天文はかせ幕下

アンドロメダ銀河、あの日の結果を超えられるか。

今年7回目の遠征撮影に行ってきました。

1年前から始めた筋トレによる体力の向上の結果、RASA11"を車に積むのが苦ではなくなくなり、今年は5回もRASA11"で撮影しています。同時に、この扱いにくい鏡筒への対策もほぼ合格点に達して、最近はコンスタントにエラーのない元データが取得できるようになりました。

そんなわけで、満を持してのアンドロメダ銀河です。ASI2600mc-proで2x1モザイクで撮影しました。各フレーム100分、トータル200分になります。

M31

date: 2023-9-23
Location: Mt. Zao, Miyagi
Optics: Celestron RASA 11" 620mm F2.2, 

Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 2min x 50frame (2x1 mosaic), gain 120, total 200min
Camera: ASI2600mc-Pro

 

最後にアンドロメダの全体像を撮影したのは3年前の栗駒山でした。その時は同じ鏡筒にASI294mcを取り付けて3x1モザイクで撮影してなかなか良い結果になったのでした:

今回の撮影では、上の結果を超えられるかどうかが自分にとっての大きな課題でした。思うに、294mcと2600mcの性能差は多分あまり大きくはありません。しかし3年前の撮影はトータル1時間ちょっとなのに対して、今回は3時間強の露光ができました。しかも3年前と今では、Pixinasightの機能が雲泥の差です。

あの日の結果を超えるのは、そう難しくないはず・・・。

ですがどうでしょう、星像とか光条とか、細かな詳細は今回の結果のほうが整っていると思いますが、全体像をパット見た印象は、むしろ前回のほうが良いような気がしています。

自己新記録の達成が、だんだんと難しくなってきました。それでも遠征撮影は楽しかったから良しです。

撮影の記録

土曜日の昼下がり。特に撮影の予定もなくぼんやりしていたら、こんなツイートが目に入りました。

う、これだからついったーってやつは。今秋シーズンの目標だったアンドロメダ銀河を撮影する貴重なチャンスかもと、焦りが募ってきました。

それで結局、かのーぷすさんに「僕も行きますー」とDMを送信。風呂掃除とかしたあと、家族に生暖かく見送られ、出発します。蔵王へ。

雲が湧いたり晴れたりと天候が安定しない夜で、何時間露光できるのか予想のつかない状況でした。そんななかでのモザイク撮影は気を使います。それぞれのフレームの枚数を均等に稼ぐために、きっかり20分おきに撮影座標を交換しながら露光していきました。

あ、左側のフレーム、最後の3枚は雲の影響でたから、ちょっとフレームを追加しましょうねえ。なんて微調整を繰り返して、それぞれの枚数が均等になるように努力。ガイドグラフの観察もぬかりなく、星が楕円になれば、ガイドカメラの露光時間や各種パラメータを調整します。

こういう撮影、チリのリモートとは全く対照的です。チリではNINAでシーケンスを組んでいて、日本時間の毎朝、ボタンをポチっと押したらあとは夕方まで基本ほったらかしです。たまに仕事の合間に、結果を確認してニヤニヤする程度。気が付けばたっぷりのデータがそろっています。

遠征先で空模様や星の瞬き、風の様子などを確認しながら、マニュアル操作で撮影を調整していく作業は、遠征ならではの楽しさです。自分にとってチリリモートへの参加は、遠征の楽しさを再認識する良いきっかけになったと思っています。

すてきなお手紙をいただきました

先日、天文部あてに速達のお手紙が届いていました。

急ぎの用事?まったく心当たりがありません。封を切ると、子供の文字が書かれた小さな便箋が二枚はいっていました。「あ、あの子かあ!」

 

今年の夏合宿、ハイルザーム栗駒に出かけてきたことは記事にしていました。

初日の夜、ドブソニアンで部員たちと惑星を見ていた折、近くの暗闇から親子連れと思しき声が聞こえていました。余計なお世話かもと思いつつも声をかけて、一緒に観望したのでした。

小学4年生になると理科の授業で星空の勉強が始まるのですね。男の子は「星座早見盤をつかって星座を観察する」という夏休みの宿題のために、栗駒山に連れてきてもらったのだそうです。

