天文はかせ幕下

仙台高専天文部の顧問が、日々の天文活動や天文情報を綴っています。
本を出版しました!→PixInsightの使い方[応用編]

エータ・カリーナ星雲の6枚モザイク!

南天で最も明るいイータ・カリーナ星雲をそーなのかー氏が撮影、顧問が処理しました。その撮影結果と、いろいろ興味深いこの星雲の詳細についてまとめましたので、どうぞご笑覧ください。

まずは結果

チリに設置したR200ssとASI294MMは、いま4名の交代で運用しています。メンバーの一人、そーなのかーさんが撮影していたイータ・カリーナ星雲を、私が処理しました。

口口
口口
口口

の組み合わせの2x3枚モザイクです。

eta-carina 6panel mosaic

Date: 2023-4-15,19,23,25,27,30
Location: El sauce Observatory, Chile
Optics: R200ss, Camera: ASI294MM-pro
Exposure: 6 panel mosaic ・P1 (L, R, G, B) = (67, 34, 32, 32) ・P2 (65, 30, 30, 32) ・P3 (67, 31, 31, 31) ・P4 (67, 32, 32, 32) ・P5 (64, 30, 28, 25) ・P6 (68, 28, 28, 25) (gain 120, offset 5)
Processing: Pixinsight, Photoshop

 

一億画素の高解像度版もご覧ください

自分にとって、チリでの撮影結果のなかで最高の出来で、代表作になったなと満足しています。やったぜ、印刷して家に飾ろう。

しらべると楽しい星雲

南天はイータ・カリーナ、北天は北アメリ

とは、顧問がいま思いついた標語です。日本からでは見えない対象ですので、まずは位置から確認してみましょう。

フリーのプラネタリウムソフト”Stellarium”からキャプチャしたものです。地球から見た場合、天の川銀河の中心を基準にしてちょうど北アメリカ星雲の対極の位置にイータ・カリーナは見えています。

見た目の大きさも北アメリカとほぼ同じです

地球からの距離はも北アメリカ星雲が2000光年なのに対して、イータ・カリーナ星雲は6000光年ほどです。実際にはイータ・カリーナのほうがずっと大きく明るい星雲のようです。

太陽系近くで最も質量の大きい星

星雲の中心部で輝いているりゅうこつ座イータ星は、太陽系近傍で観測される星々のなかで、最も質量が大きな「青色超巨星」なのだそうです。下の写真の中心で光っています。

星雲もこの星の周りが最も明るく、周辺のガスが、まさにこの星のエネルギーを受けて光っている様子が見取れます。B-V等級は0.61でだいたい白鳥座のサドル星と似た色です。「青色超巨星」という割にはそれほど青くなく、上でも白っぽく写っています。

カルロス・スポット

チリでの撮影をサポートしてくれている現地の仲間の一人カルロスは、もう一人の仲間エドアルドに言わせると天体写真について「鷹の目」を持っているとのこと。その彼がイータ・カリーナを見る際にまず着目するのがこの辺りの構造なのだそうです:

顧問は勝手に「カルロス・スポット」と名付けました。なかなか解像していると思いますが、今回の処理では、BXTよりも古典的なUnsharpmaskの効果が大きかったです。

IC2599

画面右上のあたり、IC2599は単独で撮影しても楽しい領域です。酸素が豊富なのかほかの領域よりも青っぽく写っています。

SHO合成で撮影するとこんな風になっていて、ナローバンドの楽しさが光る領域です。

ウォルフ・ライエ型の超巨星

星雲全体は、イータ(η)星を中心として放射状にハイライトが分布していますが、写真上部のこの領域は、ハイライトの分布が少し違っています。見ると、真ん中あたりに青紫ぽい変な色の星があるのが分かるでしょうか?

調べてみますとこれはWC型に分類される「ウォルフ・ライエ星」で、外層で水素が使いつくされて、ヘリウムや炭素、窒素の輝線で光っている特殊な星なのだそうです。その表面温度は、以前話題にしたO型主系列星よりもさらに高温で青い星に分類されているとのこと。このあたりの星雲は、この星の放射を受けて光っているのでしょうか?

 

そしてこの色にははっきりと見覚えがあります!

そう、The dorphin-Head 星雲の中心星が似たような紫色でした(註:この写真はAOOのナローバンド撮影ですが星だけRGBに置き換えています)。当時Twitterでtakahiroさんにこの星の奇妙な色について指摘をうけて、返答できなかったのですが、調べてみますと案の定、この星もWN型に分類されるウォルフ・ライエ星でした。

いやー、星に注目すると天体写真が楽しくなります。

 

次回は、LRGB合成のモザイクの工夫点について話したいと思います。