天文はかせ幕下

2023-01-01から1年間の記事一覧

2023年の締めくくりにカモメ星雲を撮影しました

「全天で最も美しいHα領域の散光星雲を3つ挙げよ」と言われたら、皆さんは何を選ぶでしょうか? うーん、私ならランク付きで カモメ星雲 馬頭星雲 なし なし 猫の手星雲から干潟星雲かけて を挙げます。「3、4がなくて」ってやつです。皆さんのランク付け…

2023年ふたご座流星群:極大日の夜に観測できました

今月14日の夜から翌日未明に極大を迎えたふたご座流星群。全国的に雲が広がる空模様のなか、宮城県の沿岸部は運良く雲が切れて晴れ間に恵まれました。当初から計画していた観測会は、参加人数が少なかったこともあり、ちょっと無理して神割崎まで出かけて…

スタックでの最適な重み付けをもとめる PixinsightのWeight Optimizer スクリプト

はじめに まずは使い方 基本的な使い方 処理に時間がかかりすぎる時は"Subregion"を指定する 結果の吟味 グラフで比較 スタック前のフレームに画質の差があると、効果あり 画像で比較 おわりに:検証すべきことたくさん! はじめに (追記12/19:Pixinsightの…

自宅で馬頭星雲

ドラモリドラモリ、ドラッグストアモーリー。ドラモリドラモリ、ドラッグストアモーリー。って頭の中で、かかる薬局店のテーマソングが繰り返し鳴りやないのは、そこに自分が出入りし、プロテインなどを買っているのが悪い。1年ほど前、近所の商業用地に建設…

天体写真は芸術作品たり得るか

はじめに 「芸術作品」の定義 Tさんを例に 個人的な美と普遍的な美 芸術作品の定義 天体写真は芸術作品たり得るか おわりに はじめに 星沼会で親しくお付き合いしている丹羽さんは、昨夏に自身の個展を開くなど「天体写真にアート性を見出す」ことをテーマと…

赤っぽい銀河(IC342/NGC6942)の話

はじめに(IC342について) 見える方向 似ている銀河(NGC6946) 銀経と銀緯 UV/IRカットフィルターを外すとよく映る おわりに はじめに(IC342について) 先日の神割崎にて撮影したIC342銀河は、珍しい銀河でした 拡大してみますとこんな姿をしています 珍…

撮影結果からシンチレーションを評価する

まえおき 撮影の合間に空を見上げて、3等星くらいの星があまり瞬いていないようだったら、「今夜はシーイング悪くないな」と判断しています。でもこれは多分に主観的です。できれば別日と比較検討できるような指標が得られれば良いですよね。 シンチレーシ…

ASI2600MMを導入しました

久しぶりの機材拡充でして、ASI2600MM(以下”MM”)を導入しました。とある方から中古品を安く譲り受けることができました。 11月の新月期は、このカメラのファーストライトのために神割崎に行ってきました。 しばらくは元々使っていたASI2600MC(以下”MC”)…

庭先撮影のことを考える

晩秋のころ、透明度良く晴れる夜が多くて、自宅にいるとソワソワします。SCWの予報は曇りなのに、外は晴れてます。こんな夜に、ササっと庭の望遠鏡のカバーを外して撮影が出来たらいいのですよね。 そんなことを考えつつ、家族が寝た後ベランダに出てみます…

夏油高原でキャンプ

涼しげな高原なのに、夏油(げとう)と、なんだか暑苦しい名前の地区が岩手にありまして、そこに今年新設されたキャンプ場へ家族で出かけてきました。 現地のSQMは21.8。南や西は十分に暗そうです。 キャンプ場の様子。ゲレンデの平坦な場所がフリーサイトと…

チリで銀河2作

10月のチリも昨年に比べて晴天率が低く、晴れても透明度がよくなかったりで、撮れだけ少なめです。2つの銀河を3晩でそれぞれ12時間露光しましたが、イマイチSNが上がりません。またドローチューブも少しぐらぐらしている疑いで、星像も一番良かった頃…

星沼会秋合宿

顧問は学生を卒業して給料をもらうようになったのが、27歳のころと比較的おそくって、それで働くようになって初めに気づいたのが「あー、『社会人』になると友達いなくなるのだなあ」てことでした。これは顧問の人間性の問題もあるかもなんですが、学生のこ…

アンドロメダ銀河、あの日の結果を超えられるか。

今年7回目の遠征撮影に行ってきました。 1年前から始めた筋トレによる体力の向上の結果、RASA11"を車に積むのが苦ではなくなくなり、今年は5回もRASA11"で撮影しています。同時に、この扱いにくい鏡筒への対策もほぼ合格点に達して、最近はコンスタントに…

すてきなお手紙をいただきました

先日、天文部あてに速達のお手紙が届いていました。 急ぎの用事?まったく心当たりがありません。封を切ると、子供の文字が書かれた小さな便箋が二枚はいっていました。「あ、あの子かあ!」 今年の夏合宿、ハイルザーム栗駒に出かけてきたことは記事にして…

いつになったら帰るの?

