天文はかせ三段目

天文はかせ三段目(仮)

仙台高専(旧・宮城高専)天文部の活動記録です

彩度のヒストグラム は使えるか?

はじめに

天体写真の画像処理にて、「彩度のヒストグラム」というものも有用なのじゃ無いかなと思いつきこのエントリを書いています。

通常ヒストグラムといえばそれは輝度のヒストグラムを指し、それは各ピクセルの輝度の分布を表すグラフのことを言います

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天体写真の場合,だいたいこんなグラフになります。左側から右に行くに従って輝度が0から255の値を表していて、このグラフだと輝度がだいたい60ほどのピクセルが最も多数を占めていることを表しています。このピークは天体写真の背景に対応するので、それよりも明るい右側が太っていれば「コントラストが豊富」、左側が急峻なら「周辺減光が小さい」など、様々な判断ができるわけです。詳しくはnakacygさんのブログ

が参考になると思います。

輝度のヒストグラムはこのように、客観的に画像の仕上がりを評価するのに使えるわけですが、だったら彩度のヒストグラムも、天体写真の色を客観出来に判断するのに使えるのでは無いでしょうか?

たとえば下のgifアニメをジーーっと見つめてみてください。これは元画像の左半分を彩度+70、右半分を彩度-70に加工したものです。5秒後に元の状態に戻ります。

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境界に注目すると、切り替わって通常の状態に戻った瞬間に右半分が派手な色に、判定に左半分が地味な色に見えないでしょうか?

このように人間の目は直前に見ていた情報に引きずられます。画像処理を何時間もやっていると目がギンギンになってしまって、色も輝度も訳が分からなくなってしまうなんてことよくありますよね。

つまり輝度だけでなく彩度にも客観的な指標が必要なはずで、その目的ならヒストグラムが有効だと考えたわけです。

彩度のヒストグラムの表示方法

しかし、「彩度のヒストグラム」ってあまり聞きません。まずはその表示方法をPixinsigntとPhotoshopについてそれぞれ紹介します。Pixinsightはそーなのかーさんのアイデアが元になっています。PhotoshopについてはTwitterでTakashiさんがなんとプラグインを開発してくださいました!ありがとうございます。

Pixinsightの場合

したのように、ヒストグラムを表示したい画像に対して"Chnnel Extraction"のColorSpaceをHSVにして適用し、彩度の画像 "*****_Sv"を取得します。

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その画像に対して、HistgramTransformationからヒストグラムを表示します

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ちょっと面倒ですが、現状この方法しかないと思います。

Photoshopの場合

takashi(@Mazic_tell_Arts)さんが開発されたプラグイン

exchange.adobe.com

から無料でダウンロードできます。

ダウンロード後は、アドビのCreativeCloudsから"プラグインを管理"を選んで、Photoshopに対してプラグイン"Saturation-Histogram"を有効にしておきます。

すると、PhotoShopから以下のように"ウインドウ>エクステンション"から"Saturation-Histogram"が選べるようになります。

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この機能をつかうと、下のように"Show Histogram"のボタンをクリックするだけで、レイヤーの一番上の画像について彩度のヒストグラムを計算して表示してくれます。

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縦軸をlogにできたり、選択部分だけのヒストグラムを表示できたりと便利ですので、是非使ってみてください。

彩度のヒストグラムの活用方法

これについてはまだ、アイデアを練っている状態です。今のところ思いついているのは以下の2点です。

彩度の評価

天体写真の彩度のヒストグラムがどういう形であるべきか?というのは一概には言えず、その対象に依存しそうです。日の丸構図の銀河の画像と、画面いっぱいに散光星雲が広がった画像では全く違うでしょう。

以下は主観になります。顧問がたくさんの天体写真について彩度のヒストグラムを表示し調べてみたところ、彩度の足りない画像の場合、ヒストグラムのピークから右側が薄く、8bitで200に届いていない場合が多かったです。たとえばこれは拙画像で恐縮ですが、以前撮影したアイリス星雲です。

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右側の裾野はリニアでみると200に届いていません。かといって、この画像の場合これ以上彩度を上げると破綻してしまうのですが、その場合は輝度の方を調整することになるのだと思います。

いっぽうでこれも拙画像ですが、比較的派手にみえるオリオン座とバーナードループの写真です

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ヒストグラムの形は大体同じで、右の裾野が255近くまで伸びていて、128付近の中間の値が上側に膨らんでいます。

ほかにも色々な画像を見てみましたが、日の丸構図の銀河の画像を除けば大体同じ傾向でした。

ひとまず画像処理では、彩度のヒストグラムが200±X 程度まで伸びることを目指しつつ、処理する、というのが一つに指標になるかもしれません(Xは好みの差を表す)

