天文はかせ幕下

ソンブレロ・チャレンジ

春夜のやり残し。

表題のソンブレロ・チャレンジとは顧問の造語で、M104銀河の円盤にある波状の紋様を映し出す挑戦ですのことです。

宮城県では南に低い不利があります。南中高度はおよそ40度。果たしてどうか??

結果

まずは結果から。ででん!

M104, the Sombrero Galaxy

Date:13th, May. 2020 20:40~23:10
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Takahashi MT200 with coma corrector F8
Mount: Takahashi NJP
Exposure: 90sec. x 44 flames (gain 120, -5deg.)

出ましたよ。当日のシーイングを考えれば万々歳の結果です。

撮影の狙い・一部始終

13日は中国からやって来ていた黄砂が南の海上へ去って、透明度は抜群。しかしシーイングは最低。およそ長焦点撮影に適した夜ではありませんでした。

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行きがけに立ち寄ったコンビニにて。空は綺麗だったのです。

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こちらは撮影の様子。そーなのかー氏とごいっしょしました。気温が下がった時のピントの変化を指摘してもらって助かりました。

撮影に用いる鏡筒は、1200mmF6のMT−200です。普段はバーダーのコマコレクターを付けています。今回の撮影では、本来この筒に付属していたタカハシ純正のコマコレクタを引っ張り出して来ました。これだと1600mmF8になります。イメージーサークルが小さい補正レンズなのですが、フォーサーズの294MCなら問題ないだろうと。

M104は立体角あたりの輝度が高いです。周辺には何もなくて、淡い部分のあぶり出しも必要ありません。そこで露光時間は解像度重視としました。F8の暗い筒での撮影で、露光時間は90秒と短めに設定。66枚を撮影しました。Gainも120としました。これでも中心部分はわずかに飽和いたぐらいで、もうすこし短くてもよかったかもしれません。

処理について

フレームの選別

90秒露光x66枚をすべて並べてコマ送りにして見ました。

2時間の間に90秒以上の長いタイムスケールで星が大きくなったり小さくなったりしてます(youtubeの圧縮のせいでうまく見えないかもしれません)。シーイングが数分の長いタイムスケールで変化していることを示しており、ラッキーイメージングの手法は、90秒露光でも有効そうです。

つぎに、PIのSubframeSelectorで打ち出した星の半値幅の推移を見てみます。

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撮影開始から気温が低下してピンずれしていき、横軸indexの20のところでフォーカス調整し直しています。そのあと対象が西に低くなるにつれ、だんだんと半値幅が大きくなっていくのがわかります。index38,39の一時的な悪化はシーイングの影響と思われます。

ちなみに、半値幅がもっとも小さい一枚にSTFをかけて仮強調したのがコチラ:

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うーん、円盤の紋様わかります?はっきり言ってノイズに埋もれてますよね。

Decomvolution

模様のあぶり出しにもっとも効いたのが、PIのDecomvolution処理でした。スタック後に背景だけ整えて、STFで仮ストレッチしたものを切り出して見ました:

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この状態でも、うっっすら模様がでているようにみえます。ここにDecomvolutionをかけると・・・

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模様がはっきりします。が、しかし、同時に周辺背景に浮かんで来たノイズパターンの周期が、ソンブレロの円盤の模様の周期とコンパラです。これはアーティファクトを疑わないといけません。

ハッブルの画像と注意深く比較して見ましたけれど、一応は現実の紋様と相関が見られるので、今回は「写せた」と判断しました。最終画像ではマスクをつかって、decomvolutionを銀河にだけ作用させています。

 

以上でございます。来年はもっとシーイングの良い夜にチャレンジしたいですね。