天文はかせ序二段(仮)

天文はかせ三段目(仮)

仙台高専(旧・宮城高専)天文部の活動記録です

電視観望+リモート観望会の練習

序(準備状況)

ひと通り準備が整えてあった電視観望によるリモート観望会。連休の晴れ間を使ってようやくテストしました。使用機材は以下の通り

  • カメラ:ZWOASI294mc、SONY α7S
  • 光学系:Celestron RASA11", NB1フィルタ
  • 架台:iOptron CEM70G
  • 撮像ソフト:SharpCap
  • 導入ソフト:Cartes du Cial (Sky charts), All sky Plate Solver
  • 無線wifi:Huawai Nova lite 3(私物)
  • パソコン:Acer ノートパソコン windows8

α7Sとパソコンの接続はiodataHDMI-USB変換を使いました。これはHUQさんがやっていた方法です。

配信方法は、顧問私物のスマホをアクセスポイントとしてパソコンをインターネット接続して、TeamsでSharpCapの画面を共有する仕組みです。ですので撮影場所は、スマホの電波が良好に繋がる範囲である程度暗いところが望ましくなります。今回は

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このあたりで行いました。仙台空港近く、岩沼海浜緑地の入り口です。ゲートが閉じられて袋小路になっている場所を利用しました。

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環境はこんな様子。撮影方向は市街地で、写真に撮ると真っ白。海側の反対方向は星が比較的よく見えています。

配信側として気になるのはデータ通信量です。こちらは3時間くらいの接続で800MB程度でした。子供にスマホ貸して、youtube見せる方がずっと通信量使います。これは気にしなくて良さそうです。

では、当夜の記録です。

破(破滅的トラブルとそのリカバリ

20時配信開始をアナウンスしていて準備開始が19:30とギリギリになってしまって・・・、これはカメラアダプタを忘れたためでした。一度赤道儀を撤収して車で学校まで往復、1時間程度のロスでした。近征地で助かりました。

赤道儀の設置からアライメントまでは、CEM70G(三脚に赤道儀を固定するネジ回し以外は)はスムースな気がします。とくにiPolarが優秀で、カメラを接続しただけで即座に極方向を示してくれるのはありがたいです。

その後スマホとパソコンを繋いで、Teamsにアクセス。茨城高専の皆さんと会話しながら準備を進めました。その後に起こったトラブルは以下の通り:

  • SharpCapから、USBカメラとしてα7Sを接続すると、画面は認識するけれどsharpCapが固まってしまうトラブル。結局、現地での接続を諦めて294mcにチェンジ。
  • ところが294mcに替えても、sharpCapが固まってしまう。
  • パソコンをwindowsからmacBookに替えて、asi studioを使うことに。すると今度はwifiが繋がらない。
  • windowsに戻って、wifi繋いでasi studioをインストール。これでようやくリモート観望が可能に。
  • しかしcartes du cielが赤道儀を認識しない。しかたなく、精度は落ちるけどCEM70Gの自動導入を使う

結局茨城高専の皆さんには1時間ほど待たせてしまいました。まあ、トラブル発生は予告済みでしたので、皆さんまったり待ってくれました。それでも、けっこう良い画像が配信できました。受信側に回っていたglsnsciさんのキャプチャ画面です。

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まずは北アメリカ。鏡像のままです。5秒露光ですが立体感あると思います。asi studioのasiLiveはカラーバランスバッチリの画像を吐いてくれて、コントラスト調整つまみだけで強調の具合を調整できるので、非常に使いやすいです。

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もう一つは三日月星雲NGC6888。5秒露光でこれですからね。フラット補正してませんが、フォーサーズなら周辺減光は気になりません。

あとはM27、M15、M57などを見ましたが省略。

急(急場をしのいで・・)

茨城高専の皆さんとさよならして、片付けの前に上記のトラブル群が気になりました。もう一度ひとりでテストしてみますと、SharpCapもcartes du cielも正常に動きます。自動導入もプレートソルブ もバッチリです。Teams接続がいけなかったのだろうか?glsnsciさんをもう一度呼んで、Teamsを繋いだ状態でもう一度テスト。しかしすべて正常に動きます。

