天文はかせ幕下

仙台高専天文部の顧問が、日々の天文活動や天文情報を綴っています。
本を出版しました!→PixInsightの使い方[応用編]

レモン彗星を追った3夜の記録

「レモン山サーベイ」と呼ばれる、アリゾナ州にある天文台での探索プロジェクトで発見されたレモン彗星は、今月に入ってマスコミにも取り上げられて、注目を浴びています。

当初の予測では、最高で4~5等級程度。これは、ぎりぎり肉眼でみえるかどうかという明るさです。昨年の紫金山・アトラス彗星と比較すれば、天文ファンの間の期待度はそこそこといった雰囲気でした。

それでも、何が起こるか分からないのが彗星です。10月に入って、じわじわと光度を増してくると、「ひょっとして今夜、急に増光するかも?!」なんて考えがよぎり、居てもたってもいられなくなります。

そんなわけで顧問は、これまで25日までに3回遠征をして彗星を撮影をしました。

上の地図に描き込んだ半球は、3回の撮影について、観測地と日時、レモン彗星が見えた方向を表しています。この地図を、頭の中で地球の球体に貼り付けて方向を想像してもらえると、レモン彗星が地球の北側を北東から南西へ移動している軌道が見えてくると思います。

 

この記事では、それぞれの場所でのそれぞれの撮影のことを簡単に報告したいと思います

9月27日未明、福島県浄土平でついでに撮影

福島県の浄土平は、東北地方ではもっとも星空がきれいな観測地です。この夜の撮影を一通り終えて、明け方の余った時間に北西から昇ってきていたレモン彗星を撮影しました。

C/2025 A6 Lemmon

この時の明るさは6.5等星ほど。あいにく、ちょうど福島市の明かりに被っていて、双眼鏡ではちょっとした明るいシミ程度に見えていました。

10月17日薄明後、宮城県村田町でお気楽撮影

前回の撮影から半月がたち、レモン彗星は夕方の西の空へ移動して見えています。

天文部の学生たちと近場でレモン彗星を観望しようという話になりました。そのための観測地を探します。特に宮城県では、地形のつごうで、彗星がみえている西の見晴らしが良い場所が少ないのです。我々は、GoogleMapをしらみ潰しに探索し、ある程度良い場所を見つけました。そこは宮城県村田町の農村にある道端でした。

その場所、彗星が見える方向の空はそこそこ暗いのですが、それでも街明かりの影響があるようです。双眼鏡で確認した彗星の姿は、空のわずかなシミという感じで、頼りないものでした。そこで撮影したのが、次の画像です

ごらんになってわかるかもしれませんが、やっぱり光害の影響がだいぶんきつかったです。強引に補正しようとすると背景がガタガタになってしまい、これは作品として仕上げることを諦めました。

10月23日薄明後、山形県弓張平公園で本気撮影

レモン彗星は近日点へ近づいていきます。23日、とうとう3等台に突入して明るくなっているという情報が入ってきました。顧問は先日の村田町での撮影を反省し、「やっぱり空が暗いところへ行かないとダメだ!」と、山形県の弓張平公園まで出掛けてきました。片道1時間半です。

上の地図をご覧いただくとわかる通り、弓張平から西は山以外に目立つ街は街はありません。西空は真に暗く、薄明後には肉眼でもぼんやりと彗星の姿を確認することができました。肉眼彗星です!双眼鏡でも、先日までの「すこし明るいシミ」とは違って、長い尾を伴った姿がはっきりと確認でき、感激でした。

デジカメで20分ほど露光し、画像処理した結果がこちらです。

Comet Lemmon, C/2025 A6

うん、これなら大満足。ながーく伸びるイオンテイルがたまりません。135mmにフルサイズの画角でも飛び出してしまいました。空が暗いからこそ映り込む低空の大気光も良い味わい深いです。

 

そんなわけで、レモン彗星を追った3夜の記録でした。この記事を書いている10月26日現在、彗星は予想を上回る増光をつづけていているようです。今後もしばらくは目を離せません。