天文はかせ幕下

M16がTwitterで酷評される、の巻

平日の夜に遠出して、体力を削りながら写真撮影をしている。「いったいなんのために?」と問われれば、それは結局のところSNSで「いいね!」が欲しいだけなのかもしれない。

アホかーってお思いか。顧問は夢や理想を追うのをやめて幾年月のおじさん。そんな中年たちは、程度の差こそあれ大なり小なり、皆そんな瑣末ごとに助けられて,人生をいきていると思うのです*1

 

さて,

顧問は6月6日(日)に神割崎へ遠征しました。結果、PHD2とQHY5IILの相性不良で成果はほぼゼロ。 翌日は亡霊の如く出勤し、メールの返信を忘れるなどしました。通常ならば反省するところ、「いいね!」中毒の顧問は、その翌日にはまた蔵王山へ遠征したのでです。アホであります。

撮影対象は、M16「ワシ星雲」です。これをRASA11"と2600mc-Proでバッチリ露光しようという魂胆でした。しかし、またもや山の上で悩むことになります。上記の相性不良が完全に解決できていなかったのです。やむなくiGuiderに切り替えてガイドしたら歩止まり6割。3時間露光して、100分ちょっとしか使えるコマが確保できませんでした。

いえいえ問題はございません。なにせ使用鏡筒はRASA兄貴。彼の100分露光は、通常のレンズの400分露光にも匹敵するのです。バッチリ結果を残してくれるに違いありません。そう思って顧問は翌夜には寝不足頭脳で画像処理。以下の画像をTwitterにアップしたのです。

 

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内心「どやー!」と思っていましたよ。

しかし帰ってきた反応は、「いいね!」ではなくて、以下のように予想を裏切るものだったのです(泣

ぐらすのすち氏「なんか背景が眠いですね。」
Takahiro氏「星の形が変ですね」
もりちゃん氏「なんか、ハイライトがのっぺりしてる」

「眠い」「星が変」「のっぺり」。およそ星の写真を撮る人間がもっとも言われたくないコメントが並ぶではありませんか!Niwaさんとかは優しいので「それはミラー効果ですよ*2」と慰めてくれましたけど、彼らのコメントは正しかったのです。皆さん良い目をしてますねー。

 

どうも原因は、輝度情報と色情報を別々にストレッチしてから合成する"LCS Stretch"にあるようでした(「いちばんはじめのストレッチ」を参照)。この方法、銀河の処理では良い結果を出してくれる一方で、どうも散光星雲に用いるときは気難しいところがあるようです。先日にアンタレス付近を処理した時もそうで、色が豊富な対象では輝度と彩度のバランスが取りにくくなります。上のM16の場合、LRGB合成前の輝度が強くなりすぎ、、それでハイライトの色調がノッペリし、それを補うために変な形でシャープ化をかけたものだから、「星の形が変」で「背景が眠く」なったのかもしれません。これについては後日に機会があれば検証したいと思います。

ともかくLCS Stretchをやめにして、いつもどおりLog StretchとAsinh Stretchを組み合わせる方法に変えたら、全く違う結果になりました

M16 Eagle nebula

Date: 2021-6-8
Location: Mt. Zao, miyagi
Camera: Asi2600Mc pro
Optics: Celestron RASA11"
Exposure: 180s x 38flames(gain0)
Processing: Pixinsight, Photoshop

 

これなら大丈夫かな、と思ってます。それにしても、自分の目が信用ならないことを今回の画像処理で痛感しました。脳内に「絶対的な基準」がないといけないのかなと悩んでおります。 

末尾で恐縮ですが、Twitterにて鋭い指摘をくださった3氏に御礼申し上げます。ありがとうございました。

 

サムネ用

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*1:若い方は、あるいはそんな中年を軽蔑するかもしれません。自分もそうでした。しかし皆さんもお分かりになる時がきます。「幸福に身を委ねるということは、確かにある意味で、敗北の承認かもしれぬ。だが、それは、多くの勝利よりも、はるかに良い敗北なのだ。(サマセット・モーム『人間の絆』中野好夫訳より)」です。

*2:「ミラー効果(ミラーリング効果)」とは、心理学で使われる言葉で「同調効果」または「姿勢反響」とも言われます。 好意を持つ相手のしぐさ、表情あるいは動作を自分が無意識に真似てしまったり、または 自分と同じような仕草や表情を行う相手に好感を抱く効果をミラー効果と言います。[wikipediaより]