天文はかせ幕下

今冬さいごは、双子座の足元。

しばらく曇りがつづくようで、次回の撮影は来月になりそうです。今冬最後の対象は、双子座の足元付近、モンキー・クラゲ・M35を入れた縦構図です。

M35,NGC2174 and IC443

M35,NGC2174 and IC443
Date: 24th Feb 2020
Location: miyagi
Camera: Canon EOS 60Da, EOS Kiss X5 twin syste

Optics: Mamiya Apo-sekor 250mm F4.5
Exposure: 480sec. x 20(ISO1600, 60Da) and 480sec. x 15(ISO1600, KissX5)
Guide: Kenko SEII, PHD2 guide

Apo-sekorのツインシステムでの撮影でした。気に入らないのは、左下の星がマゼンダ、右上の星がシアンに偏っていること。毎度忘れてしまうのですが、このレンズはバーティノフマスクのジャスピンで、若干の青ハロがでるので、すこしピンをずらして、ハロの調整をした方が良さそうです。最後に、DenoiseAIでノイズ除去した画像を、40%くらいブレンドしてます。全部使うとのっぺりしすぎるようでしたので。

これで冬の対象はおしまいですね。今季はバラも大星雲もコーンも本格的に撮影できなかった。ざんねんむねん

帰り道に天の川撮影

神割崎からの帰り道は、北上川沿いを走って名取に帰ります。その河口あたりで車を停めて、東の空を撮影しました。

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Date: 24th Feb 2020
Location: miyagi
Camera: SigmaFp

Optics: Sigma EX DG 15mm F2.8
Exposure: 30sec,(ISO6400)

構図は凡庸ですけど、真ん中に小さな流星が映りました。

星景色の画像処理はよくわかっていません。普通に撮ると、地上が暗く空が明るく写るのでマスクを使って両者の輝度差を縮めたあと、空の部分だけに通常のストレッチを施してます。地上部分はシャドウの持ち上げで盛大にノイズが浮き出るので、これをDenoiseAIで除去してます。自分の過去の例と比べると、良い結果になりました。

来週、晴れそうな時期に、Sequatorとかつかってギンギンの天の川を撮って見たいですね。海上の霞がとれる良いコンディションの日に恵まれることを願いましょう。

20日の遠征その2:球状星団M13

今月の20日、神割崎での撮影はしばらくぶりの良コンディションでした。翌日に午前休がとれたこともあって、思う存分撮影を楽しめストレス解消になりました。

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かいしんのいちげき」であった獅子座の銀河を撮影中の一コマ。当日ご一緒していたそーなのかー氏が帰宅された後の撮影風景ひとコマ。ちなみに地上風景部分のみDenoizeAIをかけてます。

薄明も迫ってきて、そろそろ撤収しますかね・・・という時間帯。東の空にヘラクレス座が登ってきていました。ちょっと試しにと球状星団のM13を撮影してみました。294MCのgainを120に下げて60秒露光。オートガイドなしで10分ちょっと撮影です

M13

Date: 2020-02-20
Location: Miyagi, Japan
Camera: ASI294MC-pro,
Mount: Takahashi NJP, MGEN guide
Optics:RASA11", HeuibIIフィルター
Exposure:60sec x 12flames(gain120)
processing: Pixinsight, Photoshop

こ、これは!けっこうよく撮れているのでは?

球状星団の画像処理には少し戸惑いがありました。なにせ星しか無いので、画像処理星マスクもStarnet++も必要なく、これまで培った技術が通用しません。ひとまず星のつぶつぶ感を保ちつつ、いかに星の色を出すかを念頭に置いて強調しました。カラーバランスはPixinsightのphotometric Color Calibrationを使いました。またPSのアンシャープ処理が結構効果的でした。

淡い星雲の強調処理ではつらみも多いのですけど、こういう明るい対象をささっと調整するのはとても新鮮な楽しみがありました。露光時間も短くて済みますし、良いものです。

 

RASAと294MCの組み合わせ、ようやく成功!

われわれ天文部の新兵器として、CelestronのRASA 11"と、ZWOのASI294MCを導入したのは昨年の5月頃でした。電子観望に加えて、一般撮影にも使えるようにとの目的で選んだこの組み合わせ、これまで6回の撮影を重ねてきましたが、そのいづれもが何かしらの形での失敗作でした。

失敗の歴史

を振り返ります:

(1)8月25日、NGC6888

Crescent Nebula

ファーストライト。Lフィルターを入れていなかったため、色がちゃんと出ていません。

(2)10月27日、M31

M31_2

これは4枚モザイクの力作でしたが、まだLフィルターの必要性に気づいておらず、色が乏しいです。また、294MCのセンサーキャップの光漏れでダーク撮影に失敗したりして、苦しんでいました。294MC被害者の会の常任理事に就任。

