天文はかせ序二段(仮)

天文はかせ序二段(仮)

仙台高専(旧・宮城高専)天文部の活動記録です

ε200とその補正レンズのバックフォーカス

前置き

今からもう、5年近くも前の話。私の前任の天文部顧問、「スズカツ」の研究室から埃をかぶったタカハシのε200が発掘されたという出来事がありました。

おそらく20年近くは眠っていたのでしょう。いくつかの接続環が紛失していて、そのままではカメラを取り付けることができませんでした。幸い、鏡や補正レンズの状態は悪くなく,この望遠鏡を活かすためにCOSMO天文工房で接続リングを特注したのでした。

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写真の真ん中が、その接続リング。左はε200の補正レンズ。右はEOSのTリングです。この三つを

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こんな形で接続して使います。

このセットアップで、いままで何回も撮影してきており、星像も十分に満足のいくものでした。たとえば

Triangulum Galaxy M33 | Date: 25th and 25th, Oct. 2017 Camer… | Flickr

M31 | date: 11.Sep, 2018 Location: Asahi-city, Yamagata, JPN… | Flickr

The Rosette Nebula | Date: 30th Dec. 2018 Location: Fukushim… | Flickr

などはどれも比較的によく撮れたなと満足しています。デジタル対応の補正レンズへの置換の必要性もそれほと感じておらず、先日のタカハシによる「最後の」販売も、スルーした次第です。

特注接続リングの問題点

さて、今日の話題は上記の特注リングについてです。

実は、それを設計した当時の私は、「バックフォーカス」という概念を認識していなかったのです(!)*1。ε-200のメタルバックフォーカスは、下のサイト

によれば、59.8mmとのこと。で、私がイイカゲンに設計した接続リングをつかったときの現状のバックフォーカスは、ジャスト59mmでした。0.8mmのズレです。うーん、気にしなくてもいいような。でも気になるなー。ひょっとして、さらに星像が向上したら、すばらしいことです。

0.8mmのスペーサー

新しく接続リングを特注するのではなく、まずはスペーサーを噛ませることにしました。カメラフィルター用のステップアップリングを取り出します。

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こいつを旋盤で削って

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こうなりました*2。厚さは0.8±0.05mmにすることができました。

はたして、0.8mmのバックフォーカスの差が、星像に影響するのか?近日検証して見ます。ちなみに私のなんとなくの予想では、関係ないと思います。

 

 

*1:しかし今なら知っています。バックフォーカスとは、補正レンズ面とカメラのセンサー面の間の距離のことです。通常は「メタルバックフォーカス」といって、補正レンズのマウント面とカメラセンサーの間の距離が参照されることが多いようです。

*2:このような薄い形状のものを、さらに薄く削ることは、それほど簡単ではありません。実際、治具を作成しなければならなかったり、すこしだけ大変でした。

久しぶり木星、Derotationにも挑戦

まとまった雨をもたらした低気圧が、東の海上へ抜けて行く。すると、北風が吹いて、梅雨前線が南へ押しやられる。12日の晩は、そんなふうにしてやってきた梅雨の晴れ間でした。衝を迎えたばかりの木星を久しぶりに撮影しました。

今後、このブログでは、惑星を撮影する時にWindytyの画像も記録として付記しておくことにします。下は、当夜の高度3000m付近での温度と風向きの様子です。

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上空の風が弱く、かつ寒気が入ってなければよいのだろうと考えると、まずまずに見えますが、星はけっこうパタパタと瞬いていました。

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Jupiter
Date: 13. may, 2019
Optics: Meade LX200 12inch F10, with Kasai 2xBarlow
Camera: ZWO ASI294MC
Exposure: 20ms x 1600flames, 75% are Stacked using Autostackkert!
Processing: Registax6(wavelet), Photoshop.

 

なんか思ったほど、良い結果になりませんでした。Rnaさんのサイトを参考にしてDerotationを試して見たのが下の画像です。すこしよくなったような気がしますが、変なノイズが浮かんできてしまいます。近いうちにもう一度挑戦ですね。

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ε-200の光軸調整と、斜鏡のオフセットのこと

週末もしばらく曇り空が続く予報がでている。昨日、宮城県では山背(やませ)に伴う気温の低下もあって、こうなると天体観測もしばらく休業が続きます。

機材いじりくらいしかすることないな。

最近遠征先で知り合った方が、VixenのR200SSの光軸調整のことをツイートされていた。あの鏡筒は斜鏡が偏心して取り付けられているので、自力での光軸調整はそれほど単純でないとのこと。斜鏡を中心からずらす設計は、F値の明るい鏡筒では良く採られているもので、そういえば我々が使っているε-200もそうなっていた。

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ε-200のスパイダーと斜鏡。鏡筒の中心に位置するホルダーに対して、斜鏡は5mmほど(写真では右側に)ずれて取り付けられています(ちなみに、F6のMT-200では斜鏡は中心軸に一致している)。このズレが、光軸の調整を難しくしているとのことである。

それで、部の物置をあさって、ε-200のマニュアルを再読して見ました。それによると光軸は、斜鏡ではなくホルダーを基準にして調整せよとのことです。

え?ということは、いままで勘違いしてたのか!

