自宅撮影は楽しい。週末、PCの画面をWifiで飛ばし、PHDのガイドグラフを肴にリビングでビアやらホイスキーを飲むなんて、はは。とっても素晴らしい時間ですなあ
ホイスキーなんぞ飲みながら、 pic.twitter.com/L40lJTzjwC
— だいこもん (@pochomskii) 2021年11月2日
顧問の自宅は、名取市のとある住宅街にあります。SQM=20.01程度で住宅街としては標準レベルの光害。遠征地へ出かけられない新月期は、庭で明るい対象を撮影して楽しんでおります。
今回のターゲットは、オリオン大星雲です。光害地で有効とされる二つの方法で撮影しました。
- パターン1:Apo-sekor(250mmF4.5)+EOS6Dのツインで、iso100の600秒露光
- パターン2:MT-200 (1200mm F6)+294mc-proで、IR-RGB合成
パターン1はこのブログでもお世話になっているHIROPONさんがよく使われている方法です。光害地でダイナミックレンジを稼ぐために低ISOに設定し、そのかわり露光を伸ばしてSNを稼ぎます。M42のような明るい対象をデジカメで撮る場合は特に有効だと思われます。
パターン2はcokatooさん
が先駆けて始められた方法の応用です。IR(=近赤外)撮影には光害のカットとシンチレーションのキャンセルの二つの効果があります。また可視光に比較して分子雲の散乱を受けにくいので、通常の撮影とは違った質感の写真が得られることも期待できます。ただ、当然モノクロになってしまうので、今回は別にカラー画像を追加撮影してIR-RGB合成をやってみました。
早速結果をご覧ください
パターン1:低ISO長秒露光
Date:2021-11-3
Location: Natori, Miyagi (home garden)
Optics: Mamiya Aposekor 250mm F4.5 (twin)
Mount: Kenko SEII with PHD2 guiding
Camera: Canon EOS6D
Exposure: 600sec. x 20f (ISO100)=total 200min
Processing: Pixinsight, Photoshop
光害カブリは複雑で処理に苦労しましたけれど、それ以外の部分は特に苦労なくストレッチできました。透明度も高かったのが功を奏したかもしれません。そしてお約束のセリフを言わせて下さい。「自宅からこれだけ撮れれば満足です!」。
特筆しておきたいのは、星の処理について。いつもであれば顧問が多用する明るさの最小値によるスターシャープ処理を一切行っていません。今回に限っては必要性を感じませんでした。ひょっとするとこれも低ISO撮影の効果かもしれません。飽和していなければ星をうるさく感じにくいとか?
ちなみに10分露光で撮ってだしのヒストグラムのピークは1/3ほど。ISO100でのダイナミックレンジは確かに広くて、予想以上に飽和部分の面積が小さかったです。
パターン2:IR-RGB撮影
Date: 2021-11-06
Location: Miyagi, Natori
Camera: ASI294mc-pro (0deg. cooling)
Optics: MT-200
Mount: CEM70G off-axis guide
IR)
Sightron IR720 filter
exposure: 180s x34(gain120)
RGB)
Baader UV/IR Cut
exposure: 60s x31(gain120)
こちらはあえて淡い部分のあぶり出し避けて、通常のブロードバンドで撮影したオリオン大星雲とは見栄えの違う画像を目指しました。PixinsightのHDRMT処理で高輝度部を圧縮した後、トーンカーブで中心部がギリギリ飽和するくらいまで強調するという方法を撮りました。
IR撮影の効果は、星の数に表れています
左が可視光、右がIRでの撮影です。
IRで星が多く写る理屈は、この領域に多く分布しているチリによる光の散乱に関係しています。チリによるレイリー散乱の受けやすさ(=断面積)は波長が短いほど強いので、波長の長い近赤外光は可視光に比較してチリの間をより多く通過してきます。なので近赤外でみると、星雲の向こうの星がよく映ることになります。
しかし、透けて見えてくる星には色情報がないので、IR-RGB処理後はすべて白っぽくなってしまいます。この辺は課題ですね。