それで、淡い対象をもう少し観望。

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ハート星雲中心部です。

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さらに思い切り強調した網状星雲。どちらも5秒露光です。あんまり強調しすぎると、電視観望っぽく無くなってしまいます。

 

それにしてもトラブルの連続、何がいけなかったのだろう?この辺は、さらに経験を重ねる必要がありそうで、一般公開に踏み切るのはまだ時間がかかりそうです。

cartes du cielで星図を見せながら、自動導入して対象を見る、という流れは非常に教育的です。近く、本番の観望会を実現させたいです。

コントラストの低い部分だけ選択するマスク(PhotoShop)

序論

まずは、次の写真をご覧ください:

M16, M17 and the Sagittarius Star Cloud

これは今春、kissX5と60Daをつかったツインシステムで撮影した天の川の中心部のモザイクです。左半分を60Daに、右半分をkissX5に担当してもらいました。合成をAstro Pixel Processorで行ったおかげでうまく繋がってはいますが、ちょっと不満がありました。全体的にコントラストにムラがあるのです。とくに右半分のコントラストが低いように見えないでしょうか?

このような画像に対して上手なマスクを施し、ローカルなコントラスト調整ができないものか? そんなマスクを、ここではコントラストマスク」と呼ぶことにします。今回は、その作成方法と適用結果のお話です。

裏話

唐突で失礼ですが、「着想に至った経緯*1」を記しておく必要があります。

『「ためしてガッテン」じゃないんだから、さっさと結論教えろ。』

という方は読み飛ばしてください。

発想のきっかけは、近江商人さんのブログ

でした。北アメリカ星雲の画像処理工程において、「コントラストの低い部分を選択するマスク」について触れられています。しかし肝心なところは

これは、よっちゃんがやっていた方法ですね。詳しくはビデオを買ってみてください。

とあって、リンク先を辿ると、よっちゃんさんの教材ビデオがたくさんあります。どのビデオを買えばいいのかもわかりませんし、値段も(!)そこそこです。これを購入して答えを見ては、いろいろ負けた感じがします。

 

それでちょっと自分で考えた、というわけです。

 以下は、「低コントラストマスク、こんな感じでよいのでは?」と顧問が考えた方法です。読者の皆さんの中には上記の教材ビデオを見たか、オフ会に参加したかで、すでに答えを知っている方もいらっしゃるかもしれません。

「ふーん・・まあそんな方法もあるかもね。ちょっと違うけど」

という感じで暖かく見守っていただけると幸いです。

誓って述べますが、顧問はビデオ教材を見ていません*2

コントラストマスクの作成法

それでは参ります。作成方法は簡単です。

  • 調整したい画像を「ぐっと」眺めて、大雑把にどのくらいの長さスケールでコントラストのムラが生じているかを見極める。上の画像の場合1000pxくらいとしました(画像の解像度は5000x8000)
  • 元画像に1000pxでハイパス(フィルター>その他>ハイパス) をかける*3(下画像)

    f:id:snct-astro:20200914233443p:plain

  • 「ハイパス1000pxレイヤー」と「元画像」をコピーして、両者の「差の絶対値」とったあとモノクロ化(イメージ>色調補正>白黒)すると下の画像のようになります。

    f:id:snct-astro:20200914234428p:plain

  •  上の画像には、輝度の高い星雲の跡が残っているので、ガウスぼかしなどを使って消してしまうと、以下のようなマスクができます。f:id:snct-astro:20200914235241p:plain

  • 上が「コントラストマスク」になります。この場合,バンビの横顔部分やわし星雲の北のほうなどがマスクされることになります。あとはこのマスクを調整レイヤに置いた状態で、マスク自体にレベル補正をかけて強度を調整しつつ,コントラストを調整します。下は、適用している様子です。「明るさ・コントラスト」を使ってます。レベル補正で中間スライダを動かしても良いと思いますf:id:snct-astro:20200914235558p:plain
  • 以上です。

