天文はかせ幕下

ふたご座流星群もろもろ

こんにちは、あるいはこんばんは。部員ナカムラ……に代筆を頼まれた部員タナカです。彼のメモを叩き台に報告をば。

さて最近の私といえば、ついにカメラを購入したナカムラに誘われ、今月はいろいろと撮影して周っております。夏合宿に行けず、秋にはご無沙汰だった天文部の活動にもすっかりまた呼ばれるようになりました。まあ私はカメラ、持ってないんですが。

福島方面でのナカムラの釣果はまた後日にでも。

 

今回は、新聞などでもにわかに賑わった “ふたご座流星群” です。

12月14日の16時ごろに極大を迎えると予想されていたふたご座流星群。日本での見ごろとなる14日の0時ごろ*1を目標に前日から準備を始めます。といっても私は「行かない?」という彼のメールに「行ける~~!!」と返事をしただけですが。

撮影地は仙台高専天文部が原点たる機械科棟屋上です。お手軽です。

とはいえ仙台高専がある野田山丘陵は仙台市街とは名取川をはさんで目と鼻の先。私のテンションは実は下がり気味でした。ぶっちゃけ見れる気がしません。かつて流星群を観ようと家のベランダで一晩震え、一つも見えなかった思い出がよみがえります。仙台空港を離発着する飛行機を撮った方がまだ楽しいんじゃない?と何度思ったことか。

 

寒いなあ、帰りたいなあと文句をぶつぶついいながら、天頂寄りの空にカメラをセットします(主にナカムラと顧問が)。魚眼レンズを使ってみよう、とは顧問の提案。

とっぷりと日は暮れて時刻は18時20分。氷点下の空気を風が容赦なく我々に吹き付けてきます。屋上は足元が凍っているし、私は靴下を重ねてくるのを忘れていましたから、外に長くは居たくありません。風よけに校内に入ったり様子を見たりコーヒーの一杯でも頂いたりしながら、ひたすらカメラに仕事を任せます。

 

そんな具合で撮影したン千枚の写真を、ナカムラがタイムラプス動画にしてくれたものがこちら。

 

撮影地:宮城県名取市 撮影日時:2017年12月13日 18時20分~20時50分 使用機材:FUJIFILM X-T20、Canon魚眼レンズ 露光:ISO 6400、4 sec (×1686)

 

彼のメモによれば「4個くらいしか映っておらずザンネン」とありますが、いやいやいや、6個ほど見られるではないですか……ってそうではなく(飛行機の見間違えかもしれないですし)、そもそも撮影できたことがビックリです! 私は本当に、心の底から、撮影できるはずがないと思っていたんです。それがこんな結果になるとは……実はものすごく興奮しました。

 

こちらは撮影した写真を比較明合成したもの。

 

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撮影地:宮城県名取市 撮影日時:2017年12月13日 18時20分~20時50分 使用機材:FUJIFILM X-T20、Canon魚眼レンズ、GIMP(画像処理ソフト) 露光:ISO 6400、4 sec (×1686) 処理:比較明合成、トーンカーブ、レベル調整

 

こうすると飛行機が目立ちますね(未確認な飛行物体かもしれませんが!)。その辺は撮影地の宿命でしょうか。あと、いったん撮影を中断した箇所もお分かりになるかもしれません。

こんな感じでしたが、実は途中からバッテリの関係*2で見ごろの0時を随分前に撮影中止を余儀なくされてしまいました。名取ではその時間、肉眼でも流れたそうでしたから、ちょっと残念だったかもしれません。ピントが合っていなかったのもあって、ナカムラ的には納得がいっていないそうですから、予備のバッテリを用意して、次回に期待したいところです。

 

顧問曰く、「高専屋上で流れ星を撮影出来たら天文部史上の快挙」だそうです。

とするとこの結果、ひとまずは快挙といって差し支えないのではないでしょうか?

