天文はかせ幕下

M87と中心部のジェット

南岸低気圧が通過していった先日の金曜日。夜にかけて天候が回復し、windytyが予想する上空の気流の様子もよし。月は上弦*1でしたので深夜からの撮影です。子供が寝た後に、のそりと家を出ました。目的地は神割崎「下段」。後部座席にMT−200とNJP赤道儀を装填して一路北東へ。

神割崎下段と申したのは、ここの駐車場は上下2段構造になっているからです。通常は公道から遠く、旅館の自販機の照明も避けられる「上段」がよく使われます。一方の下段は東風を避けるのに有利です*2。長焦点撮影の時は「下段」を使います。

当日、「上段」にはひとり同趣味の方がいらして、お話ししました。このブログもたまに読んでくださっているそうで、うれしい限り。顧問が最近始めたtwitter上でお仲間になりました。

さて、今回はですね、先日ブラックホールの「撮影」で話題になったM87の中心部のジェットを月没前に撮影。そのあと、前回失敗したM51を薄明ギリギリまで狙います。その間、ポタ赤+250mmレンズでアンタレス付近も撮っておこうかと思っておりますよ。

M87銀河と中心部のジェット

先日、人類が初めて撮影したというブラックホールがあるM87銀河。おとめ座銀河団のに属していて、春は見やすい天体です。そのジェットは可視光で比較的に明るく、アマチュアでも撮影できるそうです。中心部にジェットの構造が埋もれてしまわないよう、短めの露光時間でささっと撮影しました。

M87 and the jet

Date: 12th Apl. 2019, 23:30~
Location: Miyagi, Minamisanriku 
Camera: Canon 60Da
Optics: Takahashi MT-200 1200mm F6, MPCC Koma corrector
Exposure: 70sec. x 13(ISO1600)
Guide: Takahashi NJP

フルサイズ換算の1800mmで撮影しても、地味な姿です。中心部をピクセル等倍するとヒョロと東方向に伸びるジェットの存在が確認できました。この銀河のように中心部が明るくて内部構造の乏しい天体は、おとめ座銀河団には他にもあって、M84やM86がそうです。そこから類推するとこれらの銀河のなかにもブラックホールがあるのかもしれません。ジェットは噴き出している方向が悪くて、見えないだけとか。

銀河の導入に苦労した話

我々の赤道儀は古いNJPなので、自動導入機能がありません。銀河は手動で導入しています。いまどきそんな方法をとっている人はいない中、最近の顧問の導入技術は職人技の域に達しているのではと自惚れています。M51くらいのイージーな対象なら、1200mmでも一発で中心に入ります。

ところがこのM87には苦戦しました。もう二度と撮影しないような気もしますが、一応導入法をメモしておきます:

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おとめ座銀河団の周辺。ステラリウムより

大雑把な見当は、獅子座のデネボラと乙女座のalmuredin(どちらも2等星)を結んだ線の中心部あたり。さらなる手がかりになるのが、画像に青線をひいたこのT字の星の並びです。この星が7倍ファインダーでも1つの視界に入ってよく見えます。もちろん周辺に散らばっている銀河は肉眼ではまったく見えないので、ISO6400で10秒ほど露光して撮影位置を確認します。今回は、T字の二倍の長さ西に辿って、その後北に向かいマルカリアン鎖を撮影。その銀河の位置関係から、M87にたどり着きました。30分くらいかかりました。

*1:上弦と下弦というのは、何に対して上とか下とか言っているのだろう。一向に覚えられない。

*2:夜は陸風ですので