はじめに
みなさま、フラット補正のあとに何故か円形の輝度のムラが残ってしまったご経験はないでしょうか?私はあります。ちょうど下の画像のような感じです


画像1はアンタレス付近、画像2は先日のパンスターズ彗星の画像になります。いづれもフラット補正を行った後、ABEやDBEを用いて低空の光害カブリを取り除いた直後の様子です。撮影時にカメラ本体を直接赤道儀に固定し、鏡筒バンドのようなレンズを支えるパーツは使用していませんでした。
そもそもフラット補正はムズカシイ。思いつく限りで失敗の原因を挙げてみますと
- フラット取得に用いる光源が十分に均一でない
- ダーク・フラットダークを適切に減算していない
- フラット取得時に迷光が入り込む
- フラット画像が暗すぎる/明るすぎる
- フラット取得時のフォーカスやカメラの取り付け角度のズレている
などなど。しかし、上の円形ムラの原因は上記のいずれにも当てはまらず、これは顧問にとって長らく未解決問題でした。
今回それを解決することが出来たので、記事にしておこうと思ったわけです。結論を先に申しますと、その原因とは、
- フラット取得時とライト取得時の姿勢差による、光学系の撓み
でした。その詳細を簡潔に報告します。
カメラの姿勢とフラットの違い
以下では画像1で使用した光学系について話しを進めます。フラットを撮影するとき、顧問はこんな風にしています

基本的に、天頂に向けた時を基準にフラットを取得していたわけです。明るい反射望遠鏡ならいざ知らず、カメラレンズでの撮影なら姿勢差は全く気にしていませんでした。
今回、ふと思いついてアンタレス付近を撮影しているときのカメラの姿勢を再現して、フラットを取得してみたのです。

それぞれのフラットを並べて比較してみます

ほとんと違いは分かりませんが、LinearFitで両者の明るさをそろえた後、「差の絶対値」をみてみるとこうなりました

おおっと、上の画像1と同じムラがでていますね。これはビンゴっぽいです。
というわけで、撮影時とカメラの姿勢をそろえたフラット画像を当てて、アンタレス付近の前処理をやり直しました。結果はコチラです↓

円形ムラがほぼ消えました。
ただし、厳しく見てみるとまだわずかに残っています。ライトフレームの取得時は日周運動にともなってレンズの姿勢が少しづつ変わっているので、そのあたりは仕方ないかもしれません。
おわりに
今回取りあげた円形ムラは、出る時と出ない時がありました。アポゾナーで低空を撮影していた時にこの現象が起こっていたのです。分かってみると、なぜ今まで気づかなかったのだろうって話です。すでに「知ってた」というかたも読者の中にはいらっしゃるかもしれません
すこしケースは違いますが、RASAで主鏡の固定ネジを締め忘れて青い馬星雲を撮影してしまったときも同じようなことが起っていました
RASAの場合、固定ネジを締めさえすればフラットのズレは起こらないのですが、カメラレンズで姿勢差がでるとは、ちょっと意外でした。
本来なら、K-ASTECのバンドなどを使ってしっかりレンズを把持して赤道儀に固定し撮影するのが良いのでしょう。だけど取り回しが悪くなるし、そこまでしなくてもいいかーと手を抜いていたのです。むしろ、今回やったような雑な姿勢の再現である程度フラットがあうのだから、これで十分かなと思います。(追記:ただし、使用する光学系によっては、撮影後に同じ姿勢でフラットを撮っても、レンズ内の各可動部が同じ状況に再現するとは限らないので、注意は必要です)
光害地での撮影などで、さらに厳密にフラットを合わせる必要がある場合は、1時間に1回ほどの頻度で、パネルを使って複数のフラットを撮影中に取得するなどの方法が考えられます。それはひょっとしたら部員のななぜり君がトライしてみてくれるかもしれません。