天文はかせ序二段(仮)

天文はかせ序二段(仮)

仙台高専(旧・宮城高専)天文部の活動記録です

Xenotarレンズで天体写真

以前、「ぷくぷくのブログ」にて

という記事を読みました。曰く、Xenotar型と呼ばれる構成を持つレンズが、安価な割に星の撮影には良いとのことです。もっとも力を発揮するのが100mm前後。

例えばNikkor 85mm  F2はXenotar型です。これは、ヤフオクに安定的に出品されていて、いつでも1万円ちょっとで手に入れることができます。本当にお安いではないですか。それで、手に入れました:

f:id:snct-astro:20180819214344j:plain
前玉にちょっとした傷がついていて、1万4千円くらいで落札しました。このレンズの性能は、

85mmテスト - ぷくぷくのブログ

にフルサイズカメラでの詳細なテストがあります。

デネブ周辺をモザイク

上に紹介したレンズの特に驚くべきことは、周辺減光が小さいことです。一段絞ってF2.8とするだけで、ほとんどフラットになります。それで、お気軽にモザイク合成をして遊びました。

NGC7000, around

8月17日23:00~25:00くらい、蔵王賽の磧にて撮影 NCG7000の周辺
Camera: Canon EOSKiss5(フィルターレス改造)
Lens: Nikkor 85mm F2(->F2.8)
Mount: SkyMemoR(ノータッチ)
Exposure: ISO1600, 180sec x 10flames x 4枚モザイク

何にも考えてないような構図ではありますが、なかなかいけてるような。モザイク合成はPhotoshopのPhoto Mergeをつかって、周辺光量の補正をしなくても、継ぎ目なく綺麗につながりました。撮影当日は強い風が吹いていて星は楕円状なのに、4枚に合成してしまうとほとんどわかりませんね。

モザイク合成は、ガイドがいい加減でも最強の画像処理である縮小効果で、綺麗な結果が得られます。この85mmレンズのモザイク合成で、しばらく遊べそうです。

 

註:上の85mmF2の写真ですが、実は無限遠が出ていません。星にピントが合う前に、ピントリングが「カチリ」と止まってしまいます。そのせいで、星の周辺には赤にじみがでており、Photoshopで補正しても影響が残っています。Canonのカメラにアダプターを介して取り付けているせいかもしれません。(前玉の前に保護フィルターをつければ、ピントがでるかな?次回テスト予定)

夏場の撮影ではちゃんとダーク減算をしよう、という反省

先日、やくらいガーデンへ出かけて行って撮影した網状星雲の画像処理にて、バックグラウンドの強い色ノイズと輝度ノイズに悩まされました。気温が高かったのと、露光時間が480秒と我々としては長時間の部類にあったためだと思います。ISO感度はいつもどおり1600でした。

一方、最近の撮影では、ダーク減算をサボっています。あちらこちらで「ホットピクセルはraw現像でだいたい消せる」とか、過激な意見だと「ダーク減算でかえってノイズは増える」なんて書いている人もブログ上にいらっしゃいます(引用はしませんが)。

じつは我々自身も、以前 

ダーク、フラット、フラットダーク、オフセット・・・ - 天文はかせ序二段(仮)

にて検証していて、フラット補正のみを施して強調した画像と、フラット補正とダーク減算を施して強調した画像を比較して、背景のノイズにそれほど差が出なかったと書いておりました。

f:id:snct-astro:20171210225004j:plain

f:id:snct-astro:20171210224958j:plain

上の2枚は、その時の画像です。確かに背景のノイズにはそれほど差がありません。しかしこれはオリオン大星雲・・・つまり冬の画像です。撮影時のセンサー温度は10℃〜12℃でした。それに対して、先日の網状星雲ではセンサー温度は35℃にも達していました。

そこで先日の網状星雲の画像に対して、後からダーク画像を用意して、Deep Sky Stackerで減算をし、ちゃんと比較してみました。下の2枚は、RStackerでフラット・ダーク処理した後、raw現像(ノイズ処理は行わない)をして、DeepSkyStackerで加算平均したそのままの結果です。

f:id:snct-astro:20180814161217j:plain

f:id:snct-astro:20180814161201j:plain

ダーク減算は、ちゃんとやらなければダメですね。とくに夏場は気をつけましょう。

 

8月、網状星雲

学校は夏休みに入って、ひっそりとしております。そんな週末、県北部のやくらいガーデンの駐車場へ撮影に行ってきました。

最近、撮影の定番となっている蔵王はペルセ群の観望目的の方々で混み合う可能性があったのと、直前のSCWで雲がかかる予報がでていたため避けた次第。当日、現地に行っていたYさんの情報だと、実際には蔵王も26時くらいまで晴れていたそう。ただかなりの混雑だったようです。いっぽう、やくらいガーデンは比較的閑散としていて、周辺は予想外の暗さでした。加美町などの市街地からそれほど離れていないことを考えると驚くほどで、街灯もなく駐車場脇に設置された自販機は照明が極力抑えられています。北が暗いので春先の銀河撮影に使えるかもしれません。ただ、冬は晴れないかな。