といいますのも、ε-200の斜鏡には小さなセンターマークが打ってあって、いままでは、このマークがセンタリングアイピースからみて中心に来るように調整をしてました。そのようにすると、斜鏡がセンタリングアイピースの視野の中心に来る。しかしマニュアルには斜鏡のセンターマークのことなぞ、触れられていないではないですか。

最近、ε-200で撮影すると、光条が割れるのが気になっていました。たとえば昨冬に撮影したバラ星雲

The Rosette Nebula

がそうです。光軸のズレが原因だったのかもしれません。

小一時間ほどかけて、ホルダーが中心に来るように調整をしなおしました。

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このように調整すると、いままでは中心にあった斜鏡のセンターマークは、明後日の方向へずれてしまいます。でもこれで良いのか?次回撮影した時に、判明するかな?

 

sadr星の近辺

先日の室根山で撮影していた天体写真の最後は、月の出の1時間ほどまえから撮影していたsadr星付近の様子です。

この領域は赤ばっかりが強くって、少しは青い要素があれば良いなと思うんですが。もともと赤い場所なんだから仕方ないですかね。

The gamma cygni star and its surroundings

Date: 25th May 2019, 23:00
Location: Iwate
Camera: Canon EOS 6D
Optics: Zeiss Apo sonner(F4)
Exposure: 180sec. x19(ISO1600)
Guide: Kenko SkyMemoR

 

夜が短い

5月のこの時期は、突発的に透明度の高い夜に恵まれることが多くて、そういう日は矢も盾もたまらずに撮影に出かけたくなりますが、存外に大した結果が出ないというのは、夜が短いからです。

ようやく薄明が終わった時間帯は、まだ春の星座であって、長焦点の機材を持ち込んでいない限り特に撮る対象がない。それでようやく天の川が見え始めて、それでは白鳥座でもこましたろかと、撮影を始めると数時間で夜が明け始めてしまうわけです。

先日の室根山では、そんなわけで白鳥座よりもすこし早く昇ってくること座を、暇つぶしに撮影しておりました。

Lyra

Date: 25th May 2019, 23:00
Location: Iwate
Camera: Canon EOS 6D
Optics: Zeiss Apo sonner(F4)
Exposure: 150sec. x16(ISO1600)
Guide: Kenko SkyMemoR

こと座の周辺、天の川が近いのにもかかわらず何にもなくて、地味そのものです。画像処理もほとんど時間がかかりませんでした。ただ、いろいろと弄ってはいるものの星の色が比較的よくではのは満足していたり。

135mmとフルサイズの組み合わせで、こと座がぴったりの画角なんですね。同じくらいの大きさで地味な星座に「や座」「いるか座」があります。今年の夏は彼らを撮影していこうと思っております。

室根山で写真撮影

今回、観測に出かけた大東町は、気仙沼の北西に位置しています。この町には標高800mほどの霊峰、室根山(むろねさん)があって、その麓の周辺は光街マップでみると、東北地区トップクラスの空の暗さが期待できます。

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ただ、我々の学校がある名取市からはだいぶん離れていて、日帰り撮影にはちょっとキツイものがあります。今回は「大唐ふるさと分校」のコテージに宿泊しながらの撮影しました。ちなみに、この遠征は家族旅行を兼ねていて、ここに報告するのは公私混同気味なのですが、平にご容赦ください。

さてさて。当夜はかねてより準備してしてましたMamiya Apo-Sekor 250mmのツインシステムを使いました。それぞれのレンズに改造KissX5と60Daを取り付けて、M16とM17を狙います。

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のどかな牧場の脇で、こんなふうに機材を広げ、ゆったりと日没を待ちました。0時には月が昇ってくるので、M16を撮影できるのは正味で1時間程度。それでもツインシステムなら、30ほどのライトフレームを確保できる予定です。

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暇だったので、日没をHDRで撮影してみました。なんだか不自然ですね。

 

このあと、安定した空の状態がつづいて、撮影は予定通りに進みました。

The eagle and omega nebulae

Date: 25th May 2019, 23:00
Location: Iwate
Camera: Canon EOS 60Da, EOS Kiss X5 twin system
Optics: Mamiya Apo-sekor 250mm F4.5
Exposure: 300sec. x 15(ISO1600, 60Da) and 300sec. x 15(ISO1600, KissX5)
Guide: Kenko SEII, PHD2 guide

 

KissX5と60Daは画素数が全く同じなので、DSSで一緒くたにスタック処理できます。ただ、一枚一枚のノイズレベルは、60Daの方が優れているはずなので、単純に混ぜこんでスタックしていいものか、要検証。なんとなくKissX5:60Da=4:6くらいの割合でブレンドした方が良いのではと予想しております。 それには、60Daのライトフレームのから質の良いものを選んでコピーして、「水増し」してあげれば良い。

太陽スペクトル投影機

電子観望のプロジェクトを一緒に進めている並木さんからお借りした,「太陽スペクトル投影機」をテストしました。

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これ,なんとSHOWA製の非売品です(ロゴが見えつでしょうか?)2インチスリーブに装着できるようになっていて,ナイフエッジで作られたスリットを通った後,背後のスクリーンにスペクトルが投影される仕組みです。

うまくピントを合わせると,,,

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こんな風に太陽の連続スペクトルのなかの暗線がはっきり映し出されます。これはフラウンホーファー線と呼ばれるもので,太陽や地球の気体が特定の波長の光を吸収するためにみえるのだというわけです。これによって太陽に水素が存在することが確かめられるという,とても教育的な機材です。オレンジあたりの横の暗線が水素の吸収線かな?

 

しかし,これを使っていて恐ろしいのは,30cmもの反射鏡を太陽に向けるという行為。接眼部が溶けるのじゃないかと思いましたが,日光が焦点を結ぶ前にスリットでそのほとんどを遮っているので大丈夫みたいです。並木さんたちは,なんと60cm鏡を太陽に向けてスペクトルを投影しているらしい。。。