天文はかせ幕下

11月の撮影

我々の天文部の備品に、Nikkor 300mm F2.8という高価なレンズがあります。

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備品シールをみると、天文部がこのレンズを購入したの平成3年。部員の学生たちが生まれる前、顧問の私が中学生だった頃です。長い休部状態の時期、このレンズはかなり長いあいだ放置されていて、前玉にカビがたくさん生えてしまっています。もったいないことです。

しかし、カビが生えてもサンニッパ。このレンズは使えるはずです。冬シーズンはこのレンズをメインにして撮影していきます。果たしてその性能はどうなのでしょうか?

遠征に行ってきました

水曜日。天気予報の様子が良さそうです。平日の遠征の場合、低学年の部員はあまり誘えないので、顧問は年長のアベに声をかけます。

「今夜、どう?」
「いやあ、むりっす。いきなり言われても」

どうやら予定があるようです。彼女でもできたのでしょうか?ナマイキですね。次に5年生のスズリョウに話しかけました:

「こんやどう?」
「いいっすよ。」

彼はどれだけヒマなのでしょうか。気の毒なことです。

SCW予報をみると、夜は冬型の気圧配置が強まって、日付が変わる前くらいに太平洋側が晴れるとのこと。夕ご飯を食べてお風呂に入って、21時に名取を出発しました。場所はいつもの「はやま湖」です。冬の散光星雲「ばら星雲」の撮影が目的です。

予定変更じゃ

天気の都合上急ぐ必要がないので、高速を使わず国道を南下します。ゆったりとコーヒーを飲みつつ。

「今夜も、はやま湖ですか?」
「はやま湖だよ・・・でも、たまには趣向を変えますか。」

はやま湖は、我々がよく行く福島県飯館村ダム湖です。湖を横断する橋を渡ったところにある、30m四方ほどのスペースで、いつも観測をしています。湿度が高い傾向があり、ここ数回の遠征では毎回結露に悩まされました。南の方向が暗いのに対して、東側は南相馬市の影響があります。先日オリオン座を撮影したら、カブリが発生しました。この時期、バラ星雲を撮影するには都合が悪いです。

顧問には、もうひとつ気になる観測場所がありました。GoogleMapを見てみましょう。

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東の赤いマークが、いつものはやま湖。左側にある「霊山(りょうぜん)」には、登山道の入り口に駐車場があります。なにやら恐ろしげな名前で、真ん中の「クビカケ森」というのも幽霊がでそうな名前で気になりますが、相馬ICから20分かからずアクセスも良好です。いってみよう。

霊山へ到着

車を出た瞬間、「暗い」と思いました。西側の福島方向が少し明るいものの、はやまこで気になった東側は十分に暗いようす。周辺の木々が高くて思っていたほど視界が広くないのがちょっとマイナスでしょうか。

まずは近くのトイレで用を足します。綺麗なトイレです。人感センサーで明かりがつきます。これがちょっと厄介で、一度点灯すると消灯まで10分以上もかかります。「撮影中のトイレはご遠慮ください」ということになってしまいそうです。

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周辺の様子です。当日は少し風が強く、気温も2℃まで下がりました。

撮影中、誰もいないのに、トイレの明かりが「ふわっと」灯ることがあり気になりました。おそらく霊山の地縛霊が用を足していたのかもしれません。怖がるスズリョウには

「風で舞い込む落ち葉にセンサーが反応しておるのだよ」

といって安心させました。普通トイレには熱感センサーを使うので、嘘ですが。

撮影結果

さておき、撮影した結果を。

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撮影データ:
11/15 23:30~
カメラ:Canon EOS60Da
レンズ:Nikkor ED 300mm F2.8->4.0
露光:ISO1600 6minx18
NJP赤道儀、PHD2ガイド

画像処理:
DSSでフラット・ダーク・スタック処理。DigitalPhotoProfessionalでトーンカーブ、色調整。FlatAideProでスターシャープ処理。

 

なかなかうまく行きました。このバラ星雲、改造EOS40Dを使っていた頃、なんどもトライしていたのですが、まともな像が得られたことがありませんでした。ガイドもすこしコツが分かってきて、かなり暴れを抑えることができるようになってきました。あと、懸案であった300mmレンズは、解放だと青ハロがでますが、F4まで絞れば気にならなくなります。センサーがAPS-Cであることも手伝って、周辺像も驚くほどに良いです。

 

スズリョウは、HDRで撮影したオリオン座の周辺を画像処理中です。

また、次回はぎょしゃ座周辺の星雲を撮影してみます。