天文はかせ幕下

12日のペルセ群

星に関係することなら,どんなこと好きかと問われれば勿論そんなことはありません。顧問の好みでは,ISSプラネタリウム,そして流星群が興味の的から外れております。

その理由について,読者のみなさんが興味を持つかどうかわからないけれども:たとえばISSは単なる人工物であり,しかも宇宙開発が人類にとって必ずしもプラスになると思えないから。プラネタリウムは嫌いというわけでなくて,積極的には見に行かないなという程度。流星群は「チリが断熱圧縮で燃えているだけでしょ。」程度に思っていました。

 

さて,8月12日に神割崎に行きました。目的は新赤道儀のCEM70GにRASA11"を載せて,NGC6888を狙うこと。しかし,アライメントと自動導入,オートガイドをまともに動かすことができず,本命の撮影を断念。(CEM70Gはいろいろと扱いにくいところのある赤道儀であるなと感じてますが,詳細は全容が明らかになったのち,まとめて報告します。)坊主帰宅を避けるべく,南向きに広角カメラをむけておりました。

Perseid meteors 2020

月の出までの三時間ほどタイムラプスを撮影し,そこに映り込んでいた流星の中から比較的明るかったものを12個,切り出しました。一つのコマは約500px四方です。画像はISO6400,F2.8で15秒露光。

方向からして全てペルセ群とおもいます。写真に撮ると,明るさだけでなく色も違うのですね。それはチリを構成する元素の違いを反映しているのでしょうか?面白いかも。

実は流星をまともに撮影できたのは,今回が初めて。明るい広角レンズ( SIGMA 12-24mm f2.8 DG DN)を手に入れたことが勝因になりました。いままで流星群に興味を持っていなかったのは,単に写すことができなかったからかもしれません。

 

今シーズン初、木星と月

子供を寝かしつけたあとの寝室にて夜9時過ぎ。窓ごしの隣家のうえに木星土星が並んで見えています。一息ついて瞬きの様子を確認。うーん、ビール飲んで寝たい。

梅雨明けに衝を過ぎた木星の撮影のチャンスを伺っていました。ここ数日、シーイングのよい夜が続いているようようです。南方の島で大きな火山が噴火している影響なのか、悪化している透明度は、惑星撮影にはそれほど影響しません。結局、自転車に乗って10分ほど、夜の学校の屋上にやってきたのです。

屋上のドームに収まっているのは、MeadeのLX-200という古いシュミカセです。これのアライメントがまだるっこしいのですね。この季節、経緯台のシステムは

「まずアークトゥルスを導入せよ」

と言ってきます。それは簡単ですぐできます。しかし2つ目に必ずマニアックな知らない2等3等の星の導入が命じられるのです。この日は

「トゥバンを導入せよ」
「知らんわそんな星!」

と三脚に蹴りを入れたくなります。望遠鏡を振る前に、手動でドームの屋根を回転させるのも時間がかかり、アライメントには、いつも30分以上かかってしまいます。その間に曇ってしまったなんてこともよくあります。

結局、トゥバンは仙台方向の光害の中で霞んで見えず、1スターアライメントで妥協したら、追尾精度がわるくて難儀しました。そんなこんなで撮影した木星です:

Jupiter 2020-08-05

Date: 2020-08-05, 22:50(JST)
Loctaion: Miyagi, Japan
Camera: ZWO ASI174MM
Optics: Meade LX200-30ACF, Kasai 2x Barlow, Barrder LRGB Filter
Exposure: 0.025sec. gain 400, 2000flames 50% stack
Software: WINJUPOS( derotation and LRGB comb.), Autostackkert!, Registax6

シーイングはそこそこよかったのに、こんなものでした。薄雲越しですこし暗く、露光を伸ばさないといけなかったためにフレーム数が稼げませんでした(この翌日、透明度の良い条件でもういちど撮影したら、今度はシーイングが圧倒的にわるくてボツ。)右下が青っぽくなっているのは大気分散のせいでしょうかね?モノクロカメラによるLRGB合成は、干渉膜フィルターを使っていても、フィルターごとにピント合わせが必要で、撮影のスピード感が足りない様子です。

ついでに月も撮ってみました:

The moon 2020-08-05

Moon 2020-08-05,

Date: 2020-08-05, 23:22(JST)
Loctaion: Miyagi, Japan
Camera: ZWO ASI174MM
Optics: Meade LX200-30ACF, Kasai 2x Barlow, Barrder R-Filter
Exposure: 0.01sec. gain 200, 3000flames 30% stack
Software: Autostackkert!, Registax6

木星と同じ光学系で撮影しています。月の方が解像しているように見えるのは、一枚あたりの露光時間が木星の1/25と短いせいでしょうか。gainをあげて、露光時間を短くしたほうが良いかもしれません。周辺がぼやぼやなのは、スタックが上手く行っていないせいだと思います。

 

撮影後、一等星をつかって光軸を確認したら、すこしズレてました。トライバーティノフマスクで念入りに合わせましたので、次回の撮影でその結果が発揮されるかどうか。

 