Curves Transformationによる彩度のトーンカーブ

PixinsightにはCurvesTransformationという機能があって、そこでは彩度のトーンカーブ調整ができます(残念ながらPhotoshopには、これに同等の機能はないようです。)これと彩度のヒストグラムを合わせると、これまではマスクを使わないとできなかったようなきめ細かい彩度調整が,簡単にできるようになります。

例として,下の写真をご覧ください。

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画面左が処理中のプレビュー画面。右上のウインドウに彩度のヒストグラムを表示しつつ,右下の"Curves Transfomation"で,彩度を表す”S”を選択した上で,トーンカーブの調整を行っています。

ここからは,通常のトーンカーブ調整と同じ考え方になります。つまり,プレビュー画面左上の,元々彩度が低い背景部分は,彩度を抑えつつ,プレビュー画面右下の彩度がある程度高い部分だけ,さらに彩度を強調したいとしましょう。背景部分はヒストグラムでいうとおよそ1/4ほどのピーク位置から左側に対応しているので,トーンカーブ上で1/4の位置にアンカーを打ちつつ,中間を持ち上げれば良いわけですね。

ヒストグラムを見ながらなら,こういう調整ができるので,たとえば暗部の彩度を下げるなんて処理もそれほど難しくありません*1

残念ながら,Photoshopには彩度をトーンカーブ調整する機能がありません。また,Pixinsightの"Curves Transfomation"でも,彩度を選択した時にヒストグラムを表示する機能も無いようです。

おわりに

またマニアックなことを書いてしまったと,少々後悔しています^^

彩度のヒストグラム は,いろいろ考えてみると,輝度のヒストグラム と同列に並べるには少々扱いづらいのかもしれません。

上にあげた要素以外には

・暗部のカラーノイズや色被りの強さの評価

・暗部の色潰れ(彩度がゼロに落ちている)

などに使えるのじゃないかなーと思ってますが,まだ考察が足らない状態なので,後日また記事にするかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:ただし,彩度の性質上暗い部分でも彩度がmaxに近い値になっている場合もあります(暗部のカラーノイズなど)。なのでトーンカーブとしては右側にももう一つアンカーを打っておくのが無難かもしれません

2021年の初天体写真は8時間露光。あと今年の目標も

2021年初めの作品は、Mamiya Apo-sekor 250mm F4.5レンズのツインによるM78周辺になります。フルサイズカメラを合わせると、馬頭星雲からバーナードループの北側までが画角に収まります。

Horsehead, M78 and Barnard's Loop

Date: 2020-12-12, 2021-1-9
Location: Kamiwari-saki, Miyagi, Japan
Camera: Canon EOS6D(mod) and Sigma fp
Optics: Mamiya apo-sekor 250mm F4.5 (twin)
Mount: Kenko SEII, PHD2 guiding
Exposure:
EOS6D ... 360s x 19 (2020-12-12) + 300s x 33 (2021-1-09)
SigmaFp ... 300sec. x 43 (2021-1-09)
ISO: 1600
Processing: Pixinsight, Photoshop

昨年の12月12日に撮影していたEOS6Dでの19枚に追加して、1月9日にEOS6Dで33枚、sigmaFpで43枚を追加しました。顧問としてはめずらしく2晩にわたる撮影で、トータルは8時間超えです。露光新記録です。

2021年の目標

無理をしない画像処理、淡い部分のあぶり出しよりも星雲の透明感や滑らかさを優先した画像処理を目指したいのぅ

と顧問は考えています。なんでかというと、最近ブログを再開された近江商人さん

の天体写真にえらく感銘を受けたからです。氏は私設の天文台で1作品あたり平均10時間くらいの露光をされています。にもかかわらず作品はかなり控えめで、2時間くらいの露光時間の写真に対して顧問が行うストレッチよりも弱い強調しか施されていないように見えます。それによって星は輝星から微光星まで整っていて、星雲には透明感があり、等倍で拡大してもとても滑らかです。
我々は基本遠征スタイルなので、毎回10時間の露光は無理なんですけど、たとえば3時間しか露光できないならそれなりのストレッチを行うようにするべきなんじゃないかなと考えています。
で、上の作品はというと、自分では強調を抑えたつもりながらそれでも強い強調になってしまいました。まだ煩悩を捨てきれてないのです。