まあ、例のごとく私は何もしてないのですが

 

 

おまけ

 

最近の遠征でたびたび登場する飯舘村の “クビカケ森” 。実は気になって図書館へ通い、少し調べていました。ところが色々見ても結局わからずじまい。クビカケ森のクの字も見当たりません…… とはいえ南朝方の霊山城を巡る戦いや、伊達氏と相馬氏の争いなど、周辺にそれらしい出来事は事欠かさないですし、機会があれば福島県内の図書館を当たってみたいところです。

って、天文部のブログの内容ではないですね汗

*1:参考 https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2017/12-topics02.html

*2:メモいわく、ミラーレス一眼は消費が早いそうです。なるほどなるほど

真冬の遠征

すずりょうの報告にもありました通り、12月の定期遠征に行ってきました。今回のメンバーは彼にくわえて、アベ、ナカムラ、田中と顧問の5人でした。

今回はアベが参加しておるために、GPVの予報がどんどん悪化して、直前予報ではやま湖には雲が広がる可能性がありました。それを避けるためには、南へ移動しなければなりません。はやま湖の南側は、浜通り中通りを隔てる阿武隈高地がひろがっていて、とっても暗いところです。しかしまともに観測できる場所がほとんどありません。今回は覚悟を決めて常磐富岡まで南下し、ICから車で西へ15分ほどにある、ちいさな集会所の駐車場を撮影地にしました。

到着してみると、視界は狭いながらもそらは漆黒でした。北方向も暗いので、春に北斗七星周辺の銀河を撮影するのにも良さそうです。今回はぎょしゃ座に狙いを定めました。 gyosha _dssps2

2017/12/20  ぎょしゃ座付近
カメラ:Canon EOS60Da
レンズ:SigmaMacro, 70mm EX DG(->F4)
露光:ISO3200 180sec x 15
SkyMemoRノータッチガイド

画像処理:
DSSでフラット・ダーク・スタック処理。PhotoShopで強調&ノイズ処理

ぎょしゃ座の付近は、「まが玉星雲」と呼ばれる赤い星雲もさることながら、ふたつの小さな散開星団M36とM37がお気に入りです。今回使ったレンズは、研究室で接写撮影に使っている「カミソリマクロ」とよばれるシグマのマクロレンズです。たしかにすごくシャープでピント合わせがかなり難しいです。バーティノフマスクをつかっても合焦位置がよくかわらないので、液晶画面にうつる限界の微光星をつかって合わせるのが良さそうです。このあと、「一晩一対象」の原則を破って、バラ星雲周辺を撮影しましたが失敗でした。ぎょしゃ座をさらに撮影し続ければよかったなー

 

(追記)写真に写っている星雲・星団に名前をいれてみました:

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年内最後の観測!プレアデス星団の撮影

こんにちは、すずりょうです。年内最後?の観測に昨夜行ってきました。

GPVで雲量予報を見ていましたが、出発時刻になってはやま湖近辺が雲に覆われる予報です。「まじか…もっと南にいいところはないものか…」目的地も決まらぬまま、とりあえず常磐道を南下します。いつもの南相馬鹿島SAで夜ご飯を食べながら作戦会議です。

顧問はパソコンで観測できそうな場所を探します。その他観測メンバーはラーメンをズルズルすすっています。すると、

顧問「ここなんてどうかな」

その他「どれどれ」

見つけた場所は、川内村の五枚沢集会所というところ。常磐富岡ICからのアクセスがよく、周囲も暗そうです。

みんな「よし、いってみよう!」

 

現地は事前の情報どおりとても暗い場所でした。はやま湖よりも暗いかも…!さてさて、それでは観測を始めましょうか!改造KissX5で撮影です。

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機材を準備して、撮影を開始します!でもこの時期の山の中、さむいさむい…

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そんなときはお湯を沸かしてカップ麺に尽きる!あったまる~

オートガイドも使い、今回はプレアデス星団(すばる)を撮影しました。

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180秒露光を10枚重ね合わせ処理しました。んー…なんだろう、もっときれいにできそうな気が…時間のあるときにもう少し処理してみます。

顧問、アベさん、ナカムラもそれぞれ撮影していましたので、追って報告があるかと思います。お楽しみに!

