毎年同じことを書いているようで恐縮であるが、2020年の夏も日本列島は厚い雲に覆われ続けていた。表題の彗星の到来は実に唐突な出来事であった。日本中の天文ファンが、空を呪っていたと思う。いつはてるとも知れない呪であった。
Day1: 明けの彗星を追って
7月10日。秋田北部から青森にかけての晴れ間が予想されていた。未明の2時半ころに北東から昇ってくるネオワイスを狙って、遠征を計画。名取を前日20時に出発して北進。
顧問はもともと、ロングドライブは得意ではなくてちょっと無理してしまった。現地で1時間ほど撮影場所を探索し、彗星が顔を出す頃には雲と霧で覆われていた。
この霞の向こうに彗星が。残念だが諦めよう。帰路も道のりは長い。
この日、青森まで行けば晴れていたといふ。
Day2: 宵の彗星を追って
秋田遠征の敗亡は、本当に辛い思い出でありました。twitterなどでどなたかが撮影した彗星の素晴らしい写真を見るにつけ、悲しい気持ちになりました。数日が過ぎました。明けの彗星はだんだんと条件が悪くなり、徐々に暗くなる予想です。代わりに夕刻の北東の空に、よく見えるという。
そんな7月16日、宮城県は15日連続の曇り空に沈んでいた。がしかし日本海側が晴れるという予想があり、唐突に観測計画を立てたのである。
目標は山形県湯野浜の海岸。学校の車を借りて、16時半に学校を出発! 今回は1年生の新入部員6名を連行。最後の肉眼彗星であるヘールボップの頃には、まだ生まれてもいなかった彼ら、果たして彗星は見えるのか?
県境の笠谷トンネル手前までは、霧雨模様。
トンネルを抜けると、、
うっ!まぶしいっっっ!
こっちは青空だ!何週間ぶりだろう!
湯野浜海岸にて
到着したのは7時過ぎでしたか。温泉地の海岸は美しい夕焼けに染まっています。地元の高校生たちが、海岸で談笑していたりしました。
海岸沿いの歩道に望遠鏡をセットして、北西の空を見つめています
お互いにまだ微妙な距離感で、彗星をさがす1年生たち。やがて雲も切れ、薄明に埋もれていた彗星が、徐々に姿を表したのでした。
新兵器のa7Sでの動画をご覧いただきます:
肉眼でもはっきりとした存在感で見えていました。大雑把な印象では、顧問が高校生の時に見たヘールボップ彗星と同じくらいの明るさだったように思います。感動をどう言葉で表現したらいいのか、ちょっとわかりません。
結果
では撮影の結果を。まずは一枚ものの星景色です
Date: 2020-7-16
Optics: SigmaFp + Sigma 70-200mm F2.8 DG DN, (85mmF2.8)
Exposure: 10s(ISO1600), single flame
そうして、彗星だけのアップ写真:
Date: 2020-7-16 12:00~12:06(UTC)
Location: Yamagata, Japan
Optics: EOS6D, Aposonner 135mmF2(F2.8)
Exposure: ISO1600, 20s x 13flames (comet stacking)
Processing: Pixinsight+Photoshop
もうひとつ、これは一年生がスマホで撮影したものですが、驚きの画質だったのでご紹介:
camera: google pixel4 (smart phone)
optics: 4.38mm F1.7
exposure: 4min, ISO377
スマホとペットボトルに立てかけての固定撮影だそうです。これにはびっくりしました。
21時ころ、まだ水平線上にはっきり見えている彗星を後にして、撤収しました。今回同行した1年生はみな元気な性格で、しばらくはこの部も安泰しそうです。彼らにしてみれば、コロナの影響で入学式もなく、4月から自宅待機が続いていました。「部活でこんな楽しい思いをしたことがない」と言っていた学生もいましたから、顧問もいろんな意味で満足でした。