適用結果

(1)オメガ星雲・わし星雲付近

まず、上の画像に適用した結果を見てみましょう:

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バンビの横顔など、もともとコントラストの高い部分はそのままに保った上で、選択的な強調ができていると思います。

(2)干潟星雲付近

もう一つの適用例を見ておきます。ぐらすのすち氏天城高原でノーマルの5Dを使って撮影した干潟星雲付近を拝借しました。

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この作例の場合、とくに右上部分のコントラストが足りてないような、と顧問はゴルバチョフぐらすのすち氏と話し合っていました。上記の方法を使うと、次のようなマスクができました

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このマスクを適用して、コントラストを強調したBefore-Afterが以下になります:

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中央した部分の天の川ハイライトはそのままに、部分的なコントラストの調整ができていると思います。ドストエぐらすのすちさん、画像提供ありがとうございました。

仕組みの説明とシメ

ハイパスフィルタというのは、

「指定した半径 L [px]よりも長いスケールでの空間的変化は、輝度128のグレーにしてしまい、それより短いスケールはそのままに残す」

という処理です。したがって今回使用したマスクは

L [px]よりも長いスケールで輝度が変化している「眠い」部分を選択するマスク」

になっているわけです。

これ、結構使えると思うんですけど、どうでしょうね。

 

 

*1:科研費の作文ではない

*2:実は、「星雲の炙り出し法」は数年前に購入して試聴していますが、そこでは「コントラストマスク」については述べられていませんでした。

*3:実は1000pxはpsではハイパス 半径の最大値。これ以上長い値を指定しなければならない場合は、画像の解像度を下げるしかないでしょう。

肥えた目(?)で、再処理:バンビの首飾り

画像処理の技術はともかくとして、写真をみる目だけは年々肥えつづけているなあ、と感じます。数年前にとても満足していた完成画像も、今になって省みると歯牙にもかからない出来に見えてしまうのです。

この「肥えた目」が、天体写真撮影の趣味に数年間没入し、twitterfacebook, astrobinなどにアップされる他者の写真と自分の写真を、毎日血眼で比較

「嗚呼ダミだ。俺は何をしているのか?」

と悩み続けた結果として得られたのだとすれば、はたして自分の写真は普通の人にはどのように見えているのだろうか? これは、気になるところです

顧問の場合は簡単で、妻に写真を見せて感想を求めれば判明します。例えば、先日に蔵王にて撮影した「バンビの首飾り」 です。 

NGC6589

「自信作だ!」と悦に入っていたこの写真、数日経ったらもう気に入らない感じになり、頑張って再処理しました。その結果がコチラです:

NGC6589 (reprocessing)

うん!圧倒的に良くなったよね!と、妻に両者を見せて意見を求めたところ。

「何が違うの?」
「え、この真ん中の星雲の透明感とか、赤い星雲の出方とかちがうでしょう?」
「はあーなるほど、確かにこっちの方が綺麗かも」

といって妻が指さしたのは、再処理前の画像でした。ぐぬぬ・・

 細部を比較

見て分からぬと申すなら、ピクセル等倍で切り出して細部を比較して説明しますよ。まず中心部のバンビの首飾り。処理前はこう。

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再処理前

それが再処理後はこうなりました

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再処理後

赤い星雲に重なっている青いガスがより分離して見えているでしょう。これによって「透明感」が生まれるのですよ。

 

次に写真右下部分、暗黒帯と赤のコントラストも見てください。処理前はこうでした:

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再処理前

それが再処理後はこう:

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赤が豊かになりました。これによって青い星や暗黒帯のコントラストも明確になるのですよ。微光星がブチブチになっているのは仕方がないのですよ。

 

そして、写真は細部も見なければなりません。写真右上のスタークラウドの部分。再処理前はこうでした

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それが再処理後はこうです。

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処理前はカブリ補正が正しくなく、星の背景が黒潰れしてしまっていたのですよ。再処理後はこれを修正することで、星間に淡く広がっている分子雲も見えるようになったのです。

 

いかがでしたか?

