天文はかせ幕下

仙台高専天文部の顧問が、日々の天文活動や天文情報を綴っています。
本を出版しました!→PixInsightの使い方[応用編]

Topsy-Turvy(しっちゃか-めっちゃか)銀河

10月から11月にかけて、チリのリモートでNGC1313を撮影しました。海外ではTopsy-Turvy銀河と呼ばれています。表題の絶妙な対訳「しっちゃか-めっちゃか」は、もりのせいかつのKさんに倣いました*1

チリリモートを共同運用しているそーなのかーさんも、同じ時期にNGC1313を撮影していて、せっかくならと二人分のデータをひとまとめにして処理しました。おかげで総露光は54時間に達しました。

NGC1333

date:2025-10-1,3,7,14,17,21
location: El sauce, Chile
Optics: Vixen R200ss, Extender PH
Camera: ZWO ASI294MM pro
Exposure: L 120s x 500, RGB 120s x 220, Hα 120 x 245 + 240 x 120 total 54h
Processing: PixInsight, Photoshop

その呼び名の通り、NGC1313の見た目は通常の銀河に比べてとても不規則です。その億万年オーダー歴史にいったい何があったのでしょうか?

(以下の内容は、天体撮影の楽しみの一つとして、得られた画像から顧問が自由に想像してみたものです。ただ、全くの妄想というわけではなく、いくつかの記事や論文を参考にしてはいます。)

NGC1313の構造

伴銀河の衝突

いくつかの研究によると、NGC1313の奇妙な構造は、過去にちいさな伴銀河が衝突したことが原因なのではと考えられているそうです*2

銀河周辺のモクモクした構造は、その衝突の名残であると思われます。このような淡い構造はほかの銀河にもしばしば見られ、恒星ストリームと呼ばれています。NGC1313の場合下の図のように渦を巻いて見えています。

写真1:恒星ストリームの渦巻き構造

きっとこの渦巻き構造が、そのまま伴銀河がたどった軌道なのではないでしょうか?伴銀河は自身の星をまき散らしながら写真右上からやって来て、NGC1313の重力に引き寄せられてグルッと弧を描き、いままさに左下方向に抜け出ようとしているのです(想像)。

そういう風に考えると、ひときわ濃く写っている左下の角のような構造が、崩壊しつつある伴銀河の名残のように見えてきます。

写真2:伴銀河の名残?

(12月10日追記:たのしい天体観測の丹羽さんがこの記事を読んで、銀河の衝突コースは3次元的に考えてこうじゃないか?とイラストを寄せてくれました。

つまり、伴銀河は下から近づいてきて銀河の奥側から手前に向かってぐるっと回ってきているのではないか、とのこと。確かにそう見えなくもないですし、顧問は空間が3次元であることをすっかり忘れてました。この軌道の方が次節のスターバースト領域の位置とも整合性が良いです)

スターバースト領域

スターバーストとは、銀河内で生じる急激な星形成のことです。上に引用した論文では、NGC1313で過去に銀河が衝突した根拠として、南西部分(この画像は北が下なので左上方向)のスターバースト領域に注目していました。

写真3:スターバースト領域

この領域は、伴銀河の衝突によって星間ガス・星間物質が圧縮されて形成されたものと考えられているそうです。その位置がちょうど、写真1に描いた伴銀河の衝突コースと一致しているのが興味深いです

中心のズレ

ESOのプレスリリース*3によると、「ESOの3.6m望遠鏡での観測によって、銀河が回転している本当の中心軸が「中心の棒(the cental bar)」からずれている」のだそうです。これが何のことを言っているのか、調べた範囲では判然としませんでした。我々の写真を見ると、銀河のもっとも明るい場所(黄色の矢印)と、腕の構造から想像できる回転の中心(赤い矢印)が確かにズレているように見えます。ひょっとするとこれのことを言っているのでしょうか?

それとも「中心の棒」とは、棒渦巻きの棒部分のことでしょうか?だとしたら上の図は見当違いで、そもそも我々の20cm望遠鏡では観察できないのかもしれません。

おわりに

天体写真撮影を始めて10年以上が経過した今でも、

「ええ、こんな銀河あったんだ(知らなかった)」

なんてことがまだまだあります。M63やM104のような均整のとれた銀河も良いですが、今回のNGC1313のような不規則な銀河は、撮影した画像から読み取ったり想像したりできる要素がおおきく、一粒で二度美味しいなと思った次第です。