天文はかせ幕下

20日の遠征その2:球状星団M13

今月の20日、神割崎での撮影はしばらくぶりの良コンディションでした。翌日に午前休がとれたこともあって、思う存分撮影を楽しめストレス解消になりました。

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かいしんのいちげき」であった獅子座の銀河を撮影中の一コマ。当日ご一緒していたそーなのかー氏が帰宅された後の撮影風景ひとコマ。ちなみに地上風景部分のみDenoizeAIをかけてます。

薄明も迫ってきて、そろそろ撤収しますかね・・・という時間帯。東の空にヘラクレス座が登ってきていました。ちょっと試しにと球状星団のM13を撮影してみました。294MCのgainを120に下げて60秒露光。オートガイドなしで10分ちょっと撮影です

M13

Date: 2020-02-20
Location: Miyagi, Japan
Camera: ASI294MC-pro,
Mount: Takahashi NJP, MGEN guide
Optics:RASA11", HeuibIIフィルター
Exposure:60sec x 12flames(gain120)
processing: Pixinsight, Photoshop

こ、これは!けっこうよく撮れているのでは?

球状星団の画像処理には少し戸惑いがありました。なにせ星しか無いので、画像処理星マスクもStarnet++も必要なく、これまで培った技術が通用しません。ひとまず星のつぶつぶ感を保ちつつ、いかに星の色を出すかを念頭に置いて強調しました。カラーバランスはPixinsightのphotometric Color Calibrationを使いました。またPSのアンシャープ処理が結構効果的でした。

淡い星雲の強調処理ではつらみも多いのですけど、こういう明るい対象をささっと調整するのはとても新鮮な楽しみがありました。露光時間も短くて済みますし、良いものです。

 

RASAと294MCの組み合わせ、ようやく成功!

われわれ天文部の新兵器として、CelestronのRASA 11"と、ZWOのASI294MCを導入したのは昨年の5月頃でした。電子観望に加えて、一般撮影にも使えるようにとの目的で選んだこの組み合わせ、これまで6回の撮影を重ねてきましたが、そのいづれもが何かしらの形での失敗作でした。

失敗の歴史

を振り返ります:

(1)8月25日、NGC6888

Crescent Nebula

ファーストライト。Lフィルターを入れていなかったため、色がちゃんと出ていません。

(2)10月27日、M31

M31_2

これは4枚モザイクの力作でしたが、まだLフィルターの必要性に気づいておらず、色が乏しいです。また、294MCのセンサーキャップの光漏れでダーク撮影に失敗したりして、苦しんでいました。294MC被害者の会の常任理事に就任。

(3)11月22日、M33

M33 Triangulum Galaxy

ようやくLフィルターの必要性にも気づき、さらにHeuib IIを導入。「これは成功した!」と思ったものの、じつは片ボケで左側の星が肥大してます。それに気づくのは2ヶ月後であった。。。

(4)M81&82、1月1日

M81, 82 and NGC3077

星像の改善のために、スパイダーマスクを装着。おかげで右側の星の十字がダブりから片ボケに気づく。よくみたら11月のM33も同じく片ボケだったとorz。画像処理もやっつけです。ぴんとが合ってれば傑作だったんだけど(?)。

ようやくエラーなし

じゃじゃ馬のRASA 11"と冷却CMOSカメラの組み合わせ、どうも時間がかかりすぎたように思ってますが、ようやくエラーのない画像が撮れました。結果をででん!

