天文はかせ幕下

三段目昇進のお知らせ

昨日,番付編成会議が行われ,本ブログは序二段から三段目に昇進することが決まりましたのでお知らせいたします。今回の番付変更は,2017年10月に序の口から序二段への昇進以来,2年8ヶ月ぶりとなります。

三段目昇進に関して一般的な基準があるわけでありません。過去の例を踏まえると「冷却CCDカメラによるそれなりの撮影成果,あるいはそれに準ずる成果」が目安になってきます。「それなり」にも明確な基準は無いようですが,当ブログとしては,昨年度から導入した冷却CMOSカメラによる「M95,96,105*1」や「C/2019 Y4 ATLAS*2」などがある程度評価されたものと自惚れております。

今後も「一喜一憂」の精神で,精進していく所存であります(2020年梅雨)。

天の川

先日の蔵王で撮影していた、射手座から白鳥座にかけての天の川です。景色を入れずに撮る時は、広角でもソフトフィルターをかけないほうが好みな感じに仕上がります。

The milkyway - from Sagittarius to Cygnus
The milkyway - from Sagittarius to Cygnus

Date: 6-14 2020 0:40
Location: Mt. Zao
Camera: Sigma Fp
Optics: Sigma 14-24mm F2,8 DG DN Art(F2.8)
Exposure: 60sec. ISO3200( 10 flames)

 

色彩的には、Gが抜けすぎているような気もします

中心部と四隅を切り取るスクリプト

レンズや望遠鏡の性能を評価するときに、写野の中心部と4隅を切り取って並べたうえで、さらにピクセル等倍で点光源の形を見るなんてことをよくします。そんなことをするのは、星屋くらいであって、カメラを製作しているエンジニアの方からしたら、

「ヤメてくれよ、そんなん・・」

なんて思っているかもしれません。

それはともかく、「写真の中心と4隅を切り出して並べてくれるフリーソフト」ってないかな?と軽く探して見ると、まあなかなか見つからないのです。普通のひとはそんなことしないからでしょう?

しかし、さらに慎重に探してみた結果「ほしぞloveログ」のSamさんが製作して、公開してくれていました:

PythonOpenCVをつかったプログラムです。そこで、それぞれインストールしてやってみたました。しかしながら顧問の環境(Mac Book Pro + MacOS Sierra)ではうまく動かすことができませんでした。なにか私が間違っているのでしょうけど、そこは深追いせず自分で別のプログラムを作ってみました。

ベースはImagemagickです。もし「自分も使ってみたい」と思われた方は、以下のテキストをコピーして "crop_corners.sh" みたいなファイル名で保存してください。

#! /bin/bash

 

if [ "$1" = "" ]

then 

echo "error:引数にファイル名を指定してくだされ"

exit

fi

 

width=`identify -format %w $1`

height=`identify -format %h $1`

 

if [ "$2" = "" ]

then

size=100

echo "- 100x100 pixels cropped"

elif [ $2 -ge `expr $width \/ 3`  ] || [ $2 -ge `expr $height \/ 3`  ]

then

echo "error:切り抜きサイズがでかすぎ"

exit

else

size=$2

fi

 

echo "picture size: $width x $height"

 

convert $1 -crop "$size"x"$size"+0+0 "$1_lt.jpg"

convert $1 -crop "$size"x"$size"+0+`expr $height - $size` "$1_lb.jpg"

convert $1 -crop "$size"x"$size"+`expr $width - $size`+0 "$1_rt.jpg"

convert $1 -crop "$size"x"$size"+`expr $width - $size`+`expr $height - $size` "$1_rb.jpg"

 

convert "$1_lt.jpg" -bordercolor white -border 3x3 "$1_lt.jpg"

convert "$1_lb.jpg" -bordercolor white -border 3x3 "$1_lb.jpg"

convert "$1_rt.jpg" -bordercolor white -border 3x3 "$1_rt.jpg"

convert "$1_rb.jpg" -bordercolor white -border 3x3 "$1_rb.jpg"