ぼくらの望遠鏡で初めて土星をみたときに彼が発した声は、今でも耳元に残っています

「うわあー、わっかが見えるよお!」

まるで炭酸の小さな泡がパチパチ弾けるような、とっても可愛くて純粋な好奇心を思わせる声でした。あれほど新鮮な反応をもらった記憶はなくて、顧問もすっかり良い気分になったのでした。

 

便箋には銀色の星のシールがいっぱい貼られていて、土星や天の川に感動したこと。もっと宇宙のことを勉強したいと思ったこと。このブログの更新も楽しみにしていることなどがつづられていました。

返信先の住所は書かれていなかったので、ブログの記事にしてお返事します。Ⅰ君、お手紙ありがとう!またどこかでお会いしましょうね。

 

いやあ、普段は眼視用の望遠鏡持ち出さないですからね。こういう時のために、これからも撮影の隣に手ごろな経緯台を置いておくとよいなと思いました。

 

いつになったら帰るの?

  子供の頃のある日、近所のおばさんが何かの用事で訪ねてきた。珍しく母親との間で話が弾んだのか、夜遅くになっても居間で盛り上がっており、帰る気配がない。私にとっては普段と違う夜で、こんなことは無条件に楽しいものである。酒の肴をつまみ食いできるし、「寝ろ」とも「歯を磨け」とも言われないので。

この時間が長く続けばいいものだ。おばさんには明日になるまで母親と話していてもらいたい。そう思ってこう言った

「おばさん、いつになったら帰るの?」

しばらくしておばさんは帰宅し、私はそのあと、母親にかなりきつく怒られた。

「いつになったら帰るの?」が、「早く帰れ」という意味になって伝わることを、当時の私は理解していなかった。言葉の意味は暗に変換されてしまうことがあるのかと認識し、これは不便だと困惑したことを覚えている。

 

それから7〜8年経ち、そんな日本語のニュアンスもある程度理解できるようになった頃。たとえばある朝、学校で友人と交わす挨拶はこんなだった

「おう、最近どう?」
「はあ? だりぃ」

この場合の「だりぃ」という返答は文字通りに「体が疲れている」という意味ではない。あえて詳細に説明すれば

「俺はここのところ、退屈な学校生活に本当にウンザリしているよ。そしてお前もそうだろう?」

である。友人もこれを理解していて、「だよな」とでも言いたげにニヤニヤするばかり。そんなコミュニケーションが当たり前のように行われていた。

 

さらにそれから7年ほど経ち、顧問が大学院生になった頃。インディアナ州のブルーミントンという美しい名の街にある大学に1ヶ月ちょっと滞在する機会があった。研究室には、中国や南米など様々な国の人たちがあつまっていた。Lenというブラジル出身の学生はひときわ陽気で、英語が赤滅に下手な顧問とも仲良くしてくれた。ある朝、lenが

ヘーイ、ハウアーユー?

みたいな感じで話しかけてくれて、しかし当時の私はサンキュー、I'mファイン!などと言えるような心理状態では全くなく、研究の進捗や将来の不安から重たい気分だった。なんと返答したのかは覚えていないが、昨晩はよく眠れなくて疲れているとか、そんなようなことを言ったと思う。そしたら

オー、ホワーイ?

と親身に心配されて、高校のころの友人のようにニヤニヤと受け流す気配は全くない。これはちょっと返答に失敗したなと思った思い出がある。

南米の陽気なLenだって、ときには落ち込むこともあるだろう。そんなときにHow's it going? と挨拶されたら彼はなんと返事するのだろう? 海外の方々とのコミュニケーションには疎いので自信はないが、力なく笑顔をつくってファイン、サンキュー!とかいうのだろうか。

 

洋の東西を問わず、人間同士のコミュニケーションにはときに嘘やゴマカシは必要である。

日本人は、言葉が文字通りの意味と、暗の意味に分裂している日本語の性質を利用することによって、嘘をつかずとも本当でないことを言ったりして上手くやっている面がある。一方で海外の言語が日本語に比べて意味の分裂の程度が小さいとしたら(言葉が文字通りに解釈される傾向が強いとしたら)、それだけ余計に会話の中に嘘が混じらなければならない。

