天文はかせ幕下

第4回、ソンブレロチャレンジ。結願しました

自宅での第三回から幾ばくもなく、顧問は第四回のチャレンジを目的に遠征に出かけてきました。3月の、月曜の夜のことでした。

結果

まずは結論から。今回の結果はコチラになります

The Sombrero Galaxy (L-RGB Composition)

date:2022-03-07
location: Iidate, Fukushima
Optics: MT-200, astrodon LRGB
Camera: ASI183mm pro
Mount: CEM70, off axis guide
Exp: L:180s x 22, RGB: 180s x 7
Processing: Pixinsight and Photoshop

そして中心部の拡大

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どおーですか、円盤の文様! 今までで最も良い結果を得ることができたと思っています。3年目にしてついに結願です。来年はもうチャレンジしないかもしれません。

撮影記

遠征地選び

当日の昼下がり、windytyを閲覧します。南風が入って雲が多いながらも晴れそうな予報が出ていました。

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奥羽山脈を越えて西風が入る日と比較して、南風の晴れ間は透明度低いながらもシーイングが良いのではと愚考。ちょっとでも春霞をさけようと、標高600m弱の福島県飯館村を選びました。

現地では、喜右衛門さん(喜右衛門 ☆ (@toshikatu0214) / Twitter)と初めてご一緒しました。注釈でご紹介します((私は氏をこの驚くべき動画

で知り、今回はお会いできて光栄でした。

「年を取ると足がいうこと聞かなくてね。泥の中を歩いてるみたいで撮影も大変ですよ」

と仰いながら、終始鼻歌交じりで楽しそうに撮影されていて、その翌日も撮影してたみたいです。すごい体力。またうかがうお話が楽しくて。内容を抜粋して紹介したい気持ちです。

  • 「フォトコンにはよく投稿するんですけど、入選すると人生に目薬が落ちたような、ハッとする感じで良いんですよね」
  • 「この年になってようやく気付いたんですけど、女性って要は過程を共有できると嬉しいみたいなんですよね。この前、妻に勧められて応募したフォトコンで入選して、もらった商品券でプレゼントを買ってあげたら、たいそう喜んでましたよ。カメラレンズ買っても大丈夫なくらいに(笑」

「人生に目薬」という表現にコモンは感激しました。「妻攻略法」も参考になりますー^^。あれ、なぜか注釈にならない。))

はじめてのLRGB撮影

実は今回の撮影、そーなのかー氏と合作という話が事前にあり、コモンはモノクロカメラのASI183MMで、L画像を重点的に、慣れていないRGBはちょっとだけ撮ろうと計画していました*1。M104の高度が30°を超えた23時当たりから

  1. Lを1時間
  2. Bを20分
  3. Gを20分
  4. Rを20分
  5. Lを最後まで、

という割で撮影していきます。ちょうどBの撮影時に対象が南中するタイムテーブルです。

途中でAPTが突然落ちて設定がリセットされ、撮像ソフトをSharpCapに切り替えるなど、トラブル含みながらも撮影は進んでいました。

しかし撮影の後半、予期せぬ事態が起きたのです!

シーイングに急激な変化が!

下の画像は、撮影開始直後のL画像(左)と、R画像を撮影時(右)のM104の様子です。だいぶん解像が違います

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左もそれほど悪くないのですが、右のR画像の状態は顧問としては経験のない良シーイングでした。撮ってだしにもかかわらず、暗黒帯のうねりだけでなく、例の円盤の文様までうっすら見えているではないですか!

大気の状態をなんとなく基準の10点満点で表すと

  1. Lを1時間  7点
  2. Bを20分   7点
  3. Gを20分  8点
  4. Rを20分  10点
  5. Lを最後まで 9点

と推移していたかな。

がしかし、シーイングの良化は喜ばしいのですが、RGB撮影の途中でそれが起こると、画像処理で困った事態も起こります。。

画像処理

RGB画像の色ハロ

B→G→Rと撮影していく過程で、急激にシーイングが良くなったものですから、あとでRGB合成した時にBだけ星が大きく、Rは極端に小さいって感じで大きさが合いません。そのままRGB合成してみますと

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このように色ハロが発生してしまいました。対処策として、RとGにガウスボカし処理をかけて星の大きさを強引に揃えましたが、それでもわずかに色ハロが残ってしまいます。

こんな苦労をするなら、いっそのことカラー情報はカラーカメラで撮影したほうがよさそうなものです。次回そーなのかーさんと合作するときは、その辺を考慮してみます。

気を取り直して、L画像を処理します。

L画像のコンポジット

全部突っ込むか、いいところだけ選りすぐるか、悩みどころです。

なんてツイートをしましたら、西側列強のタカsiさんからコメントいただきました。

リモート撮影で大量のデータを処理されている氏のことですから、すでに同じ悩みを数年前に通過済みなのだろうと思います。念のため実験してみることにしまして、

  1. トータル3時間弱のすべてのフレームをスタックした結果
  2. 後半のシーイングが良かった70分のデータのみスタックした結果
  3. 2.に加えて特にシーイングの良かったR画像20分分も一緒にスタックした結果

の三つを比較します。それぞれの画像にはSubframeSelectorで算出したウエイトをかけています。

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タカsiさんの言う通りの結果で、しかも明確な差が出ました。3.のLとRを使った結果が最も良いようです。これを採用しました。

Deconvolution!

銀河の処理では決定的な役割を果たす表題の処理。一度自分でやってみたらアーティファクトが残ってしまい、丹羽氏に「気になる」と指摘を受けました。相談の上、氏に処理を丸投げしてしまいました。休日には8時間ぶっ通しでDeconvolutionをしたこともあるとのことで、とても丁寧な処理をやっていただきました

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どーですか! これがDeconvolutionの威力、本当に驚きます。

強力な効果を発揮するDeconvolutionは、使いこなすには一定の技術が必要です。詳しくは

や、拙ブログの記事とそこで引用しているKさんや丹羽さんの記事

をご参考ください。

おわりに

L画像は満足いってますけど、RGB画像には課題が残る結果です。星の色もあまり出ていなくて、もうちょっと星がきれいだと一気に印象が変わる気がします。次回の撮影でそーなのかー氏とも協力しながらデータを取得しようと思っております。

 

 

*1:この夜、そーなのかー氏の撮影地は曇ってしまい、合作は後日となりました