天童高原にて、ふたたびNeowise彗星

19日の日曜日の夜は、早い段階から山形・秋田での晴れ間が予報されていて、鬱憤の溜まっていた天文ファンがNEOWISE彗星のの撮影に押し寄せた様子でした。ある情報では、蔵王刈田岳山頂の駐車場は車でびっしりだったとか。

今回は自前の軽い機材を持って、部員ではなく家族帯同で天童高原を撮影場所に選びました。いつものそーなのかー氏と、N氏といっしょです。N氏は最近東北地方に転勤され、新たに我々の撮影仲間になりました。結構有名な天文ファンの方です。

 

こちらは、高原からの西空の様子です。彗星が見える方向には天童市の街明かりが重なります。蔵王山頂では山形市が重なるので、それよりはマシではとこの場所を選んだのでした。

f:id:snct-astro:20200719193025j:plain

 

やがて薄明の中から彗星が姿を表しました。 

f:id:snct-astro:20200724110326j:plain

f:id:snct-astro:20200724110356j:plain

 

今回の撮影。70mmのマクロで彗星の全体像を撮影しましたが、光害の影響がひどく、シンクロニックバンドもほとんど見えない状態で処理する気になりませんでした。かわりに、広角で撮影していた薄明の夜景と彗星の組み合わせがお気に入りの一枚です。

Comet NEOWISE on 19t July

Date: 19th July
Optics: SigmaFp + Sigma 14-24mm F2.8 DG DN (24mm F2.8)
Exposure: 12sec ISO1600,
pixinsightにて5枚を彗星核基準スタック後、時間的に一番遅いフレームの地上部分を合成。

 

もし次回があるとしたら、最低でも朝日町くらいまで行かないとダメですね。

ネオワイズ彗星:明けと宵

毎年同じことを書いているようで恐縮であるが、2020年の夏も日本列島は厚い雲に覆われ続けていた。表題の彗星の到来は実に唐突な出来事であった。日本中の天文ファンが、空を呪っていたと思う。いつはてるとも知れない呪であった。

Day1: 明けの彗星を追って

7月10日。秋田北部から青森にかけての晴れ間が予想されていた。未明の2時半ころに北東から昇ってくるネオワイスを狙って、遠征を計画。名取を前日20時に出発して北進。

f:id:snct-astro:20200718174711p:plain

顧問はもともと、ロングドライブは得意ではなくてちょっと無理してしまった。現地で1時間ほど撮影場所を探索し、彗星が顔を出す頃には雲と霧で覆われていた。

f:id:snct-astro:20200710023904j:plain

この霞の向こうに彗星が。残念だが諦めよう。帰路も道のりは長い。

この日、青森まで行けば晴れていたといふ。

Day2: 宵の彗星を追って

秋田遠征の敗亡は、本当に辛い思い出でありました。twitterなどでどなたかが撮影した彗星の素晴らしい写真を見るにつけ、悲しい気持ちになりました。数日が過ぎました。明けの彗星はだんだんと条件が悪くなり、徐々に暗くなる予想です。代わりに夕刻の北東の空に、よく見えるという。

そんな7月16日、宮城県は15日連続の曇り空に沈んでいた。がしかし日本海側が晴れるという予想があり、唐突に観測計画を立てたのである。

f:id:snct-astro:20200718180246p:plain

目標は山形県湯野浜の海岸。学校の車を借りて、16時半に学校を出発! 今回は1年生の新入部員6名を連行。最後の肉眼彗星であるヘールボップの頃には、まだ生まれてもいなかった彼ら、果たして彗星は見えるのか?

県境の笠谷トンネル手前までは、霧雨模様。

f:id:snct-astro:20200718181535p:plain
トンネルを抜けると、、

f:id:snct-astro:20200718181820p:plain

うっ!まぶしいっっっ!

f:id:snct-astro:20200718182219p:plain

こっちは青空だ!何週間ぶりだろう!

f:id:snct-astro:20200718182011p:plain

湯野浜海岸にて

到着したのは7時過ぎでしたか。温泉地の海岸は美しい夕焼けに染まっています。地元の高校生たちが、海岸で談笑していたりしました。

f:id:snct-astro:20140115055829j:plain

海岸沿いの歩道に望遠鏡をセットして、北西の空を見つめています

f:id:snct-astro:20200718230850p:plain

お互いにまだ微妙な距離感で、彗星をさがす1年生たち。やがて雲も切れ、薄明に埋もれていた彗星が、徐々に姿を表したのでした。

新兵器のa7Sでの動画をご覧いただきます:

肉眼でもはっきりとした存在感で見えていました。大雑把な印象では、顧問が高校生の時に見たヘールボップ彗星と同じくらいの明るさだったように思います。感動をどう言葉で表現したらいいのか、ちょっとわかりません。

結果

では撮影の結果を。まずは一枚ものの星景色です

Comet NEOWISE on the west coast of Japan

Date: 2020-7-16
Optics: SigmaFp + Sigma 70-200mm F2.8 DG DN, (85mmF2.8)
Exposure: 10s(ISO1600), single flame