どっちも同じかもしれないが、どっちがいいんだろうなー。って考える。言葉が二重の意味をもつ日本語、便利な時もあるけれど、ものすごくムカツクことも多いんですよね。

つる座のカルテット

ペアの銀河といえば、M81とM82がすぐに思い浮かびます。3つ組は「しし座のトリプレット」、ひとつ飛んで5つ組は「ステファンの五つ子」があります。

4つ組のカルテットと呼ばれる銀河のことは、今回撮影するまで知りませんでした。

つる座の付近に"The Grus Quartet”(つる座のカルテット)と呼ばれる銀河の連なりを見つけて、チリでの夏の撮影対象に選びました(あっちは冬)。7月末から8月の晴れ間に18時間ほど露光しました。

THE GRUS QUARTET (NGC 7552, 7582, 7590, 7599)

date: 2023-7-28,29,8-13,25,29 (5 nights)

Location: El sauce Observatory, Chile

Optics: R200ss,

Camera: ASI294MM-pro

Exposure:

L 120s x 281f gain120

R 120s x 92f gain120

G 120s x 87f gain120

B 120s x 91f gain120
(total 18.4h)

Processing:Pixinsight, Photoshop

焦点距離760mm+4/3センサーで、面積比60%くらいにトリミングしています。ちゃんと撮るなら1200mmくらいほしいところ。画像処理は色と透明感を重視して、腕の淡いところの描出は諦めつつ、なるべく背景を暗く出来るように心掛けました。黒つぶれを防ぎつつ背景を落とすためには、結局は長い露光時間が必要なんじゃないかなと思っています。


この4つ組の銀河が見えている位置を確認します。ペガスス座のはるか南方、ちょうこくしつ座とつる座の間のあたりです。宮城県での南中高度は12度くらいで、さすがに日本から撮影するのは難しそうです。

 

思い切りトリミングして、一つ一つの銀河を見てみます。距離は、後述する id:rna さんのアノテーションスクリプトからとりました。

まずはフェイスオンのNGC7552、こういうのを棒渦巻銀河というのでしょうか。棒構造の本体には活発そうなHa領域も見えています。

NGC7552(7770万光年)

つぎはNGC7582。これも棒渦巻銀河ですね。もしこれがファイスオンだったら、うえのNGC7552とほとんど同じ形をしていそうです。ただ腕の色はすこし青みが薄いようでした。

NGC7582(6200万光年)

さいごは、NGC7590と7559のペア。これは渦巻銀河のようです。細かな暗黒帯が印象的で、顧問はM63と似ているなと思いました。

左:NGC7590(7940万光年)と右:NGC7599(7520万光年)

4つの銀河の距離は、いづれも7000万光年前後。それらが0.5°くらいの視野内に集まって見えているわけですから、簡単な三角法で計算すると、カルテットの間の距離は数百万光年程度になります。ちょうど我々の天の川銀河アンドロメダ銀河(M31)くらいの位置関係です。これらの銀河に住んでいるガチ天達にとって見れば、M31のような立派な銀河がお互いに3つも見えているわけで、すこしうらやましくなりました。

 

最後にアノテーションをした結果を載せておきます。

アノテーション機能は、撮影結果をみて一人ニヤニヤするには最高のツールです。10億光年以上離れた銀河はいづれも黄色っぽくって、宇宙の膨張を感じちゃいます。

 

id:rna さんの作成されたスクリプトを使用しました。以前も拙ブログで紹介していましたが、最近、わずかに残っていた不具合を修正して新しくリリースしてくれました。ありがとうございます。

rnaさんのスクリプトは、Pixinsightのアノテーション機能と比較しても下にあげるような利点があります(一部超マニア向け利点ではありますが^^)

  • 銀河までの距離が日本語で表示できる
  • PIの銀河のマークが円だけであるのに対して、銀河の形を考慮した楕円マークが表示されるので、写っているかいないかわからないような小さな銀河の確認に役立つ
  • フォントの選択肢が多い
  • 表示する銀河に等級で制限をかけられるので、PGC銀河で画面が埋め尽くされることが無い

