先日の浄土平遠征の様子を書き残しておきます。ちょっとダラダラめの記述ではありますが、良ければお付き合い下さい。観望で初めて見えた淡い天体を、スケッチでもってはじめて表現してみました。
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9月末の土曜日は快晴でした
「やったー、いってきまーす」
私は家族に言いのこし、ひとり自動車に乗り込みました。昼下がり、宮城には乾いた秋の風がふいています。東北道を小一時間ほど南下して、モダンなサービスエリアで腹ごしらえ。

すでに約束されたかのような青空が広がっていました。さらに1時間ほど走って、目的地に到着です。

ここは、福島県の浄土平。標高1700mの平原で噴煙をあげているのは一切経山です。風向きによって硫黄の香りが濃くなったり薄らいだり。
東北地区ではもっともメジャーな星見スポットで、おそらく今夜も、たくさんの天文ファンがここで夜を明かすものと思われます。遠くの駐車場には、すでに望遠鏡を展開されている方もチラチラと見えました
「ほお、大きい三脚ですねえ」
顧問が機材を設営していると、背後から声をかけてくる方がおります。なんと写真家の前田徳彦さんでした。
これから登山道のほうへ撮影に行かれるとのことでしたが、しばし楽しくお話ししました。老眼が始まったら、すぐに遠近両用のメガネに掛け替えると良いよ、とアドバイスをもらいました。そうします。
やがて日差しがなくなって、空気が少しひんやりしてきたころ、風の民さんや、星沼会のぐらすのすち君、Aramisさん、M&Mさんらが到着しました。さっそくみなさん準備されています。


さて、あたりは暗くなっていきます。
観望を楽しむ、網状と燃える木が見えた
薄明が終わる頃、低い空にいて座が沈みかかっていました。西は浄土平でも特に暗い方向です。

三脚に載せた双眼鏡を向けて、まずは干潟星雲、三裂星雲、バンビ、オメガ星雲、ワシ星雲・・・と流し見していきます。続いてM22、23などの星の集まりを確認した後、さらに西のM13、天頂付近のM27などを観望。
観望の様子は、Aramisさんの動画でもワンシーンとして使われています。1:37あたりです。
ほかにも、氏がオリオン座に向かって昇天していくような3:28のシーン、ぐらすのすち君の寝息が印象的な4:36あたりのシーンも面白いです。
おっと、話が脱線してしまいました。夏の星座の観望の話でしたね。
「もう少し待ったら、アンドロメダが見やすい位置に登ってくるね」
「ふーん。。。」
「うーん、ほかに見るものないかなあ」
口を半開きにして空を眺める……、とここまでがよくあるパターンです。
ふと、先日2年生部員のT君が「双眼鏡でもすごくよく見えますね!」と言っていた網状星雲に挑戦してみることを思いつきました。すると、
「あ、僕にも見える・・・!」
初めてフィルターなしの眼視で網状星雲を確認できたのです。18倍の双眼鏡でちょうどこんなふうにバナナ状の光芒が横たわっているのが判ったのです

最近特に、目の衰えを感じていただけにこれは嬉しかったです。
そして一度「見え方」がわかると目が効くようになるのかもしれません。西側のNGC6960や、北アメリカ星雲の暗黒帯、しばらくあとにはアルニタク横の「燃える木」の暗黒帯などがうっすら見えたような気がしました。ちょうどこんな感じでした

ちなみに、同夜に蔵王を訪れていたという沖田さんの76cmドブソニアンだと、網状星雲はこんなふうに見えるらしいです。いやースゴイ。
網状星雲は130倍(瞳径6.0mm)でNGC6960(西側)のフィラメントが二重らせんのように絡まった構造が見えた。これはいつも通り。一方で東側は特にNGC6995付近が圧巻、まさに網についた海藻や海苔のような構造が視野一杯に見えた。これは60cm 110倍(瞳径5.5mm)のスケッチには描けてなかった。(2/n) pic.twitter.com/Vg3pf3s9dQ
— 沖田 博文 (@hirofumi_okita) 2025年9月29日
今回、浄土平で私が使っていた双眼鏡はこれです。
大きい割にお安い双眼鏡で、周辺の星は少し歪みますが、コントラストが高くてとてもよく見えます。おすすめです。
撮影の様子とリザルト1点
薄明後、ときおり強く吹いていた風は、夜が更けるにつれて止んでいきました。


撮影は、ケフェウス座の周辺をやっておりました。EOS6Dと135mmレンズで撮っていたほうの処理が先に終わりましたので、こちらで紹介しておきます。
date: 2025-09-27 Location:浄土平 Camera: Canon EOS6D Optics: Zeiss apo-sonner 135mm F2 at 2.8 Exposure: 90s x 222frames (5.5h) Processing: PixInsight, Photoshop
SkyMemoRでずーっと放置していて、5時間も露光できてしまいました。画像処理にはかなり時間をかけて、満足の結果になりました。EOS6Dもまだまだ使えます。
レモン彗星、おこんばんは
本来の目的の天体写真撮影は、ケフェウス座のあたりを撮っていました。未明の3時くらいからは望遠鏡を東に移して、Lemmon彗星を撮影しました。結果は前回のエントリで報告した通りです。

こちらは一切経山と、レモン彗星を撮影する前田さんです。
少し睡眠をとってから下山します。高湯温泉の「あったか湯」で昨晩の疲れをいやしつつ、M&Mさんと最近の若者の傾向について語り合いました。福島の道の駅に寄り道したらば、立派なブドウが安く売っていて、両手に抱えるほど買って帰りました。家族にも好評で、福島のお土産は桃よりブドウのほうが良いかもしれません。
