天文はかせ幕下

"My Astronomy Picture Of the Year"を、少し贅沢して印刷する

たまに納得のいく天体写真が撮れたときは、フジプリで印刷を発注して、それをハクバのフォトフレームに納め、自宅の壁に飾っておりました。

一方で、年に一度はMAPOY(註:My Astronomy Picture Of the Year)を定め、もっと気合の入った印刷をなして額装し、ビシッと飾るのも悪くないよなあと思っていました。

そこで顧問は2023年のMAPOYを9月に撮影していたM31に定め、こちらの会社で印刷してもらいました。

FLATLABOは、プロ向けの写真プリントを請け負っている印刷所で、美術館で開催されるレベルの個展を数多く手掛けてられています。天体写真にとって重要な"FLAT"という用語が社名に入っている時点で、なんだか信頼したくなります。

昨年に丹羽さんが開いた個展も、ここに印刷をお願いしていたそうです。私が依頼のメールを送ったときも

「丹羽さんにかなり鍛えられてますので、ぜひお任せください」

と力強いお返事をいただきました。天体写真のノウハウもしっかり蓄積されているわけです。

印刷はA3サイズでお願いしました。仕上がりはこんな感じです

自宅の照明が全て電球色なせいで、この写真ではなんだか不自然に見えますが実際はパソコン画面のイメージに近かったです。

こちらは額装の様子。黒のアルミフレームはシンプルで自己主張せず、良い感じです。

気になるお値段ですが、2回の試し刷りと送料含めて27,000円ほどでした。技術者の方と直接やりとりして調整できるわけですし、年に一度の贅沢としてはそれほど高くはないのではという感想です。

こちらは壁に飾った様子(写真が下手ですみません)。家族は一瞥もくれず素通りですが、顧問はとても満足しています。

注文から仕上がりまでのプロセス

今回のM31を例にして、実際にプリントが仕上がるまでのプロセスをまとめておきます。顧問は基本的に雑誌のフォトコンには応募していないので、印刷の経験が薄いです。カラーマネジメントのモニターも所有していません。

やりとりする印刷データは8bitのtifです。初めにFLATLABOに送った画像は以下でした

M31

これは印刷してみると、がっかりな結果でした。特に銀河の中心部の領域が、プリントではモニターと比較して暗く感じられ、輝度の勾配も不自然でした。原因は元データにあって、中心部の色彩を強調しようと意識しすぎたあまり、明るさが弱くなってしまったのでした

大いに反省し、再処理したのがこちらの画像です

M31_reprocessed

銀河の中間から中心にかけて、スムースに輝度が1に近づくように処理し、前回の処理に比較して彩度を控えました。こちらは試し刷りの結果もモニターに比較して遜色なく、またTwitterにアップした時の皆さんの反応も良かったように思います。

まとめ —— プリントの難しさ

今回は、プリントを通して自分の画像処理を見直す良い経験になりました。その上で、写真プリントの難しさは、輝度表現の調整にあるのじゃないかなと思っています。

と言いますのも上の例のように、プリントでは元になる画像データのハイライトがしっかりRGB=(1,1,1)に近づいていないと輝いて見えない場合があるのですが、モニターは自分で発光している分、その辺りの誤魔化しが効きやすいようなのです。

反対に暗部は、モニターではノイズでざらざらして見えていても、プリントするとほとんど目立たなかったりします。これはモニターの方が、暗部の誤魔化しが効かない、といっても良さそうです。

ともかく、こういった輝度表現の差を埋めるには、モニターで編集しながらプリントの結果を予想するしかありません。これはカラーマネジメントモニターを使っていても同じことで、まさに経験で埋めていくしかなさそうです。

顧問は、この辺りの微妙な調整に深入りするのはしんどいなー、プリントするなら外注で済ませたいなーと思っている派です。すみません。