M95,M96 and M105

M94,M95 and M105

Date: 2020-02-20
Location: Miyagi, Japan
Camera: ASI294MC-pro,
Mount: Takahashi NJP, MGEN guide
Optics:RASA11", HeuibIIフィルター
Exposure:240sec x 37flames(gain200) + 60sec x10flames(gain120)
processing: Pixinsight, Photoshop

20日の夜は、空の状態も今シーズン最高レベル。淡い腕の模様もよく出てくれました。Twitterにアップした画像から、すこし修正しております。

みん100の画像を、さらに強調して見ました

元旦の撮影以来、もう50日ちかく遠征先で撮影できていません。悲しいことです。

 

さて、ひと月ほど前に結果が発表された天文リフレクションズの「みん100プロジェクト」(註:ブログやSNSで繋がっているみんなで協力して同じ対象を撮影し、総露光100時間を目指してみたらどうなるか?というプロジェクト)。本天文部も焦点距離400mmコースのNGC1333&IC348の撮影に寄与すべく、元旦にFC76で撮影しました。じっさいには構図失敗して、あまりお役に立てなかったんですが、その結果は以下でご覧になれます。

NGC1333&IC348の撮影には、全部で7名の愛好家の方々が参加され、総露光時間は27時間。全てを加算平均した結果はこんな感じでした、

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十分に素晴らしい結果です。ですがこの画像は、単純に加算しただけですので、それぞれ数時間の露光で得られた元画像からノイズやエラーが平均化されただけです。つまりさらに強調がかけられるポテンシャルが十分にある筈です。

全画像をレイヤー化した*.psdファイルは、上記のサイトからダウンロードできるようになっており、CC BY-SA*1が宣言されてます。ですので、ちょっと遊んで見ました。

ストレッチには、最新の流行手法をふんだんに取り入れました。だいたい以下のような流れです。

  1. PixinsightのArcsinhStretchで軽く強調
  2. 1.に対してStarnet++を施して「星消し画像」と「星だけ画像」を取得する
  3. 「星消し画像」にPixinsightのHDRMultiScaleTransformをかけて、構造を強調
  4. PSで「星だけ画像」に明るさの最小値と彩度強調をかけて、星像を調整
  5. 3.に4.を重ねる。
  6. トーンカーブで、「でてこいやぁ!」とさらに強調。
  7. 最後に体験版のTopazDenoiseで、仕上げ

そして得られた結果がこちら:(自信を持って)ででん!!!

IC348 and NGC1333

いやー。自分の撮影した写真じゃないので好き放題言いますが、これ凄いですよね。ASTROBINの"Image of the day" を探しても、なかなかこのレベルのは見つかりませんでした。

処理した感じでは、もっと強調できそうです。腕に覚えのある方、試して見てはいかがでしょうか?

 

*1:作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求し、作品を改変・変形・加工してできた作品についても、元になった作品と同じライセンスを継承させた上で頒布を認める。

スカイメモRは偉い赤道儀です

背景

卒業生のA君から貸与されているタカハシのFC-76屈折望遠鏡。彼はそれを会社の先輩から買い受けたそうな。しかしすぐに撮影に取りかかれない事情がありまして、A君はスカイメモR(以下S-mR)*1しか所有していないのです。

「僕が,次回のボーナスで赤道儀を買うまで,これを有効利用してもらえませんか?」

彼からそんなありがたい申し出があって、我々の部にはFC-76があるという話は,いぜん書きました*2

FC-76はレデューサー使用で焦点距離438mm,カメラとバンドを加えた重さは4.2kg強。一方,S-mRの公称の耐荷重は2.5kg*3しかありません。普通に考えたら載りません。しかし顧問の経験では,これまでS-mRに裏切られたことはなく,いつも期待以上の性能で答えてくれました。

ひょっとしたらガイドしてくれるのでは?そうすればAくんも新しい赤道儀を購入する必要もなく、代わりに欲しかったDC-S1Rも買えるというものです。

スカイメモRのポテンシャル

顧問のこれまでの実績では,f=250mmくらいのレンズならノータッチガイドで3分は余裕でした。

さらなる長焦点についても前例はあります。たとえば,RNA氏は強度的にはRに劣ると思われるスカイメモSにf=480mmの鏡筒を載せて,6分5分の露光でも星を点像に納めています(!)。下記サイトをご覧いただくと,ポタ赤で撮影したとは到底信じられないようなDeepSky写真をごらんいただけます:

それなら,過積載とは言えS-mRにFC-76ガイドも十分可能でしょう。

スカイメモRで一軸オートガイド

とはいえ、さすがにノータッチガイドは厳しいと予想されます。ちなみにS-mRにはオートガイド端子はついていません*4。そこでヤフオクを利用しました。以前、NJP赤道儀でオートガイドを行う際にお世話になった方*5が、S-mRで一軸ガイドを行うためのアダプタを出品してくれています。今回はこれを即購入して使用しました。

機材のセットアップはこんな感じです

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三脚はslik professional design-iiで、これは台座にコルクが貼っていないのが利点で、もっぱらSm-R用に使っています。その上にKyoeiの低重心ガイドマウントを介して、S-mRを取り付けています。極軸合わせは、Sm-Rの極望をつかってマニュアルで合わせており、ドリフトアラインメントやpoleMasterは使ってません。ガイド鏡は親子亀式で、カメラはSigmaFpです。

結果

先日、よく晴れましたので月光の下、庭先でテストを行いました。ほぼ完全な無風で、シンチレーションも冬場にしてはいい方でした。

ガイドグラフはこんな感じ、

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うん、赤緯はあさっての方向に行ってしまいますが、ガイド自体は良い感じです。対象はオリオン大星雲で、3分露光を7枚撮影しました。そのうちの6枚を、ピクセル等倍で並べて見ます:

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完璧とまでは言えませんが、これくらいのガイドエラーならコンポジット後には真円になるでしょう。

終わりに

というわけで、スカイメモRはfc-76+reducer+フルサイズの組み合わせを余裕でガイドしてくれました。

最後に、18分露光の最終結果を。

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Date: Feb.12th, 2020
Location: Natori, Miyagi, Japan
Optics: Takahashi FC76 
camera: Sigma Fp
mount: Kenko SkyMemo with PHD2 guiding
Exposure:ISO1600, a stack of 6flames x 180 sec.

庭先撮影にしては、なかなか仕上がりました。Aくん、新しい赤道儀買わなくても良いかもです。

*1:顧問が購入を勧めた

*2:元旦は、神割崎からスタート! - 天文はかせ序二段(仮)

*3:下記サイトを参照www.kenko-tokina.co.jp

*4:スカイメモSにはオートガイド端子あります

*5:https://auctions.yahoo.co.jp/seller/good300speed

ベテルギウスの庭先測光、ここ半月の推移

測定精度的には、疑問符もある庭先での星の測光ですが、同じ条件で継続的にとり続ければ、その相対的な変化についてはある程度信頼しても良いでしょう。

ここ半月ほどの測定結果をグラフにして見ました。

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うーん、そろそろそこを打ち始めたような?

二月に入ってからは月明かりの影響のせいか、バラツキが大きくなりました。とくに2/4の1.8等という結果は、何らかのエラーかもしれません。毎夜、ベテルギウスを見るのが楽しみでなりません。

金星と、ごく個人的な古い思い出

2月6日、強い寒気が降りてきてようやく冬らしい寒さに見舞われました。会議が終わったら、もう5時近く。西空は澄んだ夕焼けで、宵の明星が輝いています。

「ちょっと撮影してこましたろ」

と、顧問はシュミカセが設置してある屋上に出ました。部員たちはテスト週間でお休みです。

実は、金星の撮影は初めて。望遠鏡を向けたのも、最後はなん年前だったか? Meade経緯台の間怠こしいアライメントを済ませて、まずは眼視。半分よりちょっと太った姿がごく小さく横たわっていて、眩しいくらいです。凍える寒さのドームの中で、ひとり金星の姿を眺めていたら、30年ちかくも前の思い出が急に蘇ってきました。

 

月光天文台は、静岡県函南市にあります。顧問が中学2年生であったころ、友人と二人で電車に乗って、その天文台の観望会に参加したことがありました。広場に月の重力を体験できる遊具があって、すこし早く着き過ぎた僕らは日が暮れるまでそれで遊んでいました。季節は初夏のころだったような。しかし、それ以外のことは何にも覚えていません。