スズリョウのプレアデス星団

顧問です。うえにアップされたプレアデス星団ですが、この日スズリョウは3minと4minのそれぞれの露光時間で撮影していました。4minのほうはオートガイドの調子がわるくなって星が流れていますが、それは二つをさらに加算して、photoshopで強引に処理してみました。

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 顧問は、なんとなく画像処理のイメージがつかめて来ましたよ。

M33の再処理

2017年の最後の新月期が近づいていますが、晴れませんね。困ったことです。

10月ころに撮影した、M33を再処理しました。変更点は、DSSのスタックで

  • フラットダークフレームの減算
  • オフセットフレームの減算

を追加したことと、その後の強調処理に使用するソフトをGIMPからフォトショップに変えたことです。こんな風になりました。

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ちなみに以前は下のような感じでした

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星の大きさや、ノイズ感など改善されたと思います。ほおーん、ノイズ感ねぇ・・。

 

 

レベルアップしたプラネタリウム

こんにちは、すずりょうです。だいぶ寒くなりましたね。最近観測にも出かけてません。真夜中の観測では凍えてしまうでしょう...

さて、10月の高専祭から時間は経ちましたが、プラネタリウムプロジェクトは水面下で進んでおりました。成果報告会のためです。1年生たちは放課後になると、ドームや投影機の製作をしに来ます。たまにちょっかいを出そうとしますが、一生懸命やっているので顧問とともに暖かい目で見てました(笑)

そして、教員への成果報告会が本日行われました。昨日からドームを組み立て、出来上がったドームがこちらです。

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以前よりも丈夫であり、形状も安定しています。ダンボールの内側には像を投影できるよう白い紙を貼っています。遮光性もよく、内部はかなり暗いです。投影してみると...

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1枚目には北斗七星がありますね!さすがに完ぺきにとはいきませんが、以前よりも格段にレベルアップしています!星像をもっときれいにするのは今後の課題となりそうです。

f:id:snct-astro:20171213175147j:plainこちらが投影機です。プロジェクトリーダーのハタナカの自信作ですね!ここまで作り上げたのはすばらしい!

投影機班もドーム班もやり遂げました。1年生でここまでできると、数年後はどうなっているのでしょうか。今後にますます期待です!1年生のみなさん、おつかれさまでした!

ダーク、フラット、フラットダーク、オフセット・・・

はじめに

DeepSkyStacker(以下DSS)で行っているダーク減算・フラット補正・フラットダーク減算・オフセット減算の4つが、どの程度に効果を発揮しているのか? を、比較して検証をしてみたいと思います。これらの処理については、いままで

「引けばいいんでしょ引けば」とか、
「みんな引いてるから、引きましょ」

といった盲目的な態度を我々はとっていて、じっさいに意味があるのかちゃんと確かめたことはありませんでした。そこで、前回スズリョウが撮影したオリオン座大星雲のISO1600 150秒露光のライトフレームを12枚加算平均した画像に対して、以下の5パターンの処理を行なった画像を比較してみます:

  1. ダーク減算のみ
  2. フラット補正のみ
  3. ダーク減算とフラット補正
  4. ダーク減算とフラット補正とフラットダーク減算
  5. ダーク減算とフラット補正とフラットダーク減算とオフセット減算

似たようなことは、いろいろなところで多くの方が行なっていることではありますが、自分でやって見て納得するのが大事なわけです。

DSSを使った処理について

最近は1・2年生の新入部員もこのブログを読んでくれているそうです。彼らのためのマニュアルになるかどうかわかりませんが、本題に入る前にDSSでの処理についてまとめておきますね。

まず、星が写っている画像のことを「ライトフレーム」と呼んでいます。天体写真を仕上げるときは、カメラのノイズとか周辺減光を取り除くために、ライトフレームに加えて以下の4種類の写真を撮影しなければなりません。それらの名称と説明を列記しておきます:

  • ダークフレーム:カメラに蓋をして(つまり光を遮断して)ライトフレームと同じ条件で撮影。そうしてできた真っ黒い画面は、ライトフレームのノイズ情報を含む。
  • フラットフレーム:青空のような一様な明るさでで何の模様もない光源に向かてカメラを向けて撮影。カメラレンズの性質から、光源が均一に光っているにもかかわらず、得られる画像は中心が明るく、隅っこが暗い。「周辺減光」と呼ばれ、これを補正するためのフレーム。
  • フラットダークフレーム:カメラに蓋をして(つまり光を遮断して)フラットフレームと同じ条件で撮影した画像。真っ黒い画面であるが、フラットフレームのノイズ情報を含む。
  • オフセットフレーム:カメラに蓋をして、ISO感度をライトフレームに一致させて最も早いシャッタースピードで撮影(?)。 センサーがもともと持っているベースのノイズの情報を含む。

