天文はかせ幕下

「し」の合作

11月末のもりもりランドでの撮影。一方の機材でNGC891やM82などを撮影しつつ、その隣ではSkyMemoRにEOS6DとSigma 70mm マクロを乗せて、エリダヌス座をほったらかし撮影してました。対象は「し」の形をした超新星残骸「スーパーバブル」です。

当日に撮影をご一緒していた「そーなのかー」氏も、EOSKissX7に50mm F1.8レンズを装着して、ほぼ同じ画角で同じ対象を撮影しております。そちらの方には12nmのHαフィルターが装着してあって、あとで私のカラー画像と、氏のHα画像を加算合成しようという作戦です。

この計画、構想は夏頃に持ち上がっていました。そのあと「天リフ」でも合作企画が持ち上がりました。今後はそういうったアプローチも増えるかもしれませんね。今回の結果は、二人で一晩。合計6時間の露光でした。

 

まずは結果から 

The Eridanus bubble

Date: Nov. 30th, 2019
location: Fukushima, Japan
RGB:
Photographer: nagahiro
Optics: Sigma 70mm F2.8 macro(F4)
Mount: Kenko SkymemoR without auto guide
Camera: EOS6D(mod)
Exposure:ISO3200, 180sec x 60flames

Ha(band width 12nm):
Photographer: so-nanoka-

Optics: Canon EF50mm F1.8 STM (F3.2)
Mount: Celestron Advanced VX with PHD2 guide
Camera: EOS kiss X7 (mod)
Exposure: ISO3200, 480sec x 19flames (Ha)

デジカメRGBとモノクロHαの合成

結果は「ででん」と言っても許される出来かなと感じております。

今回の処理で悩んだのはデジカメで得られたカラー画像にHaを加える方法です。最もシンプルなのは、カラー画像のRチャンネルとHaの背景輝度を揃えておいて、両者を比較明合成するという方法です。しかし今回は、最近勉強中のPixinsightのフォーラム(こちら)の書き込みを参考にしました。使うのは画像を四則演算できるPixelMath機能です。

まずHα画像を L_{H\alpha}、デジカメのR画像を L_{R}、それぞれの背景輝度(ヒストグラムのピーク値)を B_{H\alpha},~B_{R}として、

C_{H\alpha}=\frac{L_{H\alpha}B_{R}-L_RB_{H\alpha}}{B_R-B_{H\alpha}}

とした画像 C_{H\alpha}を用意します。この式の気持ちは、Hα画像とR画像の平均輝度を一致させた上で、Hα画像からR画像を引き算することで、Hα画像だけに写っている情報だけを抜き出すということなのだろうと思います(元情報には式の解説はない)。適当な定数をaとして

 L_{R}+a C_{H\alpha}

を新たなR画像として、RGB合成します。今回は深く考えずa=1としました。

で、合成語にストレッチして得られた(RGB+Ha)画像はこんな感じでした:

f:id:snct-astro:20191219232145p:plain

比較対象として、Hαを加えないで処理したデジカメだけのRGB画像を載せておきましょう:

f:id:snct-astro:20191219232350j:plain

両者、それぞれ一長一短で、赤い領域の描出は(Ha+RGB)が、周辺の分子雲の滑らかさはRGB画像がそれぞれ優れています。これはいいとこ取りしたいところです。

いろいろ試した結果、PSの「覆い焼きカラー」で両者を重ねるのが一番良い結果になりました。「覆い焼きカラー」ってなに?という感じなんですが。とはいえ、そうして出来上がったのが冒頭の写真でした。

 

今回は合作がきっかけになって、Pixinsightも覚えましたし、やっぱり周りの人から刺激を受けるのは楽しいなと感じた次第です。本業の研究の方も、そういうふうに楽しく進められれば良いのですが、うくく。