 

自身の海馬を信じるならば、中学生の私が月光天文台で見たのは金星だったのでしょう。stellariumで28年前の5月頃の夕空を調べて見ました。

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当夜の金星の形は、

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こんなでした。

 

さて前置きが長くなりました。6日の夕刻に撮影した金星です。

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(撮影データは後ほど記載します)

うーん、シンチレーションが悪くて、形がわかる程度。金星って、こんなもんでしょうか。紫外で取らないと模様は見えないのでしたっけ?

RASAの片ボケの原因

元旦の撮影では、RASA11"と294MCproの組み合わせで気合を入れ、ボーデの銀河を撮影したところ、片ボケで敗亡・破滅しました。

タカsiさんやKyoeiOsakaのSさんからもアドバイスいただいて、原因を3つ考えました

  1. リテーニングリングの締め付けすぎ
  2. ZWO製のEFマウントのスケアリング
  3. RASA11"の光軸のズレ

まず1.からご説明いたします。下の写真は、RASAのカメラ取り付けの様子です。一番左の大きいリングが「リテーニングリング」。そこから右へ順に、「M48カメラアダプター」「Tリング」「EFマウントアダプター」「延長筒1」「延長筒2」です。6つもの接続リングをへて、赤いカメラを繋げています。

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このリテーニングアダプターを、顧問はけっこうがっちりと締め付けてました。というのも緩すぎると少し力を加えただけでカメラが回転してしまうので。しかし、マニュアルを見直して見たら、「リテーニングアダプターを締め付けすぎると、補正レンズが歪んで像が乱れるので、程よく締め付けてください」とあるではないですか。それが原因?

 

次に2.。私の手元にあったZWOのEFマウントは、なんかちょっと作りが良くなくて、実際に装着してもすこし緩く、カメラが「遊び」ます。これについてはKyoeiのSさんに相談したところ、「最近、このEFマウントがモデルチェンジなされた」との情報が。早速注文して、そのマウントを手に入れました。

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左が古い方。右が新しい方です。質感的には新しい方がはるかによい感じで、装着時も程よく硬い手応えがあって、カメラもしっかりと固定されます。

 

最後に3.については、トライバーティノフマスクをこしらえて、現場で星像を確認しました。

ショーモない結果

結論から書きますと、上の三つの原因は全てハズレでした。原因は冒頭の写真の「延長筒1」と「延長筒2」の間にほんの小さなバリがあったためだったようです。

ほんとすみません。

そのバリは、後天的に顧問がリングを落下させるなどして発生したものと思われますが、とにかくそのせいで0.1~0.2mmほどのスケアリングズレが生じてしまっていたようでした。

どうもこういうポカミスに足元をすくわれることが最近多いです。

でもでも。新旧のEFマウントの品質の差はかなり大きく、その違いも片ボケに少なからず影響していた可能性があると推察しています。古い方のマウントを使われている方は、新型に買い換える価値は十分にあると思います。

あと、片ボケのほとんどない状態でも、延長筒内にフィルターを入れると、片ボケがわずかに増大することも認められました。玄天とかの薄いフィルターを使うと軽減できるのでしょうか?

記録

以下は備忘録。今回の検証結果を残しておきます。

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RASA11"+294MC、片ボケがある状態でのバーティノフマスク像。中心でピントを合わせると、左側では真ん中の光条が下側に、右側では上側にズレているのがはっきりわかる。

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上の写真のバーティノフマスクを外した場合。左側は微光星がわずかに肥大している。

 

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マウントを交換して、スケアリングエラーが解消された状態での星像。微光星の大きさが全面でほぼ均一になっている。

 

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トライバーティノフマスクをつけて撮影したカペラ。光軸は問題なさそうである。

 

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最後に、ほぼ撮って出しの獅子座トリオ。片ボケも認められない様子。