撮影後記

今回は、Mamiya Apo-Sekorのツインシステム

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に初めてフルサイズのカメラを二つ取り付けて撮影を行いました。一時期評判になったこのレンズ、最近は似た焦点距離のRedCatやSharpStarが人気で、これを使っている人はあまり見かけないように感じますが、このレンズの最大の魅力は豊富な周辺光量です。もともと67版フィルム用に設計されているから当然と言えば当然。フルサイズを取り付けてもほとんど、したのヒストグラムをご覧になればわかるように周辺減光がありません。

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EOS6Dを取り付けた場合のマスターフラットです、ヒストグラムのピークの左側はほぼ垂直で、フルサイズでこれだけの周辺減光の小ささは通常のレンズではなかなか無いのではとおもいます。このレンズこそ、フルサイズのカメラで運用すべきなのではあるまいか。顧問は愚考しました。

レンズにあわせてフルサイズカメラを2台所有したいところですが、ここはカメラは改造済みの6Dと非改造のSigmaFpを用いました。下の写真はそれぞれのスタック後の写真を、カラーバランスだけ整えてSTFで仮ストレッチした結果です

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それぞれ色の出方がだいぶん違います。この二つをどのように重ねるべきか、工夫が必要そうです。今回は良いアイデアが思い浮かばなかったので、そのままそれぞれの露光時間の重みをつけて単純に加算しました。それが上の結果です。背景のノイズは小さくなった一方、若干赤い星雲の輝度は弱まってしまったかもしれません。

この辺は、今後このシステムを運用していくにあたっての検討課題です





ノイズ処理は、画像強調の前に行うべきか、後に行うべきか?


お正月は満月期。2021年は画像処理のマニアックな話題からスタートしたい所存です。

はじめに

テーマはタイトルの通り。天体写真の画像強調(ストレッチ)において、ノイズ処理をどのタイミングで行うのが正解か?という問題です。

これについてはおそらく3つの「派閥」が存在すると思われます。

  1. ストレッチの前にやるよ派
    ストレッチによってノイズもまた強調されてしまう。だから強調後にノイズを低減させるよりも、ノイズが小さいうちにこれを叩いておいて、そのあと思う存分にストレッチしたほうが良いはず!
  2. ストレッチの後にやるよ派
    ノイズ処理というのはある種の平均化処理であり、その実行によって必ず何らかの構造が失われてしまう。だから、ストレッチによってまずは星雲・分子雲の構造を引き出し、それをはっきりと把握したのちに、注意を払いながらノイズ処理を行うのが肝要である!
  3. ストレッチの前と後、両方やるよ派
    ノイズと星雲・分子雲の構造、それぞれの画像上の長さ(ピクセル量)に隔たりがあるなら、(巧くやれば)ノイズ処理によって構造が失われる心配は小さい。よって前後に一回づつノイズ処理を行うことで、「前にやるよ派」と「後にやるよ派」のいいとこ取りができる!

なるほど。三者三様に理があるように思えます。

しかしながら、これらを全て同じまな板の上に載せて比較・検証を行うことは容易ではありません。なぜなら一言にノイズ処理と言っても、単純なボカシからwaveletなどの構造解析を取り入れたノイズ処理、さらにはAIを使ったものまで実に様々だからです。同じことは強調処理についても言えます。さらにはノイズにも、輝度ノイズ・カラーノイズ・アンプノイズなどあり、何に着目するかで結果が変わってくるでしょう。

そこでこのエントリでは,もっとも典型的でかつ単純化した状況において上の三つを比較して結果を検証してみます。次にその具体的な方法を説明します。

検証の方法

基本的な考え方は,上の3つの派閥の画像について,ストレッチの強度を共通にしておいて,背景のノイズレベルがほぼ同一になるようにノイズ処理を加えた画像について,明部の構造の様子を比較する,という考え方です。

ストレッチとしてはレベル補正の中間・暗部スライダを動かすだけの最も単純な方法と,wavelet を使った構造強調の組み合わせに限定します。またノイズ処理は,これもwaveletを基にして,長さスケールごとにボカシをかけるおそらく最も典型的な方法だけを想定します(Photoshop 内 Camera Rawの輝度ノイズ低減など)。

以下では,その内容をもう少し詳しく書いておきます。

まず検証の対象にするのは次の画像です

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これはデジカメ(EOS6D)で撮影し、Pixinsightで前処理(フラット・バイアス補正、スタック)を行なった直後の画像の一部を切り出したものです(Pixinsightは、もともと14bitのデジカメ画像の上側にデータを追加して32bitに伸張するので、出力直後はこのように真っ暗な画像になります。)

画像処理では、この画像から出発して強調処理とノイズ処理を行なって天体写真を完成させるわけです。

何を使って強調・ノイズ処理をおこなうか?

