていました。が、あとからわかったところによると、実は原因はダーク減算のポカミスだったのです。

ダーク画像を取得するときは、M48のマウントに樹脂製の簡易なキャップをして光が入らないようにしていました。このキャップ、よくある2インチアイピースのキャップと同じサイズなので、部内ではそこらへんにたくさん転がっているのです。で、顧問はどうもチープなキャップを使ってダークを撮影してしまったようなのです。よくよくマスターダーク画像を確かめてみますと

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なんと周辺が赤くなっていました*1周辺の緑浮きの原因は、どうやらこれだったようです。デジカメのマウントキャップではこんなことは起こらないので、どうも足をすくわれました。

というわけで、正しくダークをと取り直してフラット補正してみたところ

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こんな風にフラットがきれいに決まるようになりました。失礼いたしました。

ASI294MCでの撮影から前処理まで:現時点でのまとめ

上記のフラットの緑浮きについては、顧問が最近始めたtwitter経由で、何人かの方からアドバイスをいただいてました*2。それを受けて、いろいろと画像をいじくっているうちに、このカメラでの撮影から前処理にあたってのパラメータ調整やファイルの扱いについて、あるていど素地が出来上がってきたように思います。現段階での我々の方法について,備忘録もかねて、ここにまとめておきます。

撮影時

  • Gain:200前後、brightness:30前後とする。SharpCapでのWhiteBalance(WB)はRとBのみ調整できるようになっている。この調整スライダは、RとBチャネルのハイライト側レベル調整になっている。R=B=50とするとRGBの最大輝度のレンジがそろう。なのでR=B=50とすべきと思う。(gain値は,390で多数枚の方法と,120で長時間露光の方法の2通りあるみたい。)
  • UV/IRカットフィルターを入れないと、黄色が出にくいとのこと。
  • フラット画像・ダーク画像取得時は、WhiteBalanceのRとBの値をライトフレームと合わせるのがよい。
  • フラット画像の輝度値は、ヒストグラムのピークが50%かそれ以上になるようにするとよい。
  • フラット画像がカラーであるべきかモノクロのほうが良いかは要検証(SharpCapのフラット取得機能を使うと、「カラーのフラットは合わせにくいよ」という英語のメッセージが出る)
  • フラット画像のgainをライトフレームに合せるべきかどうかはまだ検証していない。gainを合わせたうえで露光時間が10秒ほどになるようにしたほうがよいという情報もあり。

画像の前処理の流れ

  1. ステライメージでfitsを読み込んだら、ベイヤー変換前にダーク減算とフラット補正を行う。
  2. RGGBのベイヤー配列を指定して、カラー化。WB調整してから、そのあとコンポジット*3
  3. コンポジットした画像をfitsで保存。
  4. fitsをflatAideProに読ませて、対数現像(あるいはステライメージでデジタル現像でもよいかもしれないが、ちゃんとした比較はできていない。また対数現像のパラメター調整のコツもあまりつかめていない)。16bitのtiff出力
  5. PhotoShopで処理。

いまのところ、こんな感じ(2019.11.12)

 

*1:これは結露防止ヒータの磁場の影響とかも疑いましたが、どうも単純に光漏れのようです。twitter経由のBooKuuさんからの情報ではASI294MCの純正のキャップは光が漏れないようにしっかり作られているようです。

*2:こたろうさん、宮路さん、あぷらなーとさん、たかsiさん、いづもさん、ありがとうございました

*3:カラー化する前にコンポジットしてはだめ

奇妙な関係、あるいは雲の通過時はオートガイドをOFFにせよ

奇妙な関係

なにか趣味を始めると、その周辺で新しい友人ができます。さらに最近、顧問は代表的なSNSの一つであるTwitterを開始したこともあって、少し奇妙な友人が増えております。

先日の神割埼での撮影でも、埼玉からいらしていた方とお会いしました。その方は拙ブログもたまに読んでくださっていたようで、懇意になっていろいろと教わりました。

しかし通常の友人関係と比較して妙な点があります。といいますのも、彼らとお会いするのは、月のない深夜の、さらに町明かりの届かない山奥や海辺だったりするものですから、暗くてお顔を拝見できないのです。日本人の特性で、会ったらまず名を名乗るということもあまりしないので、苗字かTwitterのハンドルネームしかわからなかったり。

「顔も名前も知らない友人」です。妙なことです。そんな友人たちと、年末には忘年会を致しましょう、なんて話も持ち上がっております。

クワガタ星雲,NGC7365,M52,失敗の図

今回の撮影では、撮影地でのおしゃべりに夢中になりすぎて、大きな失敗をしてしまいました。そこから得られた教訓は「対象が雲に遮られたら、オートガイドをOFFにすること!」です。

え?あたまえですか?