 

x=`echo "scale=2; $width / 2 - 1.5 * $size" | bc`

y=`echo "scale=2; $height / 2 - 1.5 * $size" | bc`

convert $1 -crop `expr 3 \* $size`x`expr 3 \* $size`+"$x"+"$y" "$1_cen.jpg"

 

composite -gravity northwest -compose over "$1_lt.jpg" "$1_cen.jpg" "st1.jpg" 

composite -gravity northeast -compose over "$1_rt.jpg" "st1.jpg" "st2.jpg"

composite -gravity southwest -compose over "$1_lb.jpg" "st2.jpg" "st3.jpg"

composite -gravity southeast -compose over "$1_rb.jpg" "st3.jpg" "crop_$1"

 

rm "$1_lt.jpg"

rm "$1_lb.jpg"

rm "$1_rt.jpg"

rm "$1_rb.jpg"

rm "$1_cen.jpg"

rm "st1.jpg"

rm "st2.jpg"

rm "st3.jpg"

jpgやtif、pngでは動作を確認しています。ふだんimagemagickを使っていない方は、以下の手順であらかじめにインストールする必要があります

Macの方は

Winの方は(わたくし詳しく無いのですけど)Cygwinをインストールして、インストール時に選ぶオプションでImagemagickを一緒に入れてください:

そうしましたら、先ほどの"crop_corners.sh"を保存したディレクトリに移動して

chmod +x crop_corners.sh

と入力して、ファイルを実行権限を付与します。

これで準備完了です。同じディレクトリに四隅を切り出したい画像ファイル(ここではtest.jpgとします)を置いておいて

./crop_corners.sh test.jpg 200

とすれば、四隅の200pxを切り出して"crop_test.jpg"というファイルを出力します。例えば入力画像が

f:id:snct-astro:20200619232515j:plain

であれば、

f:id:snct-astro:20200619232543j:plain

のようなファイルが出力されます。処理途中で8つほど中間ファイルを吐き出すので、ディレクトリをつくって作業されると良いと思います。

 

最後にお約束ですが、このスクリプトを使用して、大事な卒業論文のデータが消失したり、取引先に報告する文書が上書きされたり、これまで撮りためていた家族写真が蒸発したりしたとしても、私としては、ニタニタ笑う以外にはどうしようもありませんので、あしからずお願いいたします・・。

 

Sigma 14-24mm F2.8 DG DN Artのファーストライト

はじめに

このブログの顧問は、昨年の冬にSigma製のミラーレス一眼 "SigmaFp” を購入し(自費)、天体写真撮影に使ってきました。このカメラ悪くないと思うんですけど、誰もついてこないといいますか、ブログ・Twitterの天体界隈でSigmaFpを購入したという方の話をとんと聞きません。

布教活動をいたしましょう。

ミラーレスの特徴は、ショートフランジバック。そしてショートフランジバックの利点は高性能で明るい広角レンズを設計しやすいことです。そしてSigmaのミラーレスを使う利点は、同社の高性能なレンズを「純正レンズ」として使用できる点にあります。私は下記のレンズを狙っていました

「星景写真用レンズの決定版」ですってよ、奥様! 私は買ってしまいましたよ

f:id:snct-astro:20200615211835j:plain

 

このレンズについては、ウェブ上でもいくつかのレビュー記事が上がっています。例えば

とか

など。しかし、どちらの記事も「星景写真用レンズの決定版」というフレーズを引用しているのにも関わらず、星景を撮ってないじゃん。というかライターの方、撮ったこともないのでは?と疑いたくなる様な記事の内容です*1

Sigma 14-24mm F2.8 DG DNレビュー

というわけでありまして、先日に蔵王にてこのレンズのファーストライトをしてきましたので、軽くまとめておきます。そんなに長くなりません。まずは、天頂付近に登った天の川のフラット補正なしの1枚撮って出しです。:

f:id:snct-astro:20200615231639j:plain

ソフトフィルターは入れてません。星が小さくて、見えない!(嫌味)

