天文はかせ幕下

NGC4216を撮影

「今晩は、何を撮影されているんですか?」

「あ。えーと、NGC684と672のあたりを撮ってみようと思いまして」

「ほお・・・(知らないので会話が続かない)」

 

なんてこと、コモンはよくあります。

特に、しばしば撮影をご一緒する かのーぷす さんは毎度私の知らない銀河を印象的な構図で撮影されていて、お会いするたびに上の会話を繰り返していたような。

ですので、以下のツイート

に対しての返信

は私にとっては快挙!だったのです。

そんな今回の対象、NGC4216とその伴銀河は、しし座とおとめ座の間あたりに位置しています。ステラリウムで周辺を徘徊していて偶然に見つけました。

f:id:snct-astro:20220228235911p:plain

ステラリウムの画面より

今の時期ですと0時過ぎの南中で、今回は21:50から撮影開始、翌日月が出た後の3:20まで露光を継続しました。風もほどんどなく、オフアキガイドが上手くいったこともあり、歩留まりは90%ほど。3分を91枚、トータル4時間半の露光ができました。

NGC4216
Date: 2022-2-25
Location: はやま湖
Camera: ASI294mc pro
Mount: iOptron CEM70, off-axis guide
Optics: Takahashi MT200, Heuib2 filter
Exposure: 180s x 91 frames gain 120

焦点距離1200mmにフォーサーズセンサーを組み合わせた画角でちょうど良い収まりになったと思います。

アノテーション画像はこちら:

f:id:snct-astro:20220301170029j:plain
距離が表示されるRNAさんのスクリプトを使用しました。

導入方法は

を参照してください。

総括(反省)タイム

撮影編

  • 三脚と鏡筒のあわや激突
    今回はMT200の筒の長さから,筒先と三脚が激突寸前のハラハラ撮影を強いられた。あと3cmくらいまで筒が三脚に接近していて,反転させるつもりでGOTO++を実行したら,反転するどころか,筒先がさらに1cmまで近づいて止まり,隣で見ていたそーなのかー さんは恐怖の叫びをあげていました
    「こええええーーー。」
    いまのところの対策としては,撮影対象の赤緯が38度よりも…
     * 小さい場合(南側の対象):三脚の一本足を真北へ向けて設置
     * 大きい場合(北側の対象):三脚の一本足を真南へ向けて設置
    とし,衝突のリスクを抑えようと思う。
  • ニュートン直焦点でのオフアキ接続
    そういえば初めてだったんです。MT200の補正レンズを省いた光学系でオフアキガイドをするのが。つまり撮影前に接続を確認してなかったんです。このへん相変わらずで反省してます。現場でアレやコレやして結局下の写真の様な接続でうまくいったのでメモ:

    f:id:snct-astro:20220301151440p:plain
    写真左上から,タカハシ主焦点アダプター > ZWO Filter Drawer > ZWO オフアキアダプタ > ZWO22mm延長筒 > ASI294mc となってます。補正レンズなしなのでバックフォーカスは関係なく,これでガイドカメラとともにピントが出ました。ただ,フィルターがオフアキプリズムよりも対物側にくることになるので,ゴーストが心配ではありますが,実際の撮影では大丈夫でした。

  • 写真左上の収差
    スタック直後の画像では,写真左上だけ放射状に伸びていました。

    f:id:snct-astro:20220301145522p:plain
    光軸のせいなのか,コマコレ外しているので仕方がないことなのか? 最終的にはMorphological Transformationで修正しました。

画像処理編

  • Drizzleの効果はよくわからん
    今回はスタック枚数が91枚と多く,途中からはそーなのかーさんに教わってディザリングもやっておりました。ですので期待していたDrizzleは,ただ画像をが大きくなっただけという感じで効果を感じませんでした。残念。
  • Deconvolutionは効いた
    一方でDecon.はビシッとはまりました。

    f:id:snct-astro:20220301153238p:plain
    左がDecon.後,右がDecon.前。銀河自体に重なっている星が一つしかないので,処理が楽でした。

  • ストレッチは"LCSストレッチ"がよい
    理由は不明ながら,銀河の場合はLCSストレッチがうまく行きます。
    「なんだよLCSって!わからんこと書いてると張り倒すぞ」
    という方は

    を。またこの手法の実績については,nabeさんのブログ

    をご査収ください

  • 青が出ない
    撮影結果をみると,銀河の青が乏しい感じ。これは致し方ないかな。といいますかもともと青くないのかもしれません。そういえばこのNGC4216の撮影が終わった後,「春の銀河マラソン5kmの部」を実施,同条件で9つの銀河を撮影しました。全く同じストレッチを施し同じ縮尺で並べたものが以下になります。全て3分1枚です。

    f:id:snct-astro:20220301164107j:plain
    これをみると,M101やM51,M100などは腕が青いのにたいして,NGC4725とかM109は青くないです。何でもかんでも腕は青くなると考えてはダメですね。