強調処理:STFのAutoStretchとHDRMT

天体写真の強調処理は、コントラストの強調/構造の強調の2つに分類できます(他に彩度の強調がありますが、今回は輝度ノイズだけに着目しているので、それは省きます)。

コントラスト強調については、STF(Screen Transfer Function )のAutoStretchを用いることにします。これは、Pixinsightの便利な機能の一つで、画像の情報をもとに一定の強度の強調を自動的に行ってくれる機能です。例えば、上の暗い画像にAutostretchを施すと、次の画像のようになります。

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この中身はレベル補正を自動的に行なっているだけです。上の結果の場合、中間スライダと暗部側のスライダを、次の図のようにのように調整しています。

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次に構造強調にはPixisightのHDRMT(High Dynamic Range Multiscale Transform)を以下の設定で施します。

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HDRMTは、wavelet処理を用いてある長さで変化している星雲などの構造に対して、そのコントラストを部分的に強調する手続き(のようです)。Photoshopでの「明瞭度」やハイパス強調と中身はだいたい同じであると推測します。うえのSTFを施した画像に、さらにHDRMTを行った画像がこちら:

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星雲の明暗の変化が激しい部分に注目すると、変化がよくわかると思います。

ノイズ処理:MLT (Multiscale Linear Transform)

MLT (Multiscale Linear Transform)はwavelet処理を元にしたPixinsightの非常に有用な機能で,シャープ化やノイズ低減、その他いろいろなことが出来ます。書いている本人も全体は把握できていないのですが、ここではMLTのノイズリダクション機能を利用します。

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1, 2, 3, 4, RとあるLayerはwavelet処理を行う長さスケールを表していて、それぞれ画像上の1, 2, 4, 8, 16pxの長さに対応しています。"Amount”はノイズ処理の強さを表し、"Threshold"はノイズ処理を施すピクセルの変化のしきい値を表しています。

いまは輝度ノイズ(ショットノイズ)の低減を考えているので、1pxの長さの輝度変化のみを選択的に低減させればいいはずなので、Layer1のみを選択し"Threshold"は3.0、"Amount"は適宜調整することにします。

次は"Amount=1"としてMLTのノイズ処理前と、処理後の画像を並べたものです。

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どうやって比較するか

まずストレッチの前後にノイズ処理を行う「両方やるよ派」の画像を用意します。つまり

 両方やるよ派:元画像 → ノイズ処理(MLT,Amount=0.6)ストレッチ(STF+HDRMT)ノイズ処理(MLT,Amount=0.6)

("Amount" 0.6というのは顧問がいつもMLTを行うときに選んでいる値で、特に意味はありません)。下の写真はそれによって得られた画像です。

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この画像を比較対象に用います。ノイズの強さを定量化するために,中央に四角で示した背景部分の輝度について、pixel毎の輝度値の分散を計算し、その値を「ノイズ強度」とみな巣ことにしました(その方法については後述します)。

この「両方やるよ派」の画像の場合、背景の分散は 7.68\times 10^{-5}でした(輝度は0を黒、1を白としてます。もともと輝度の揺らぎが小さいので、分散は極端に小さい値になります)。

つぎに「前にやるよ派」と「後にやるよ派」の画像を用意します。つまり

 前にやるよ派:元画像 → ノイズ処理(MLT,Amount = X ) → ストレッチ(STF+HDRMT)

 後にやるよ派:元画像 → ストレッチ(STF+HDRMT)ノイズ処理(MLT,Amount= Y ) 

と処理を行なった画像の背景のノイズ強度が、「両方やるよ派」に一致するように、それぞれの"Amount" X,Yの値を調整するわけです。ただしSTFとHDRMTのパラメータは全ての画像で共通です。(ちなみにこの画像の場合 X=1.0, Y=0.95で ノイズ強度が「両方やるよ派」に一致しました。)

以上のようにして用意した3つの画像について、右下の四角部分で示した「星雲のコントラスト高い部分」を比較しよう。というわけです。

このようにすれば、一応は同じまな板の上で、それそれの派閥の処理画像結果を比較できると考えます。ただし「星雲のコントラスト高い部分」については、その点数を数値化する良い方法が浮かびませんでしたので、ここでは見た目で判断する事にします。

結果

それぞれの結果を示します。あらかじめお断りしますと、違いはかなり微妙です。

前にやるよ派↓

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後にやるよ派↓

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両方やるよ派↓

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ちょっとわかりにくいので、さらに拡大して部分ごと比べてみます