これでみなさんも,再処理後の写真の方が出来がよく見えるようになったと思います。それではまた。

 

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くもじいじゃ。美しさを理屈で説明する姿が醜いの。

 

 

 

sharpCapでplateSolving Cartes du Cielで自動導入(覚書)

電子観望会にて、プレートソルブ で導入精度を高めつつプラネタリウムソフトから対象を指定して、スムースかつエレガントに自動導入ができるようにしたい。ということで、あれこれ調べた挙句:

  • キャプチャソフト:SharpCap
  • プレートソルバー:All sky plate solver
  • プラネタリウムソフト:Cartes du Cial (Sky charts)

三つの組み合わせで行うことにしました。用いたマウントはCEM70G、カメラはZWOの天体用CMOSカメラ(asi294mc-pro)です。このエントリは、その導入のための覚書です。

  1. ドライバのインストール:CEM70Gをパソコンから制御できるようにするため、
    Ascom platform
    iOptron ASCOM Driver and Commander for CEM120/70
    の二つのドライバーをパソコンにインストールしておく。

  2. SharpCapのインストールと設定:SharpCapはここからダウンロード。年間10ポンドを支払って、PRO版にしておく。
    -ソフトを起動して、"File>SharpCapSettings"と辿って、"Hardware"タブ内の"Mounts"から、上記の"iOptron ASCOM Driver and Commander for CEM120/70"を選択しておく。こうしておけば、SharpCapから赤道儀の制御が可能になる。

  3. プレートソルバーのインストール:All sky Plate Solverはここからインストール。その後の必要な設定はTak's Blog:All Sky Plate Solver & StellaNavigator 10を参照。
    -All Sky Solverがインストールできれは、ShapCapは自動的にプレートソルバーを認識してくれる。一応"File>SharpCapSettings"から"PlateSolving"タブを選択して"Plate Solver: detect automatically"が選択されていることを確認。デフォルトではプレートソルブ 後のアクションとして"Sync mount and re-centar target"が指定されている。つまりプレートソルブ を行った後、SharpCapは赤道儀を制御して自動的に対象を真ん中に入れてくれるようになっている。

  4. プラネタリウムソフトのインストール:Cartes du cielはここからダウンロード。インストールが済んでソフトを起動すると,はじめは観測値の設定画面など出てくるので適宜設定する。"Setup>general"と辿り"Telescope"から”ASCOM”を選択。次に"Telescope>Connect telescope”と辿り"Ascom telescope interface"を立ち上げて、”Driver selection”から"iOptron ASCOM Driver and Commander for CEM120/70"を選択すると、Cartes du cielから赤道儀が制御できるようになるる。そしたら"Ascom telescope interface"の下の方の"Connect"ボタンをクリックすると、赤道儀が認識される。

実際の観望会では、次のように操作をおこなうのが最もスピーディと思われる:

  1. 赤道儀のを設置して、極軸を合わせておく。

  2. 日付や緯度経度などの初期設定を済ませた後、赤道儀のコントローラのから、"search zero position"を選択した後、"one star align"を選択。赤道儀が目的星に向いた後、その星が実際に導入されていなくても"ok"と押してアライメントを終える。以後、赤道儀コントローラーは触らない*1

  3. Carte du ciel を起動して赤道儀と接続し、任意の対象を選択。"slew"を選択してその対象を導入する。初めのアライメントがイイカゲンなので、目的の対象は導入されていない(だろう)。

  4. sharpCapを起動して、カメラを接続しプレートソルブ を実行。解析がうまく終われば、赤道儀は自動的に動いて目的の対象が中心に入る。

  5. 以降は、Carte du cielから自動導入を行い、観望会を進めていく

という感じです。以上の導入にあたってはtwitter上でそーなのかー氏をはじめ、おののきもやす氏やHiropon氏から助言いただきました。またブログの情報としてほしぞloveログとTak's Blogが大変参考になりました。ありがとうございました(おしまい)。

 

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自動導入のテストが終わった後、名取市の自宅から撮影したM27です。よく写ります。

 