中心と周辺像

中心と四隅の200px四方切り出しです。

f:id:snct-astro:20200615224829j:plain

周辺はほんのわずかなオニギリ型です。あ、書き忘れてましたけど、これら結果はF2.8の開放です(嫌味)。開放から使えますねー。

光星偽色の傾向は、以前Sigmaの105mm Artを借りて6Dで撮影した時のもの*2と似ています。ピクセルサイズが5.98μmのSigmaFpではアンダーサンプリングになってしまうためかもしれません。

ピント合わせについて

広角レンズではバーティノフマスクも光条がみえなくて使いにくく、ピント合わせが難しくなります。SigmaFpはライブビューの倍率が8倍と低いので尚更です。今回の撮影では、木星をつかってピント合わせしてましたが、ピークが全くわかりませんでした。

ですが、その点はおそらく大丈夫です。といいますのも、レンズのピントリングを動かすと、SigmaFpの液晶画面には「無限遠マーク」と「お花マーク」書き込まれたフォーカスのスライダが表示されるようになっています。このミラーレス一眼特有の機能を参考にしながら、ピントリングを回して「無限遠」まで持って行くと、一旦ソフトウェア的にフォーカス調整が止まります。さらに速く回し続けると、オーバーインフに触れるようになっています。上の写真は、そのソフトウェア的に止まったところで撮っていますが、ピントは合っていると思います。これは撮影がかなり楽です。これは純正レンズのご利益でしょう。ただ、気温にも依存するかもしれないので、冬に試して見てどうかというところですね。

作品を一枚

Milky Way at the mountaintop shrine

Date: 6-14 2020 0:40
Location: Mt. Zao
Camera: Sigma Fp
Optics: Sigma 14-24mm F2,8 DG DN Art(F2.8)
Exposure: 90sec. ISO3200( 1 flame)

せっかく良いレンズを買ったので、星景写真も精進いたします。 

*1:ライターの方々は、短い納期で記事を上梓しなければならないとかの制約があって、晴天の夜を待つ余裕もないのかもしれません。

*2:EOS 6DSigma 105mm F1.4 DG HSMをF2.8に絞って撮影した結果;

f:id:snct-astro:20200615233734j:plain
光星偽色の出方が似ています

梅雨入りじゃ

f:id:snct-astro:20200528171024p:plainくもじいじゃ。

 

東北地方も梅雨入りじゃ。当分は夜空は期待できんぞ。このブログの顧問も、

「しばらくは本業に専念します。。。」 

なんて言っちょった。本業でも大した仕事してないくせにのう。まああまりにCloudy Nightがつづいたら、ZOOM飲み会でもして、気を紛らせばよいじゃろう。

それじゃあの。

複数晩の画像のスタック

 

複数の晩に渡って撮影した画像をスタックする --- 場合によっては昨年・一昨年に撮影した画像をアーカイブから取り出してきて、昨夜の画像に重ねる、という手法もよく行われます。フォトコンでもそう言った作品をよく見かけるもので,それが成り立つのは,我々の時間スケールから比較して「宇宙が静的である」という前提があるからです。しかし,実際はそうではないということは、昨冬のベテルギウスの増減光でまざまざと見せつけられました。ああいう変光星は、夜空に無数にあるはずです。

よく撮影でご一緒する知人も「それって写真ですかね?」と言っていました。頷きつつも、「ひたすら重ねて見たいな」と思うこともあり、私自身は立場を定められておりません。

今まで,そういった撮影手法をやってきませんでした。でもそれは「星の撮影はこうあるべき」という信念によるものではなくて,単に私が比較的にセッカチな気質で、また頻繁に撮影に出かけられる境遇にもないからです。何日もかけて一枚の画像を仕上げる、という根気が続かないのですよね。