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ここからはどうしても私感になりますが,

 前にやるよ派 > 両方やるよ派 > 後にやるよ派

の順で星雲の構造がはっきりしていると見えます。「後にやるよ派」や「両方やるよ派」では,構造強調の後にノイズ処理が入るので,どうしても星雲の輪郭がボケてしまうようです。ただしその差は,ほんよにごくわずかです。

まとめると,

強調処理の強度が同一で、かつ処理後の背景ノイズの強度を揃えるという条件の下では、ノイズ処理は強調処理の前に行ったほうわずかに結果がよい。

となりますね。

実際の画像処理ではマスクを利用して選択的にノイズ処理を行ったりシャープ化をしたりするので、上のわずかな差はほとんど見えなくなってしまうだろうと思われます。しかし最近Zoom会議などを通していろんな方とお話しした範囲では、ノイズ処理をストレッチの前に行うことを避けているという方が多かったです。waveletのlayerを適切に選びさえすれば,ノイズ処理によって構造が失われる心配は小さく,ストレッチ前にノイズ処理を行う方法も捨てたものではないと,言えるかと思います。

おわりに

というわけで、新年早々かなり時間をかけて検証した割には、結論がしょぼくなってしまいました。

最後に、画像の「ノイズ強度」を計算する方法については、Rubyからrmagickというgemをつつかいました。その導入にあたって twitter上で@rnaさん(このブログでよく引用している

Deep Sky Memories の中の方)や@watsonさんにアドバイスをいただきました。お礼申し上げます。

自分用メモとして、その導入のための概要を書いておきます(環境はMacOS Catalina)

  1. homebrew からrubyをver.3.0.0p0 指定でインストール(普通に"brew install ruby"とやるとver.2.x.xが入るみたい。するとあとのrmagickのインストールでハマった)
  2. 同じくhomebrewからimagemagickをインストール。(webの情報ではImageMagick v7だとrmagickが対応していないので、v6以前をインストールする、とあるがこれは既に解決済みでrmagickはv7にも対応しているみたい 2021.1.3)
  3. ”gem install rmagick”としてrmagickをインストール(gemというのはrubyをインストールすると使えるようになる)
  4. ソースコード

    の下の方にあるコードを参考にした。

また解析する画像がfitsなら、pythonなどを使うのも簡単で良いみたいです。

astropyも使えるようになっておいたほうが、いろいろ便利そう。

2020年の総括!

f:id:snct-astro:20200528171024p:plainくもじいじゃ。

下界の方では、新しい新型ウイルスというのが蔓延しているようで、そのせいか師走の週末も街はひっそりしとるのう。ふだんならシャンシャカとジングルベルが鳴っているはずの表通りも今年は静か。季節感を感じぬままに、あっという間に年の瀬がやってきてしまった感じって感じじゃ。

2020年。バタつきながら神割崎で撮影をしたり、頭を抱えながら画像処理をしたり、たまには学生と一緒に観望会をしたりしていた顧問の様子を、上から見ておった。今回はその「そうかつ!」をしたいと思う。 

1. 顧問のアトラス彗星の写真、朝日新聞に掲載

「世紀の大彗星!?」アトラス彗星(C/2019 Y4)が世間を騒がせたのは、今年の3月ころのことじゃったの。

C/2019 Y4 ATLAS(reprocessing)

Date:18th, Mar. 2020 22:06~22:50
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11"
Mount: Takahashi NJP
Exposure: 90sec. x 30 flames (gain 200)

顧問が撮影したこの写真は朝日新聞に掲載されて、あやつは虚栄心と顕示欲が大いに満たされ,鼻の穴を大きくして喜んでおったわい。単純なやつじゃ。RASA11"ちゅう望遠鏡がすごいだけで、顧問の技術は関係ないとワシはおもうぞ。でもまあ、その時の記事のリンクを貼っておくから、興味のある者は見ると良い。

そのあと、彗星は崩壊して期待されたほど明るくならなかったというのは、ヌシらも知っての通りじゃ。

2. ソンブレロチャレンジの成功

顧問はソンブレロ銀河がお気に入りで、見てるとどうも毎年撮影しておる。円盤部分の紋様を写し出すのを目標にしておったようじゃ。

「M104は等級の割には集光が強く、淡い部分の描出はそれほど必要ない。そこで比較的に短い露光時間で撮影し、Drizzle + Decomvolutionで円盤の紋様を写し出す作戦です」

撮影前にあやつはそんなことを言ってたの。

M104, the Sombrero Galaxy

Date:13th, May. 2020 20:40~23:10
Location: Flower land(hara machi)

Camera: ASI294MC-pro
Optics: Takahashi MT200 with coma corrector F8
Mount: Takahashi NJP, Mgen guide
Exposure: 90sec. x 44 flames (gain 120, -5deg.)

