天文はかせ幕下

f=250mm付近激戦区レンズ。星像対決の巻

後日追記:このエントリ、ピクセル等倍マニアの皆さんから反響いただき、画像を提供いただいています。今後、比較する光学系を増やして随時更新しますので、チェックしてみてください。
-Sigma 300mmF4 apo tele macroのデータを追加しました(2022/5/31)
-Askar FRA400mm + reducer 280mm F3.9のデータを追加しました(2022/7/6)
-Askar FRA400mm + 直焦点、AskarFRA300mm F5のデータを追加しました(2022/7/9)
-CanonEF300mmF2.8 + CanonEOS6Dのデータを追加しました。(2022/7/25)
-Born55FLとVixenFL55ssのデータを追加しました(2022/7/26)

 

全国津々浦々に点在するピクセル等倍マニアの皆さま、こんばんは。今回はF=250mm付近の3種類の光学系について、その星像比較をやってみたいと思います。よろしくお願いいたします。

比較の対象は以下の通りです:

  1. William Optics RedCat51II 250mm F4.9
    まずは優勝候補のRedCat51IIです。天体写真専用の設計で非常にシャープと評判のレンズです。最近は使用されている方も多いのではないでしょうか。ちなみにお値段は税込み121000円98000円です(2022年5月現在)。


    画像はKyoeiOsakaのサイトより引用

  2. Takahashi FS60CB+C0.72xレデューサー 255mm F4.2
    次はベテラン選手。タカハシ製ながら実はリーズナブルなFS60CBです。レデューサーを組み合わせて焦点距離255mmとなります。トータルでおおよそ130000円のお値段です(2022年5月現在)。


    画像はKyoeiOsakaのサイトより引用

  3. Mamiya Apo-Sekor 250mm F4.5
    顧問が数年前から愛してやまない往年の中判カメラ用レンズです。現在は販売されていませんが、ヤフオクで数万円で手に入り、3万円ほどのマウントアダプターと合わせて利用できます。ただし当時の価格は30万円くらいだったとのことです。
    f:id:snct-astro:20180908153136j:plain
  4. Canon EF200mm F2.8L USM @F4
    キヤノンのフルサイズ用単焦点レンズで、こちらも多くの方が使われている評判が高いようです。F4に絞っての使用です。発売当時(1996年)の定価は129800円、現在では中古市場で3万~4万前後で手に入るようです。
  5. Sigma 300mmF4 apo tele macro
    シグマ製の単焦点マクロレンズです。これも検索すると、天体写真目的で使用されている方が多数いらっしゃるようです。30年ほど前に販売されたレンズで、現在では中古価格1万円前後で取引されており、ここのラインナップでは最もリーズナブルな光学系です。

  6. Askar FRA400 + Reducer F3.9 280mm
    最近、導入する方が増えているAskarのフォトビジュアル鏡筒です。専用のレデューサーを取り付けると280mmF3.9の光学系になります。この鏡筒はスポットダイアグラムが公表されていて、中心像は20~40マイクロメートルの星像です

    シュミットのサイトより引用

  7. Askar FRA300mm F5 pro
    日本の代理店では販売されていない鏡筒。一連のシリーズのなかでこれだけ”pro”と銘打たれているのはどういう意味なのかわかりませんが、公開されているスポットダイアグラムは、中心部で20μmと、シリーズの中で最も小さくなっています。


    Askarのサイトより引用

  8. Canon EF300mm F2.8 @F4
    こちらは言わずと知れた憧れの「サンニッパ」。一時期は、これを使って天体を撮影していた方も多かったと思います。現在は販売終了とのことで、中古でも高値が付いています。今回はF4に絞って比較します。


    サイト”キャノンカメラミュージアム”より引用

  9. Borg55FL 250mmF4.5
    コチラは国産のフローライトレンズです.フルサイズで使用する場合は専用のレデューサーが必要なようですが,今回はフォーサーズでの比較なので補正レンズなしです.Borgは顧問も昔使ってみたいと思っていたのですが,レンズやヘリコロイドの組み合わせの難解さに根負けした覚えがあります.


    トミーテックサイトより引用)

  10. Vixen FL55ss + flattner+ reducer
    コチラも国産の望遠鏡.記憶に新しい比較的最近販売されたフローライトの光学系です.フラットナーとレデューサーを装着した構成で比較します.

60CBとRedCatのデータはそーなのかーさんから、EF200mmF2.8LのデータはRambさんから、Sigma300mmF4とAskarFRA400のデータはかのーぷすさんnabeさんから、AskarFRA300のでーたはおののきももやすさんから、EF300mmF2.8のデータはタカsiさんから提供いただきました。Borg55FLとVixenFL55ssのデータはMarshallさんからいただきました。ありがとうございます。

 

比較の条件

以下の撮影データで比較を行います 

それぞれ前処理無しでディベイヤーを行った後、カラーバランスのみ整えてからPixinsightのSTFで仮ストレッチした画像を比較します。

ピクセルサイズとセンサーサイズの異なるカメラは、294mcを基準にして、ピクセルサイズの比の分だけ拡大縮小したあと,4/3センサー相当にクロップして比較しています。

