天文はかせ幕下

仙台高専天文部の顧問が、日々の天文活動や天文情報を綴っています。

2025-01-01から1年間の記事一覧

ケフェウス座のLDNやLBNカタログの星雲たち

先日の浄土平遠征で撮影していたメインの対象を仕上げました。 Date:2025-09-27Location: Jododaira, FukushimaOptics: Sharpstar15028HNT, 420mm F2.8Camera: ASI2600MM/MCExposure: 180s x 63f(Mono), 180s x 60f(color), gain100Processing: PixInsight, …

浄土平の遠征記2025

先日の浄土平遠征の様子を書き残しておきます。ちょっとダラダラめの記述ではありますが、良ければお付き合い下さい。観望で初めて見えた淡い天体を、スケッチでもってはじめて表現してみました。 **** 9月末の土曜日は快晴でした 「やったー、いってき…

C/2025 A6 レモン彗星を浄土平で撮影、測光もしました

9月27日の夜から28日の明け方にかけて、福島県の浄土平に出かけて撮影をしてきました。明け方に、東の空から昇ってきたレモン彗星(C/2025 A6)を撮影しました。 こちらはリザルト: Date: 2025-9-28 3:23~3:59(JST)Location: Jododaira, Fukushima, JapanOp…

こんな均整の取れた銀河があったとは、NGC6744

チリのリモート天文台で8月に撮影していたNGC6744が、お気に入りのリザルトになりました。 date: 2025-07-24~2025-08-26 location: el sauce obsavatory, Chile Optics: Vixen R200ss ExtenderPH camera: ASI294MM-pro exposure: L120s x 264, R120s x118, G…

チリのリモートを3年続けた今、リコリモのリザルトシェアをお勧めする理由

注:いかにもブログ記事向けの長いタイトルをつけましたが、この記事はリコリモのスタッフの方や、天リフの山口編集長にお願いされて書いたものではなく、このブログ主の顧問が勝手に執筆していることをはじめにお断りします。「じゃあなんでこんな記事かい…

2025年夏合宿報告(リザルト編)

前回、記事にした天文部の合宿。今回はリザルト編。撮影結果を報告いたします。 さて、本ブログ「天文はかせ幕下」。天文活動をしているのは顧問ばかりで、めったに学生部員の姿が見えないぞ!というご批判は・・・直接受けたことは無いのですけど、読者の皆…

2025年夏合宿報告(顛末編)

お盆休み明け、8月18日から20日の2泊3日の日程で天文部の合宿を行いました。その始終を報告いたします。 出発 いつものハイエースに荷物を積んで、昼過ぎに出発します。 往路の車窓から見上げた空です。すこし大気が不安定だったようで、このあと驟雨…

PixInsightの使い方[応用編] もくじ、前書きを公開!アピールポイントも!

先日にアナウンスしました、書籍「PixInsightの使い方[応用編]」。 校正作業も後半戦に入っています。 ふたたび、みなさまの注目をお引きしたく、今回は前書きと目次を公開いたします! 今回の[応用編]、なるべく多くのかたに満足いただけるよう、内容は練り…

超新星SN2025rbsの撮影

お久しぶりです。天文部2年のT(仮称)です。 記事にするのがかなり遅くなってしまいましたが、先月、吉田浜へ連れて行ってもらいNGC7331に現れた超新星 SN2025rbs を撮影しました。 超新星の撮影 当日はMT-200で撮影しました。自身初の反射望遠鏡を使っての撮…

月夜の蔵王でナローバンド撮影

前回のデュアルナローフィルターの記事での蔵王遠征、初めての試みだっただけでなく、月のある夜の撮影も自分にとっては新鮮でした。ですので簡単に遠征の記録をしたためておこうと思うわけです 撮影日はお盆の終盤、8月15日の夜でした。当夜は22時ころに月…

デュアルナローフィルターとモノクロカメラで網状星雲

デュアルナローフィルターとモノクロカメラを組み合わせる作戦 ろ座矮小銀河のぐらすのすち君にOptolongのL-eXtremeというフィルターをお借りしました。これは、下の図のような透過域を持つフィルターで、HαとO3の輝線を同時に通します。 Optolongのサイトよ…

PixInsightの使い方[応用編]、近日刊行します!

みなさんおこんばんは。だいこもんです。 『PixInsightの使い方[応用編]』を近日刊行します。この場でアナウンスさせてください。 星沼ブックスの「たのしい天体写真シリーズ」。丹羽雅彦さんによる前著『PixInsightの使い方[基本編]』は、なかなかけっこう…

NGC7331の超新星を撮りに

先日火曜日の午後、2年生の天文部員T君が訪ねてきました。なんでも屋上にあるMeadeのシュミカセで超新星を撮影できないかとのこと。 超新星は、7月14日にNGC7331銀河に発見されたSN2025rbsです。あの望遠鏡は追尾機能の調子がかなり悪いので、どうせならMT20…

天文部2年のTによる、光害地からの網状星雲

こんばんは。天文部のT(仮称)と申します。当時1年生だった前回のエントリー以来の登場になります。 今は2年生になりました。よろしくお願いします。 事の始まりは6月28日の観望会でした。フィルター越しにはっきりと見る事ができた網状星雲の姿が忘れられず…

浜吉田で観望会(2回目)

少し前の話。 先月、6月28日の土曜日に天文部で観望会をしました。近くてそこそこ暗い、吉田浜の海岸近くの謎の駐車場が会場です*1。 浜吉田の駐車場にて 梅雨時期の開催で、日程も適当に決めていたのにも関わらず、晴れました。最近の天文部は天候に恵ま…