その目論見は成功したようで、当日はシーイング最悪だったにもかかわらず、 うっすら文様がうかんじょる。Pixinsightとかいうソフトウェアを活用し始めたのも、このころじゃった。

3. ネオワイズ彗星を探しに、湯の浜温泉へ

2020年の最大の天文イベントは、7月のネオワイズ彗星だといって、反対するものはおらんと思う。

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あのころは、天候不順で何週間も曇り空が続いとった。部員がスマホで撮影したこの写真は、なかなか評判よく「いいね!」がたくさんついて、顧問はまた鼻の穴を大きくしてよろこんでおったの。

Comet NEOWISE(C/2020 F3)

Date: 2020-7-16 12:00~12:06(UTC)
Location: Yamagata, Japan
Optics: EOS6D, Aposonner 135mmF2(F2.8)
mount: Kenko SkyMemoR

Processing: Pixinsight+Photoshop

大気光の越しのこの彗星写真は、FaceBookというSNSの,とある天文コミュニティーで「100いいね!」 を獲得したとか。なーにが「いいね!」じゃ。人間どもの考えていることはわからんわい。

4.動画撮影

伝染病の蔓延の影響で、人を集めた観望会ができない代わりに、電視観望などの動画撮影を始めたのも今年のことだったの。


再生回数も伸びていないようなので、よかったらアクセスしてやっちくり。

5. 栗駒山でのアンドロメダ銀河

10月に栗駒山で撮影したアンドロメダ銀河には、顧問も自信を深めておったようじゃ。

M31

Date: 2020-10-18 0:10(JST)~
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11", heuibII filter
Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 240sec. x 6 flames(left and right part),  240sec. x 6 flames + 30sec. x 10flames(center part), gain 120, 3x1mosaic

ワシは、やっぱりRASA11"とかいう望遠鏡がスゴイだけのことと思うが、まあそれはどっちでもいいかもしれんの。自信があるなら「天文ガイド」とか「星ナビ」に投稿してみたら良さそうなもの。そう言ったら

「ふん、コンテストなんてものは欺瞞、欺瞞ですよ。欺瞞に満ちておるのですよ *1!」

なんて言ってエアダスターを撒き散らしておった。以前に一度二度投稿して落選し、自尊心を傷つけられて頭に来たとか、どうせそんなところじゃろ。

6. 令和2年11月快晴 

11月,日本はよく晴れてヌシらは発狂して喜んどったらしいの。顧問もRASAを振り回して,縞ノイズで破滅したりとバタバタしとったみたいじゃのう(ワシは休暇をとって海外旅行にいっちょって,直接見てないからよくわからんが)。

NGC1333

Date: 2020-11-15
1:20~4:15(JST)
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11", heuibII filter
Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 240sec x 52flames (gain 120)

「縞ノイズとの格闘の果てに得られたこのNGC1333は,印象に残る結果です。天文用CMOSのフラットダークは,サボらず撮ろう。」

顧問は真面目な顔で言っちょった。まあそうかもしれんの。

7. 木星土星の会合

「希少な組み合わせ」に色めき立つのは,顧問のような天文マニアに限った話ではないの。たとえば撮り鉄趣味の連中が,電車がすれ違う珍奇な瞬間に人生をかけたりとか,よく聞く話じゃ。門外のワシからすると「だから何?」としか思えんぞい。

400年ぶりとかいう木星土星の接近はついこの間の話。顧問は赤外撮影という手法で,低空のシンチレーションの悪さを克服しようと試みてこんな写真を撮っとった。

f:id:snct-astro:20201223003046j:plain

Date: 2020-12-21 7:44(UT)
Location: Miyagi, Japan
Camera: ASI 294mc
Optics: Meade LX-200-30 F10, Sightron IR720 pro filter
Exposure: 0.2sec x 750flames (gain120)
Processing; Autostackkert!3, Registax6, Photoshop

まあ,よお頑張ったとは思うが,これだけ背景が真っ黒だと別々に撮った写真を後からくっつけたように見えなくもなくて,あんまり感動しないのう。こればかしは,直接見るのが一番じゃったと思うぞ。