そして結果

まず全体像です。(すべて4/3センサー相当にクロップしています)

 

 

次に300x300の中心と、4/3センサー相当の周辺像です

以下、中心付近の像のみの比較です(小センサーでの使用なので)。

RedCat 星も小さく丸く、収差もほとんど見えません。ピクセルサイズ4.63㎛の294mcでは偽色が見えるくらいにシャープです。

60CB 星の形はきれいな円形ですが少し肥大していて、赤ハロ・青ハロも強いです。偽色は見当たりません。

MamiyaAposekor FS60CBに比較して星は小さいですが、RedCatよりは大きく見えます。また形が丸くなく歪んでます。偽色が見えるくらいにはシャープな星像が得られています。若干の緑色のハロが出ているようです。

EF200mmF2.8L@F4 カメラレンズとは思えないくらい相当にシャープです。星の大きさはApoSekorと同等か若干劣るか? ほぼ同等です。赤ハロが少し目立ちます。このレンズも入手できる価格を考えると相当に優秀ですresampleによる劣化の影響が出てしまっているかもしれません。

Sigma300mmF4 macro はシャープさにかけるようですが、色収差はとても小さいことが分かります。星の形は若干円形から乱れているように見えます。価格を考えるとかなり優秀です

AskarFRA400+reducer はレデューサー装着ですが、公証のスポットダイアグラムどおり、最も小さい星が4pxほどで写っています。星は丸くて色収差はほぼ見当たりませんでした。星像はRedCatなどと比べると若干大きいように見えます。

AskarFRA300mm Pro これもかなりシャープです。いただいた画像はフルサイズカメラので撮影ですが、周辺と中心部の星像にほとんど差が見られません。

CanonEF300mmF2.8@F4 中心の星が少なくわかりにくいですが,星像はかなり小さいです.色収差も確認できません.一方で周辺像は倍率収差が目立っているようです.

Borg55FL 中心の星は,ほかの光学系と同様にシャープですが,ほんの若干青ハロの影響があるようでした.周辺はわずかですが星が肥大しているように見えます.

Vixen FL55ss+reducer+flattner 中心の星はほかの光学系と同等にシャープで,この画像では真ん中に明るい星が入ってますが,形はきれいです.周辺は,星が若干肥大している様子が分かります.

 

以上を勘案して、

星像:Redcat>EF200mmF2.8L≒Aposekor>FRA400+Re>FS60CB>sigma300mmF4

色収差:RedCat>ApoSekor>EF200mmF2.8L=FRA400+Re>sigma300mmF4>FS60CB

皆さんに画像を提供いただいてから、正直にいうと差が分からなくなってきたので、ランキング付け中止しました。

ここに紹介した鏡筒は、どれも性能において評判の高いものばかりです。直接に比較してみて感じたのは、公証のスポットダイアグラムほどの差が、実際の画像では確認できない、ということです。

たとえばFRA300中心の星像は20㎛、FRA400は40μmとされていますが、上の画像を見る限り、星像の大きさに2倍の開きがあるようには到底見えません。シーイングの差が顕著に表れるような焦点距離ではないですし。

スポットダイアグラムはあくまで幾何光学的な計算からなされたものなので、あくまで目安程度に見ておくのがいいのかもしれません。

蛇足、戦い終えて

全般的にみて、RedCatの性能が素晴らしいのかな、と感じました。

顧問が愛用するMamiyaAposekorはまあまあ善戦したのではと思います。もしフルサイズでの比較だったら中判レンズの優位点が表れたかもしれません。

FS60CBはさすがに設計の古さが出てしまったようです。でも星の形はきれいで、ピントを合わせたGチャンネルだけに限定すれば下の写真のように鋭い星像になります。モノクロRGB合成を前提にすれば、非常にシャープな画像が得られると思われます*1。。

EF200mmF2.8L@F4も中古価格を考えると相当にリーズナブルですね。

カノープスさんに提供いただいたFRA400にレデューサーを付けた光学系の聖像についてですが、その後nabeさんから

「FRA400は直焦点が至高なんですよ・・・」

とそっと教えてもらいました。レデューサー無しですと焦点距離は400mmとなって、ここに紹介した光学系と同列には比較できませんが、参考までにその製造を掲載いたします。撮影鏡筒はASI2600MC、300秒露光です

そして300x300ピクセルの切り出しです。

焦点距離が2倍近く伸びている分、シンチレーションの影響で光学系の性能と関係なく星が大きく写る傾向があるはず(&冬の対象なのでなおさら)ですが、星像は上と比べてあまり変わりません。これもかなり素晴らしい鏡筒ですね

 



250mm前後のレンズには、ほかにもAskarのACL200など魅力的な光学系があります。それらも使う機会があったらここに加える形で、比較してみたいと思っています。また、近くAskar FRA300+レデューサの画像を提供いただいて、ここに載せる予定です。

 

サムネ用





*1:ただしLRGB合成ではやはり星像は肥大してしまうと思われます