PixInsightでハイパス

前置き PhotoShopの「ハイパス」という機能を利用して、天体写真の「うねり」を強調する古くから良く知られた方法があります。今回はこのテクニックをPixInsightで行う方法について、簡単にまとめました。 「ハイパスって何?」という方は、天リフのワンポイ…

君は水素の色をみたか

事の起こり 「水素の色、見たいよね」 みたいなことを半年前に仲間と話しておりました。顧問が所属している星沼会という星好きの仲間が集まる会のdiscordでの話題です。 なぜそんなことを言っているかというと、我々が撮影する天体写真には、水素の光がよく…

義務感いっぱいで撮影した「アンタレス付近」

稜線を越えてくる強風で、夜空全体が山鳴りのような音を立てています。真っ黒の雲が沈みかけの月明かりを覆い隠して、あたりは不気味この上ない様子。夜中11時の蔵王連邦、賽の河原駐車場に到着すると、自分以外に誰の姿もありません。 「はー。やっぱ帰ろ」…

露光時間は正義!ではなかった? 3年越しソンブレロ銀河

露光時間は正義!では無かったか 3月から4月にかけて、チリではひたすらM104を撮影してました。しかもR、G、Bは無視してLだけを延々と。フォルダに増えた枚数は1192枚。 その狙いは、恒星ストリーム。銀河本体を球状に覆う楕円銀河状のハローのさらに…

これは便利!"Pixel Math UI"の導入方法とチュートリアルをまとめました<PixInsight>

今回は、最近公開されたPixInsightのスクリプト、”PixelmathUI”の導入方法と簡単な使い方をメモしておきます。 PixelMathUIは、Cosmic Photonsというサイトを運営されているMike Cranfieldさんが開発され、無料で公開されています。超ありがとうございます。…

春の銀河まつり、M90で締めくくり

先日に遠征したはやま湖での新入部員TS君の奮闘は、前回記事にしたところ界隈のベテランの方にとてもウケて、書いて良かったです。 その横で顧問はM90銀河を撮影していました。使用したのはMT-200という反射望遠鏡で、実はこれも30年くらい前の発売です。…

新入部員、20年前のカメラと30年前の望遠鏡で銀河を撮影するの巻

事の起こり 「赤道儀を貸してくれませんか?」 4月に入ってきた新入部員の一人、TS君からそう頼まれました。なんでも、自分の望遠鏡とカメラで銀河を撮影してみたいとのこと。顧問は彼の申し出に正直驚きました。最近の天文部員の多くは眼視観望派で、積極的…

チリのVixenR200ssで60時間露光したNGC3521銀河

2月の中頃から3月の初めにかけて、チリのリモート望遠鏡でNGC3521銀河を撮影しました。露光時間はHαとLRGBがそれぞれ30hづつ合計60時間、これまでで最も長い露光になりました。まずは結果をご覧ください date:2025-02-23,27,28,03-03,07(5 nights) locatio…

「小口径が大口径より分解するケース」を(再)検証しました

これまでの経緯 前回の反省点と今回の方法 検証方法 結果と考察 動画の比較 スタック後の静止画の比較 終わりに これまでの経緯 (悪シーイング&短時間露光)の状況では、8cm程度の小口径の光学系のほうが、大口径よりも分解する――。この意外な逆転現象…

気軽な天体写真

50分程度と言うと、昨今では短時間露光の部類と言って良いかもしれません。3月に宇多川湖で撮影したオリオン座の右腕から双子座の左足あたりにかけての星野写真は、天候の関係で露光が稼げず、それなりな仕上がりでした。 Date: 2025-03-25Location: Utagaw…

「小口径が大口径より分解するケース」の検証をしました

はじめに 以前このブログで、「シーイングを考慮した望遠鏡の口径と分解能の関係(理論・考察編)」という記事を書きました。その中で、以下の2点について触れました 非常に短秒の露光(0.01秒程度)では、小口径望遠鏡のほうが、大口径を上回る分解能を示す…

成澤さんの撮影塾「STAVE」の皆さんと撮影でご一緒しました

(STAVEをSTEVEと綴り間違いしていたので修正しました) 事の起こり 先週の土曜日のこと。顧問は自宅でぼんやりと天井を眺め、壁紙に付いたのシミの数を数えておりました。すると突然、ぐらすのすち君から電話が入ります 「今夜、成澤さんが宇田川湖に撮影に…

イータ・カリーナ星雲のLRGBSHOで苦しむ

はじめに 結果 ミスティック・マウンテンの周辺 大質量のイータ・カリーナ星 左下の脇役 画像処理に大いに迷走する それぞれのフレームの特徴 いくつかの、ボツになった「いいとこどり」アイデア 単純なブレンド Lの交換 Fornaxxスクリプトによるダイナミッ…

Dwarf3をお借りして使ってみました

はじめまして。仙台高専天文部1年のT(仮称)と申します。よろしくお願いします。 先日、ありがたい事に1週間ほどDWARF3を自由に使わせて頂ける機会を頂いたので、色々と撮影してみました。 初めてDWARFを手に取った時は、その軽さに思わず衝撃を受けました。…

2025年春、神割崎で銀河撮影(第一回)

春は不安の季節 NGC4565を撮影しました ドブソニアンで銀河観望&春の天の川 終わりに 春は不安の季節 ここ最近、だいぶん暖かくはなったけれど、肌にはまだ少し冷たい夜中の空気にしみじみと春を感じます。 僕にとって(そしてきっと誰にとっても)春は不安…