あと,横浜の方ではIRパスフィルタとかめんどくさい事せずに,通常のカラー撮影で,これよりずっと良い結果を出してる御仁がおった。

「まあ,関東の方が気流が良かったんですよ」

なんて、顧問はSDカードを叩きつけて悔しがっておったわい(笑)。

そうかつ

顧問です。

今年の成果としては,ようやくRASA11"を使いこなせるようになったのが一番かなと思っています。作品一枚あたりの平均露光時間は3時間弱といったところでしょうか。最近は露光時間も増加傾向な感じですが,これ以上のばすと人生を踏み外したり家族が崩壊したりしかねないので,そこそこにしておかないとと,自重しております。ブログの更新回数はこれまでで77回と,2019年の90回を下回りました。

来年の抱負は元旦に述べることにして,このブログも今年は最後になります。

みなさま関係諸氏,今年もお付き合いいただいてありがとうございました。年末は満月期ですので,自宅でゆっくりと良いお年をお迎えください。

 

 

*1:嘘です。本当のところを言うと、コンテストに入賞して掲載料を得てしまうのは、さすがに公私混同でまずいかなと考えて、応募してません。

The great conjunction of Jupiter and Saturn!

したの写真は、顧問の自宅の本棚にある岩波書店版の「星の王子さま」です。

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これを読んだのはだいぶん昔のことで、いまではその内容もほとんど忘れてしまいました。小さな星に住んでいた王子さまが地球にやってきて、主人公といろいろやりとりしたあと、また空へ旅だって行ったのだっけ?、というくらいの記憶です。

この有名な表紙の絵は、王子さまの住んでいた小惑星を地球から眺めた様子を描いているのだろう、と解釈しています。すると、ねずみ色の小惑星の向こうに見えているのは木星土星だと思ってよいでしょう。まさに大接近です。

2020年12月21日の会合は、ちょうどこの表紙と同じように木星土星が並んで見えていました。

Watching the great conjunction!

397年ぶりと言われた夕方。宮城県では、西から流れてくるちぎれ雲の間に澄んだ空がのぞいていました。顧問がSlackでよびかけましたところ、やってきた天文部員は一年生二人でした。三人で学校の屋上に登って、西空に見える一番星の木星を探します

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ほどなくして、二つならんで明るい星が見え始めました。ちょうどこの写真に写っているおおきな雲の少し上のあたりです。熟練の顧問は一番先にそれを見つけ、すばやくシュミカセを向けて、1年生そっちのけで観望しました。およそ100倍の視野の中に、木星土星、それらの衛星たちが、地球の大気に揺らぎながら見えています。大宇宙の広がりが、一瞬で網膜に焼きつくような光景でした。

「こ、こ、こ・れ・わ・ス・ギョ・イですぅ〜〜!」

と、さかなクンとムツゴロウさんを足して2で割ったような声を上げる顧問に、一年生のふたりは若干引いていましたが、自分で確かめたあとは、それなりに感動している様子でした。

次は60年後。顧問は生きてませんが、彼らはおじいさん・おばあさんとして、もう一度この様子を見ることができるかもしれません。

撮影結果

こちらはIRパスフィルターをつかって撮影したモノクロ画像です。土星の輪があと90°ほど左回りに傾いていたら、星の王子様の表紙と「完全に一致」でしたね。オシイ。

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Date: 2020-12-21 7:44(UT)
Location: Miyagi, Japan
Camera: ASI 294mc
Optics: Meade LX-200-30 F10, Sightron IR720 pro filter
Exposure: 0.2sec x 1000flames (gain120), 75% stacked.
Processing; Autostackkert!3, Registax6, Photoshop

撮影結果は、満足のできるレベルに達したと自己評価しています。露光時間は木星がぎりぎり飽和しないくらいに設定していますので土星は暗いですが、色目を使えばそこから遠近感を感じとることができると思います。

カラーカメラの294mcをつかったのは、Lフィルターを使った撮影と合わせてIR-RGB合成を行いたかったからです。しかしその試みはうまくいかず、カラー化すると木星が腐ったみかんのようになってしまいます。現在原因を検討中です。

「モノクロじゃあ、物足りないなー」と悩みながら色々いじっていたら、色温度の調整でなんとなくカラーっぽくなることを発見してしまいました。

The great conjunction of Jupiter and Saturn

(^_^;)\('_') コレ! インチキハ,ヤメナサイ

流星の軌道解析

あらまし

じつは流れ星にあまり興味を持っていません

「いえ。流星って宇宙の塵芥が断熱圧縮で燃えてるだけですよね。ちょっと何が面白いのか分かりませんねぇ。」

顧問は以前からこんな調子ですので、流星群の極大の日はだいたい自宅で寝ぼけております。ペルセウス座流星群に合わせて夏合宿を行うなんてこともありません。頭脳が働いていないから、好奇心の幅が狭いのですね。どうもすみません。

