天文はかせ幕下

C2023/A3(Tsuchinshan-ATLAS)彗星を撮影しました

10月にはマイナス等級に達し、2020年のNeowise彗星以来の肉眼彗星になるだろうと予想されていたC2023/A3(Tsuchinshan-ATLAS)彗星。数か月前に専門家のセカニナ氏によって「崩壊しつつある」という観測が発表され、一時は急速に期待がしぼみました。

しかし今、近日点をまえにしてじわじわと増光中です。

「ソコソコ見られる彗星になるかもね」
「いやひょっとしてマイナス等級あるか?」

って感じに、期待が戻りつつあります。

C2023/A3は地球から見て太陽の向こう側からこちらに近づいてきています。北半球から見た時、現在は太陽系の軌道面の下側(南側)にあって、近日点通過後に上側(北側)に抜ける軌道です。つぎのTony Dunnさんの動画が分かりやすいです。

なので現在は南半球のほうが観測しやすい状況です。そこで、チリのリモート望遠鏡で撮影しました。

まずは2024年9月19日、現地時間明け方6時50分ころの様子です

Date: 2024-09-19 09:50(UTC)
Location: El sauce, Chile
Optics: Vixen R200SS
Camera: ASI294MM
Exposure: 30s x 2frames
Pricessing: Pixinsight

撮影中にドームが閉まってしまい、30秒2枚だけしか撮影できなかったんですが、しっかりと尾を引いた姿をとらえることが出来ました。何度撮影しても、彗星の初対面には、いつもハッとする感動があります。

 

撮影では、薄明が始まる前に東の低空にある適当な星を導入してプレーソルブを済ませておきます。彗星が高度5°くらいまで昇ってくるころはすでに薄明が始まっていて、プレートソルブが効かない可能性があります。こうすることによって単純な自動導入でも、彗星をほぼ中心にとらえることが出来ました(以上は撮影前にそーなのかー氏からアドバイスしてもらいました)。

翌日の9月20日もチャンスがあり、同じく撮影しました。

Date: 2024-09-20 09:45~09:51(UTC)
Location: El sauce, Chile
Optics: Vixen R200SS
Camera: ASI294MM
Exposure: 30s x 12frames
Pricessing: Pixinsight

こちらは12枚、6分分の露光をすることが出来ました。後述の理由により、あまり写りが良くないものの、昨日と比較すると確実に増光しているように見えます。

2枚の画像のストレッチの強度を(なんとなく)そろえて、並べました:

画像

たしかに明るくなっているように見えます。よしよし、このままマイナス等級まで突き進んでほしいものです。

あまり写りが良くなかった理由

ちなみにの話ですが、今回の撮影では共同利用のリモート天文台に在りがちなトラブルに見舞われていました。下の写真は彗星撮影中の我々の望遠鏡の様子です。

このように、大きなスライディングルーフにたくさんの機材が並んでいるせいで、そもそも低空の撮影には向かないんですね。どうやら撮影中、東隣にある大きい筒が邪魔しちゃっていたようなんです。まあしかたないですよね。

西隣の筒は小さなR130Sfなので、10月中旬に彗星が西に回れば良い条件で撮影できるかもしれません(笑)。