天文はかせ幕下

仙台高専天文部の顧問が、日々の天文活動や天文情報を綴っています。

2025年春、神割崎で銀河撮影(第一回)

春は不安の季節

ここ最近、だいぶん暖かくはなったけれど、肌にはまだ少し冷たい夜中の空気にしみじみと春を感じます。

僕にとって(そしてきっと誰にとっても)春は不安の季節です。それは若かったころの新生活への不安であり、最近ですと明け方の天の川を追って真っ暗な海岸線へ一人車を走らせているときの心細さをだったりもします。撮影地にて、春の空気の向こう側にそんないろいろな不安を思い出すとき、なぜだか不思議と気分は心地が良いのです。

そんな小春日和の2月28日、宮城県東海岸、神割崎に行ってきました。ひょんなことから天文部1年生のT君と同行です。

神割崎の明け方の天の川。ディスプレイを明るくしてご覧ください

NGC4565を撮影しました

さて、今回の撮影の対象は春の銀河。かみのけ座のNGC4565を選びました。早速結果をご覧ください

NGC4565

Date: 2025-02-28
Location: Kamiwari-saki, Miyagi
Optics: Takahashi MT-200
Camera: ASI2600MM (cropped)
Exposure: L 180s x 57f, R 180s x 27f, G 180s x 28f, B 180s x 29f (total 7.1h)
Mount: CEM70G, off-axis guide Processing: Pixinsight

前回の記事で報告したM66のテスト撮影とまったく同じ機材を使いました。

昨シーズンまでの銀河撮影では、おなじオフアキガイドを取り入れた構成で、ASI294MCで撮影していました。下はその時の記事です:

今回の結果から、カラーカメラとモノクロカメラの大きな差を改めて実感した次第です。まず自宅でのM66のでも今回のNGC4565でも、銀河の色乗りがずっと良い気がします。定量的な比較をしたわけではなく、画像処理での肌感覚レベルの話です。カラーカメラのベイヤーフィルターが一般撮影を想定しているのに対して、モノクロ撮影で使うRGBフィルターは天体撮影に特化されているのが地味にきいているのかもしれません。

オフアキガイドは、遠征先での調整があまりにも煩雑で、一時期は挫折しかけていました。今回は下の写真のように、プリズムの位置とガイドカメラのピントをすべて調整した状態で固定して持ち込みました。

これだと現地では先端のM48ネジを鏡筒に取り付けるだけで簡単です。春の間はずっとこの状態にしておこうと思います。

1200mmの焦点距離にて、オフアキガイドは非常に良く安定してくれて、撮影中はとても安心。生まれた余裕からこんなことも出来ちゃいます→次節

ドブソニアンで銀河観望&春の天の川

1年生のT君のリクエストで、無理して自動車にドブソニアンを積んで持ち出し、春の銀河観望を楽しみました。

これが大正解、楽しかったです。ただ一つ悲しかったのは、最近の顧問は目の衰えがすすんでいて、いままでのようにスムースに銀河の導入ができなくなったことでした(泣)。おかげで導入はT君に便りっきりに…。次回は自分でもできるように経緯台の足回りを強化しつつ、LEDでポイントするファインダーでも導入しよう。

しばらく銀河観望を楽しんでいると、東から天の川が昇ってきました。神割崎は東の空が特に暗く、横たわる天の川は壮大です。我々にとって春の風物詩です。

神割崎の天の川と、M13あたりを観望中のT君(右下)

撮影の傍ら、いつもご一緒しているかのーぷすさんと、東北大天文同好会のJD君は、スマホの天体写真モードでの天の川撮影を試されていました:

二人がスマホ撮影している様子を後ろから無断でパチリ。

 

やがて薄明に消えていく天の川の様子も撮影してみました。海岸まで降りればもうちょっと見栄えのする星景写真になったかもしれません。どうにも気力が無くて駐車場横の公衆トイレの前での撮影です。

終わりに

顧問の天体写真撮影も、そろそろ12周目くらいになります。

春に銀河を撮影して、明け方の天の川を楽しむのも、じつは毎年ほぼ同じです。それでも飽きないのは、うつろう季節のおかげだなと思います。気候によって山で撮影したり海辺で撮影したり、寒さに凍えたり虫刺されに苦しんだり、あるいは曇りで全く撮影できなかったり。

星の運行自体は、地球の大気内で起こる季節とは全く関係ないのですけど、それでも天体写真撮影から季節を感じることが出来るのは、なんともステキなことです。