*1:one star alignを済ませてから,コントローラを浸かって目的の対象へslewして,そのあとSharpCapでPlateSolveを行って修正をかけても,導入がうまく行かなかった。おそらくコントローラーとソフトウェアの間で座標系の基準(JNOW/J2000とかの)の違いがあるのが原因ぽいが,設定法がわからない。

蔵王雲抜けの記録

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くもじいじゃ。

今週,8月25日,26日の夜,MeteoBlueでは蔵王の雲抜けが期待できる予報じゃったの。記録のために実際の天気図を貼っておくぞ(気象庁ホームページから引用じゃ)。

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まずは25日夜。SCWでは宮城県側に薄雲が張り出して山形が晴れる雲抜けの典型的な予報が出ておったが,実際には「単なる晴れ」だったようじゃの。顧問は庭先でプレートソルビングとかいう手法の練習をしていて,時間を無駄にしておったようじゃ。

 

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次は26日の夜じゃ。SCWは前日と似た傾向。名取市では月が透けて見えるくらいの薄い雲がモクモク広がっておったの。で,蔵王は安定した雲抜け状態だったようじゃ。

 

顧問は蔵王に出かけるほどの気力は無かったのか,プレートソルビングの練習も諦めて,飲酒して寝ておったわい。しょうもない奴じゃの。


さて上の天気図,東シナ海に台風に伴う低気圧があって,日本列島の北側にはオホーツク海の低気圧から伸びる前線が配置しているのが特徴的じゃ。顧問が書いておる「ブログ」とかいう駄文の記録では,およそ一年前2019年9月7日の夜も雲抜けじゃったの。

当日の天気図はこうじゃ:

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過去の天気図は各日の9時しか残されていないので,夜の気圧配置はこの2つの間くらいと考えてくれ。しかし低気圧や前線の位置に驚くほど類似点があるの。

 

「台風が東シナ海を北上して,前線がオホーツク海あたりにかかっているとき,蔵王雲抜けの可能性がある」

 

といってよいのかもしれんな。それじゃあの。

 

追記;

9月6日の未明も,雲抜けだったようです。天気図を記録しておきます。やっぱり台風の位置が似ています。(顧問)

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晩夏の蔵王遠征記

撮影記

終戦記念日のすぎた19日の水曜日。数日前から、移動性高気圧が列島を覆う予報が出ていました。前日の未明から始まった晴天をつかって、新赤道儀CEM70Gの最終動作チェックを済ませ、ちょっと寝不足気味のコンディションで、蔵王に向かったのでした。

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行きがけの車内から。前方に見える霞んだ山並みが蔵王連峰です。標高は1700mくらいですかね。

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山の麓には「遠刈田温泉」があります。ひと風呂浴びてから観望する・・・なんて心の余裕が無いのが悲しいところ。温泉街のコンビニで食料だけ買って、エコーラインから登っていきます。

さて、ここで望遠鏡のフードを忘れたことに気づきます。一人車内で雄叫びを上げました。今日の晴天は絶対に結露地獄に見舞われるのは自明で、「乾燥空気セット」を持ち出してきたと言うのに・・・泣。

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夏の遠征の敵は、暑さと虫。高山での撮影は一石三鳥くらいの効果があると言うのは周知の事実。今回は宮城県側から見て、山頂の刈田岳をすこし山形側にまわったところにある、リフト乗り場の駐車場を利用しました。到着時、眼視の方と撮影の方が、結構いらっしゃいました。後着予定のそーなのかー氏のスペースを隣にあけて、一番角に陣取りました。

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さて、懸案のフードでございますが、自動車のフロントガラスに立てかける日除けのシェードを半分に折って、ぐるりと巻き付けました。内側がギラギラですけどちょっとは結露対策になるでしょう。

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乾燥空気もしっかり送ります。間に合うかなー。

そして撮影本番

一つ目の対象は、「バンビの首飾り」ことNGC6589です。

NGC6589

Date: 2020-08-19 20:50~
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11"
Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 180sec. x 29flames + 18sec. x 15flames(gain 120)

