天文はかせ幕下

C2023/A3(Tsuchinshan-ATLAS)彗星、前半まとめ(後半も期待大です!)

これを書いている現在は10月6日。Tsuchinshan-ATLAS彗星は、見た目で太陽の方向へ近づいて観察がしにくくなってきました。当初の予想は良い方向に外れ、彗星は増光をつづけています!これまでの撮影をまとめました。

9月中旬から下旬、チリにて

9月19日,20日に、日本よりも条件の良いチリで撮影した姿を報告しました。

その後も彗星は順調に増光します。同じチリの望遠鏡を運用しているそーなのかー氏による26日の姿です。

つづく9月28日は現地早朝の天候が安定していたことから、初のRGBカラー撮影に挑戦しました。

C/2023 A3 (2024-09-28)

Date: 2024-09-28, 9:35(UTC)
Location: El sauce obsavatory, Chile
Camera: ASI294MM
Optics: Vixen R200ss
Exposure: R=10s x 24f, G=10s x 24f, B=10s x 24f, gain=120

中心核から尾に沿って僅かに見えている暗線は、シンクロニックバンドと呼ばれるものでしょうか。太陽光の圧力で吹き飛ばされているダストの粒粒の、微妙な相互作用でこういう特徴的な構造が現れることがあるそうです。

この画像、核から下方向に細く小さな尾が出ているように見え、一部で物議を醸してしまったんですが、これはアーティファクトでした。おそらく隣の望遠鏡が被っていて、その影響が余計な光条として現れてしまったものと思われます。

10月初旬、日本にて

さて話をチリから日本に戻します。こちらで毎回問題になるのは天気。彗星の撮影では低空までスッキリ晴れる必要があるため、条件はシビアです。9月末は、関西方面が良く晴れており、宮城県の我々は遠方から届く撮影成功の報を恨めしく聞いておりました。

そんな10月1日、ようやくチャンスが回ってきました!

お決まりのツイートをしつつ、夜中の2時に自宅をでました。撮影地は、東の空が開けている大黒天駐車場を選びました。現地にはそーなのかー氏、柊二氏、かのーぷす氏に加え、東北大天文同好会のjdさんやNaoさんなど皆同じ目的でにぎわっていました。下の駒草平には仙台天文同好会のさらさん達も来ていたそうですね。

 

計算では、ココから岩沼市の上空方向に彗星が昇ってくるはずです。皆でカメラを構えますが、まだ何も写りません。

「何もないですね…」
「今日の条件では無理なのかな」

恐らく全員が不安になっていたと思います。どれだけ経験を重ねても、まだ見ぬ彗星の姿は想像がつかないものです。

やがて、水平線上にたなびく雲の割れ目から、薄明光線のように淡い何かが見えてきました。こちらは赤道儀で地平線下の彗星を自動導入し、「とらえているハズ」のカメラの画像です。うっすら何か見えますでしょうか?

Date: 2024-09-30, 9:14(UTC)
Location: Mt. Zao, Miyagi, Japan
Camera: CANON EOS6D(mod)
Optics: Mamiya Apo-sekor 250mm F4.5
Exposure: 20sec. ISO1600

まもなくはっきりと集光した核が見えてきました。皆が自身のカメラで捕らえるたびに

「おおー」

「これかー」

と歓声が上がります。楽しい瞬間です。

核が雲から昇ってきて薄明に消えるまでのタイプラプスを作ってみました。

このタイムラプスのうち、4:17~4:20の3分間のフレームをスタックし、「作品」として仕上げたのが次になります。なかなか上手く行きました。135mmレンズにフルサイズの画角でちょうどよく収まる立派な彗星の姿です。

C2023A3(2024-09-30)Date: 2024-09-30, 9:17(UTC)
Location: Mt. Zao, Miyagi, Japan
Camera: Sony α7s(mod)
Optics: Zeiss Apo sonner 135mm F2
Exposure: 10s x 11f, ISO1600

 

さらに広角の画像では、細い月とのランデブーでした。彗星は淡いので、拡大して探してみてください。

後半に期待

明けの彗星は、早起きが必要でガチ勢以外には敷居が高いです。10月も中旬になれば西の空で太陽を追いかけるようにふたたび彗星が姿を現します。

今現在、観測された光度は事前の予想を上回り続けています。その後半戦は、天文部員たちや家族を連れて、また観望いたしましょう。楽しみです!