これらを実際にどうやって撮影するかはいろいろと方法がありますが、後日書きます。とにかく、ライトフレームとこれらの画像をそれぞれ10枚以上撮影してDSSに読み込ませると、ライトフレームを平均して滑らかにした上で、ノイズと周辺減光を取り除いた画像を出力してくれます。ぜひやってみましょう。

処理が異なる5枚の画像

DSSから出力しただけの無加工のTif画像を縮小してJPG変換した画像を5つ並べます。

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無加工の状態でも、「1.ダーク減算のみ」の画像はなんかダメそうですね。残りの4つは区別がつきません。しかし同じライトフレームを同じ枚数だけ処理しているのにもかかわらず、背景のカラーバランスも輝度もそれぞれ異なっています。これらをもうちょっと詳しく比較してみます。

比較

うえの5枚を、いかにして「同じ土俵」で比較をするかが難しいところです。ここでは、うえの画像たちに以下のようなレベル調整で極端な強調処理をおこなって、比べて見ます。

  • すべての画像について、背景の輝度が(R,G,B)=(10,10,10)(8bit階調0~255で)になるようにレベル補正でダーク側を切り詰めるて背景を暗くする。
  • つぎに、中心の大星雲がおなじくらい「飛ぶ」まで、レベル補正でライト側を切り詰めて、全体をあかるくする。

いかに強調した後の写真をならべてみます。

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考察

フラット補正の効果 

まず、画像1.と他の画像を比べると、フラット補正の重要さがわかります。強調の度合いは同じはずですが、フラット補正がない場合は背景の階調まで失われているように見えます。

ダーク減算の効果

2.と3.を比べるとダーク減算の効果が見えます。これは拡大するとわかります。それぞれの画像の同じ部分を等倍で切り出してみましょう。

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ダーク減算をしていない場合は、画像の中に黄緑いろや赤の輝点があります。ダーク減算後はそれが無くなっています。それ以外のノイズも若干ダーク減算をしたほうが抑えられているように見えますが、これは微妙ですね。輝点ノイズは、webにjpegで載せる程度の天体写真なら、どうでも良いように思えてきました。ただ、ダーク減算がない方の画像は全体が赤かぶりしているのが気になります。ですが、遠征先でダークを撮影するくらいなら、その時間を使ってライトフレームを増やした方が良いかもしれません。

フラットダーク減算・オフセットの効果

これについては、画像をつぶさに眺めても、明確な効果は確認できませんでした。ただし、さらに強調を施すとフラットダーク減算を行なった画像の方が、フラット補正がより高い精度を持っているようには見えます。「オフセット減算」の効果としては、カラーバランスが改善しているように見えますが、これはたまたまかもしれません。また別の対象を撮影した時、同じ検証をして見て、なにか発見がありましたら報告します。

そんなわけで、検証が尻すぼみになってしまいましたね。でもこのブログはいつもそうです。それでは。

IC1805とIC1848

先日、スズリョウ・ナカムラ・タナカのメンバーで撮影してきた写真の最後です。IC1805とIC1848、ハート星雲と胎児星雲。飽きずに同じところばかり撮ってますが、これはオリオン大星雲のHDRばっかりやっているスズリョウを見習ってのことです。そういう姿勢も大事だなと思いました。

この二つの星雲は、天の川の中にあって周囲にはたくさんの星々がひしめいています。普通に強調すると、それらの星が肥大して星雲を覆い隠してしまい、なんだかよくわからない写真になってしまうわけです。photoshopでいろいろ工夫してみて、なんとか星々を抑えて、星雲を引き出すことができました。

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2017/11/24 
カメラ:Canon EOSKissX5 新改造
レンズ:Apo Sonner 135mm F2->2.8
露光:ISO1600 150sec x 28
NJP赤道儀、PHD2ガイド

画像処理:
DSSでフラット・ダーク・スタック処理。PhotoShopで強調&ノイズ処理

星々を抑えて星雲を強調するのは、とくにこの領域の場合すごく難しかったです。現在、金曜の23時40分。顧問は飲酒しながら作業を行ったため、すでに上の写真をどうやって加工したのか、忘れてしまっています。赤の淡い散光星雲を撮影するときは、公害カットフィルターを使った方が良いかも?

高画質版はこちら

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