毎度ながら、リンク先に飛んでいただいた方が画像がシャープです。。大きな「く」を反転させた形の暗黒帯と中心の散光星雲を対比を狙った構図のなかに、細かなウネウネの暗黒帯が散在していることに気づきました。これらの黒潰れに気をつけつつ、ハイパスで強めにストレッチしました。写真の右上、バンビのスタークラウドの領域は星像が乱れてしまいました。どうやらフラットがずれて減光していたのに、星が多くてそれと気づかなかったのが原因かと。再処理するときに見直してみます。

CEM70Gの自動導入はまだうまく働かせることができなくて、基本的には中心からズレ、微妙に写野の外側に導入されます。どうもダメなのでコントローラーからの制御は諦めて、APTを本格的に取り入れたほうがよさそうです。隣に使っている方もいるし。

 

二つ目の対象は、アイリス星雲です。

これについては撮影の状況をすこし。鏡筒が天頂方向をむいたら即席フードが耐えられず、30分くらいで補正板がガッツリ結露してしまいました。

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このコンデシションではさもありなん。

うーん・・・・・。しばし考えた後、最高のアイデアが閃いたのです!それは

ティッシュで拭く」

です。こんなすごいアイデア、誰も思いつきませんよね!拭いて3枚撮影、また曇り出したらまた拭くを数回繰り返した後、運良く湿度が下がって96%に。そしたら結露地獄は去って行きました。そんなでアイリス星雲は40枚を確保できました。帰宅後に補正板を確認しましたけど、ダメージはありませんでした。「柔らかローションティッシュ」を使ったのが良かったのでしょう。皆さんは真似しないでね。 

Iris Nebula (Caldwell 4)

Date: 2020-08-19 23:32~
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11"
Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 180sec. x 40 flames + 18sec. x 15flames (gain 120) 

 

さて、久しぶりの長焦点撮影で楽しみ、画像処理もエンジョイできました。RASA+294MCで悩み続けていた片ボケも無事解消できていると思います。 

 

次回は学生たちと電視観望です。そのまえに自動導入の精度を上げておかないと。

 

iOpteron CEM70G 赤道儀のレビュー

 

概要

ここでは,2020年に天文部で導入したiOptron社製のCEM70G赤道儀について,何度か実際に使用した経験を元に簡単に特徴などを紹介します。初めに結論を簡潔にまとめれば,

質実剛健で追尾精度も優秀で,有用なアイデアも盛り込まれている。しかし機械的な設計の部分やiGuider関連で幾つか難あり」

と考えます。全体としては性能に十分満足しています。以下では、主観客観交えつつこの赤道儀の特徴をまとめていきたいと思います。

購入の経緯

我々の部では,観望会や撮影に使用する目的で,CelestronのRASA11"を搭載可能な自動導入赤道儀を探していました。購入予算が30万円前後であったために,現状で手に入る赤道儀としてはこのCEM70/CEM70Gが唯一の解でした*1

日本代理店のジズコを通して購入しました。三脚なしの9kgウエイトつき,ガイドカメラ内蔵のCEM70Gは税込み357500円でした。(代理店の方には,顧問のしつこい質問にお付き合いいただき,この赤道儀を使いこなす上で本当に助かりました。直輸入しなくてよかったです。)

開封の儀・外観など

赤道儀はしっかりしたアルミケースに入って送付されてきました。

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「ガワ」がしっかりしているのは,とくに精密機器や重量級の機器の場合は助かります。ZWOやQHYCCDのカメラも質の良いケースが付属になっているし,国産メーカーはダンボールと発泡スチロールで送られてくる場合が多いですが,見習ってくれると良いなと思います。

f:id:snct-astro:20200820115706j:plain中には製品のLOT番号が記されたp motionのグラフが同梱されています(初めて開封した時の写真ではありません!)±3.5秒角以内に収まっているとのことで,これはメーカー側の自信が伺えます。たとえば「天体写真の世界」のレビュー記事にあるNJP Temma2の p motion が実測で ±5秒角以内とのことですから,とても優秀な部類です。

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取り出してハードケースの上に載せてみました。重量は13.6kg。顧問の場合は,これまでJP赤道儀の重さに散々苦しめられてきたので,この軽さには天国を感じました。

CEM70G赤道儀の特徴

この赤道儀の細かなスペックなどについては,株式会社ジズコのHP

をご覧いただくことにして,この赤道儀の特徴を「気に入った点」「改善して欲しい点」の二つに分けて述べます。どっちからにしますかね。ネガティブなほうからいきますか。

改善して欲しい点

赤道儀本体を三脚座に取り付けるのが非常にやりづらい!

