天文はかせ幕下

ε200とその補正レンズのバックフォーカス

前置き

今からもう、5年近くも前の話。私の前任の天文部顧問、「スズカツ」の研究室から埃をかぶったタカハシのε200が発掘されたという出来事がありました。

おそらく20年近くは眠っていたのでしょう。いくつかの接続環が紛失していて、そのままではカメラを取り付けることができませんでした。幸い、鏡や補正レンズの状態は悪くなく,この望遠鏡を活かすためにCOSMO天文工房で接続リングを特注したのでした。

f:id:snct-astro:20190617164827j:plain

写真の真ん中が、その接続リング。左はε200の補正レンズ。右はEOSのTリングです。この三つを

f:id:snct-astro:20190617165119j:plain
こんな形で接続して使います。

このセットアップで、いままで何回も撮影してきており、星像も十分に満足のいくものでした。たとえば

Triangulum Galaxy M33 | Date: 25th and 25th, Oct. 2017 Camer… | Flickr

M31 | date: 11.Sep, 2018 Location: Asahi-city, Yamagata, JPN… | Flickr

The Rosette Nebula | Date: 30th Dec. 2018 Location: Fukushim… | Flickr

などはどれも比較的によく撮れたなと満足しています。デジタル対応の補正レンズへの置換の必要性もそれほと感じておらず、先日のタカハシによる「最後の」販売も、スルーした次第です。

特注接続リングの問題点

さて、今日の話題は上記の特注リングについてです。

実は、それを設計した当時の私は、「バックフォーカス」という概念を認識していなかったのです(!)*1。ε-200のメタルバックフォーカスは、下のサイト

によれば、59.8mmとのこと。で、私がイイカゲンに設計した接続リングをつかったときの現状のバックフォーカスは、ジャスト59mmでした。0.8mmのズレです。うーん、気にしなくてもいいような。でも気になるなー。ひょっとして、さらに星像が向上したら、すばらしいことです。

0.8mmのスペーサー

新しく接続リングを特注するのではなく、まずはスペーサーを噛ませることにしました。カメラフィルター用のステップアップリングを取り出します。

f:id:snct-astro:20190617165148j:plain

こいつを旋盤で削って

f:id:snct-astro:20190617183340j:plain

こうなりました*2。厚さは0.8±0.05mmにすることができました。

はたして、0.8mmのバックフォーカスの差が、星像に影響するのか?近日検証して見ます。ちなみに私のなんとなくの予想では、関係ないと思います。

 

 

*1:しかし今なら知っています。バックフォーカスとは、補正レンズ面とカメラのセンサー面の間の距離のことです。通常は「メタルバックフォーカス」といって、補正レンズのマウント面とカメラセンサーの間の距離が参照されることが多いようです。

*2:このような薄い形状のものを、さらに薄く削ることは、それほど簡単ではありません。実際、治具を作成しなければならなかったり、すこしだけ大変でした。