天文はかせ幕下

2例目の恒星間天体,ボリゾフ彗星を撮影

2:00 起床
2:30 出発
3:10 撮影地到着
3:40 機材設営完了
4:00 対象導入完了・撮影開始
4:52 天文薄明開始・撮影終了

ボリゾフ彗星(2I/Borizov)を撮影すべく,顧問が立てましたスケジュールです。学生はテスト週間でお勉強中。一人で撮影です。実際には2時に起床もメガネが見つからない。寝ている家内を揺り起こして

「わしのメガネ知らない?」
「しりませんよ!」

と叱り飛ばされました。いやいや,今朝の宇宙スケールの私の計画にとっては,そんなのどうでも良いことです。

メガネも見つかり,3:30ころ宮城県山元町のとある海岸付近に到着しました。津波の影響が少々のこる,荒れたところです。平日の未明にこんなところでこんなこと。「ああ,俺は変人であるよなあ」と自己肯定感に満たされます。 

導入方法

ボリゾフ彗星。2019/11/27現在はコップ座付近に15等くらいで光っているくらい対象です。われわれの赤道儀には自動導入機能がありませんので,今回は初めて目盛環導入というのをやって見ました。まずは

 の記事で位置を確認しました*1。上のサイトには24日と29日のデータしかありませんので,均等割で補間して27日0時(JST)での彗星の位置は「赤経11h8m,赤緯-9°15.5'」。近くの一等星レグルスを基準にして,天球上を「東に1h00m,南に21°13'」移動したあたりを撮影すれば,ボリゾフ彗星が写っているはず*2

撮影顛末記

撮影場所にえらんだ山元町の海岸付近。到着した4時ころは快晴です。冬の天の川が西方向に見えていました。さっそく機材を設置して極軸を合わせ,レグルスでピントを合わせたところで,曇ってしまいます。

ようやく雲が抜けたのは天文薄明開始時刻の4:52とほぼ同時でした。いそいでレグルスを確認。東に1h,南に21°とちょっと望遠鏡を動かして,闇雲に写真をとりました。294MCのgain390で60秒!

f:id:snct-astro:20191128190904j:plain

こんな写真が撮れました*3。軽く絶望しました。が!,目を皿にして探しますと,彗星らしき影が!みなさま,お分かりになるでしょうか・・・・?

 

正解はコチラ:

f:id:snct-astro:20191128191334j:plain

この領域は矮小銀河も多く,それらと見間違えたらアウトでした。見つけられたのは,かなり運が良かったです。ちょっとだけ画角を移動して,10枚を撮影したところで空が明るくなると同時に,また雲が広がったのでした。

リザルト

2I/Borizov 2019/11/26 20:05(UTC)

10枚スタックして,処理して見ますと,かろうじて尾らしき姿が。

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こちらはgifアニメです。彗星は写真中央あたり。確かに動いております!やったぜ。

注意事項

最後に注意事項です:ステラリウムが表示するボリゾフ彗星位置は,少しズレているようです(2019年11月現在)。

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ステラリウムver.0.19.2からのキャプチャです。下側の赤い四角がステラリウムが主張する彗星の位置。一方の黄色丸は上記のAstroartsのサイトから計算した,27日5:06(JST)での彗星の位置です。星の配置を写真と見比べていただければ,ステラリウムが間違っていることはよくわかります。

このズレのせいもあって,写っているのが確かにボリゾフなのか,なかなか確信が持てませんでした。Twitterにて「けむけむさん」に確認してもらって,それでステラリウムの誤差にも気づいた次第です。

もし今後,この彗星を撮影するつもりのかたはお気をつけください。

 

*1:ステラナビゲータは所有してません。こういう対象を狙うときは必要になってきそうです

*2:NJP赤道儀の目盛環の最小目盛は赤経が10m,赤緯は2°なので細かい計算をしても意味がありません

*3:RASAなので鏡像です