天文はかせ幕下

陶芸と天体写真

正月、妻の実家で夕食をごちそうになった折、叔父の話で盛り上がった。なんでももう長いこと陶芸に没頭しているとのこと。家庭では自作の皿以外の使用を決して許さず、周囲の知人・親族に作品を配布しては若干困惑を呼んでいるのだそうだ。

かくいう拙宅にもすでに数点、叔父の椀やぐい飲みがあるのだが、今回さらに、妻の実家で持て余されていた幾つかの茶わんを押し付けられ頂いてきた。

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上は、今回いただいてきた作品をなるべく見栄えがするように撮影したものである。これらを眺めていると、我々の没頭している天体写真と似た、マニアな世界を感じる。

以下はすべて、顧問の妄想となります:

 

たとえば右上の薄青い茶わんである

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叔父には、叔父を陶芸の世界に誘った友人いる。その名を亀五郎。以下は叔父と亀五郎氏の会話である:

叔父「いやー、この椀なんですけどね、どうも青が弱いですよね」
亀五郎「そうかね」
叔父「はい、同じ釉薬をつかって同じ共用窯で焼いているのに、どうして亀五郎さんのような鮮やかな青が出ないのでしょうか?」
亀五郎「ふーん、君のは青が弱いんでなくて緑と赤が強いんだよ。釉薬を乾燥させるときにどうしてる?その時の気温と湿度で、焼いた後の色の出方が変わってくるよ。」
叔父「はあ、そういうものですか」

なんだかどこかで聞いたようなやりとりである。

 

またこの2点

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左は叔父の2017年の、右は2021年の作である。左の作では、釉薬の流れに伴って黒い文様が浮いている。ちょうど我々が分子雲の描出に苦労していたのと同様、叔父にとってはこの黒い文様を出すことが念願だったのだ。もし彼がTwitterをしていれば

「今回やっと、飴釉をつかって細かな網状模様を出すことができました!」

といったツイートに、陶芸仲間からのイイネが集まりつつ

「周辺から中心に向かっての模様の変化が素晴らしいですね!」

なんてコメントが入ったりしていたに違いない。

また、右の椀の淡い渦巻きパターンのところどころに浮き上がっている緑色の領域に注目されたい。これは叔父が新手法「クローム落とし」を習得したことによって、はじめて得られた結果であり、ちょうど我々がHeuibIIフィルターを使ってH2領域を鮮明にするのと似ている。

 

最後に、種類は似ていても雰囲気の異なるぐい飲み2点。

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読者はここからどんなことを想像されるであろうか? 

なんて想像をしながら眺めてみると、陶芸というのも大変に味わい深い。これ以上に妄想を広げるのは自重しておこう。

 

叔父は、妻の母親の姉の夫。いつかお会いして話を聞いてみたい。その時は、私の天体写真も印刷して持参したいと思っている。