天文はかせ幕下

ベテルギウスは、さらに暗くなっていく!?

最近、楽しく取り組んでいるベテルギウスの測光。

これまで、何度か庭先でデジカメによる簡単測光を行なってきたところ、sigma Fpをつかうと、なぜだかベテルギウスの明るさを暗く見積もりすぎてしまうみたいでした。そこで赤外改造の6Dにかえてみたところ、他の方々との測光結果とだいぶん一致するようになりました。

それで、17日くらいから測定していた3日分のデータをAAVSOで公表されている結果に重ねてプロットして見ました。下のグラフは横軸がUTの日付、縦軸がベテルギウスの等級。AAVSOのデータを紫の※で、自前の測定結果を緑の四角でプロットしてます。

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ある程度重なっているので、それほど見当はずれな測定にはなってないのかなと安心。ベテルギウスはベラトリクスと比べて、明るく見える時も暗く見える時もあって、ひょっとして短い周期で揺らぎながら減光してませんかね?

今週に入ってから、天候不順で測光ができないのがもどかしいです。

海辺で星景

海上に前線が停滞しています。冬型の気圧配置が安定せず、1月の新月期は平日遠征も覚悟しておりました。

そんな21日の火曜日、GPV予報によると夕刻から久しぶりの晴天になるとのこと。部員たちを連れて、はやま湖に出かけました。顧問の目的はRASAの光学チェック。部員は電子観望の練習です。

19:30に現地到着。しかし、空はべったりと曇っています。

「おまいら連れてくると曇るな。やくらい高原の時もそうだったし!」

顧問は八つ当たりの暴言を吐きます。1時間ほど空待ち。雲は西から湧いてきています。神割崎は晴れているとの情報もあり、海岸までの移動を決断しました。

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はやま湖から海岸まで移動

はたして、海辺は晴れていました。堤防に出て写真を少々撮影しました。

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南にある火力発電所の照明が地上風景を照らしてくれて、星景には案外良い場所かもしれません。目的の電視観望の練習はできませんでしたが、部員たちにとっては、夜の海を見られて良い気分転換になったかも。

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最近入部したK君はミノルタのα9000を所有。またショージ君は最近pentaxのk-5を中古で安く手に入れたようで、ちょっとだけ撮影の練習もしました。そんな彼らの様子を撮影中、地平線間際を流星が。もうちょっと高い位置を流れてくれればよかったのに。

 

 

ベテルギウスを簡単に測光してみる

爆発する前に、測光しておかなければ!顧問はいらぬ焦燥にかられて、庭先でベテルギウスの明るさ測定に挑戦しました。

精度を求めると、どこまでも難しそうな星の測光。今回は、お気楽測定です。rawの保存ができるカメラとパソコン、三脚があれば誰でもできます(方法は、宮城県内の天文仲間kaerupapaさんにいろいろ教わりました)。
以下のような手順です:

  1. 測定の対象星を撮影する。シンチレーションの影響を抑えるために露光は20秒程度に。ISO感度や絞りは、対象星の輝度が飽和しないように調整する。また、対象星に近い明るさの星が、同一視野に入るようにしておく。

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    今回はこんな写真を撮りました。ベテルギウスの場合は、とても明るいので故意にピントをぼかして、飽和を防いでいます。レンズをF8くらいまで絞って、ISO100とし、ある程度ボカせば、20秒露光でもぎりぎり飽和しないと思います。
  2. フリーソフトのRaw2fitsをつかって、デジカメのraw画像をfitsに変換する。Raw2fitsは、こちら

    からダウンロード可能。raw2fits.exeをデスクトップに置いておいて、その上にデジカメのrawファイルをドラック&ドロップするだけで、もとのrawファイルを、R,G1,G2,G,B,Lの5つのチャンネルに分解して、それぞれをfitsで出力してくれます。測光に用いるのはGチャンネルのファイルです。

  3. つぎに、こちら

    から、これまた無料配布のMakaliiをインストールしておきます。このソフトはfitsしか読めません。さきほどのGチャンネルの画像を読み込みます。
     測光だけなら操作はとても簡単です。コマンドから「測光」をクリックして「開口測光」を選びます。測定したい星をクリックすると、星の輝度のカウント値と、周辺のSKYの明るさを計算してくれます。下の写真は、輝度を測定している様子です:

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    測定対象のベテルギウスのほか、比較のためベラトリクス、アルタニク、アルニラム、ミンタカを選びました。「テキスト出力」をクリックすれば、各データがCSVで出力されます。
     より正確な測定のためには、Gチャンネルの画像はダーク減算、フラット補正、カブリ補正、大気補正など行わなければならないらしいのですが、今回は省略しました。

  4.  最後は計算です。測定対象の星の等級をm、比較対象の星の等級をnとします。nの値は、ステラリウムやウィキペディアとかで調べたV等級の値を使います。また、各々の画像上の明るさをI_mI_nとすれば、撮影した写真からI_mI_nの比が求まっています。それと等級の比は、Pogsonの式
     m-n=-2.5\log_{10}\left(\frac{I_m}{I_n}\right)
    で関係づけられる(らしい)。この式をexcelなど使って計算し、mを求めれば良いわけです。
     ただし、I_mI_nの値は、上の開口測光で得られた星の総計値から、周辺SKYの総計値を減じた値を用います。比較星が変光星でないことも確かめておきます。

  5. 例えば、アルタニクを比較星に選んだ場合、そのV等級は1.64、星とSKYのカウント値の差は67052-9128=57924。一方、ベテルギウスの星とSKYのカウント値の差は59731−9901=49830だから
     m=1.64-2.5\log_{10}\frac{49830}{57924}\simeq1.8
    となって、うーんちょっと暗く見積もりすぎかな?と、そう簡単にはいきません。

他の三つの比較星を使った結果を全て平均して、1月12日夜のベテルギウスの明るさは約1.7等と見積もりました。

よければ皆様も、お試しください。

 

RASA11''でボーデ銀河を再撮影、片ボケ

前置き

昨年末、800mmF4の鏡筒と294MCの組み合わせでM81を撮影していました。

露光時間が40分と短かったにもかかわらず、画像処理の過程で周辺の分子雲がうっすら浮かんできたのが予想外でした。といいますのも、この領域は過去にデジカメで何度も撮影していて、その経験からすると40分程度の露光では、分子雲は決して写らないと思い込んでいたからです。

生データを出力するCMOSカメラは、こういった淡い構造の描出に強いのかもしれません。(対してデジカメは、ひょっとすると画像処理エンジンのノイズ処理が何かしらの悪さをして、淡い構造をけしてしまっている(?))

というわけで、元旦の撮影では、ボーデの銀河付近をみっちり3時間超露光しました:

確かにモクモクしたけども・・・

まずは結果から:

M81, 82 and NGC3077

Date: Jan. 1st, 2020
Location: Miyagi, Japan
Optics: RASA 11" + Heuib II 
camera: ASI294MC pro
mount: Takahashi NJP with Mgen auto guider
Exposure:gain 200, a stack of 50flames x 240 sec.
Sensor Temp. -10deg

NGC3077も仲間にいれてみました。処理はPIのMaskedStretchとarcsinhStretchに加えて、ColorEflexProの構造強調を少々かけています。それほど無理をしなくても、モクモクが浮き上がってきたのは満足。

が、しかし。画面右側がかなり酷く片ボケになっていることに、目ざとい皆様は気づかれたことと思いますorz。画像は右側1/4ほどをトリミングしてます。

片ボケ

F2.2のRASAは、ほんのわずかなエラーも許してくれず、この鏡筒の厳しさを痛感しております。これを使いこなしている方々は本当にすごいです。

以前もマウントアダプターのガタつきが原因のスケアリングエラーを経験していて、これについてはクリアできた思っていたので、上の結果には少々落ち込みました。

まさか。と思って、以前、まったく同じ光学系の組み合わせで撮影していたM33を見直して見ます

M33 re-postprocessing
294MC+RASA11'' with Heuib II フィルター

あ、これも片ボケしてしまっている(気づいてなかった…)。拡大してみると、

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左右の違いはありますが、明らかに左側は微光星が肥大してます。

原因の考察

これまで、RASA11''で撮影した結果を一通り見直して見ますと。

  • Tリングを介して60Daを取り付けた撮影ー>片ボケなし
  • ZWOの接続リングを介して294MCを取り付けた撮影
     ー>フィルターなし:わずかな片ボケ
     ー>フィルターあり:大きな片ボケ

といった結果です。どうやら片ボケの原因はZWOのマウントアダプターにあり、フィルターがそれを増幅しているのでしょうか?

