天文はかせ幕下

60DaとKissX5のノイズとダーク減算

概要:ツインシステムに使っている60DaとKissX5のノイズを比較。300秒露光&センサー温度28℃では両者に差はなかった。一方、420秒露光&センサー温度31℃では、ノイズの差が顕著だった。あと、夏場のダーク減算はやっぱり有効だよねという当たり前といえばその通りな話。

はじめに

興味のない方が読み飛ばせるように、冒頭に概要をのせました。気が向けば今後も続けます。さて、

今春から撮影に用いているMamiya ApoSekor 250mm F4.5によるツイン撮影システム。実は同じカメラを二台買う予算を吝嗇って、同一のレンズに異なるカメラを取り付けています。一つは改造済みKiss X5、もう一つはCanonEOS60Daです。

両者ともAPS-Cセンサーで1600万画素と似た性能である一方、前者が家族向け量産カメラであるのに対して、後者はCanonが販売した最後の天体撮影専用カメラ。60Dの生産過程において、特にノイズレベルの低い「アタリの」イメージセンサーだけが使用されている、とは単なる噂なのか、本当なのか。

ツインシステムの目的は、撮影枚数を2倍確保して加算平均することで、ノイズを1/√2に減らすことにあるわけです。そこには全てのフレームのノイズレベルが同じという前提があって、もしKissX5のノイズが60Daにくらべて酷いようなら、KissX5のデータを捨てた方が良い結果になるという可能性もあります。

そこで、これまでの撮影結果から、両者のノイズの比較を記録しておきます。

外気温16℃、センサー温度28℃〜29℃の場合

5月の室根山での撮影。

  • 気温:16℃
  • 露光:ISO1600, 300sec.
  • センサー温度:28℃(60Da)、29℃(kissX5)

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背景のざらつき具合で60Daの方が良い感じですが、後出の結果と比べるとそれほど大きな差ではありません。これなら単純に両者を加算平均してもよさそう。

外気温21℃、センサー温度31℃〜32℃の場合

8月の蔵王山での撮影。

  • 気温:21℃
  • 露光:ISO1600, 420sec.
  • センサー温度:31℃(60Da)、32℃(kissX5)

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5月の室根での結果とくらべると、センサー温度が上がって露光時間も長い分、ノイズが増えて当然。ここで60Daは優秀さがよく分かります。一方、KissX5は一気に輝点ノイズが増えてしまいました。ここまでくると、両者を単純に加算してノイズが下がるか微妙ですね。

仕方ないのでダーク減算する

このツインシステムは、いまのところディザリングができない*1ので、蔵王での撮影では、後日しかたなく冷蔵庫を使ってダーク減算をしました。その効果も付記しておきます:

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ダーク減算すれば、両者のノイズレベルはだいたいコンパラになって、これなら一緒に加算して大丈夫そうです。

最近は、ディザリング撮影などで省略されるようになって来たダーク減算、夏場の撮影で露光時間が長い場合は、やっぱり有効だと思います。最後にダーク減算前後のGIFアニメを。

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*1:2台のカメラを同時使う場合、どうやってディザリングするのでしょう?