子供の頃のある日、近所のおばさんが何かの用事で訪ねてきた。珍しく母親との間で話が弾んだのか、夜遅くになっても居間で盛り上がっており、帰る気配がない。私にとっては普段と違う夜で、こんなことは無条件に楽しいものである。酒の肴をつまみ食いできる…

つる座のカルテット

ペアの銀河といえば、M81とM82がすぐに思い浮かびます。3つ組は「しし座のトリプレット」、ひとつ飛んで5つ組は「ステファンの五つ子」があります。 4つ組のカルテットと呼ばれる銀河のことは、今回撮影するまで知りませんでした。 つる座の付近に"The Gr…

2023年、天文部夏合宿報告その2

コチラの記事の続きです うーん、昨晩は1枚も露光できなくて残念であったよなあ。って失望を胸に、ロビーで読書している顧問です(三脚で自撮り) 窓外の空は曇っています。 2泊日程の天文部の合宿にて、昼間の時間をどう過ごすかは毎回の課題です。 「会…

2023年、天文部夏合宿報告その1

8月20日、21日の日程で天文部の夏合宿を行いましたので、ご報告いたします。前回の合宿は2019年でした。 伝染病の影響で4年ぶりの開催でした*1。場所は、宮城県栗駒山のイワカガミ平です。 冒頭からネガティブなこと申して恐縮ですが「合宿と言えば晴れない…

ライフゲームと銀河形成シミュレーション

ライフゲームと呼ばれる計算モデルのことを知ったのは、顧問が中学生のころ、雑誌「ニュートン」だかを読んでいたころでした。2次元の方眼紙上に数字の1で表された「生物」の生存のゆくえを模倣したモデルです。方眼紙上の4つ隣に生きている別の生物の数に…

ニヤニヤ笑い

※若干唐突ですが、最近記事にするネタが枯渇気味なので、無内容な随筆をたまに書いていきます。不評であれば止めます 妻の運転する自家用車が、横を抜けていった。私は仕事帰り、県道沿いを電動自転車で走っていて、たまたますれ違ったのである。 「なにをニ…

新カテゴリ

最近は天体写真関連の話題が飽和状態な感じで、このブログもだんだんと書くことが無くなってきました。日々のアクセス数も減少気味です。それでなにか役に立つ有用な情報を記事として上梓しようと頭をひねっても、数か月後には無用になってしまうようなこと…

赤い猫の手星雲

いやはや、6月はチリの天候が不順でした。 毎晩8割くらいは曇ってほとんど撮影できなかったのです。昨年の秋から春にかけてはほとんど晴れていて、撮影か忙しすぎるくらいだったのに。 現地からの情報では 「確かに6月は曇りが多いよ。けどこんな天気は初…

蔵王の雲抜け、22日は会心の星空でした

はじめに 過去の蔵王の雲抜け時の天気図。左から2020年9月、2020年8月、2019年9月 上の三つは、いづれも顧問が蔵王山での雲抜けを経験した時の天気図です。これら気圧配置の類似点を元にして、3年前の8月のブログ(蔵王雲抜けの記録 - 天文はかせ幕下)にて…

IRフィルターでワシ星雲撮ったら、赤色巨星が映りました

はじめに もうすでに先月のこと、6月24日の夜は蔵王に雲抜けの気配。 今夜雲抜け狙ってみるかな — だいこもん (@pochomskii) 2023年6月24日 などと周囲にサインを送りつつ、撮影に出かけてきました。 大黒天駐車場にて。HOSOTCHさんと @kaerupapa さんや東北…

カメレオン座の分子雲

カメレオン座は天の南極付近にあって、日本人にとっては馴染みの薄い星座です。顧問もチリでリモート撮影を始めるまでは、全く知りませんでした。 チリの望遠鏡を一緒に運用しているAramisさんが、4月ころにこの辺りの分子運を撮影されていました。 天の南極…

御礼:CANP2023無事閉幕しました

CANP2023は6月10日11日に実施され、大きなトラブルなく無事に閉幕しました。関係のみなさまに厚く御礼申し上げます。 閉会後もしばらくは、SNSでもCANPの話題が多く書き込まれていて、感想を読んでニヤニヤしたり、レスポンスしたりと、これを書いている今で…

梅雨入りじゃ

皆のしゅう、くもじいじゃ。 ワシが東北地方の梅雨入りを宣言するぞ。撮影はすこし休憩して、ないがしろにしてる家族にサービスでもするのがよかろう。 なのに、ここのブログの主は最近、チリに望遠鏡置いてまで天体写真撮っとるらしいの。曇ったら休めばよ…

LRGB合成画像のモザイク合成に成功するための事前調整について

上の写真は、先日3x2=6枚のモザイクでそーなのかーさんが撮影し、私が処理しましたイータカリーナ星雲です。モノクロカメラのASI294mmを使用して、LRGB合成で得られたカラー画像を、さらにモザイク合成しています。 モザイク合成は有料ソフトのAstropix…

M101の超新星2023ixf(続

先日、蔵王でM101の超新星SN2023ixfを札視した4日後の5月24日、名取の自宅でもう一度撮影しました。 撮影していてはっきりとわかるくらい明るくなっています。 測光もやってみました。今回はMakaliiでなくて、PixinsightのDynamicPSFで星を検出して読み取っ…

M101の超新星SN2023ixf

先日に、新入部員を連れて蔵王山の刈田岳に登りました 丁度その前日の未明のこと、山形県の著名なアマチュア天文家、板垣公一さんがM101に超新星2023ixfを発見したとの報が。 コチラの記事によりますと、2023ixfは発見時で14.9等星、直後に行われたスペクト…