天文はかせ幕下

ソンブレロ・チャレンジ2021

ソンブレロチャレンジとは

表題の「ソンブレロ・チャレンジ」とは顧問の造語で、M104銀河の円盤にある波状の紋様を映し出す挑戦のことです。何のことか伝わらないかもしれませんので、拙作で説明します。

まず下の写真は7年以上前、我々の部ではじめて撮影したM104です

f:id:snct-astro:20210403105752p:plain

当時は円盤状の構造と暗黒帯が写って満足していました。

しかし様々な作例を見てみますと、その円盤部分にも構造があることに気づきます。それをハッブル宇宙望遠鏡による画像で見てみましょう:

f:id:snct-astro:20210403110202p:plain

Wikipediaより。引用者によりクロップ

あー、目に毒ですけどこの海岸に寄せるさざ波のような暗黒帯の構造です。これに萌えるのです。我々もなんとかこの構造を写出せないか挑戦をしようというわけです。

これまでの成果

うえのM104を撮影してから2年後に、2回目の撮影を試みています。

f:id:snct-astro:20210403102755p:plain

うーん、だみですね。銀河がちょっと太ったという程度です。M104は南中高度が低くて、緯度の高い地方から高い解像度で映し出すのはそれほど簡単ではないのです。

3回目の挑戦は昨年の5月。原町フラワーランドにてで挑戦しました。

そのときの結果はコチラ:

f:id:snct-astro:20210403104958p:plain

MT-200にコマコレクターを取り付けて焦点距離1600mmとし、フォーサーズセンサで撮影しています。その中心部分のクロップです。このころからDeconvolutionを覚えて、スタック後にははっきりしなかった構造を画像処理で浮かび上がらせることができるようになりました。

以上で前置き終わり。この結果を超えることを目指して、今年もチャレンジした次第です。

ソンブレロチャレンジ2021

今年の作戦は

  1. MT-200の補正レンズを外して、ニュートン光学系のシャープな中心像だけを用いること
  2. IR720フィルターと取り付けて、近赤外でL画像を取得すること

の二点です。光学系を純粋な反射のみにすることで、補正レンズによる赤外の収差が問題にならなくなるのがポイントです。

4月1日は比較的シーイングが良さそうでした。自宅の庭から南中前後に2時間ほど撮影できました。

f:id:snct-astro:20210403002126p:plain

こちらはスタック後の画像に仮ストレッチをかけたものです。まず、傾斜カブリがほとんどないということに驚かされます。SQM=20.01の空で月明かりの影響があったにもかかわらず。感覚的には一級の暗い空で撮影しているのと変わりません。

Deconvolutionして処理した結果がこちら:

M104 from backyard by near-infrared imaging

Date:2021-4-1
Location: natori, miyagi(SQM20.01)
Optics: Takahashi MT-200 sightron IR720 filter
Camera: ASI294mc-pro
Exposure: 240s x 25flames(gain 120) -10 deg.

 

わかりにくいので、中心部分をクロップします:

f:id:snct-astro:20210403112452p:plain

どうでしょうか。解像感は出ているものの、円盤部分の構造は昨年の例のほうが、はっきりしているかも。赤外では暗黒帯のコントラストが落ちるという話もあって

(おそらく暗黒帯はチリがレイリー散乱で光を遮っているので、同散乱の影響を受けにくい長波長の光は暗黒帯を透過している?)そのせいかもしれません。

というわけで、ソンブレロチャレンジは一進一退でした。スッキリしないので、今年のIR画像に昨年のカラー情報を重ねた結果を貼っておきます

M104 IR-RGB image

そして中心部分のクロップ(サムネ用)

f:id:snct-astro:20210403113138p:plain

以上です。

来年は、IRフィルタを外して遠征地で撮影してみましょう。それか高地で赤外という手もあるかもしれません、