チリでのリモート撮影をしておりますと、撮影している本人が一体どこを撮っているのか、てんで分かっていないことがあります。
一つの対象を数十時間も露光し続けているというのに、なんでそんなことになってしまうのか。
あかんではないか。
というのはやはり、撮影中はN.I.N.A.の画面を眺めているだけで鏡筒がどこを向いているかあまり意識しないですし、また南半球に行って星空を眺めた経験がまだない*1のもあります。
そこでStellariumを使って、3月1日の仙台市から眺めた星空に、今回撮影した対象の画角を重ねてみました。
地面を透けさせたのがちょっとしたアイデアで、これなら位置関係がよくわかります。年明けの1月と2月はここを撮っていたのです。
Around Southern Seagull Nabula
Date: 2024-1-8,12,13,16
Location: El sauce, Chile
Optics: Vixen R200SS, correctorPH
Camera: ZWO ASI294MM
Exposure: 240s, gain=120(LRGB), 240s, gain200(Ha,O3)
Number of frames: (L,R,G,B,Ha,O3)=(114, 53, 49, 49, 94, 49)
Processing: Pixinsight, Photoshop
GUM15 & RCW27
Date: 2024-2-5,9,13,17
Location: El sauce, Chile
Optics: Vixen R200SS, correctorPH
Camera: ZWO ASI294MM
Number of frames: (L,R,G,B)=(103, 42, 45, 48), 240s, gain120 (Ha,S2,O3)=(66, 18, 57, 37), 240s, gain200 Processing: Pixinsight, Photoshop
二つ目のGUM15 & RCW27は、ちょっと構図が窮屈でした。もうちょっと構図を画面左方向に振るとカタツムリ星雲に似たNGC2626があったので、2枚モザイクにした方が良かったかも。
1月に撮影した一つ目の作品の方がより気に入っています。こちらアノテーションした画像です
”Southern Seagull negula"と名前がついているのは右上のNGC2032付近です。これとNGC2020の青緑色の領域が興味深いです。
お隣のアンドロメダ銀河を見ると、このようなO3領域がHαと同様に銀河の腕に散在しているようです。こちら先月、ドイツのアマチュア写真家によって撮影され、AstrobinにアップされたM31の姿です。
中心付近の驚くべきアークに加えて、よくみられるHaの「赤ポチ」と同様に「青緑ポチ」が薄く分布しているのがわかると思います。我々の天の川銀河では、このようなO3成分が極端に強い領域は、タランチュラ星雲の方向に散財しているだけで、北天ではお目にかかれません。でもM31の姿から推測するに、我々の太陽系からは見えない天の川中心部の向こう側などに、同等の「青緑ポチ」があるのかもしれません。
あと、同じ時期に、丹羽さんも同じ構図を撮影されていました。こちらからどうぞ。彩度や色表現など処理に違いもありますが、結構似た結果になりました。
また、GUM15&RCW27を並べて比較すると、同じ画角であるとは思えないほどに、微光星の大きさが違うのも面白いです。
並べてみると、全く同じ画角(f=760mm, 4/3センサー)なのに右の方はf=200mmで撮ったような印象をうけます(スターリダクションはやってますけども)。”Southern Seagull negula"は大マゼラン雲に近く、この小さな星々も、天の川銀河ではなく大マゼラン雲を構成する星々なのでしょう。GUM15&RCW27の周辺の星は、天の川銀河の星々であるはずで、両者の距離の違いから、”Southern Seagull negula"のほうが星が小さく写っているのだろうと思われます。
サムネ用
*1:新婚旅行でオーストラリアを訪れましたが、慣れない海外では夜に出歩く余裕もなく、星を見る機会はなかった