まず赤道儀の固定方法から説明します。赤道儀のベースは,M8の六角ボルト2本で専用の三脚に固定する仕組みになっています。その六角ボルトは赤道儀ベース部にバネ式で内包されています。

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こんなふうに。上から押すとボルトが出てきます。離すとバネ式でビヨンと元に戻る仕組みです。

で,三脚側には下の写真のようにM8のメネジが切ってあります。

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ここからが,改善して欲しい点です。この台座の上に赤道儀を載せた時点で,ねじ穴は全く見えなくなります。手探りで穴を割り当てなければなりません。これはちょっとやりにくいことです。また,次の写真は,赤道儀のM8ボルトを上から見た様子です:

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手前に見える障害物は,赤道儀の高度調整をロックするためのクランプです。これが死角になってボルトが見えずレンチを挿しにくく,またまっすぐ挿せないので回しづらい。さらには,どのような種類の6角レンチを用いても(ボールタイプ・曲が短いタイプなど)レンチが赤道儀本体に干渉するので,ボルトを締め込むまでにレンチの抜き差しを20往復くらいさせないといけません。いまのところ2つのネジを固定するのに5分くらいはかかってしまいます。致命的ではないですが,これは設計ミスの類でしょう。

iGuiderの視野が,鏡筒にケラれる場合がある

CEM70Gの大きな特徴として,内蔵式のガイドカメラ「iGuider」があります。このカメラは赤緯体のあり溝プレート部に埋め込まれていて,パソコンからPHD2を使ってオートガイドを行う仕組みです。

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写真の大きい穴の奥に,カメラレンズとカメラがあります(このガイドカメラの性能については,別の節で詳しく述べます)。問題は,カメラの位置が鏡筒に対して近すぎる点です。RASA11"を載せた場合,鏡筒にフードを取り付けると,なんとガイドカメラの視野がケラれてガイド星がヒシャゲてしまいました。これも設計ミスの類だと思います。我々の例の場合,なんとかオートガイドは成立していましたが,より長い鏡筒を使う場合は,別にガイドカメラを用意する必要がありそうです。赤道儀にガイドカメラを内蔵するアイデアは良いのに,ちょっと残念ですね。

気に入った点

「ケーブルマネジメントシステム」最高!うどん地獄から開放!

赤道儀ベース部のUSB3.0端子とパソコンを一本のUSBケーブルでつなげば,iPolar,iGuider,赤道儀の制御,全てまとめて面倒を見てくれます。さらに鏡筒に取り付けたCMOSカメラやガイドカメラとパソコンの接続,冷却システムへの電源供給も,あり溝プレートに取り付けられたDCジャックとUSB端子

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から行えます。12V3AなのでZWOカメラの冷却ならこれで足ります。撮影時のうどん地獄から解放されるのはとても嬉しいことでした。

忘れ物防止の工夫

これはかなり地味ですけど,

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六角レンチを赤道儀本体に収めることができるようになっています。こういうのは個人的に大好きな点です。先のバネ式のM8ボルトも,同じ「忘れ物防止」のアイデア裏目に出たのかもしれません。

ギアスイッチは大きく改善

この赤道儀の前身である,同じセンターバランス式の赤道儀CEM60について購入を考えていたおり,以下のブログ

の内容にビビって,自重したという思い出があります。赤緯赤経軸の回転を固定するクランプの代わりに,CEM60赤道儀では内部のギアの噛み合わせをon-offする「電磁クランプ」という仕組みを採用されていました。引用したブログではこの電磁クランプが非常に使いにくいと辛辣に述べてあります。どう使いにくいかは本題からそれるので,「玄の館」ブログをご一読ください。CEM70では,この点はちゃんと改善されていました。下の写真がCEM70のギアスイッチです

