天文はかせ幕下

デネブ周辺

構図選び

先日の浄土平では,野心的な構図に挑戦していました.f=420mm+APS-Cでの6コマモザイクです.デネブを中心に据えて,輝度の異なる東西の星雲を対比させる狙いです

telescopiusでの計画していた割り振りはこんな感じです. 

念頭にあったのは,熱海市(私の故郷)のMOA美術館に所蔵されている尾形光琳紅白梅図屏風です.

紅白梅図屏風尾形光琳Wikipediaより引用

左右の梅→北アメリカ星雲とSH2-112
中央の流れ→天の川の暗黒帯

と対比しています.このような美術作品と天体写真のアナロジーについては,丹羽さんが昔記事にしていました.

自分は構図選びが得意でないので,既存の芸術作品からヒントを得るのはいい方法だと思います.

結果

先月30日の浄土平の夜は素晴らしく安定した晴天で,計画通り一晩で6枚撮り切ることができました.1枚あたり40分,特に淡い右の2枚には60分をかけて,トータル4時間40分の露光です.当初は2晩かけて撮影するつもりでしたが,F2.8の明るい光学系に助けられました.複数夜のモザイク合成だといろいろ問題も出るので,1夜で撮り切れたのは幸運でした.

 

得られた6枚を並べてみます:

各フレームが2600万画素.「のりしろ」を差し引いてトータル1億2000万画素となりました.AstroPixelProcessorでつなぎ合わせて,最終結果はこうなりました

Around the Deneb

ここに至るまで,多くの方から助言をいただきました.おかげで満足いく結果になりました.

皆さんのレビュー

(以下,マニアックな記述になります)

一番指摘されたのは,北アメリカ星雲のハドソン湾の黒つぶれです.ここは背景宇宙よりも暗いようで処理が難しい.今回のの場合は,初期段階で行っていたDBEによるカブリ補正が大きな原因でした.補正を引き算でなく除算にして,暗黒帯をサンプル点として直接指定することで,だいぶん緩和されました.その後もシャドウクリップを極力行わずに処理をしましたが,それでもまだハドソン湾付近は暗すぎるかもしれません.

 

次に,周辺の輝度ムラについても指摘をいただきました.自分としても,次のに示す領域が気になっていました

しかし,以前撮影した広角の画像を確認してみると,この領域には周辺に比べて暗い領域や,分子雲が分布してボンヤリ明るい領域が点在しているようです.それらがちょうど画角の周辺にあると,カブリや光量落ちに錯覚してしまいます.

以前

「切り取った画角としてみた時の美しさを優先して,本来明るい部分を落としたりするような調整をすべきか?」

ということをちらっと書きました.これについては,星沼会の皆さんと話し合った結果,「否」と結論しました.やっぱり,もしこの画像が誰かの参考になった時に,誤解を与えてしまうのは良くないです.加えて,今回の結果についていえば,周辺の暗い落ち込みや低コントラスト部分が,画像の多彩さにもつながっているように思います.

 

お褒めの言葉としましては,「構図がステキ」とか「デネブ南側の一件何にもない領域が味わい深い」とかコメントいただきまして,それはうれしかったです

 

私は普段,ブログにMっぽい文章を書いてツッコミをいれやすいのか,ツイッターでもいろんな方から意見をいただけて,とっても助かっております.今後もよろしくお願いします.

 

サムネ用