3月26日の夜,宮城県はかなりシーイングが悪いようでした。自宅からのIR撮影でM104を撮影しましたら結果はボヤボヤで処理する気にならず,画像はそのままお蔵入りです。
しかしソンブレロはどうしても撮影しておきたい。
数日後の4月1日に再度挑戦しましたら,今度はシンチレーションも小さく良い結果が得られました。期せずして,全く同じ光学系で南中付近のM104を撮影したことになりましたので,シーイングの差で星像や暗黒帯のディテールにどれくらいの差が出るか直接比較してみましょう。
焦点距離1200mmF6のMT200(補正レンズなし)にASI294MC-proを取り付けてIR720フィルターを通して撮影してます。露出は一枚あたり240秒,スタック後の画像をPixinsightのAutoHistgramで同じ強度のストレッチをかけた後,中心部分を切り出しました。
26日は22枚,1日は25枚のスタックで,どちらも子午線ごえ前後で撮影しています。GIFアニメにしてみると,以下の様な感じです。
また次の画像は微光星の様子を比較したものです:
特に微光星の潰れが激しいです。目の子で比較してみると,少なくとも直径で10pxは星像が肥大している様に見えます。
294MCのセンサーサイズは4.67μmで,焦点距離は1200mmですから,画像上の10pxは8秒角になります。たった2晩の比較ではありますけれど,これが典型的なシンチレーションの振幅であると思うことにしてみます。
さて,気になるのは「シーイングの悪さはどのくらいの焦点距離の撮影から影響が出てくるのか?」という点です。そこで10秒角のシンチレーションの大きさが,センサー上においてどのくらいの大きさに投影されるか,を各焦点距離ごとにグラフにしてみました。
シーイングの悪化による,星像の肥大。どのくらい大きくなると
「今夜はあかんなあ」
と残念な気持ちになってしまうか。これは個人の好みによるところではりますけれど,だいたい4~5pxも膨らんでくると厳しくなってくるのではないでしょうか。例えばセンサーサイズが5μmほどのカメラで撮影しているとすると,そのような影響が現れてくるのは焦点距離500mm程度以上ということになりますね。
反対に申せば,500mm以下での撮影なら,シーイングは気にしなくていいということになります。
また余談ですけど,最近タカハシから発表されたε130Dの専用エクステンダーは,焦点距離650mmでスポットダイアグラムの直径が2μmだそうです。そのくらいの焦点距離だと,シーイングによって20μmくらいも像がぼやけるわけですから,シャープな光学系を活かすのもなかなか大変そうです。