天文はかせ序二段(仮)

天文はかせ序二段(仮)

仙台高専(旧・宮城高専)天文部の活動記録です

天体写真におけるISO不変性と相反則不軌

まえおき

数年前から様々なところで議論し尽くされている「天体写真のISO感度設定」について、また蒸し返したいと考えております。といいますのも。

先日、クラゲ/モンキー星雲付近を撮影しました。F4.5のレンズを使い、カメラの設定は480秒露光、ISO1600です。いつもの撮影地の神割崎では、この条件でヒストグラムがだいたい真ん中くらいになります。撮って出しは下の写真のとおり(中心付近トリミング)。

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この撮影の途中、顧問はカメラの操作を間違って、わちゃあ、数枚の写真をISO200で撮影してしまったんですね。結果は…

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こんな感じのアンダーな画像になってしまいました。SDカードをへし折りたくなりましたけれどガマンしました。帰宅の後、この画像をPhotoshopでRAW現像する時に、露光量(EV値)を+3としてみたら、結果がそんなに変わらないことに気づきました。次ののgifアニメはその比較です:

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「ほほん、これがISO不変性というものかあ」とめでたくISO200の失敗フレームもスタックに加えることができたのでした。といいますか、上の二つの結果が同じであるなら、ISO200が正解で、ISO1600の方が失敗だと考えるべきです。なぜなら前者の画像のほうが、星の飽和範囲がずっと狭いからです。それは逆にISO1600の画像のEV-3にしてISO200と明るさを揃えてあげれば一目瞭然です:

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ISO1600のほうは,星の中心部がすっかり飽和しております。またISO感度について考えなおさないと。

ちなみに両者の撮って出しのヒストグラムは以下の通りです:

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ISO不変と相反則不軌

表題の用語について、顧問も辞書を引いて、意味を確認しました:

  • ISO不変性*1:同じ光学系でかつ露光時間がいっしょなら、ISO感度を変えても、RAW現像時にEV値を調整すれば、結果は同じだよ。
  • 相反則不軌:ISO不変とはいっても、極端なアンダーやオーバーの場合は、カラーバランスとかノイズとかの結果が変わることがあるよ。(ただしい相反則の意味は「露光を1/nにしてもISO値をn倍にすれば,結果は同じだよ」であり,その規則が極端な条件に崩れるのが相反則不軌です。ご指摘を受けましたので追記します。)

とのことです

これを踏まえて簡単な実験をしました。カメラにND400フィルターを二重に取り付けてISO感度だけを変えて撮影した室内写真をくらべます。ISO100~ISO6400の範囲を調べました。使用したカメラはEOS kissX5(HKIR)。露光時間を90秒とし、長時間露光のノイズ低減と高感度撮影のノイズ低減はoffにしています。当然、ISOを下げていくと下の比較のように画像は暗くなります。

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こんな感じの画像に対して、PSの露光量を調整して全ての画像の明るさを揃えてからRAW現像をかけると次のようになります。

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ISO200からISO6400まではほぼ同じ結果です。ISO100だけがノイジーなのが、いわゆる相反則不軌というものの表れなんでしょう。推測では、ISO100の画像は極端にアンダーなので、画像処理エンジンがなにか別の働きをしたのではないでしょうか?試しに、上の露光時間を90秒から180秒に伸ばして同じ撮影をして見ますと、次のようにISO100もほかの感度と変わらない結果になりました。

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以上の実験では、相反則不軌が徐々に生じるのではなくて、ISO100と200の間で突然現れた生じたというのが面白いところですし、適切なISO感度の設定のためには好都合でもあります。

結局ISOは幾つが良いの?(#^ω^)ビキビキ

まずは端的に結論を述べます

「天体写真では、相反則不軌が生じない、最も小さいISO感度がよい」

が私の答えです。何処かで聞いたことあるような結論ではあるし、このブログの著者である顧問は早とちりからよく間違いを犯すので「また言ってらー」とお笑いの方もおられるかもしれません。

まず、30秒とか1分程度の露光時間で非常に多数のL画像を撮影するというのがよく行われます。露光時間が短ければ、上の相反則不軌が生じない、最も小さいISO感度が6400あたりになる場合もあるはず。これは高感度多数枚撮影とか呼ばれますが、正しい手法であるのは確かでしょう。しかし同じ露光時間でさらにISOを12800とか24600まで上げてしまうのは、DRを狭くしてしまうので害しかない筈です。

一方、(追尾の性能が良くて)もっと長い露光時間をかけられるのであれば、可能な露光時間に反比例して適正なISO値は小さくなると考えるべきです*2。顧問がよく撮影するF4.5の480秒露光の場合、ISO200まで下げても相反則不軌は現れないようでしたから、ひょっとするとISO100でもよかったのかもしれません。

いままでは、なんとなくでもっぱらISO1600を使ってました。これをISO100にすれば、ダイナミックレンジはかなり広がります。都会でHIROPONさんたちがやっているような超長時間露光はなかなか真似できないですが、遠征先の暗い空なら必ずしもそこまで伸ばさなくても良さそうのも大きいです。

更に言えば、よく言われる「ヒストグラムのピークが1/2〜2/3が適正露出」というのもどうなんだろうなーと思えてきました。次回の撮影ではその辺も検証して見ますかね。

*1:横槍ですが、ISO不変性って変な言葉ですね。普通は「光速度不変」とか「エネルギー不変」というように「**不変性」と書いたらそれは**が不変量であるという意味ですが、ISO不変性はISO値が不変量なのではなく、その撮影結果が不変という意味になっています。

*2:ただし、長秒ノイズの影響や、長時間露光によるセンサー温度の上昇は、また問題を複雑にします。今回の記事では考察の対象外としてます。