天文はかせ幕下

アンタレス付近、2021年バージョン

9日の夜、東北地方は寒冷前線が通過して暴風が吹いていました。また南から梅雨前線が迫ってきています。この日の夜の予報は晴れ。

「これでしばらく晴れなくなっちゃう。ちょっと無理してでも撮影しとかないと」

自宅でスマホを眺めながら呟いた顧問に返事をする者はいません。というのは梅雨入りしたらどうせ

「山瀬が吹いて今夜は雲抜けあるかも。ちょっと無理してでも撮影しとかないと」 

なんて言って、結局は出かけることを家族は知っているからです。 

5月の狙いは満を辞して例の場所、「アンタレス付近」です。日曜の夜、南が暗い空を求めて飯館村のこんなところに出かけてきました:

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撮影地のようすです。南が暗いです! Twitterで相互フォローかたから教えてもらった場所なもので、詳しくは申しませんが(とはいえgoogleMapで探せば簡単に見つかります)、アクセスも良くてこれから頻繁に使うことになるかも。

明日は月曜で副業があるというのに、そーなのかーさんと柊二さんといっしょです。仕方ありません、天体写真は我々の生業、本業ですから。撮影中は、このブログにたまにコメントくださるモモさんも奥様と遊びにいらして、少々お話ししたり、楽しい夜を過ごしました。

アンタレス付近

この領域、2年前に蔵王で撮影したのが最後でした。思い出してみます。

Rho Ophiuchi cloud complex
(2年前の撮影結果です)

使ったのはEOS6Dとレンタル品のSigma 105mm F1.4 DG HSM Artレンズです。当時は大満足の結果で、フリッカーでも累計58000アクセスを稼ぎました。

天体写真の楽しみ方は、自分との戦いです。あのときの自分を超えられるか?ひとつひとつ改善するのが楽しいのです。

前回を乗り越えるための、今回の作戦はズバリ「モザイク合成」です。

例えば135mmのレンズである領域を1時間撮影するとします。これに対して約半分の画角の250mmレンズで同じ写野を15分づつ4枚モザイクで撮影して合成したとします。どっちが質の良いデータになるのでしょう?

ちゃんと比較した例はそんなにないと思いますけど、顧問の感覚では後者の方が遥かにいい結果になると思っています。縮小による「ゴマカシ」の威力は絶大です。

 

実は今回、2パターンでアンタレス付近を撮影しました。135mm + APS-Cの2枚モザイクと、250mm + フルサイズの6枚モザイクです。後者の方がデータがデカすぎてまだしあがっていません。前者の方からご覧に入れます

Rho Ophiuchi cloud complex(2021)

Date: 2021-3-9, 5-10
Location: Kamiwari-saki, Miyagi, Iidate-mura, Fukushima
Camera: ASI2600MCpro
Lens: Zeiss Aposonner 135mm F2(F2.5)
Exposure: 180s x 30flames(gain 0, offset 20), 2 panel mosaic
Processing: Pixinsight, Photoshop

さて、今回はちょっと自信ありというのもあって、各所をクローズアップしてみていきます。よろしくお付き合いください。

まずは呪い*1の馬付近です。

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青の彩度はもうちょっとあげた方がいいかもしれませんね。このへんはコントラスト低めですが、そのほうが淡い分子雲がいい感じに見えるように感じます。人工衛星痕、消す気力が起きませんでした。

次はモクモク領域、

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星によって強烈に照らされているんだなーとよくわかります。黄色い部分はアンタレスの明かりでしょう。その中に埋もれている青い星が、がんばって周囲に明かりを投げています。周辺の緑は青と黄色の混色でしょうか?

最後は1番の萌ポイント、M4付近です

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 M4が飽和しないように気をつけました。悩んだのはこの周辺の分子雲の色。緑色になっちゃいました。PIのColor Calibrationを信じてそのままにしたんですが、どうでしょう。きっとこれも青と黄色の混色?と信じることにしました

というわけでお付き合いいただきありがとうございました

*1:ここを撮影すると失敗することが多い