(3)11月22日、M33

M33 Triangulum Galaxy

ようやくLフィルターの必要性にも気づき、さらにHeuib IIを導入。「これは成功した!」と思ったものの、じつは片ボケで左側の星が肥大してます。それに気づくのは2ヶ月後であった。。。

(4)M81&82、1月1日

M81, 82 and NGC3077

星像の改善のために、スパイダーマスクを装着。おかげで右側の星の十字がダブりから片ボケに気づく。よくみたら11月のM33も同じく片ボケだったとorz。画像処理もやっつけです。ぴんとが合ってれば傑作だったんだけど(?)。

ようやくエラーなし

じゃじゃ馬のRASA 11"と冷却CMOSカメラの組み合わせ、どうも時間がかかりすぎたように思ってますが、ようやくエラーのない画像が撮れました。結果をででん!

M95,M96 and M105

M94,M95 and M105

Date: 2020-02-20
Location: Miyagi, Japan
Camera: ASI294MC-pro,
Mount: Takahashi NJP, MGEN guide
Optics:RASA11", HeuibIIフィルター
Exposure:240sec x 37flames(gain200) + 60sec x10flames(gain120)
processing: Pixinsight, Photoshop

20日の夜は、空の状態も今シーズン最高レベル。淡い腕の模様もよく出てくれました。Twitterにアップした画像から、すこし修正しております。

みん100の画像を、さらに強調して見ました

元旦の撮影以来、もう50日ちかく遠征先で撮影できていません。悲しいことです。

 

さて、ひと月ほど前に結果が発表された天文リフレクションズの「みん100プロジェクト」(註:ブログやSNSで繋がっているみんなで協力して同じ対象を撮影し、総露光100時間を目指してみたらどうなるか?というプロジェクト)。本天文部も焦点距離400mmコースのNGC1333&IC348の撮影に寄与すべく、元旦にFC76で撮影しました。じっさいには構図失敗して、あまりお役に立てなかったんですが、その結果は以下でご覧になれます。

NGC1333&IC348の撮影には、全部で7名の愛好家の方々が参加され、総露光時間は27時間。全てを加算平均した結果はこんな感じでした、

f:id:snct-astro:20200217220236j:plain

十分に素晴らしい結果です。ですがこの画像は、単純に加算しただけですので、それぞれ数時間の露光で得られた元画像からノイズやエラーが平均化されただけです。つまりさらに強調がかけられるポテンシャルが十分にある筈です。

全画像をレイヤー化した*.psdファイルは、上記のサイトからダウンロードできるようになっており、CC BY-SA*1が宣言されてます。ですので、ちょっと遊んで見ました。

ストレッチには、最新の流行手法をふんだんに取り入れました。だいたい以下のような流れです。

  1. PixinsightのArcsinhStretchで軽く強調
  2. 1.に対してStarnet++を施して「星消し画像」と「星だけ画像」を取得する
  3. 「星消し画像」にPixinsightのHDRMultiScaleTransformをかけて、構造を強調
  4. PSで「星だけ画像」に明るさの最小値と彩度強調をかけて、星像を調整
  5. 3.に4.を重ねる。
  6. トーンカーブで、「でてこいやぁ!」とさらに強調。
  7. 最後に体験版のTopazDenoiseで、仕上げ

そして得られた結果がこちら:(自信を持って)ででん!!!

IC348 and NGC1333

いやー。自分の撮影した写真じゃないので好き放題言いますが、これ凄いですよね。ASTROBINの"Image of the day" を探しても、なかなかこのレベルのは見つかりませんでした。

処理した感じでは、もっと強調できそうです。腕に覚えのある方、試して見てはいかがでしょうか?

 

*1:作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求し、作品を改変・変形・加工してできた作品についても、元になった作品と同じライセンスを継承させた上で頒布を認める。

スカイメモRは偉い赤道儀です

背景

卒業生のA君から貸与されているタカハシのFC-76屈折望遠鏡。彼はそれを会社の先輩から買い受けたそうな。しかしすぐに撮影に取りかかれない事情がありまして、A君はスカイメモR(以下S-mR)*1しか所有していないのです。

「僕が,次回のボーナスで赤道儀を買うまで,これを有効利用してもらえませんか?」

彼からそんなありがたい申し出があって、我々の部にはFC-76があるという話は,いぜん書きました*2

FC-76はレデューサー使用で焦点距離438mm,カメラとバンドを加えた重さは4.2kg強。一方,S-mRの公称の耐荷重は2.5kg*3しかありません。普通に考えたら載りません。しかし顧問の経験では,これまでS-mRに裏切られたことはなく,いつも期待以上の性能で答えてくれました。