現状の接続では、スケアリングを調整する機構はなく、何かを挟み込むとか、場当たり的な対応しかできなそうです。困りました

 

 

 

 

 

 



 

 

 

FC-76のレビュー

元旦にファーストライトを行なった、FC-76(レンタル品)の性能を見渡して見ます。

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外観を眺めて手に取るだけで、ニヤニヤしてしまう作りの良さがあるなあと、感じます。鏡筒バンドや接眼部が、鋳物で作られているというのがなんとも良いですね。

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刻印を見ると、製造は1997年。現行のFC-76DSの二世代前の製品ということになりますか。

76Dレデューサーを取り付けて、焦点距離は438mmのF5.8。光量60%のイメージサークルはφ36mmということなので、フルサイズはカバーしていないことになります。

ファーストライトはしかし、EOS6Dで行いました。先日の構図失敗のIC348の撮って出しがこちらです:

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FC-76 + 76Dレデューサー、EOS6Dの撮って出し。ISO3600 300秒露光

撮影日のシンチレーションは最悪の部類でした。輝星に目立つ「割れ」は、前玉に飛び出している錫箔が原因と思われます。(コメントを受けて追記:この手のタイプの割れは、レデューサの口径が小さいことによる口径食が原因とのことです。錫箔は前玉に3枚入っているので、普通なら6本の光条が出るはず)これはマスクをして後日検証予定。最四隅の減光はけっこう激しいです。

つぎに、星像は・・・

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ピクセル等倍、中心と四隅の500pxを切り出し

フルサイズ周辺までほぼ丸くて、収差もあまり感じられませんね。

フラット画像も撮って見ました:

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液晶ディスプレーによるフラット画像

こんな感じ。この写真と、先ほどの撮って出し画像を割り算して。。。

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フラット補正後

さすがに、四隅は補正しきれてませんでした。これだけフラットになれば満足です。フルサイズでもあっさり補正が決まってしまうあたり、光学系の素性の良さを感じずに入られません。

 

とうわけで以上です。次回はこれでカモメ星雲か、バラ星雲と撮って見たいと思います。

元旦は、神割崎からスタート!

「年末年始は、いつでも出撃できるように準備しておくこと。」

顧問は、まだ連絡のあるOBや部員関係諸氏に伝達しておりました。みなさま「了解です」とお返事され楽しい撮影会になりそうだなと楽しみにしておりました。

晦日の東北地方は荒れた天気に見舞われて、その翌日に安定した晴れの予想。

「よし。元旦に神割崎です。月没前の20時には集まるようにしましょう」

しかし、その追加伝達に従ってやってきたのは、あ氏だけでした・・。無理もないか。

あ氏の紹介

あ氏は4年ほど前に本校を卒業し、現在は某レンズメーカに務める筋金入りカメラオタク。社会人になってから天体撮影に取り組んでいます。今後、このブログにも頻繁に登場することになるでしょうから、ここで紹介しておきましょう

氏のブログ、グラスノスチ.comです。Zeissのアポゾナーと、非改造の5D mk4、スカイメモRの組み合わせで撮影されています。昨年の暮れ、会社の同僚からタカハシの屈折を買い受けたそうで、これから本格的な直焦点撮影に入りごもうとしています。

しかしのその鏡筒は、いま本校天文部の元にあります。

タカハシの屈折

ある日、あ氏から連絡がありました

赤道儀を購入するまでの間、この鏡筒をお預けしますので、有効利用してくれませんか?」
「うん。別にいいよ」

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ばーん!唐突にFC76がやってきました*1!憧れのタカハシの屈折です。レデューサーもついて438mm F5.8です。元旦はこれを使って、NGC1333とIC348を撮影しました。

悪夢の構図間違い

IC348 and Perseus zeta

Date: 1st Jan. 2020
Location: Miyagi
Camera: Canon EOS 6D(mod)
Optics: Takahashi FC76 76D reducer 438mm F5.8
Exposure: 300sec. x 33flames (ISO3200)
Guide: Kenko SEII, PHD2 guiding 

天リフの「みんなで100時間企画」、500mm部門のお題になっているNGC1333とIC348を撮影したつもりが、IC348とペルセウス座ζ星を撮ってしまいました。構図のミスです。淡い対象なのでライブビューでまったく確認できないんですよね。

先日はMamiyaの500mmで撮影して、これもスケアリングエラーで失敗してました。2連敗で予選敗退です。もうしばらく撮影することはないでしょう。

反省の時間

ここ数回の撮影の失敗。原因は

  • アリガタとカメラの固定ネジの緩み
  • フィルターの締め込み不足
  • 構図の事前確認不足

の二つ。どちらの本当に凡ミスです。慣れによる慢心と中弛みですよ。

撮影にミスが重なると、画像処理でストレスが溜まって、ついついやりすぎになってしまうような。うえのIC348も分子雲強調しすぎて、荒れてます。

 