そうして、彗星だけのアップ写真:

Comet NEOWISE(C/2020 F3)

 Date: 2020-7-16 12:00~12:06(UTC)
Location: Yamagata, Japan
Optics: EOS6D, Aposonner 135mmF2(F2.8)
Exposure: ISO1600, 20s x 13flames (comet stacking)
Processing: Pixinsight+Photoshop

もうひとつ、これは一年生がスマホで撮影したものですが、驚きの画質だったのでご紹介:

f:id:snct-astro:20200718230757p:plain
camera: google pixel4 (smart phone)
optics: 4.38mm F1.7
exposure: 4min, ISO377

スマホとペットボトルに立てかけての固定撮影だそうです。これにはびっくりしました。

 

21時ころ、まだ水平線上にはっきり見えている彗星を後にして、撤収しました。今回同行した1年生はみな元気な性格で、しばらくはこの部も安泰しそうです。彼らにしてみれば、コロナの影響で入学式もなく、4月から自宅待機が続いていました。「部活でこんな楽しい思いをしたことがない」と言っていた学生もいましたから、顧問もいろんな意味で満足でした。



 

 

第2回:発掘フィルム写真のご紹介

本校の写真部の暗室で見つかった大量のカラースライドを、気が向いた時にご紹介するシリーズです。

1回目のハレーすい星に続いて、2回目は皆既月食の写真です。

f:id:snct-astro:20200708183101j:plain

若干、ピントがずれている感じがありますが、月の両サイドに赤い星と青い星が並んでいるのが印象的です。

日本で観測された皆既月食を、1970年代から辿って調べてみました。結果この写真は、1982年1月10日朝5時ころのの月食であるとわかりました。

f:id:snct-astro:20200708220028p:plain

右の青い星が双子座δ星、左の赤い星がHIP35699です。写真の角度からして三脚での固定撮影。レンズは300mmくらいですね。

 

天体電視観望遠征! 天文部初の動画作品。

先日,宮城県の神割崎に出かけて来て,天の川近辺の電視観望をして来ました。その様子を動画にしてまとめましたので,アップいたします。

 唐突にこのような動画を作成したのは,近頃のコロナウイルスの流行が要因です。

本天文部は,昨年度から中谷財団からの助成金をいただいていて,一般向けの観望会を企画していました。いうまでもなく,そういった「対面型」観望会の開催は難しくなっています。観望会は屋外ですし,敢行することはできるでしょうが,そもそもお客さんが来てくれるかどうか・・。

一方で,ZoomやTeams,Youtubeライブ配信で観測の様子をお届けするというのは,一つの方法ですね。近頃の学校の授業ではその形式を「双方向型」と呼んでいます。

で,我々の部では「オンデマンド型」を行うことにしました。それがこの動画です。

電視観望も「光害の強い空なのに,こんなに見える!」という文脈で紹介されることが多いですが,今回の企画では,ガッツリ暗い空で電視観望しています。その辺も見所になると思います。また内容は星だけではないです。「夜に日常を抜け出してお出かけすること」の楽しさを盛り込んだつもりです。これをみてくださった方が,「私も天体観測行きたいなー」と思っていただければ大成功です。

ハレーすい星

私が天文部の顧問になったのは2010年頃でした。

その時期はあまり活発な部ではありませんでした。屋上のドームで仙台市の夜景を見るか、「SEGAサターン」に興じているというのが主な活動内容だったようです。しかし、残された数々の機材や資料からすると、1980年代にはかなり熱心な「ガチ天」が複数在籍していた様子があります。少なくともその頃は、部費でタカハシやニコンの望遠鏡を買い、水素増感(?)とかやりながら、それらを使いこなしていた部員がいたようなのです。

しかし一つ謎がありました。それはフィルム時代の「作品」が一切残されていないことです。うーむ、やっぱり昔からこの部は屋上のドームでファミコンメガドライブでもやってたのでしょうか?

ところで私は今年度から、写真部の顧問も兼任することになってしまいました。そこで、同部と天文部を掛け持ちしているキムラくんに案内してもらって、彼らの暗室を見せてもらいました。掘り出し物のレンズでも落ちてないかなーなんて。するとついに発見したのです!大量の天体写真のスライドを。そうか、当時の天文部員は、写真部の暗室で作品を現像していたのですね!

あまりにも大量なので、全ては紹介できませんが、一枚だけ印象的な写真を載せておきます:

f:id:snct-astro:20200625180302j:plain

うーん、この彗星はなんだろうなあ。

すぐにはわからなかったので、顧問は事情を説明してtwitterにアップしました。すると30分ほどで木人さんから「ハレーすい星ですね」との返信。カノープス氏やその他たくさんの人が反応してくれて、1986年3月18日の明け方に撮影された写真であることまで判明しました。しばしノスタルジックな思いに浸ったのでした。

スライドはまだ大量にあって、なかには「コホーテク彗星」と書かれた木箱もあります。整理してから、順次紹介していきたいと思います。OBの方、このブログを見ていたら連絡くださいねー