先日、丹羽さんのブログでこんなお知らせが更新されていました。
リモート観測所 ---- それはアマチュア天文家の夢です。
サイトを利用する場合は、月に6万円ほどかかります(初期費用は別)。これは平均的な月収で働く顧問にとって、けっして安い額ではありません。
しかし・・ しかしです!
暗い空、乾燥した空気、安定した気流、標高の高さ、晴天率・・・およそ天体写真撮影において必要になるすべての条件において、日本のトップクラスの観測地をはるかに上回る環境が、現実的に手に入るのです。うーーむ。
悩みに悩んでいたある夜。インドのナーマギリ女神が枕元に立って言いました。
「お前はコスパでばっかり物事を考えるから、人生が半端なんだよ」
そのとおりだよね・・・ 私は決断したのです。
事の経緯
実は昨年,星沼会の夏合宿で丹羽さんから上の計画を伺っていました.手元の小さなノートパソコンで,チリの望遠鏡を操作する様子を見せてもらい,興奮したのを覚えています.
あれから1年,いよいよ計画は動き出します.氏の行動力にオンブ&ダッコの状態で,星沼会の4名で経費を折半し,一つのサイトを共同運用することにしました.もちろん,会のメンバーだからと言って特別割引とかはありません.
3つの懸念
しかしリモート撮影について,ぼんやりした懸念が3つありました.一つ目は
- それってほんとに楽しいの?
です.
星を撮影するとき、そこに身を置いていたい気持ちがあります.実物を目で見て観察し,そしてシャッターを押すのが写真の本質.撮れた絵を実物と比較して「上手くいった^^」と喜ぶのが撮影の醍醐味だろうと思っています.天体は対象が見えないだけに,「映った!」という喜びは尚のこと大きくなります.
対してリモート撮影は,インターネットから画像をダウンロードしてきたような気持ちになりはしないでしょうか?
二つ目は
- 普段の遠征撮影が色あせるのでは?
です.
これは経験があって,むかし顧問は自宅で天体写真を撮っていました.その後初めて遠征し,暗い空で撮影をして光害地で撮影するモチベーションが消えうせた記憶があります.それと同じ心理的変化が起こるのではないか? という懸念です.
顧問は熟慮熟考を重ねました.挙句,
「やってみれば分かるだろう」
というショーモナい結論に達しました.今でこそ国内では多くの方がリモート観測所を運用されて,精力的に撮影されています.彼らが楽しそうだから,たぶんたのしいんじゃないの? あと,日本に観測所を設置するのと違って,北の対象はあちらでは撮影できないわけですし.
あと,三つ目は
- 昼間に撮影していたら,仕事がおろそかになるのでは?
でした.でもまあこれは重要ではないですね.天体撮影してなくたって,大した仕事しているわけではないですし(泣笑
チリのリモート観測所に期待すること
まずはなんといっても,全くの未知である南天の対象を撮影できることです.また,遠征先で赤緯の低い対象を頑張って撮影する苦労からも解放されます.それは大きな利点.
そしてアマチュア天文会の未来を考える
顧問は天体写真を初めて,もう10年ほどになります.その間,一部のガチマニアに独占されていた「スゴイ天体写真」が,だんだんと庶民へ解放されていく様を見てきました.
その要因は主に,
- 天体用CMOSカメラの普及
- Pixinisight利用者の広がり
にあったと思っています.
前者により我々は,デジカメに比べて質の高いRAWデータを,手ごろな値段で得られるようになりましたし,後者によりそれまで一部ガチマニアの秘伝であった画像処理が,かなり単純になりました.
そこで今回の丹羽さんによるリモート観測所の利用募集です.これが広がれば,天文台レベルの「スゴイ天体写真」はさらに庶民へ解放されていくことになりそうです.
レベルが上がれば上がるほど,天体写真は「似通った結果」へ収束していくという特徴があると思います.現に最近,親しい知人から
「最近,すごい写真をSNSで見ることに,少し飽きてきた」
という話を聞きました.これは星景写真と違う,deepSkyの天体写真特有の事情だとおもいます.
だれもが「スゴイ天体写真」を量産できるようになる未来・・・.もしそれが訪れたら,アマチュア天体写真という趣味がどのよう変化していくのか? それが個人的には楽しみです.原点回帰が起こるのか?それとも自作と他作を比較することから解放されるのか?
昔から天文雑誌への投稿結果が振るわない顧問としては,後者を期待しています(弱いオチ).
ともかく,来年の今頃どんな天体写真を撮っているのか?楽しみになってきました!
サムネ用