天文はかせ幕下

仙台高専天文部の顧問が、日々の天文活動や天文情報を綴っています。
本を出版しました!→PixInsightの使い方[応用編]

NGC300銀河の赤ポチと「緑ポチ」

さんかく座のM33銀河にそっくりな銀河が、南天のちょうこくしつ座にあります。NGC300銀河です。ちょうど1年前の今頃、チリに設置したリモート望遠鏡で、はじめてこの銀河を撮影しました。

NGC300

昨年に撮影したNGC300

Date: 2024-11-25,12-01,05,21(4 nights)
Location: El sauce, Chile
Optics: Vixen R200ss, PH Extender (1120mm F5.6)
Exposure: 120sec. gain120, (L, R, G, B)=(212, 62,57,57), 240s gain200 Ha=65f, total 17.2h
Processing Pixinsight, Photoshop

通常のLRGBに、ナローバンドのHαをちょっと追加してトータル17時間の露光データです。とっても美しい姿ではあるのですが、astrobinで他の作例と比較してみると、なんだか平凡な仕上がりで、煮え切らない気持ちが残りました。そこで

活動領域(赤ポチと緑ポチ)を写し出す

NGC300は、活発な星形成領域がとても多く、それらは「赤ポチ」として、銀河の腕に散在しています。さらに最近、海外の作例で見かけるのがO3領域の「緑ポチ」。これらを写し出すために、夏の終わりから秋にかけてさらに27時間の露光を行いました。

そうして、上のカラー画像に無いものが写っている2枚のモノクロナローの画像が得られました。

これらを、なるべく自然な形でカラー画像に追加することを考えます

連続成分の除去

銀河は星の光の集まりです。星の光は、それぞれの温度ごとにプランクの法則に従う波長で光っています。その波長とエネルギー密度の関係を、下の図の黒い実線で示しました。

いっぽうで銀河の腕の赤ポチと緑ポチは、星々の間に分布している水素と酸素が、星の光を受けて光っているものです。その光は特定の決まった波長をもっていて、水素の輝線はHα、酸素の輝線はO3と呼ばれています。波長はそれぞれ656nm、500.7nmです。下のグラフに赤と緑の帯で示しました

モノクロナローの画像は、それらの波長を含む、8nmほどの幅の光だけを通すフィルターで撮影しています。ですので、水素と酸素の輝線に加えて、星のスペルトルが、その8nmの幅のぶんだけ含まれてしまっているのです。

自然な形で画像の合成を行うためには、星の光の連続スペクトルをナローのデータから除去する必要があります。それにはいろいろな方法があります。今回は、Seti Astroさんがyoutubeで紹介されていた方法を試しました。

この方法では、たとえばHαから連続スペクトルを引くために次の手順を踏みます

  1. (R,G,B)=(Ha,R,R)と対応させた疑似カラー画像を作る
  2. Color Caribrationプロセスを使って、銀河の中心を白く、背景を黒くして、各チャンネルの輝度を合わせる
  3. HaからRの信号部分を差し引いて、連続スペクトルを除去

慣れてしまえば結構簡単に実行できます。連続スペクトルを除去した後のデータはコチラです。

こちらをHOO合成して、Narroband Normalizationプロセスをつかって調整し、こんな画像をこさえました

これを、PixelMathでLRGB画像にスクリーン合成し、最終的な結果を得ました。

リザルト

こちらが結果です。

NGC300 Ha and O3 added

 

銀河の中心部を並べて比較してみます

画像

もとのLRGB画像にはほとんど写っていないO3の明るい領域を映すことが出来ました。あんまりきれいではありませんが、拡大して並べてみましょう。

これらの天体は、DCLというH2領域のカタログに登録されているようです(TwitterでOHZAKI Hiroki[@ohzak1]さんに教えてもらいました)(追記、カタログ名はDCLではなくてDCL88だと、あとでHIROPONさんに教えていただきました。元論文の著者名のイニシャルと論文の発行年(1988年)からついたカタログ名みたいです。)

おわりに

今回のリザルトの目玉はO3の「緑ポチ」でした。これはかなり長い露光時間が必要なうえ、そもそもそういう領域が存在しない銀河もあります。活発な領域をもつ銀河をほかにも探して見て、また挑戦したい所存です。