ところで今月12日の夜。神割崎でM78の周辺を撮影していましたらやけに流星が飛びます。

「あ、そういえばふたご座流星群の極大が近いのだっけ? 念のため撮影しておくか」

とα7Sに魚眼レンズをつけて動画をほったらかし撮影していました。

しばらくして、カエル教教祖3.0さん(以下カエルさん)のツイートが目に止まりました。

カエルさんが火球を目撃していたとき、顧問は目をギンギンにして、モニターに表示されるガイドグラフを凝視していたとおもいます。しかしあとで動画を確認したら、この火球が写ってました。 


「動画に撮ってましたよ!」とコメントしたところ悔しがっておられましたね。

「こっちでも撮影できていたら、軌道の解析ができたのにー」

って。しかしすかさず、同じ宮城県内でこの流星を撮影されていた方を見つけ出してくださったのです。ありがとうございます。顧問がいた神割崎から西に30kmほどのところにある加護坊山にて、同じ流星は次の写真のように写っていました

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おー、見かけの方向がだいぶん変わるのですね!
撮影された方は、ブログ

を書かれているSさんです。今回、許可をいただいて掲載しました。

顧問が撮影していた動画からも、各コマを切り出して比較明で合成して静止画を用意しました。

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二つを比較して、軌道の解析ができる。流星たのしいじゃん。考えを改めました。

解析の方法

全体の手続き

まったくの我流ですが、以下の手続きで解析を行いました:

  1. それぞれの観測点の北緯・東経・標高を調べておく。
  2. 写っている星の位置を元にして, それぞれの写真から流星の始点・中央点・終点の赤緯赤経を求める。
  3. 流星の写った方向の赤緯赤経に対応する、観測点の位置と観測時刻における方位(真北からの角度)と高度(水平線からの角度)を取得する。
  4. 緯度線・経度線を記入した地図に,お絵かきソフトをつかって方位を書き込み、日本の線分が交わる点を求める。
  5. 交点との距離と高度をつかって、流星の高さを求める。

という流れです。

使用したソフトウェア・サイトなど

上記の3. は、フリーソフトのStellariumを使いました。もはや紹介するまでもないほど有名なソフトですけど、念のため以下からダウンロードできます。

標高・緯度・経度の取得、作図のための地図の入手には国土地理院の地図

が便利でした。

また、流星の見えた方向の赤緯赤経をを取得するために、Pixinsightを使って二枚の写真に写っている星を位置合わせした上で比較明合成し、次のような画像を用意しました。

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この写真から、それぞれの流星の開始点、中間点、終点の座標を求めることにしました。

解析結果

以下、簡潔に解析の結果をまとめます(方位と高度は2020-12-12 23:12.30(JST)での値)。

神割崎
流星痕の始点 :赤緯0度16分,赤経5h45m30s(方位163.7°、高度50.5°)
流星痕の中間点:赤緯-5度45分,赤経5h29m20s(方位171.2°、高度45.3°)
流星痕の終点 :赤緯-10度48分,赤経5h15m00s(方位176.6°、高度40.5°)
 
流星痕の開始点:赤緯1度10分,赤経6h48m50s(方位140.6°、高度45.3°)
流星痕の中間点:赤緯-3度45分,赤経6h43m30s(方位145.4°、高度41.7°)
流星痕の終了点:赤緯-8度16分,赤経6h38m20s(方位149.4°、高度38.1°)
 
以上の結果を地図に書き込みました。
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青:始点、赤:中間点、マゼンダ:終点、です。黄色の矢印が流星の軌跡になります。水平距離としては15.7kmを移動し、標高88.3kmから発光し,59.7kmまで落下したのちに燃え尽きた計算です。顧問のビデオ撮影では、1/4秒の動画で4コマにわたって火球が発光していたのが見えたので、発光時間はおよそ1秒。すると平均速度はおよそ33km/s=時速12万キロだったことになります。

誤差について

誤差の要因のうち最も大きそうなのは、それぞれの写真を撮影したカメラの感度の差であろうと思います。感度が違えば、写真上の流星の視点と終点の位置が異なってくるはずです。これはそれぞれの画像に写っている星の測光をすれば補正できそうですが、今回はやってません(始点・中間点・終点が一直線に並んでいるので、多分大丈夫かなと)

第二に効いてきそうなのは、大気差、レンズの歪みでしょうか。第三に地球の曲率だとおもいます。

実際の計算はどのように行われているのか、もうちょっと勉強してみようかしらん。