などです。導入方法は下で紹介しています

snct-astro.hatenadiary.jp

 

サムネ用



 

2023年、天文部夏合宿報告その2

コチラの記事の続きです

 

うーん、昨晩は1枚も露光できなくて残念であったよなあ。って失望を胸に、ロビーで読書している顧問です(三脚で自撮り)

窓外の空は曇っています。

2泊日程の天文部の合宿にて、昼間の時間をどう過ごすかは毎回の課題です。

「会議室を借りて微積分学集中講義」でもやりましょうか。夏の思い出の1ページに、スポーツでなく積分計算に汗を流すなんてのも、乙ではないですか」

顧問はそう提案してみたのですが、部員たちはニヤニヤするだけで反応が薄かったので、この案はボツ。無難に自由時間としました。

外の空気は下界より若干涼しくて、周辺に整備された散策道を歩くのも気持ちが良い。すでに部員たちはどこかに遊びに行っているようです。顧問は先ほど宿の食堂で一人でカレーを食し、いまはロビーでぼんやりしています。小学生の子供が二人いる身にとっては、ただ日没を待つだけのこんな間延びした時間が、たまらなく心地よいです。

施設内のプールや温泉は昼間も利用できて、食堂も営業しています。

「昨晩は、星は見えましたか?」

複数のスタッフの方々にそう聞かれ、天文への理解のある宿だなと思いました。

ウトウト眠ってしまい、ふと時計を見ると14時。本の内容が頭に入ってこなくなったので、車を走らせてイワカガミ平の様子を見に行くことにしました

うーん、これはよく見る光景です。

今夜、ここで合流する予定になっていた、そーなのかー氏(以下そ氏)に状況を報告します。それでも来るとの返事でした。頼もしいかぎり

合宿第2夜

この霧も日没後には晴れたようで、夕食後に再度訪れると晴天が広がっていました。予報通りの雲抜けです。すでにそ氏は到着していて機材をセッティング済みです。日ごろの行いが悪いために、10枚ほど露光したあたりから曇ったり晴れたり曇ったりで、どんどん雲が厚くなっていきました。

観測の様子。雲の切れ間から天の川中心部が覗きました

不気味なほど真っ黒な雲を眺めながら、学生たちと雑談の時間になります。

企業で働くようになってから、いかに微積分学や線形代数、ビジネス英語が重要であるか。そ氏は部員に話してくれました。教員の私が同じことを言うよりも、真剣に聞いていたと思います。そのあとも一向に晴れる気配はなく、話はディープになっていきました。クロソイド曲線懸垂線の応用、確率過程のガウス分布と品質検査の関係などへ及びます。

ちょっとしゃべりすぎたと反省されていたツイートですが、学生とってみれば山中の闇の中という非日常の環境で聞いた上記のような話題は、とても刺激になったと思います。

ありがとう、そ氏。

最後に記念写真を撮って、0時ころに解散となりました。

宿に戻ってからたっぷりと寝て、翌朝は送迎バスにのって合宿はお開きです。どうもお疲れさまでした。また来年!

 

 

 

 

2023年、天文部夏合宿報告その1

8月20日、21日の日程で天文部の夏合宿を行いましたので、ご報告いたします。前回の合宿は2019年でした。

伝染病の影響で4年ぶりの開催でした*1。場所は、宮城県栗駒山のイワカガミ平です。

 

冒頭からネガティブなこと申して恐縮ですが「合宿と言えば晴れない」。この一言に尽きます。日程が決め打ちだからこれは致し方なし。これまで開催してきた合宿の天気の記録をご覧いただきましょう

曇り一時晴れ」と書いてるのは、ほんのひと時ほど星空が見えたという程度の話なので、2015年から5年連続で黒り空続きでした。そして今回は結論から申しますと

  • 2023年 初日初日曇りのち晴れ、二日目曇り

でした。うーん、まあ初日の薄明前に数時間晴れたので良いほうではありました。

 

今回のお宿は「ハイルザーム栗駒

栗駒山のふもと、標高500メートルくらいのところにあって、「プール・サウナ・コテージも併設されている滞在型の健康増進施設」です。料理もおいしくて合宿の宿泊先として利用するのは今回が2度目でした。