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電磁クランプの仕組みは廃止されて,単純なon-offになっています。内部のギアの噛み合わせ位置を探らなければならないという点以外は,通常のクランプと操作性は変わりません。ただ,スイッチをオフにすると回転軸がいきなり無抵抗に動くので,ウエイトバランスには気をつけないといけません。

iPolarも素晴らしい

赤道儀内臓のiPolarは,プレートソルビングで極軸設定をしてくれます。一番初めに設定さえ済ませておけば,カメラを起動したあと直後に,何も操作をしなくても数秒で極軸の位置を示してくれます。QHYCCDのポールマスターも気に入って使ってましたが,北極星を選んだり赤道儀を回転させたりしなくて済むのは,とっても楽です。

肝心のガイド精度

ガイド精度については,これから何回かの実地での撮影をこなさないと確かなことは言えません。しかし,先日の初めての使用はとても良い感触でした。620mmのRASA11"にフォーサーズセンサーの294MCの組み合わせで,フルサイズ換算1300mm。3分露光の70枚ほどの撮影で歩止まりは95%以上だったと思います。ガイドエラーも,ガイドカメラに光が入ったとか,外的要因がほとんどでした。

ただこの時はシーイングが非常に良いコンディションではありました。iGuiderのケラれの問題もありますし,もうすこしじっくり使い込んでからの判断です。

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これはその時のガイドグラフの様子です。

その他,CEM70Gの気難しいところ

iGuiderのピント合わせ

iGuiderのレンズは焦点距離120mmのF4。フォーカスは工場出荷時には調整されておらず,購入後に自分で合わせる必要があります。このフォーカス機構には面食らいました。

下の写真の銀色の金具が調整機構です。ネジになっていて,緩めると左右に8mmほどの幅で動きます。この左右の動きで,内部のレンズが物理的に直接動いてピントを調整し,ネジを締めて固定します(ビックリしました?)。

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この操作でネジの位置を0.1mmくらいのオーダーで調整する必要がありました。現場で星を使ってのピント調整を試みたところほぼ不可能で,いっかい死にました。日中に明るい遠景を使って短い露光時間で調整しておく必要があります。一度調整すれば触らなくても良さそうですが,気温の変化でピントがどれくらい動くのか気になるところです。

iGuiderの感度

iGuiderのセンサーは,1200 x 800画素と控えめで感度もQHY5L-Ⅱなどと比較すると悪いようです。天の川中心部の撮影でも,星が数えるほどしか認識されませんでした。マニュアルにも5~9個の星を検出できるようにゲインを調整せよとあるそうで(代理店のMさんによる),そういう設計なのでしょう。ガイドはちゃんとできていたので問題はないのかもしれませんが,少し不安にはなりますね。

アライメントの精度

マニュアル通りに,1star/2Starsでアライメントをしても,自動導入がうまくいかないことがあります。うまくいくこともあるので,顧問の操作ミスの可能性も残っているものの,少し困っています。

総論

iOptronのCEM70/CEM70G赤道儀について,紹介しました。このブログはあまり機材レビューなどやらないのですが,この赤道儀のあまりもの破天荒ぶりに,つい書きたくなってしまいました。

ネガティブなことも書きましたけど,「あばたもえくぼ」という感じで全体としては気に入っています。なによりも30kgもの搭載重量をこの価格で実現したことは素晴らしいと思います。盛り込まれたアイデアにはマイナス面もあるけれど,革新的な赤道儀を作ろうとする心意気も感じられます。

なんとかこれを使いこなし,また観望会でも活躍させたいです。

 

 

 

*1:国産の赤道儀でRASA11"クラスの鏡筒を搭載可能となると,タカハシEM400やVixen AXD,SHOWA XNOSくらいしか思い付かず,これらはどれも100万円前後になってしまします