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Date: 4th Oct. 2019 
Location: Kamiwari-saki, miyagi
Camera: Canon EOS 60Da, EOS Kiss X5 twin
Optics: Mamiya Apo-sekor 250mm F4.5
Exposure: 360sec. x 20 x 2
Guide: Kenko SEII, PHD2 guiding

クワガタ星雲の周辺ですが、撮影中に雲の襲来がありました。

「あ、また嫌な雲がきたな」なんて皆さんと雑談に花を咲かせておった間、オートガイドが暴走しつづけていて、構図がずれてしまっていました。それに気づかず2時間以上も露光をしつづけてしまい、上記のような無残な写真が出来上がったのでした。

飛び去るモチベーションを引き留めつつ,レタッチしましたがクワガタ星雲って淡いですね。

上弦の月のモザイク撮影

昨日,部長のヒヨリくんやその他みんなで,月のモザイク撮影に挑戦しました。最近,お誘い合わせで入部(?)したショウタロウくんが望遠鏡を操作。MeadeのLX200 F10の鏡筒にF6.3のレデューサーを取り付けると,ASI174MMでもった3x1コマモザイクで月が入ります。

部員たちは最近,AutoStackkert!やRegistaxを覚えましたので,画像処理もすべて彼らが行いました。メールにて送られてきたtif画像を掲載しますね。

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date: Nov. 5th, 2019
location: Natori-city, Miyagi, Japan
Optics: Meade LX200 3048mm F10 (with reducer F6.3), baader CCD filter R
camera: ASI174MM
Exposure:gain 100, 2.9μs x 2000flames (25% stack) 

 

細かく見ると,つなぎ目のエラーもありますし,スタックもすこしうまくいっていないようでブレがあります。これはPSの「ブレの軽減」を使っても,解消できませんでした。スマホで見るくらいだと,違和感ありません。

 

顧問としては,「月なんて明るし簡単でしょう」と思っていたのですが,なかなか難しいですね。

ヒアデス、プレアデス、カリフォルニア

先月の27日にRASA11で撮影していたM31は、Lフィルターの入れ忘れなどあって、いまいちな結果。その横でほったらかし撮影していたおうし座付近の画像も、終始うす雲に邪魔されていて、その結果にはあまり期待していませんでした。

三連休に、ちまちまと画像処理していましたら、そこそこみられる結果になったので、ブログにアップいたしましょう。

Hyades, pleades and california

date: Oct. 27th, 2019

location: Kamiwari-saki, Miyagi, Japan

optics: Sigma 70mm Macro F2.8(F4)

camera: EOS6D

mount: Kenko skymemoR without auto guide

Exposure:ISO3200, 180sec. x 20flames + 180sec. x 12 flames, 2x1 moz

シグマの旧カミソリマクロを使った2枚モザイクです。うーん、モザイクの継ぎ目、ばれてしまうかな。モザイクの下半分の撮影では、薄雲の影響が終始あってスタック枚数が少なくなっています。上下の不均衡のせいで、これ以上分子運をあぶれなかったのですが、薄雲のソフトフィルター効果でヒアデス星団がちょっと印象的な感じにもなって、こういうのもありかなと思います

この旧カミソリは、カリカリにシャープな一方、ジャスピンでかなりの青ハロがでることでも知られています。この撮影では、若干ピントをずらしてハロを抑えつつ、Starnet++の星消し画像から生成した「星だけ画像」に強めのハロ処理を加えて、星消し画像に重ねるという手法で、きれいに青ハロを処理できました。ただ、青ハロ処理はあまり強くやりすぎると、青い星が白くなってしまうので、その辺はすこし気を使うところです。ある程度は青ハロを生かして、青い星を強調するのもありか?