前置きが長くなりましたけど、今回の記事では「複数晩のスタック」を初めて試みました。

サドル付近

5月23日、29日の蔵王での撮影のおり、SkyMemoRにEOS6D+135mmレンズを載せて、ほったらかしでサドル付近を撮影してました。23日は雲抜けの絶好のコンディションで32枚、29日は通常のコンディションで60枚を撮影してました。両日とも絞りはF2.8、ISO1600の120s露光です。

まず以下は、23日撮影の30枚をスタックした無加工の写真です:

f:id:snct-astro:20200610234758j:plain

次は、29日撮影の60枚画像をスタックした、無加工の画像です:

f:id:snct-astro:20200610235016j:plain

前者はコントラストは高いが露光枚数が少ない、反対に後者はコントラスト低いけど枚数が2倍以上。どちらも一長一短になっています。考えた挙句「えいや」と、単純に両者を1:1でスタックしました。

そうして仕上げたのが次の写真です:

The gamma cygni star and surroundings

Date: 2020-05-23 and 05-29(2 days)
Location: Mt. Zao, Miyagi, Jpn.
Optics: Zeiss Apo sonner 135mm F2(F2.8)
Camera: Canon EOS 6D (mod)
Exposure: 120s x 32flames(23th) + 120s x 60flames(29th), ISO 1600
Processing: AstroPixelProcessor, Pixinsight, Photoshop.
(リンク先に飛んだ方が、画像がシャープです・・・)

うーん、やっぱり露光時間は「正義」なのは確か。淡い部分の構造が思ったよりも出てくれました。いっぽうで星雲の色彩は単調で、さらなる精進が必要そうです・・・

 

 

 

 

 

 

 

蒼い馬星雲の失敗

5月29日。仙台の夜は月没23:50、薄明開始2:30。

 

狙いは、先日18分しか露光できなかった蒼い馬星雲です。撮影は短時間勝負になります。子供の風呂・寝かしつけ皿洗いなど、家庭における例のへこへこ運動をこなしたあと、「すんません、恐縮でございます。それでは出かけて参ります」と家を出て、ヒーヒー言いながらゲキ重い赤道儀と望遠鏡を自家用車に積載。蔵王まで移動。

そしてゲキ重い赤道儀と望遠鏡をセッテイング。フラフラしながら撮影開始。そして撮れたのがこの写真だ!

f:id:snct-astro:20200606111851j:plain

ああ おまえはなにをしているのかと....
吹き来る風が私に云う*1

蒼い馬星雲の失敗

当夜は余裕を持って22時に到着。悠々とセッティングを済ませて月没を待ちました。RASA11"にSigmaFpを装着して、ISO1600の3分露光を30枚弱確保する予定。撮影はつつがなく進みました。

結果は上記のとおり。フラット補正後にあのような輝度のムラが発生してしまし、補正不能でした。星を消して見てはっきりするのは、左右の明暗がアベコベに傾いた様子です。

f:id:snct-astro:20200602232151j:plain

初めは撮影地の南側の道路をひっきりなしに通過していた車のヘッドライトからの迷光を疑いました。しかし全てのフレームが同じ輝度ムラを呈しているので(3分露光の間に車が全く通らなかったこともあったことを考えれば)、その線は否定。

後で気付いたのは、ピンと調整後に主鏡を固定するノブ

f:id:snct-astro:20200606113858p:plain

の片方を閉め忘れていたことです。南に低い対象の撮影で、主鏡がわずかに傾いて撮りためていたフラットが合わなかったのかもしれません。薄明フラットでも撮っていればなんとかなったのでしょうけど、時すでに遅し。

この固定ノブがゆるんでいると、主鏡がどのようにリリースされるのか?よくわかっていません。ピンとノブの右回しと左回しで、ミラーシフトの様子も違うようですし。フォーカス機構の仕組みをもうすこしちゃんと理解する必要がありそうです(反省)。

*1:中原中也「帰郷」より