ひょっとしたらガイドしてくれるのでは?そうすればAくんも新しい赤道儀を購入する必要もなく、代わりに欲しかったDC-S1Rも買えるというものです。

スカイメモRのポテンシャル

顧問のこれまでの実績では,f=250mmくらいのレンズならノータッチガイドで3分は余裕でした。

さらなる長焦点についても前例はあります。たとえば,RNA氏は強度的にはRに劣ると思われるスカイメモSにf=480mmの鏡筒を載せて,6分5分の露光でも星を点像に納めています(!)。下記サイトをご覧いただくと,ポタ赤で撮影したとは到底信じられないようなDeepSky写真をごらんいただけます:

それなら,過積載とは言えS-mRにFC-76ガイドも十分可能でしょう。

スカイメモRで一軸オートガイド

とはいえ、さすがにノータッチガイドは厳しいと予想されます。ちなみにS-mRにはオートガイド端子はついていません*4。そこでヤフオクを利用しました。以前、NJP赤道儀でオートガイドを行う際にお世話になった方*5が、S-mRで一軸ガイドを行うためのアダプタを出品してくれています。今回はこれを即購入して使用しました。

機材のセットアップはこんな感じです

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三脚はslik professional design-iiで、これは台座にコルクが貼っていないのが利点で、もっぱらSm-R用に使っています。その上にKyoeiの低重心ガイドマウントを介して、S-mRを取り付けています。極軸合わせは、Sm-Rの極望をつかってマニュアルで合わせており、ドリフトアラインメントやpoleMasterは使ってません。ガイド鏡は親子亀式で、カメラはSigmaFpです。

結果

先日、よく晴れましたので月光の下、庭先でテストを行いました。ほぼ完全な無風で、シンチレーションも冬場にしてはいい方でした。

ガイドグラフはこんな感じ、

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うん、赤緯はあさっての方向に行ってしまいますが、ガイド自体は良い感じです。対象はオリオン大星雲で、3分露光を7枚撮影しました。そのうちの6枚を、ピクセル等倍で並べて見ます:

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完璧とまでは言えませんが、これくらいのガイドエラーならコンポジット後には真円になるでしょう。

終わりに

というわけで、スカイメモRはfc-76+reducer+フルサイズの組み合わせを余裕でガイドしてくれました。

最後に、18分露光の最終結果を。

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Date: Feb.12th, 2020
Location: Natori, Miyagi, Japan
Optics: Takahashi FC76 
camera: Sigma Fp
mount: Kenko SkyMemo with PHD2 guiding
Exposure:ISO1600, a stack of 6flames x 180 sec.

庭先撮影にしては、なかなか仕上がりました。Aくん、新しい赤道儀買わなくても良いかもです。

*1:顧問が購入を勧めた

*2:元旦は、神割崎からスタート! - 天文はかせ序二段(仮)

*3:下記サイトを参照www.kenko-tokina.co.jp

*4:スカイメモSにはオートガイド端子あります

*5:https://auctions.yahoo.co.jp/seller/good300speed

ベテルギウスの庭先測光、ここ半月の推移

測定精度的には、疑問符もある庭先での星の測光ですが、同じ条件で継続的にとり続ければ、その相対的な変化についてはある程度信頼しても良いでしょう。

ここ半月ほどの測定結果をグラフにして見ました。

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うーん、そろそろそこを打ち始めたような?

二月に入ってからは月明かりの影響のせいか、バラツキが大きくなりました。とくに2/4の1.8等という結果は、何らかのエラーかもしれません。毎夜、ベテルギウスを見るのが楽しみでなりません。

金星と、ごく個人的な古い思い出

2月6日、強い寒気が降りてきてようやく冬らしい寒さに見舞われました。会議が終わったら、もう5時近く。西空は澄んだ夕焼けで、宵の明星が輝いています。

「ちょっと撮影してこましたろ」

と、顧問はシュミカセが設置してある屋上に出ました。部員たちはテスト週間でお休みです。

実は、金星の撮影は初めて。望遠鏡を向けたのも、最後はなん年前だったか? Meade経緯台の間怠こしいアライメントを済ませて、まずは眼視。半分よりちょっと太った姿がごく小さく横たわっていて、眩しいくらいです。凍える寒さのドームの中で、ひとり金星の姿を眺めていたら、30年ちかくも前の思い出が急に蘇ってきました。

 

月光天文台は、静岡県函南市にあります。顧問が中学2年生であったころ、友人と二人で電車に乗って、その天文台の観望会に参加したことがありました。広場に月の重力を体験できる遊具があって、すこし早く着き過ぎた僕らは日が暮れるまでそれで遊んでいました。季節は初夏のころだったような。しかし、それ以外のことは何にも覚えていません。

 

自身の海馬を信じるならば、中学生の私が月光天文台で見たのは金星だったのでしょう。stellariumで28年前の5月頃の夕空を調べて見ました。

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当夜の金星の形は、

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こんなでした。

 

さて前置きが長くなりました。6日の夕刻に撮影した金星です。

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(撮影データは後ほど記載します)

うーん、シンチレーションが悪くて、形がわかる程度。金星って、こんなもんでしょうか。紫外で取らないと模様は見えないのでしたっけ?