*1:この鏡筒については、後日詳述します

白金台でメガスターを見てきた感想など

成果発表会のついでに、大平貴之さんのメガスターを見ることのできる施設を探していて、白金台にあるプラネタリウムbarを見つけました。ここは夜も営業していて、発表会後の時間帯でも入場できました。

このBARは基本カップル向けに作られていて、座席も二人席しかありません。顧問は二人分のチャージ料金とドリンクを二杯以上オーダーする条件で、一人鑑賞してきました。平日の早い時間帯だったせいか、客は私一人で、カップルたちの中で気まずい居心地のわるさに囚われることはありませんでした。

店内は完全に真っ暗。赤い懐中電灯でオーダー表を見て注文するという天文マニアも納得のスタイルです。奥手のほうの天井が直径5mほどのドーム状にくり抜かれていて、その中心にメガスターが据え付けられていました。

私が着席した時には、「メガスターCLASS」が稼働していました*1。これは100万の星を投影するとのことです。失礼して投影機に近づき、ドームの中心から見て見ますと、なるほど素晴らしい星空を堪能できました。

具体的な感想や推察など

ただ、決して批判する意味でなく申しますと、本物と見間違える星空か?と問われると、そうではないなと。あれは、あくまでプラネタリウムが投影するという前提での美しい星空である、というのが本音の感想です。恐らく理想のプラネタリウムがあるとしたら、それは数百万の輝度と色の異なる光源を搭載し、それらの光をレンズを通して一つ一つ投影するスタイルになるはずです。でもそれは無理なので、実際のプラネタリウムでは、1個から数十個の光源をつかって、星の明るさを投影面積の違いに置換して表現しています。

で、ここからは推測になりますけど、おそらく星の明るさの比をそのまま面積比に置き換えて投影してしまうと、美しい星空にはならない。星景写真でソフトフィルターを使って輝星を強調するように、プラネタリウムの面積比もある種の「デフォルメ化」が施されているように思いました。そのデフォルメ化が見事なセンスで行われていて、バランスよく、かつ本物の星空よりも星座がわかりやすいと思いました。私の好きな「や座」なんて、非常にはっきり見えました。

もう一つ気づいたのは、微光星の投影について。投影される天の川は、目に見えない星々を忠実に一つ一つ投影した点光源の集合体として表現されているということを大平氏の著書で読み、これが一番気になっていました。といいますのも、前述したように、星の明るさは投影面積で表現されるので、目に見えない暗い星は非常に小さい投影面積を持つことになります。そのためには恒星原盤*2に非常に小さな穴を穿たなければならない。しかしながら、小さな穴を通った光は必ず回折するので、原盤の穴を小さくしすぎると、投影される星は逆にぼんやりしてしまうはずです。この事情は、ちょうどカメラレンズを絞りすぎると画質が低下することに似ています。

メガスターはどうだったかと言いますと、スクリーンに近づいて確認したところ、微光星はちゃんと投影されているわけではなくて、それが存在するあたりをぼんやりと照らしているだけでした*3。しかしその星像は人間が実際の星空を見るときの目の分解能とうまく対応が取れていて、微光星はぼんやりしているけれども本物の星空と同じように見える*4。これがすごいと思いました。たとえば肉眼で光のシミのように見える蟹座のプレセペなどは、見事に再現されていました。いわんや天の川をや、です。

 

投影は休憩を挟んで「メガスターラチナム」に切り替わりましたが、ぱっと見は違いがわかりませんでした。プラチナムのほうは、投影する星の数がClassより多いとのことで、若干星座の識別がしにくかったような気がしましたが、そのころには酔いも進んでいたので、勘違いかもしれません。

 

予定より長い記事になってしまいました。2019年度の更新は以上です。みなさま良いお年を。

 

 

*1:同店にはこれの他にメガスターラチナムが設置されている

*2:プラネタリウムの光路に配置される星の配置ごとに穴を開けた板

*3:例えばプレアデス星団は、はっきり数えられる6つの星が投影されていて、その周辺がぼんやり明るく投影されていた。

*4:これも推測ですが、メガスターでは、はっきりとした面積でもって投影される星と、ぼんやりと投影される微光星は別扱いされていて、その閾値の設定が非常にうまく考えられているのではないかと。