入口には「仙台高専名取キャンパス天文部」とちゃんとありました。少しうれしい。

お部屋は「メゾネットタイプ」というのでしょうか。内部で2階建て構造になっていて、下が和室。上が洋室といった形になっており、複数人で寝るには使いやすいです。

夕方まで、露天風呂に入るなどマッタリした後、観測前の腹ごしらえです。

近くの河原で撮れた岩魚とかご馳走になりました。

 

食べたら即出発、ってことで宿から500mほど標高あげたところにある栗駒山の登山口「いわかがみ平」に移動します。ここは宮城県内では最も空が暗い場所であると思っています。思い入れもあって、今回は3回目の利用です。以前はこんな動画も撮りました

 

現地到着後、まずはみんなで記念撮影しました。

さすがに天の川が濃く写ります。

このあと顧問は「繭星雲」を撮影すべく機材を展開。部員たちはドブソニアンやAZ-Gteを使って眼視観測を楽しみました。しかし日ごろの行い悪いため、ほどなく雲に覆われます。

「うーん、ムーブ!」

つって、少し下にある駐車場に移動しましたら晴れたのですけど、同時にいわかがみ平も晴れていたようでした。意味なし。

ほどなくオリオン座も昇ってくる時間帯で、顧問は機材を再展開する気力もなく、みんなでダラダラ過ごしました

一日目はこれでおしまい。二日目に続く

snct-astro.hatenadiary.jp

 

*1:ブランクのあいだ、星沼会の合宿は2度開催していたわけですが、それはさておき

ライフゲームと銀河形成シミュレーション

ライフゲームと呼ばれる計算モデルのことを知ったのは、顧問が中学生のころ、雑誌「ニュートン」だかを読んでいたころでした。2次元の方眼紙上に数字の1で表された「生物」の生存のゆくえを模倣したモデルです。方眼紙上の4つ隣に生きている別の生物の数によって死滅したり(1→0)、生き残ったり(1→1)、あるいは誕生したり(0→1)します。

現実の生態系の複雑さとはかけ離れているので、ライフゲーム自体はその名の通り一種の数字遊びに過ぎないけれど、少しルールを工夫してあげると、ある種の結晶の成長とか生き物の模様などを再現することもあります。このような計算モデルは、一見複雑に見える現象が実は単純なルールから成り立っていることを暗示していて、一昔前にたくさんの研究がされました。いまでは一般的にセル・オートマトンと呼ばれています

 

顧問が大学生のころに統計力学の授業をうけた小田垣孝さん*1が当時出版した一般向けの本

のとあるページに、セル・オートマトンで銀河を形成を計算する論文(Percolation and Galaxies)が紹介されていて、記憶に残っていました。それはとても単純です:

  1. 方眼紙上の星(下図の赤い星)は、次のサイクルではそれが超新星爆発を起こして周囲の8つのセル(下図の白丸)に確率pで新しい星を形成する
  2. ある中心を基準として、全体が一定の速度で回転する。

たった、これだけです。

銀河の回転は惑星の公転ともレコード盤の回転とも異なっていて、どこでも同じ速度になるのだそうです。それが2.の過程に反映されています。外側に行くほど、星が一周するのにかかる時間は長くなり、その回転速度の差が銀河の渦巻き形状のポイントになっています。

丁度最近、”Julia”と呼ばれるプログラム言語を覚えてみようかなと思い立って、手始めの練習問題にこの銀河シミュレーションを選びました。その結果がこちら:

なかなかそれっぽくなっていて、t=500あたりで、M101銀河のように見えなくもありません。観測によると

 

オリジナルのモデルとはちょっと違っているところもあるので注釈を付記しておきます。まずオリジナルでは2次元極座標を使っていますが、その実装は結構面倒なので、ここでは単純な正方格子としました。また、オリジナルではpは一定ですが、上の計算では、星の密度が高いところでは星の生成確率pを大きめの0.16くらいに、星の密度が低いところでは小さめの0.13くらいに調整しています。

 

 

*1:・・・先生ではなく、・・・さんと呼ぶのが物理学科の習わしでした