 

学園祭の夜に遠征観測

月末の土日は本校の学園祭でした。天文部でも、片隅にブースを確保してささやかな展示を行っておりました。そちらは特に盛り上がりもなく終了。

片付けの終わった後、顧問は撮影に行ってきました。部員は誘っても誰もついてこなかったというのは、きっと学祭の打ち上げなどあったのでしょう。撮影地の神割埼にはそーなのかー氏とカノープス氏が先着されてました。最近は天候が悪いので、みなさん平日前でもとても熱心です。

M31の2x2モザイク+HDR

予定は、ASI294MC-ProとRASA11の組み合わせでM31の撮影と、翌々日の観望会のための電視の練習。まずは撮影。時折の薄雲の通過に悩まされつつ、4分x10枚+30秒x10枚の2x2モザイクHDRを何とか完走できました。gainは200。このCMOSカメラのフラット補正はいまだに思い通りにならなくて、モザイク合成が激烈に面倒なんですが、なんとか矛盾なくつなげることができました。けっかはこんな感じ:

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date: Oct. 27th, 2019
location: Kamiwari-saki, Miyagi, Japan
optics: RASA11 650mm F2.2
camera: ASI-294Mc pro
mount: Takahashi NJP with MGEN guide
Exposure:gain220, brightness 36, 240sec. x 10flames + 30sec. x 10 flames, 2x2 mozaic
sensor temp.:-10 deg.

うーん、色が出ない。以前、60Da+ε200で撮影したときは、右上当たりの青い輝星とか、暗黒隊の赤っぽさとかもっと鮮やかだったですが、ASI294MCとRASA11のこの結果は、何とも色に乏しい。暗黒帯も完全にグレーです。fitsデータの処理過程に、色を損失してしまうエラーを犯してしまっているのか?

あと、HDRは1段か2段くらい別の露光データを加えないと、中心まで滑らかに繋げられないですね。

画像処理をしているうちにイライラしてきて、ついカッとなって強引な反則プレーで色を出してしまいました。けっかはこんな感じ:

M31 The andromeda Galaxy

トーンカーブ調整で、輝度別に中心部分はGとRを持ち上げて、腕の部分はBを強調してから、彩度を上げた結果です。しかしこれでは塗り絵ですね、今は後悔してます(といいつつFlickrにはこちらをアップしてしまうのです)。

それにしても、ASI294MCは、感度は申し分ないのですが色表現が乏しいと感じるのは、処理が悪いせいなのか、もともとのカメラの性質なのか?裏面照射センサーを採用した昔のソニーのカメラWX1は、発色が冴えなかったという話も合って、どうなのかなー。もう少し苦しんで、試行錯誤するしかないですかね。

 

 

 

 

学内電視観望会を行いました。

前置き

今年度から,中谷財団の助成を受けて地域で電視観望を行うプロジェクトを進めておりますが,最近は天候がすごぶる悪く,計画するたびに台風やら雨やらで中止に追い込まれておりました。

先日までで,合計2回の観望会が中止になり,来月の3日に計画していた福島県相馬市での観望会も,当地の洪水被害のため,天候に関係なく中止にせざるを得なくなってしまっております。

でも,助成金をいただいている以上,とにかく何かしなければなりません。そこで,まずは足元の仙台高専のキャンパス内で観望会を開こうということになりまして,学内にチラシを貼るなどしてアナウンスしていたのに,また雨で中止・・・。

もうやってられん!仕方がないので事前アナウンスは諦め,直前にGPV見て,晴れるなら急遽の観望会を開き,集まれる人だけで集まろうという作戦で,昨日,ようやく観望会にこぎつけましたよ。

観望会の様子

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部員がハロウィーンのかぼちゃ照明を用意してくれました。

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M31を導入する顧問とSくん。

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集まったみんなでM27を観望しております。

今回電視観望した対象たち

記録のために,今回,学内キャンパスでの電子観望で得られた画像のキャプチャを載せておきます:

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まずは50mmレンズでのデネブ付近。15秒の露光でライブスタック。写野が広いと,光害カブリが結構きついです。IdasのNBフィルター使用

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このM31は神割崎でのライブスタックですが,学内でもこれの6割程度の質感で見えておりました。

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そしてM27,中心部のトリミング。5.6秒露光のライブスタックで,NBフィルターは入れ忘れていたけど,綺麗に映りました。これが一番ウケが良かったです。

 

あ,言い忘れてましたが,今回は名取・岩沼地域の情報誌「なうてぃ」からの取材がありまして,近く掲載される予定です。年末の財団への報告会でもネタにできるので助かりました。