さておき、当日はOBのアベや、彼の友人でスカイメモと6Dで撮影しているシバタくんも合流して、賑やかでした。シバタくんは学生の時に天文部に入っていて欲しかったですね。

網状星雲

対象は、白鳥座付近の超新星残骸、網状星雲です。

Veil Nebula

8月10日22:30−24:30 網状星雲
Camera: Canon EOS60Da
Lens: Nikkor ED 300mm F2.8->F5.6 with L42シャープカットフィルター
Mount: Takahashi NJP with PHD2 guide
exposure: ISO1600, 480sec x 17

蛇足
  • 【300mmF2.8をF5.6で撮影】軸上色収差の強いNikkor300mmF2.8を普段よりもさらに一段しぼって、F5.6で撮影しました。それによる星像の改善は、暗くなる像のデメリットを上回るものではありませんでしたね。今後は青ハロ処理に尽力しながらF4で使い続け、機運が高まったらタカハシのFS-60CBとレデューサを買ってやろうかと企んでおりますよ。
  • PhotoShopでのraw現像の注意点】PhotoShopでrawを読み込んだ時、デフォルトでカラーノイズ処理の値が25くらいになっています。これによって、ほとんどのホットピクセルなどが取り除かれる一方、網状星雲の淡い赤や青もノイズを一緒に消し去られていました。今後、注意が必要。
  • 【夏場はダーク引きした方がよいかも】撮影時のセンサー温度は34℃くらいに達していて、さすがにノイズが目立ちました。さいきんサボっていたダーク減算、夏場はちゃんとやった方がいいかも。
  • 【NGC6992付近の分子雲】NGC6992は上の写真で言うところの、右側に写っている輝星と重なって見える星雲。その写真右側には淡い分子雲が広がっているようです。画像処理の段階で、これを赤い熱かぶりと勘違いして、消してしまっていました。これも今後、注意が必要。

3代目NJP箱(タカハシNJP赤道儀用の箱)

沿革

NJP箱(1代目)

そこらに転がっていた廃材を集めて3年前に作製しました。

f:id:snct-astro:20150802153311j:plain

こんなものでした(右側)。しかしこれはサイズが70cm四方もあってスペースとるために使い勝手が悪く、やがて解体。バーベキューの薪へ消えて行きました。

NJPスタンド(2代目)

たしか、2年前くらい前に廃材を集めて作成しました。NJPを台車の上に立ててボルトで固定するタイプなので、NJPスタンド。ところが運搬中に転倒したために、一度使用しただけて廃棄しました。あまりにひどい作品だったため、写真も残っていません。

3代目NJP箱

それからしばらく、車のシートの上にドスンと横置きして運搬されていたNJP赤道儀。しかし夏合宿へ向けて、専用の箱をこさえました。今回も主に廃材利用です。

f:id:snct-astro:20180810173247j:plain

なぜ初めからこうしなかったのか。3代目は全体がすっぽり収まる構造にしました。赤道儀は箱の中で四点支持されていて、モーターやギアに自重の負荷がかからないようになっています。さらに薄板で蓋ができるので、運搬中は上に箱を置くこともできますし、観測中はノートパソコンを置く机として活躍する予定です。

宮城県も猛暑が続いています。熱い空気は水蒸気量も多いみたいで、夕刻から夜には雲がよく出ます。その雲は、朝になって日が差してくるとすっと消えて、「今日も暑くなりそうだな」といった感の青空。ミンミンゼミも早々に鳴き出す始末です。

3日の夜はようやくチャンスに恵まれて、土星、火星、月と撮影しました。まずは火星の結果を。

f:id:snct-astro:20180804152434j:plain

火星:Aug. 3 2018, 23:43
鏡筒:Meade LX200-30cm + Kasai 2倍バローレンズ
合成焦点距離:6000mm(F20)
カメラ:ZWO ASI174MM CMOSカメラ
フィルター:kenko MC R1
gain:169, 露光:0.006sec*60sec
AutoStackkert!にて20%スタック x3Drizzle、Registax6.0でウェーブレット処理。

火星は先日撮影した時よりもずっと明るくて、gainを下げてもシャッタースピートが身近くて済みます。北半球にみえる血管の浮き出た筋のような構造は、ウェーブレット処理のやり過ぎかもしれません。次回ゆっくり再処理してみます。

昼間の炎天の影響がのこっているのか、23時を過ぎた撮影でも筒内気流の影響(?)を感じました。撮影している視野全体がなにかこう、細胞が脈打つような感じでうごめくのですね。一方、上空の気流が悪い場合は、川の流れ越しに星を見ているようなそんな像になります。

筒内気流への対策は、現在計画中で、来週には実施できると思います。

Nikkor 300mm レンズの色収差のこと

前口上

28年前、平成2年。天文部が購入したNikkor 300mm F2.8については、これまで何度か紹介してきました。当時の高級レンズも、最近のデジカメで天体撮影に使用するにあたっては、どうしても強い色収差が目立ってしまいます。それは、写野の中心から放射状に青や赤の偽色が現れるタイプの収差で、一般的に「倍率色収差」と呼ばれているそうです。一段絞ってF4とし、APS-Cセンサーで撮影しても、かなり強い青フリンジがのこって、画像処理に難儀します。

