天文はかせ幕下

19日未明のパンスターズ彗星(C/2025 R3)、30°にわたる長い尾が!

19日の未明、パンスターズ彗星(C/2025 R3 PanSTARRS)を撮りに、宮城県北部の田束山へ遠征しました。天文部員のななぜりくん、りんごあめくんと一緒です。

今回は入念に計画を立て、撮影場所と撮影方法を準備しました。その甲斐あって、30度以上もたなびく見事なダストトレイルを写し出すことが出来ました。その顛末を報告いたします!

C/2025 R3 PanSTARRS in twilight

date:2026-4-19 3:10~3:41(JST)
location: Mt. Tatsugane, Miyagi, Japan
exposure: 106f x 60s ISO1600
camera: Canon EOS 6D (3 cameras) and SigmaFp(single camera)
optics: 70-200mm@70mm F2.8
processing: PixInsight

計画

2026年の早春、近日点で崩壊してしまったMAPS彗星の影に隠れるように増光していたパンスターズ彗星。4月に永太郎さんがポストされた姿を見て、なんと見事な尾でしょう、これは撮影しなければと焦りました。

やるからには、全力で行きます。撮影に熱心な部員のななぜり君とりんごあめ君を呼び出し作戦会議を開きました。

まず撮影場所は、田束山(たつがねさん)を選びました。明け方に彗星が昇ってくる東の空が暗いだけでなく、500mが標高があって春霞の影響を避けることができます。

次に撮影方法です。今回の彗星は、空が明るくなるまでの数十分ほどしか撮影時間がありません。なるべく長い露光を稼ぐために複数台カメラによる同時撮影をすることにしました。

ちょうどよいタイミングで、ななぜりくんがSigmaの古い70-200mmF2.8のズームレンズをメルカリで手に入れていました。故障品が6000円で出品されていたのを購入し、ゴニョゴニョやっていたら修理できてしまったとのことです。さらにはりんごあめ君がNikkorの初代70-200mmF2.8を金持ちの友人から強引に借りてきていました。これに部のSigma70-200mmF2.8と、顧問の私物のSigmaの70mmF2.8マクロを合わせて、4台同時撮影が可能になったわけです。

今回撮影につかったカメラとレンズ達

カメラはななぜりくんの6Dに顧問の私物の6D2台、SigmaFpを使うことにしました。

ズームレンズは単焦点にくらべて光学性能が劣る欠点はありますが、彗星のような撮ってみないと尾の長さなどがわからない対象を撮るときは便利です。今回も、前日までにSNSに上がってくる彗星の様子を確認してから、撮影時の焦点距離を決めようという話になりました。

結局、一番広角側の70mmでってことで話がまとまり、いざ撮影です。

道中~撮影準備

4月18日の夜は、弱い高気圧が西から東北地方に広がって晴れの予報。若干湿度が高めの空気が広がっていました。22時に学校を出発し、北東へ車を走らせます。

目的地の田束山までは2時間ほどです。手前の山道でアナグマを見かけました。この山は小動物が結構多いようです。

さて、撮影地に到着したのは0:30ころでした。すでに東には天の川が横たわっておりましたが、ずいぶん霞んでいます。まるでフォトショップの「かすみの除去」を-20くらいかけたような空です。

「ああー、これはダメでおじゃるな」

顧問は直感的にそう思いました。車を降りた部員二人は、「すげー!」って、暗い星空に感心しきりです。ふだんは閖上の海岸とかで撮影しているようで、それに比べればはるかによい空が広がっていたのは確かです。

準備を始めます

左からKenkoSE2赤道儀に載せた6Dが2台、SkyMemoRに載せたSigmaFp、SkyMemoSに載せたななぜりくんの6D

計画通り4台のカメラを東に向けます。書いてて初めて気づきましたが、赤道儀が全部Kenkoですねえ。すべてオートガイド無しで撮影しました。

撮影開始

彗星の核が地平線から姿を現すのは3:15ころ。当初の期待としては、その30分くらい前から、巨大な尾が

「ズゴゴゴゴゴ・・・」

って音を立てるように昇ってくる……。そういう心象風景を頭に描いておりました。実際はそんなわけはなく、予定を過ぎてもカメラに写るのは霞と人工衛星の光跡ばかり。

ようやく彗星の姿を確認できたのは3:20ころでした。

これはよくある、お わ か り い た だ け た だ ろ う か ……状態です(泣。

ここから30分くらい露光を続けましたが、終始手ごたえのない状態が続きました。

記念写真を撮って撤収しました

リザルト

日曜の朝に帰宅して寝て起きて、顧問はぼんやりしていました。複数台のカメラで撮影した彗星の画像をCometAlignmentして一枚にスタックするのはなかなか面倒な作業で、どうにもやる気が湧いてこないのでした。

夕方ごろ、ななぜりくんから、彼の6D一台で撮影したデータを処理した衝撃の結果が上がってきました

かなり強引な処理で浮かび上がってきた尾は、フルサイズ70㎜の画角からはみ出しています。しかも途中で大きく屈曲しており、いったい何があったのかという姿です。

ここから慌てて処理に取り掛かりました。しかし彗星の尾はきわめて淡く、背景の薄明のグラデーションとの両立には無理があると判断。淡い姿と、炙りだした姿を併記する冒頭の仕上げでSNSにアップしました。

ここではななぜりくんが処理した結果も紹介しておきます

今後の課題

彗星の尾があのような屈曲した姿を見せたのは、短い時間帯だったようです。ネット上を見渡しても、同じ姿をとらえた例はそれほど多くないようでした*1

こういうことが起るのが彗星撮影が、DeepSky撮影とは一線を画して面白いところです。

大西先生の宿題

X(旧ツイッター)にアップした画像について、いろんな方から反応いただきました。長野の大西さんからは、「STEREO-Aに受かっている同時刻の構造から、イオンテールの3次元構造を推定できるのでは?」という宿題をもらいました。論文になるかどうかというのはなかなか難しいところはあると思うのですが、面白そうなので目下取り組み中です!

*1:同じ日に撮影されていたお気楽ジョガーさん、中国の水晴雨さんが同様の結果を得られていて、Xにアップされていました。
https://x.com/hiroshi_xy/status/2046433771273220313?s=20
https://x.com/ena1_mizuki/status/2046294918596096429?s=20