しかし、300mmの焦点距離は非常に使いやすい。M43やバラ星雲、北アメリカ星雲からM31、または彗星など、たくさんの撮影対象に使えます。部としてはなんとかこの古いレンズを活かしたい。

フリンジへの対策として、青〜紫の波長をカットするフィルターの使用が良くやられています。そこで、

  • Astronomik CLS CCDフィルター(440nm以下をカット)
  • L42シャープカットフィルター(420nm以下をカット)

の二つについて、青フリンジへの影響を比べてみました。CLS CCDフィルターは、カメラセンサー面の手前に取り付けるタイプ。L42は下の写真のように、

f:id:snct-astro:20180724192915j:plain

レンズのフィルタースロットにねじ込める31mmサイズを使用しました。

結果

f:id:snct-astro:20180725184529j:plain

APS-C、F4で撮影した撮って出し画像の周辺部。左から、フィルターなし、L42フィルター、CLSCCDフィルターの結果。

本来の目的ではないものの、CLSCCDフィルターを使用すると青フリンジがすっかり消えます。代償として、光害カットフィルターは青色のかなりの部分をカットするようで、結果として得られる天体写真は青が貧しいものになってしまいます。

いっぽう、L42フィルターの結果はどうでしょうかね。じゃっかん青フリンジが弱くなっているようにはみえますが、なかなかに微妙です。L42フィルターはケンコー光学という会社が扱っていて、一般消費者向けではないために、手に入れるためにはそれなりに労力がかかりました。それに見合う結果かと言われると、かなり「?」ですが、これで満足すべきなのかもしれません。

結論

440nm以下をカットすれば青フリンジは消えるけれど、420nm以下ではその効果は不十分。つまり、「青フリンジをカットするためには、青をカットすればよい」という身も蓋もない言説が我々の結論です。冷静に考えれば、星雲星団の青を残しつつ、青フリンジだけをカットするという操作を、フィルターワークだけで実現できるという考え方が虫の良すぎることなのかもしれません。「フリンジキラー」と名付けられたフィルターも同じようなものなんじゃないかなと想像しています。

まいど、役に立たない情報ですみません。ざんねんでした。

蛇足

フィルターなんか使わなくても、Photoshopでぱぱっと青フリンジは除去できます。でもそうすると・・・

f:id:snct-astro:20180725184731p:plain

こんな風に、散光星雲のなかの星の色が落ちくぼんでしまったり、または本来赤い微光星が白くなってしまったりします。

なかなか悩ましく、そういえばVixenから新発売されたFL55SSって、ちょうど300mmですね。買っちゃおうかなぁなんて。

 

蔵王で天の川とNGC7000

天文部の学生たちはテスト週間でお勉強をしており、活動自粛状態です。教員のわたくしは、「こいつで、くたばりやがれ!」などと叫びながら(?)試験問題をサクッと作成し、土曜の夜に蔵王に行ってきました。ご近所の高専OB、Hさんを誘いました。

月没は0時頃。予想通りに晴れはしたものの、透明度の低い夜でした。賽の磧には4〜5組ほどの天文ファンが集まっていて、最近よくご一緒しているYさんもすでに準備されていました。こんなにたくさんの人たちが集まっている場所で撮影するのは、初めてです。夏の蔵王は仙台の天体撮影のメッカなんですね。 

垂直に立ち上がる天の川と火星

Hさんが撮影された天の川の写真を紹介します。地平ギリギリまで天の川が良く写っていて、射手座の南斗六星も霞の中にはっきり見えています。蔵王の南西方向の暗さが素晴らしいことがよくわかりました。左側にひときわ明るく写っているのが火星です。

f:id:snct-astro:20180724180941j:plain
7月21日 25時27分ころ
Camera: Nikon D810(ノーマル)
Lens: AF-S Nikkor 18-35mm f/3.5-4.5G ED (18mm F3.5)
露光:70sec, ISO3600, 1flame
Vixen ポラリエによる追尾。Photoshopでレタッチ
このレンズですが、中央部はかなりシャープです。周辺部はすこし星が三角形になりますが、広角レンズなのでほとんどわからないです。

アメリカ星雲(NGC7000)

わたくしは、Nikonの古いサンニッパレンズで天頂付近の北アメリカ星雲を撮影しましたよ。当日は風が強くて、ガイドも暴れっぱなし。透明度が悪くて、画像処理が辛かったです。なんとかモノにできました。

NGC7000

date: 21 July, 2018 NGC7000(北アメリカ星雲)
Location: 蔵王、賽の磧
Camera: Canon EOS 60Da
Lens: Nikkor 300mm F2.8 ED (F4)
Exposure: ISO1600, 300sec x 15flames
Mount: Takahashi NJP, PHD2 guide

青ハロのきついこのレンズ、前回は光害カットフィルターを適用して、ハロは抑えられたものの、かわりに緑と赤のイクラ状態の星が出現して、撃沈しました。今回はL42シャープカットフィルターを使っています。その詳細については次回のエントリで報告いたします。